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仲間の故郷編第8話 クノール村

「ここの孤児院は一度火事で燃えちゃったけど、建て直されたかな?」

「火事?」


 クノール村に向かう途中でエマがそんなことを口にした。

 記憶になくて首を傾げる。


「あれ、ソフィは覚えてないの? 孤児院が激しく燃えてるのに、ルドルフが『中に人がいる』って飛び込んじゃったんだよ」

「レオは兄さんに救出されたんだよ」

「はあ」


 前にも聞いたことがあるような気がするけれど、実際に見た記憶はない。


「そのとき、ソフィはまだ目覚めてなかったんじゃないかな?」

「あ、そうだったかも! でも、ソフィが気を失う前から孤児院は燃えてたよね?」

「そこら辺は覚えてないと思うよ」

「……あ、そっか」


 エマとカイが当時を思い出しながら話しているうちに孤児院の前に着いた。

 二階建ての孤児院を見上げてみるけれど、やはり記憶にない。私達が去った後に再建されたのだから当然かもしれないけれど。


 玄関の鐘を鳴らしてしばらく待っても、誰も出てこない。

 子ども達の賑やかな声が聞こえないし、感知できた魔力はごく僅かだ。外に出かけているのだろうか。


「……出てこないね。レオ、この時間帯はいつも何してたの?」

「そんなん覚えてねーよ。あ、でも村で遊ぶことが多かったか?」

「じゃあ散策ついでに探してみようか」


 村を歩いていると、赤毛の少年の正体に気づいた人達が声をかけてきた。


「もしかして、あのレオか?」

「うん、そうだけど『あの』って?」

「村一番の暴れん坊だよ。癇癪を起こすと大暴れして怪我人が出るから、親が育児放棄したんだ」


 村人が語るレオは私達の知らない人だった。


「うーん、あたしの知るレオは理由もなく暴力を振るうことはないよ」

「じゃあ、多少は大人しくなったんだな」

「大人しく……はなってないけど」


 食べるとき以外椅子に座ってられず、話し合いをするときも部屋の隅で体を動かしていることの多いレオだ。大人しくなったとは言い難い。


「上級冒険者になったんだって? 護衛対象を傷つけたりしてないよね?」

「君達がレオの仲間なのか。急に攻撃されたことはねぇか?」


 何だろう、レオの評判はあまりよくないようだ。暴れん坊とか暴力沙汰とかどんな幼少期を過ごしたのだろう。


「レオ、ひどい言われようだけど何したの?」

「そんなん覚えてねーって言ったよな。オレの方が聞きたいぜ。……なぁ、昔のオレってどんな感じだったんだ?」


 レオが村人に尋ねると、色んな話を聞けた。


「村一番の暴れん坊で、生まれて間もない頃は空腹になるとしょっちゅう癇癪を起こして周りのものを傷つけてたな」

「母親のカーヤは顔を中心に腫れが酷くて、最初は旦那さんに暴力を振るわれているのかと心配したよね」

「まさか自力で立つこともできない自分の子にやられたとは思わなかったよ」

「……カーヤ?」


 その名前にレオが首を傾げる。


「あんたを産んだのはこの村に住むカーヤだよ。赤毛も茶色い目も笑った顔もカーヤそっくりだな」

「家に案内しようか? カーヤの奴、お前を捨てたことずっと後悔してたぜ」


 自分を捨てた親に会う。それは覚悟のいることだと思うけれど、レオは迷うことなく頷いた。


「おぅ、案内よろしくな!」


 村人の案内で住宅が建ち並ぶ通りを歩いてレオの生家に着いた。外観は他の家と変わらない。ごく普通の家庭に生まれたようだ。


「よぅ、誰かいるか?」


 レオが声をかけると、中の人物が動く気配がした。少しだけ扉が開いて、三、四十代程度の女が顔を覗かせる。普段見かけない顔だからか、少し警戒しているようだ。


「こんにちは、旅人がウチに何の用?」

「……母ちゃん?」


 女の声を聞いたレオは目を見開いて尋ねる。女も目を見開いて扉を開け放った。そのままレオに抱きつく。


「レオ? 本当にレオなの?」

「そうだぜ、母ちゃん。久し振り……なのか?」

「あぁ、十六年振りだよ……おかえり、レオ。よく帰ってきたね。それからごめんなさい、あなたを捨ててしまって……」

「うわっ、泣き出すなよ! とりあえず中に入れてくれねーか? オレの仲間を紹介するからよ」


 そこで女は改めて私達を見た。やり取りをずっと見られていたことに気づいたようで赤面する。


「ごめんなさいね、見苦しいところを見せちゃって。どうぞお入り。レオをここまで連れてきてくれてありがとう。ウチはレオの生みの親、カーヤさ」

「初めまして、レオが所属する中きゅ……上級冒険者パーティー『狼の集い』のカイです」

「へぇ、冒険者。それも上級かい。そいつは頼もしいねぇ」


 家の中に案内されたけれど、人数分の席はない。床に布を敷いて腰を下ろした。エマはお茶を用意するカーヤの手伝いをしている。


「お待たせ。さて、何から話せばいいかな」

「小さい頃のオレってどんなだったんだ?」

「……そうだね、生まれつき体が大きめで、力のある子だったよ」

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