第23話:黒幕の終焉と世界の再生
瘴気が――
嘘みたいに、消えていった。
崩れかけた神殿の奥から、
黒い霧が引くように消え、
冷たかった空気が少しずつ、
生ぬるい春風に変わっていく。
(……終わったんだ……)
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膝をついていた私を、
レイナがそっと支えてくれた。
「……大丈夫?」
「……うん……多分……」
胸にそっと手を当てる。
そこにはもう、
極薄の装甲すらなかった。
ただ私の肌。
ただ私の鼓動。
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(これが……私……)
羞恥はまだあった。
でも、それだけじゃなかった。
泣きそうなのは、
恥ずかしいからだけじゃなく――
(……ちゃんと、生きてるから……)
胸の奥がまたドクンと鳴いた。
その音が心地よくて、
少しだけ涙が零れた。
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その時、
街の方から人々の声が聞こえた。
「瘴気が……!」
「魔核獣が引いていく!」
「助かったんだ……!」
泣き笑いの声。
崩れた瓦礫の中から、
みんなが少しずつ立ち上がってくる。
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レイナがそっと私の胸に手を置いた。
その指先はいつものように冷たくて、
でもどこまでも優しかった。
「これがあなたの証なのね。
羞恥も、痛みも、快楽も――
……全部、あなたが生きてきた証。」
「……レイナさん……」
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「私はそれが、ずっと羨ましかった。
あなたみたいに全部感じて、
全部抱えて、
それでも立っていられる強さが。」
「……強くなんかないよ……。
私……ずっと、怖くて……恥ずかしくて……」
「ふふ。
じゃあ、一緒に怖がって、一緒に恥ずかしがりましょう。
――これからも、ずっと。」
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また胸が脈打った。
でももう、
それを隠そうとは思わなかった。
私が私でいる証。
これからまた、
恥ずかしくなったり、
泣きそうになったりするだろう。
でもそれでいい。
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「……生きてるから……だよね……」
そっと笑うと、
レイナが優しく微笑み返した。
そして二人で、
ぼろぼろの神殿を後にした。




