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仲間の故郷編第3話 昇級試験

 試験当日。昨日見かけたシュタインプフェーアトの討伐依頼を受付に見せると、すぐに受理され一人のギルド職員が出てきた。


「やぁ。僕は元上級冒険者のハンス、試験の監督兼もしものときの助太刀さ。僕が手を出さなければならない状況になったら、試験は不合格だと思ってくれ」

「中級の『狼の集い』です。あなたの手を煩わせることはありませんのでご安心ください」


 ギルド職員ハンスに見守られながら、私達はシュタインプフェーアトが出没する山岳地帯へ。植物よりもごつごつとした岩場が多く、採石する現場もある。

 今回の魔物は荷物運びとして連れて来られた馬が濃い魔力と周囲の石を利用して魔物化したらしい。そこまで凶暴ではないけれど作業員を襲うこともあるので、早めに討伐してほしいと。


「カイ、あの岩場の先に魔力反応がある」

「了解。ここからは慎重に行こうか」


 私が魔物の位置を伝えると、カイが私達に注意を促す。

 岩場の陰から覗けば、灰色の馬に似た魔物が地面を蹴っているのが見えた。全体的に角張った印象だ。


「あのお馬さんかな?」

「体毛も無骨な輪郭もシュタインプフェーアトの説明に一致するね」

「おしっ、アイツをやっつければいいんだな?」

「でも、何だろう。冒険者ギルドで調べたものとは少し違うような……」

「おりゃー!」


 カイはまだ考えているけれど、じっとしてられないレオが飛び出してしまった。

 昨日新たな武器を得て、その性能を試したくて仕方がないのだろう。いつもと変わらないような気もするけれど。


 魔物がこちらを向いた。ヒヒン、といななき大地を蹴る。こちらに尻を向けて後ろ足蹴りをしてくるけれど、カイが盾で防いだ。その隙にレオが側面に回る。


「えーと、魔力を溜めて殴る!」


 手の甲で殴ると、お腹の一部が抉れた。レオは痛がる様子も見せずに殴る蹴るの攻撃を加えていく。シュタインプフェーアトが彼を向いたときには斜め後ろに後退し、突進攻撃や蹴り攻撃を避ける。


 攻撃一辺倒だったレオも、フリートベルクでの経験を経て戦略的な立ち回りができるようになったのだろうか。


 このままでは手柄を全部レオにとられてしまうので、私は杖に魔力を込めた。効くかどうかはわからないけれど、何もせずに終わるつもりはない。


「土の槍」


 とりあえず一番威力が高い突攻撃を試す。槍は相手に当たったけれど、少し穴を作っただけで貫通しなかった。

 ならば鎌に変形させて首を斬る。


「土の鎌」


 全く歯が立たずに折れてしまった。けれど、この程度でへこたれる私ではない。


「土の棘」


 狙うは足元。何かを感じ取ったのか、シュタインプフェーアトが初めて回避行動をとった。避けたところでレオの蹴りが炸裂する。


()の槍」


 レオの攻撃でよろめいたところに、火の槍を飛ばす。あの日の戦いの後、練習を重ねて火を変形させることに成功したのだ。土ほど柔軟ではないけれど、攻撃の幅を広げることができた。

 当たる、と思ったところで不意にシュタインプフェーアトの魔力が増大する。突如石の壁がせり上がり、火の槍を防いだ。


「カイ、これは……」

「シュタインプフェーアトの変異種だ! 本来は上級下位の脅威度だけど、変異種は魔法を使えるから危険度が増す。……ハンスさん、これは試験の魔物ではありませんよね!?」


 カイが他のことに集中できるように、土の壁で相手の攻撃を防ぐ。石の雨が降ってきたときには焦ったけれど、壁を延長させて屋根を作ることで防御した。


「確かに魔法を使う変異種は中級冒険者の手に余るね」

「でしたら……」

「でも、君達の目標は上級冒険者だよ? たとえ相手が事前情報より強くても対処できないと。それに、依頼内容は今君達の目の前にいるシュタインプフェーアトを討伐することであって、他の個体では駄目なのさ。ここで君達が逃亡を選んだら違約金を払うことになるだろうね。当然、貢献度も減少し昇級試験を受けられなくなる」

「……」

「ま、君達のことは僕が守るから安心して。将来有望な若者を死なせはしないよ」


 相手が変異種でも試験は続行。依頼を達成できなければ信頼を失う。

 ならば、討伐するしかない。


「……ソフィ、土と火の合わせ技はできるかい?」

「この日のために練習した。問題ない」

「じゃあ、僕が隙を作るからよろしく。エマは僕達の回復を優先してくれ」

「わかった!」


 カイが右手に槍、左手に盾を構えた。私達の前を行く背中はいつ見ても小さいけれど、とても頼りになることを知っている。


「レオ、補助は僕達がするから思い切り殴ってくれ! あと、合図があったらすぐに離れてほしい」

「おぅ!」


 レオが攻撃的な構えになる。側面から攻撃する彼をシュタインプフェーアトは煩わしげに蹴ろうとするけれど、カイの盾が防ぐ。盾を踏み台にして、レオが高く跳躍して頭に拳をお見舞いした。相手がふらつく。


「レオ、距離をとってくれ! ――今だ、ソフィ!」

「――爆裂」


 カイの合図を聞いて、私は杖を持つ右手と持っていない左手に溜めた魔力を同時に放つ。

 火魔法と土魔法が複雑に入り混じり、シュタインプフェーアトに直撃すると爆発した。胴体にヒビが入ったところをカイが投げた小刀(ナイフ)が貫く。


 魔物の形が崩れ、黄色い魔石だけが残った。

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