表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/77

第7話 結成「狼の集い」

「やっと地上に出れた! 外も真っ暗だね」


 蓋を開け地上に戻ったエマは大きく伸びをする。

 建物から僅かに光が漏れているだけで、明かりがほとんどない。空に浮かぶ月だけが辺りを淡く照らしていた。


「冒険者ギルドはこっちだ」

「ルドルフはギルドの場所まで知ってるんだね。物知りだなぁ」

「……むぅ」


 ルドルフを褒めるエマの横で、カイが面白くなさそうに口を尖らせた。

 ルドルフを先頭に、エマ達は路地裏を抜けて大通りに出ようとする。後一歩のところでソフィが頭を押さえた。


「人がいっぱい……」

「大丈夫、ソフィ!?」

「人混みに酔ったのかなぁ」

「ルドルフ、お願い人通りが少ない道を案内して!」

「は? そんなもの知るか。なぜ俺がソイツに合わせなきゃならない」

「ソフィも大切な仲間だから!」

「俺は仲間と認めてないし、大通り以外の道は知らん。路地裏を歩き回って迷子になればいい」

「うっ」


 いつも目指す方向と逆の道を行ってしまうエマにとって、先導役であるルドルフを失うのはなんとしてでも避けなければならない。もう一度ソフィを見ると、彼女はゆっくりとした動作で立ち上がった。


「もう大丈夫」

「……ほんとに?」

「我慢するから捨てないでほしい」

「ソフィ……」


 ソフィが焦げ茶色の瞳で真っ直ぐエマを映す。自分が親に捨てられた可能性が高いことを彼女は気づいているのだろうか。

 エマはソフィの手を両手でぎゅっと握った。目線を合わせて、にこりと笑う。


「うん。二度と手放さないよ、約束する。一緒に行こっか」

「ん」


 暗くなっても人の往来が多い王都にソフィは終始具合が悪そうな顔をしていたが、無事に冒険者ギルドに辿り着いた。エマとルドルフが両開きの扉を開けると、中にいる冒険者達がこちらを見る。


「またしてもガキか」

「どうして命を落としかねない道を選ぶんかねぇ」

「ここは子どもや女が遊びに来る場所じゃねぇよ、お子様方」


 体の大きさを見て馬鹿にする人、憐れむ人、親切そうな言葉を言いながら見下している人。

 誰もが子どもが来る場所ではないと言うなか、ルドルフは迷いのない足取りで受付に向かった。エマ達も周りの視線にびくびくしながら後に続く。


「冒険者登録がしたい」

「……年齢は?」

「俺は九だ」


 背負い袋から身分証を取り出して見せるも、受付の人は首を横に振った。


「冒険者になれるのは十歳になってからだ。十歳になれば命の保証はできんが個別に冒険者登録するのは受け入れる。だから、今は諦めろ」

「あそこにいる奴らは俺達と年が近いように見えるが?」


 ルドルフが指差した先にいたのは、冒険者ギルドに併設された酒場でジュースを飲む三人組だった。特にツインテールの少女はエマとさほど年が変わらないように見える。


「確かに十歳未満も交ざっていたが、リーダーが十歳以上だから許可した。だが、パーティーとして討伐依頼を受けられるのは全員が十歳になってからだ」

「……つまり、俺達でも冒険者登録はできるということか?」


 一歩も譲らないルドルフに、受付の人は目を細めた。


「どうして冒険者に拘るんだ? 戦いに自信があるなら兵士になればいいし、商人や職人など危険の少ない仕事はたくさんあるぞ」

「俺は強くなって倒したい奴がいる。それに、街だか他人(ひと)だかを守るのは性に合わんし、細かい作業も人と接するのも苦手だ」

「あたしは世界中を旅したい! 冒険話を聞くだけじゃ満足できなくて。いつかこの目で海を見るの」


 しっかりとした理由を持つルドルフとエマに対し、他の三人はすぐに答えられなかった。


「僕はエマを守ると決めたから」

「つえー奴といっぱい戦えるんだろ?」

「……成り行き?」

「最後に答えた奴、周りに流されるんじゃなくてしっかり自分の意見を持ってくれ。その年じゃ理解できないかもしれんが」

「自分の意見。……。……」

「何もないのか」

「他に居場所がないからついていく。ただそれだけ」


 全員の理由を聞いた受付は、しばらく目を閉じて黙った後、真剣な眼差しでエマ達を見た。


「わかった。お前達を初級冒険者として受け入れよう」

「初級? 下級が一番下じゃないの?」

「初級は見習いみたいなものだな。受けられる依頼は街の中で達成できるもののみ、十歳になって魔物と戦える力があるとわかったら下級に昇級できる。だが街の依頼は報酬が少ないから、満足のいく食事は摂れないと思った方がいい。それでも冒険者になるか?」


 受付の最終確認に、引き返すなら今のうちと言われたような気がした。それでもエマは視線を逸らさずに頷く。


「なるよ。それがあたしの夢だから」


 他の皆も同意して、冒険者登録してもらう。渡された木の板にはそれぞれの名前が書かれている。


「身分証がない奴も交ざってるって……お貴族様から逃げ出したわけじゃないよな?」

「レオはクノール村の孤児院出身だよ! ……ソフィは知らないけど」

「ま、過去がどうであれその冒険者プレートは街に出入りするための身分証だ。絶対に失くすなよ」

「うん、わかった!」

「最後に一つ」


 そろそろ宿屋を探しに行こうかと考えているところを、受付に止められる。


「お前達のパーティー名を決めてくれ」

「パーティーの名前……どうしよう、考えたことなかった! 他の人はどうやって決めてるの?」


 受付の言葉にエマは頭を抱える。


「皆色々だな。ちなみにさっきの奴らは『鷲の爪』だ」

「生き物の名前かぁ。強そうなのがいいかな?」

「……」


 エマの言葉に何かを考えていたルドルフが顔を上げる。


「『狼の集い』……というのはどうだ?」

「確かに強い印象があるけど、どうして狼なの?」

「俺の名前の由来が狼に関連するのも理由の一つだが、狼は群れで行動する非常に賢い生き物だ。結束力とか知恵とか今の俺達には足りないが、狼のように息の合った連携ができるパーティーになりたい」


 理由を聞いたエマは目を輝かせた。


「いいね! 狼の集いに賛成!」

「オレも! なんか強そうだな!」

「狼のような結束力か……悪くないと思う」

「私も賛成」


 満場一致でパーティー名が確定する。エマ達改め「狼の集い」は受付に向き直った。


「初級冒険者パーティー『狼の集い』、リーダーはルドルフで!」


 こうして、狼の集いの冒険は幕を開けたのだった。

結成「狼の集い」編、これにて完結です。

第二章連載開始は、早くてゴールデンウィークになります。

この後はカクヨムにも掲載しているソフィ以外の仲間の視点で書いた、日常や過去の話を投稿する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ