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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第5章・真☆風呂回が挟まるようで

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第2話・パーティーメンバーが増えるようで

 翌朝の早朝には村を出て、ルキファタム教会の大聖堂があるパラノメールへと向かった。面子はシンシア、クリスティーナ、俺、そしてオヌシの4人だ。サーシャは村で留守番である。


 ・ドズゥ、自警団、ヤンキーズが居るとはいえ、セルト村の守りは万全では無い。主戦力の誰かは残る必要があること。

 ・教会との折衝である以上はクリスティーナも同行したほうが優位になること。

 ・オヌシを次期管理職として教育する必要があること。

 ・サーシャの俺への依存度改善。


 これらが、メンバー選出の主な理由だ。


 先日、護衛兼メイドであるサーシャが護衛兼メイド兼愛人という役職にジョブチェンジするという事件があった。その際に、休日もずっと俺の傍に居るという習慣が身についていたせいで、休日を1日も取っていなかったという大問題が露見した。この世界に労働基準監督署が無くて良かった。あったら俺は今頃全てを失っていた。


 ともかく、クリスティーナ、シンシアと、あとはオブザーバーとしてドズゥを交えた会議を開き、「サーシャはアルメルの傍に居ない日を強制的に設け、慣れさせる必要がある」という結論に至った。健全な労働環境のためだ、仕方ない。


 でも、あの子、本当に大丈夫だろうか。俺の傍に居ないサーシャというのがイメージが着かない。そもそも人と多くを語らないので、誰かと仲良くやれているというイメージも無い。ヤンキーズと喧嘩になったりしていないだろうか。村長とディスコミュニケーションになっていないだろうか。


 心配である。


「てめぇが一番そわそわしてんじゃねぇか、色ボケ領主」


 と、馬車の正面に座るイケメンが俺を睨みながら言ってきた。肌色と目つきは悪い不健康そうな見た目だがワイルドを伴う風体で、一部からは需要がありそうな、男が言う。


「そりゃ、サーシャが近くに居ないのも、サーシャの代わりにオヌシが側近なのも、初めての状況なんだよ? 緊張のひとつくらいするさ」


 俺はその男に言う。そう、目の前の不健康系イケメン、これ、オヌシである。


 俺の側近としてパラノメールへ連れて行くというのに野盗の身だしなみのままではいけない。服装を新調し、髪とヒゲを整えた。村に入ってから気を付けさせてはいたが、流石に肌周りは、綺麗になるまではしばらく時間が掛かりそうだ。


 それでも、身なりを整えてみたら驚いた。それなりに顔立ちは整っているではないか。歳も30は越えていると思っていたが、20前半くらいに見える。


 実際は本人も自分の年齢を把握していないとの事で年齢不詳だが、多分若いと思う。もしかしたら、長らく栄養失調だったせいで老けて見えているだけで、本当は10台という可能性も、ゼロでは無い。


「そもそも俺を側近にってのが意味不明なんだわ。そこの鬼畜女から叩き込まれたから最低限の礼儀は分かった。だが、元野盗をたった数か月で側近にするなんざ、どうかしてんだろ」


 その言葉に、最も早く反応したのはクリスティーナだ。


「あら、誰が鬼畜女なのかしら」


 当然、そこ気になるよね、見逃さないよね。


 オヌシは答える。


「てめぇ以外に誰が――申し訳ございませんでした、おひめさま。……てめぇ! 魔法使って変な事言わせんじゃ――ケイアイのキミ、忠誠を――ふざけんなボケゴラァ! 意味分からん言葉だがキモイ事を言わされてる事だけは分かる!」


 オヌシの様子がおかしいのは、クリスティーナの魔眼のせいだ。喉や口、唇の筋肉を操って好きな言葉を喋らせている。俺も昔にやられた事があったけれど、当時の俺は抵抗出来なかった。しようともしなかったっていうのもあるけど、それにしたったオヌシ、あの力に抵抗出来るのは、中々の根性だ。


「全然出来てないじゃないの、礼儀。どこが最低限は分かっているのよ」


 と、クリスティーナは呆れた様子で指摘する。


「TPOに従うってのがマナーなんだろうが。それともなにか? この馬車ん中は社交場か会議室だったか?」


 おお、嫌いじゃない返しだ。


 いや、実際はTPOに準じる以外にも、当然立場関係というものもあるので、雇い主である俺や上司にあたるはずのクリスティーナに無礼を働くのはマナー違反だ。しかし、ネタとしての言い返しとしては俺好みである。


 しかし、このオヌシによる上手い言い回しという攻撃を、クリスティーナは物ともしない。


「――その通りよ」


 と。


「社交場とは、社会的な交わりを交わす場の事よ。社会的な交わりを交わすなら、全てが社交場になるわ。会議室とは、会議を行う部屋の事よ。会議を行っていれば、そこが会議室よ。だから、ここは社交場であり、会議室よ」


「ぐっ!!」


 言葉に詰まるオヌシ。ここで「意味不明な事言ってんじゃねぇぞ!」となれるほどに馬鹿だったらどれほど強かったか。いや、しかし、それでも反撃は成される。


「この場には関係者しか居ない。社会的な交わりは交わされていない。今は会議中じゃない。だからここは会議室じゃない。それとも何か? この色ボケ領主がそわそわしててキモイっつう話は、そんなに大切な会議だったか? あーそうか、ならしゃあねぇな、俺が悪かった、間違ってたわ。そんじゃ、会議っつうほど大事な話ならしっかり続けねぇとな。で、どこまで会議してたっけ? 色ボケ領主のそわそわがキモくて、なんだっけ?」


「基本アルメルはずっと仕事を探してそわそわしていて、ずっと挙動不審よ。部下になるなら慣れなさい。そんな事よりも重要なのは、」


「ねえ、なんで2人の言い合いで俺ばかり攻撃されているの?」


 とても理不尽だと思いました。攻撃対象が俺に偏り過ぎでは。


 シンシアは今馬車の馭者をやってもらっているため、やり取りには参加しない。なので、オヌシもクリスティーナも揃って俺を攻撃しようとしているこの場で、バランスを整えてくれる相手は居ないという事だ。


 おかしい。いつもなら、そろそろこのタイミングで、ジト目のクール系で言葉が少ないのに的確な単語チョイスでオチを用意してくれる子が居るんだ。なのに何故この場にオチが着かない!? そう、サーシャが居ないから!


 ……サーシャ、君はこんなにも、俺にとってかけがえのない存在だったんだね。離れて初めて分かる、大切さ。


「……やっぱきめぇぞ、こいつ」


「ええ、無言のまま一喜一憂するのは流石のダーリンでもキモイわね」


 あんまりの言いぐさだった。


 そういうわけで


「さて、じゃあこの場が会議室になる必要が出て来たらしいから、ちょっと会議をさせて欲しいのだけど」


 と、俺が提案する。


「いきなり素に戻んじゃねぇ、キメェぞ」とオヌシ。


「その切り替えは軽くホラーだから次からはやめて欲しいわね」とクリスティーナ。


 えー、現代日本の運動部では「切り替えが大事」と教わったのに!

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