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仲間の故郷編第2話 装備の新調

「シュタインプフェーアト、馬型の魔物だね。岩場の多い地で魔物化したから、石に似た性質を持つらしい。つまり並の攻撃はほとんど通さない、と」


 冒険者ギルドの資料に目を通したカイが、今回討伐する魔物の特徴を説明する。


「殴っても効かねーのか?」

「むしろレオが傷つく可能性があるね」

「殴っちゃダメなヤツならつまんねーな」

「その依頼を選んだのはレオでしょ」


 自分の攻撃が効かないとわかった途端にやる気をなくすレオに、エマが突っ込みを入れる。


「ソフィの攻撃は有効かい?」

「戦ったことがないからわからない。けれど、石も土属性の一種。相性がいいとは言い難い」

「火魔法は?」


 カイにもう一つの攻撃手段を問われて、首を傾げた。


「石って燃えるの?」

「うーん、高温で熱すればひび割れることはあるんじゃないかなぁ」

「そこまで高い温度にするのは無理」

「熱々にしてから水で冷やすと壊れやすくなる、とか?」

「……エマ。それ、本当に有効なのかい?」

「わかんない、適当に言ってみただけだよ」


 火が有効なのか結論が出なかったけれど、とりあえずレオが殴っても傷つかないように手袋を買いに行くことにした。

 職人通りを歩いて中級から上級の冒険者向けの武器が売られている店へ向かう。


「こんにち……って、ラット! どうしてここに?」


 店に入ろうとしたら、出てきたヴェラットと鉢合わせた。エマが驚いた声で尋ねる。


「武器の新調と言ったはずだが。ここならば魔法剣も入手できると聞いた。そちらこそ何故ここにいる? 討伐依頼を受けるのではなかったのか?」


 そう言うヴェラットの腰の鞘には新しい剣か収まっていた。柄の部分に緑色の魔石が填まっている。確か風属性の魔石だ。


「あたし達も装備の新調がしたくて。手袋とかも売ってるの?」

「籠手のことか? それならば防御用も攻撃用も両方の性質を併せ持つものもあるぞ」

「すごい、武器に詳しいんだね! よかったらレオの武器を選んでよ! あたし達、これからシュタインプフェーアトに挑む予定なの」


 エマに引っ張られる形でヴェラットが強制入店する。

 抵抗を諦めたのか、従った方が早く解放されると思ったのか、彼は籠手が並ぶ棚に目を向けた。そのうちの一つを手に取る。


「これならば今の戦い方と変わらぬし、強い衝撃を一点に与えれば相手の守りを破壊することができる。魔力を消費する点は要注意だ」

「おっ、なんかカッコいいな! これって試してもいいんか?」

「あぁ、店の練習場ならば構わない」

「よっしゃ!」


 レオはさっそく籠手を填めて藁人形に向き合う。そのまま殴った後で首を傾げた。


「どうやって魔力を流すんだよ?」

「まず魔力を溜める魔石――手の甲に集中しろ。そこに力を込めて魔力が流れていくのを想像するのだ」

「んぐぐ……はあっ! ……こうか?」

「魔石が光っていない。身体全体に流れている魔力に意識を向けろ。一点に集まるよう魔力を移動させるだけだ」


 始めはほとんど変化かなかったけれど、拳を握りしめているうちに自分の中を流れる熱に気づいたようだ。

 魔力が徐々に右手に集まっていき、遂に魔石が赤く光った。


「うわっ、何で黒かったヤツが赤色になるんだよ!?」

「レオの魔力で染まった証だ。その状態で藁人形を殴ってみろ」

「お、おぅ」


 レオが拳を振るう。いつもと同じ力のように見えたけれど、激しい衝撃音がして拳を食らった藁人形は頭と胴体が離れ離れになった。

 明らかに最初より威力が高い。レオも驚いて藁人形と自分の右手を交互に見ている。


「わっ、ほんとにオレがやったんか?」

「今度は手の甲で胴体を殴ってみろ。魔力を放出するのを忘れるな」

「どうやって外に出すんだよ?」

「……見せた方が早いか」


 ヴェラットが抜剣して魔力をこめると、すぐに緑色の魔石が光り輝いた。隣の藁人形に剣を構え、間合いの外側で一振りする。斬撃が風に乗って藁人形を切り裂いた。


「すげーな! でも、なんかわかった気がするぜ!」


 レオが手の甲で藁人形を殴ると、火炎が発生して胴体の大部分を(えぐ)りとった。


「これなら石の馬も倒せる気がするぜ! カイ、早くこれを買ってくれ!」


 レオは上機嫌だけれど、値段を見たカイが青ざめる。


「いや、買うお金がないよ」

「へっ?」

「旅はなにかとお金がかかるし、乗合馬車の護衛報酬もあまり貰えなかったから、購入は諦めてほしい」

「……いや、俺が買おう」


 値段を理由に断念するカイに助け舟を出したのはヴェラットだ。


「いえ、部外者のヴェラットさんに買っていただくわけには……」

「俺も『狼の集い』の一員だ。少し早いが昇級祝いだと思ってくれ」

「……それはなんとしてでも勝たないといけませんね」


 ヴェラットに籠手を購入してもらい、レオは機嫌が良い。この調子で魔物討伐に出向こうとしたけれど、日が傾き始めていたので明日に挑むことにした。


「あたしも攻撃できるようになった方がいいかな?」


 エマも新しい装備が欲しいのかうずうずした様子だけれど、ヴェラットに否定された。


「いや、エマは回復魔法に専念しておけ。攻撃魔法はソフィがいれば十分だ」

「でも……」

「役割分担が肝だ。お前が他の魔法に手をつけて魔力枯渇に陥ったり回復が疎かになったりしたら、パーティー崩壊の危機に立たされる。だから、お前はそのままでよい」

「……わかったよ」

「エマは最低限の自衛を身につけているから問題あるまい」


 結局魔法使いの私達は武器を更新することなく、明日の昇級試験に備えて早めに眠りについた。

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