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ツンデレな友達(?)ができました  作者: 黒輪サン
第三章:夏休み
13/22

episode1(13) ただただ嬉しくて

 夏休みが始まって一週間。特に予定もない私は珍しく宿題を進めている。それにしても今年は異様に蒸し暑い。扇風機とエアコンをフル回転させて何とか集中を保っている。宿題に一区切りつけると橘さんからの電話がきた。


「ひさしぶり、委員長」


「うん。ひさしぶり」


 橘さんの声が懐かしく感じられた。実際、一週間近く話していないので当然といえば当然だろうか。


「あの、なんか委員長の声聞きたくなったんだよね」


「なにそれ。なんかうれしい」


 橘さんは恥じらってそう言った。私たちの会話は早速途切れる。そのまま一分ほどたつと、橘さんがその沈黙を終わらせた。


「えっと……今暇?」


「あ、うん」


「どこか行こうよ。二人でさ」


 デートのお誘い。ここは正直に答えた。


「いいよ」




 待ち合わせ場所の公園につくと橘さんはすでにそこにいた。


「私が誘ってあげたんだから集合の30分前には着いて待ってるくらいしなさい」


「電話くれたの12分前でしょ?」


「うっさいわね。そう意味じゃないっての」


 私たちは久しぶりのやり取りに思わず笑みをこぼす。


「じゃあいきますか」


「どこいくの?」


 橘さんは何も考えてなかったのか苦笑いしている。


「適当にぶらぶら歩くの! それでいいでしょ」


「涼しいところ行こうよ」


「……それもそうね」


 とにかく涼しいところを目指して私たちは公園を出発した。




 正午もだいぶ過ぎてしまったので私たちはレストランで何か食べることにした。


「ああ~涼し~」


「涼しいね~」


 席に着くや否や私たちは昼食のことを忘れて涼み始めた。


「委員長。今楽しい?」


「うん」


「ならいい」


 もしかして私のことを心配して今日一緒に出掛けようって言ってくれたのかな。そう思うと胸がなんだかドキドキしてきた。橘さんが私を機にかけてくれるのがうれしいみたいだ。もっとも本当はそうではないかもしれないけれど、そう思うことにした。


「とにかく何か注文しなきゃね。委員長どうする?」


「うーん。橘さんと一緒でいいかな」


「なによそれ。まあいいけど」


 注文してしばらくするとハンバーグが運ばれてきた。


「うわ。おっきいねこれ」


「だからいったでしょうが。別に食べられるならいいんだけど」


「大丈夫、結構食べる方だし」


 私たちは黙々と料理を食べ進める。今日はなんだかこういった静かな間が多い。私がどこか橘さんと一緒にいることに抵抗を持っていいるからだろうか。楽しいのに、実莉ちゃんとのことを引きずって。


「私、委員長が元気なのが好き……だよ」


「え」


 突然橘さんはそう言った。橘さんじゃないけど「恥ずかしいこというなっ」なんて思わず言ってしまいそうになった。


「だからさ、元気出してって。私に言えない悩みがあるのかもしれない。私に後ろめたいことがあるのかもしれない。だけど私は大切な友達の委員長のことなら受け止めてあげたい。そう思ってる」


 いいの? 橘さんの言う通り、話せないような後ろめたいことをした。それでも私を受け止めてくれるの? 嬉しくて涙があふれてきた。


「わかったよ」


「ああもう、分かったなら泣くなって」




 昼食を食べ終えるとそろそろ解散することになった。


「委員長。来週の夏祭りだけどさ、一緒に行かない?」


「モチのロン! 行く行く」


「もう。すっかり元気になっちゃって。まあそれがあんたらしくていいよ」


「橘さんはこうしてる私が好きなんでしょ?」


 ひさしぶりにいじったら恥ずかしがって何も言わなくなっちゃったのでそのまま解散した。来週の夏祭りが待ち遠しい。

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