表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/126

カイ視点 究極の泡魔法

「初めまして、カイと申します」

「海の魔女。名前、忘れた」


 魔の森の南西に広がる海へ向かった僕ことカイ。

 海面から顔を出したのは、感情表現が乏しい少女だ。

 どことなくソフィに似ているけど、森の魔女によると五百年も海の中で生きている魔女らしい。


「森の魔女、話、聞いた。防御魔法、教える。ついてきて」


 海の魔女が大人一人がすっぽり入れそうな大きな泡を飛ばしてきた。それが僕を包み込み、海へと運んでいく。

 そのまま海に飛び込んだ。


「!?」


 思わず口と鼻を押さえたけど、水は入ってこない。

 海の魔女が前方を泳ぎ、周りは魚達。海底近くまで潜っていくと、沈没船が見えてきた。

 海の魔女は迷うことなく船の中を泳ぎ、泡の膜を通過したところで甲板に足をつける。

 僕が入った泡も彼女の後に続き、唐突に破裂した。でも周りに水はなく、呼吸もちゃんとできるようだ。


「ここは……?」

「すみか。あちこち、ある」

「色んなところに似たような住まいがあるんですね」


 海の魔女がこくりと頷く。

 ソフィから口数が少なく何を言いたいのかわからないと聞いたけど、これはソフィ以上に会話が難しいかもしれない。


 海の魔女が手から複数の泡を発生させる。


「泡魔法、最強の盾」

「え?」

「あなた、覚える。仲間、守れる」

「えっと魔法にあまり詳しくないですが……泡魔法って強いんですか?」


 触れたら割れてしまう印象があるから、泡が最強の盾と言われても理解できない。

 僕の疑問に海の魔女は端的に答えた。


「弱い」

「へっ?」

「泡魔法、使う魔女、一人だけ。弱いから」

「……」

「でも、弱い、植物、同じ」

「んん?」

「森の魔女、操る植物、強い。魔法、強さ、術者次第」


 泡魔法も植物魔法も弱いのは同じだけど、使い方や使用者次第では強力な魔法になる。

 海の魔女はそう言いたいのだろうか。


 森の魔女の魔法を見た後だと植物魔法が弱いとは思えないし、先ほどの泡も割れることなく海底まで運んでくれた。

 極めた者が少ないだけで本当は強い魔法かもしれない。


 その頂に魔女でもない僕が辿り着けるのかという疑問が残るけれど、それでもやるしかない。皆も頑張っているのだから。

 初めはエマを守る盾になりたかった。でも、エマが笑顔でいるには仲間達の存在も欠かせないから。

 仲間を守るために、究極の泡魔法を身につけてみせる。


「ご指導のほど、よろしくお願いします」


 薄々予想できていたことだけど、海の魔女は丁寧にわかりやすく説明というのができないようだ。

 だから、言葉を理解するより相手が使っているのを見て学ぶ。


 盾の中心に填まった魔石に魔力を込めて、半透明の薄い膜を広げるのが僕にできる防御魔法だ。

 でも海の魔女が言うには強度が足りていないらしい。


「魔力、均一、流す。なるべく薄く、ムラなく」

「同じ量の魔力を流すコツはありますか?」

「……慣れ?」


 やはり説明を求めては駄目なので、仲間と一緒に修行するときに魔力の扱い方を聞いてみた。


「あたしは白の魔女さんからこれをおすすめされたよ。このちっちゃい魔石を壊すことなく魔力を流すんだって!」


 エマも似たような課題を出されたようで、小さな魔石がたくさん入った袋を僕に手渡した。


「嬉しいけど、エマが修行に使うんじゃないかい?」

「あたしはもうその大きさをクリアしたの! 今はもっと小さな魔石に魔力を込める練習をしててね、だからカイが使っていいよ!」

「ありがとう、エマ」


 沈没船に戻って小さな魔石に魔力を込めては破壊を繰り返していると、背後から「何それ」という声がした。


「少ない魔力を扱う方法を学ぶのに良いらしいです。白の魔女……ソフィの母親から聞きました」

「……知らない」

「なかなか成功しなくて、お手本を見せてもらえませんか?」


 やったことがないみたいだけど、魔女なら誰でもできるのかと一つ手渡してみる。

 パァン、と彼女の指先が触れると同時に破裂した。


「危ない」


 破片が四方八方に飛び散って僕の顔に当たりそうになったけど、海の魔女が咄嗟に張った泡の膜でことなきを得る。


「繊細、魔力操作、いらない、そこまで。あなた、魔法使い、違う」

「僕は魔法使いじゃないからそこまで繊細な魔力操作は覚えなくてもいい……確かに泡の膜は奥の手なので使う機会が少ないですね。盾で守る技術を磨いた方がいいでしょうか?」

「盾、守り、教える、できない。身体、鍛える、雷鳴の魔女」

「雷鳴……? あぁ、レオの修行先ですか」


 魔女らしくない体格が良くて厳しい顔立ちの魔女を思い出す。

 人喰い熊のような見た目をしているけど、レオは無事だろうか。


「僕は身体を鍛えてもご飯をたくさん食べてもあまり筋肉がつかないみたいなので、今の体格でできる守り方法で仲間を守ります。……あ、水の流れを生み出すことはできますか? 前後左右、上下どの方向から攻撃されても対応できるようになりたいです」


 森の魔女も今後戦いが予想される谷の魔女も縦横無尽な攻撃を繰り出すだろう。

 ルドルフ兄さんを目の前で攫われたり、敵の前に立って守っていたつもりなのにエマを拘束されたり。仲間を守れない盾など必要ない。


「わかった。覚悟して」


 海の魔女が生み出した水の塊は真下から襲ってきた。咄嗟に構えた盾ごと僕は飛ばされる。そこに容赦なく迫りくる水。


「泡の膜!」


 盾の魔石に魔力を込めて自分の体を泡で包む。


 待ってて、エマ。僕は今度こそ君を守り抜くから。

 そして、兄さんには仲間の誰も傷つけさせないよ。兄さんが本当にやりたいことじゃないとわかっているから。


 海の底に沈む船の中で、僕は今日も水と格闘する。全てのものから仲間を守る盾になるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ