第242話 勝利の肯定
「真耶ぁ!」
ルシファーの叫び声が聞こえた。そして、2人は同時に走り出す。剣を握りしめ交わらせる。
「「「……!」」」
2人の剣がぶつかることで衝撃波が生まれ、空気が揺らぐ。だが、2人はそんなことは気にせず何度も何度も剣を交わらせる。激しくぶつかり合うせいなのか、甲高い音は鳴り止まない。
「”真紅……」
「させないよ」
ルシファーの川の流れのように滑らかな剣が真耶の心臓を目掛けて向かってくる。技を発動しようとした瞬間の大振りな一撃を狙われているみたいだ。
「”水禍・漣”」
真耶も対抗して技を変える。波のような揺れる剣がルシファーの攻撃を弾く。そして、静かな波のようにゆっくりで、逆に大きな波のように速く動き緩急をつけた。
「幻覚……?」
ルシファーは自分の目を疑う。なんせ、真耶の体がぶれて見えるのだ。1人しか居ないはずなのに3人に見える。ルシファーは直ぐに自分の脳に羽の短剣を突き刺した。
「戻ったな」
頭の血を抜くことで元に戻したらしい。強引だが有効打ではある。
「だがしかし、もう遅い。この距離では防ぐことも出来ないだろ!”羅刹斬”」
真耶は赤黒いオーラを纏う剣を振り下ろした。速く重たい一撃。その上連撃を放つのが普通なこの攻撃。当たらないはずもないし、当たればかなり致命的だ。
真耶の剣がルシファーの右肩目掛けて進んでいく。ルシファーは咄嗟に体を後退させそれを躱そうとした。しかし、やはり間に合わない。咄嗟に羽を前に出し庇う。
「ぐぁっ!」
やはり切られてしまった。防いだとはいえ羽は傷つけられた。その事実はこの戦いにおいてかなり大きな事実だ。
真耶はこの事実にさらに士気をあげる。そのせいか、連撃のスピードがさらに上がった。赤黒い斬撃が空間を埋めつくしていく。本格的に羅刹斬の効果が現れている。
真耶はニヤリと笑って大きく振り払った。すると、赤黒い斬撃が一気にはじけ、ルシファーにさらに追撃を与える。
「っ!?な……ぜ……!?」
ルシファーは全身を切られ言葉を失う。先程まで攻撃など通用しなかったのに、今は通用してしまう事実に理解が追いつかない。
「分からないか?だろうな。今の俺は1人ではない。失っていった人達が俺に力を与えてくれたからだ」
真耶の言葉にルシファーは怒りの表情を見せる。そして、血管が浮き出るほど拳に力を込めて真耶を見た。
「真耶ぁ!君はいつもそうやって僕の邪魔をするんだ!」
「邪魔をしてるのはそっちだろ?」
真耶はそう言い終わるまもなく攻撃を仕掛ける。ルシファーはそれを迎え撃つ。凄まじい力でぶつかり合うせいで、強い衝撃波が2人を襲う。
真耶はその目で向かってくる剣を見ながら一つ一つの攻撃を確実に当てようとする。流れるような一撃はルシファーの体に幾つも突き刺さる。
ルシファーは少しづつ増える傷に動揺する。先程までとは比べ物にならない真耶の成長ぶりに加えて、何故か攻撃が通用する謎。それがルシファーを精神的に追い込む。
そんなルシファーを真耶は蹴り飛ばした。そして、飛んでいくルシファーに追撃を加える。ルシファーは空中で体勢を整え迎え撃つ。しかし、やはり防ぎ切ることはできない。能力的な面で行けばルシファーの方が圧倒的に強いが、技術的な面で見ると真耶の方が強い。
「”真紅・炎神”」
神速の6連撃がルシファーに襲いかかる。回避不能な攻撃はルシファーにさらに傷をつける。
「何故だ……何故だぁぁぁぁ!”星”は僕に力を与えたはずだ!」
ルシファーはそう叫ぶ。しかし、そんなことは関係ない。真耶はルシファーの右肩に剣を振り下ろす。
「っ!?」
「これで動きは止めたな」
ルシファーはそう言って全身に不思議な魔力を溜め込んだ。
「”星域展開・滅”」
その刹那、ルシファーの体が青い光に覆われる。
「これは……?」
真耶はその異常な光景を見て直ぐに離れようとした。しかし、しっかりくい込んだ剣がルシファーの右肩から抜けない。
「”堕天星・壊滅の光”」
その瞬間、ルシファーから凄まじい光が放たれる。さらに、気が付けばルシファーによってドーム状の空間が作り出されていた。光はルシファーが作り出した空間で反射し真耶を襲う。
「”開け”」
真耶は扉を開いた。しかし、開いた扉は瞬く間に壊される。
「僕を怒らせた結果だ」
そして、光が真耶を襲う。
「っ!?」
しかし、光は1つも当たらなかった。まるで真耶を避けるように別の場所に飛んでいく。
「馬鹿な!」
「まぁ、お前の能力と似たようなものさ。”俺には当たらない。俺は当たることを否定した”からな。”不当の魂”だ」
真耶の口から出た言葉は不可解そのものだった。当たることを否定する。それは、ルシファーの攻撃が全て無力化されるということだ。
「クッ……!」
「相性が悪いなんて考えてるだろ?お前はなんでも肯定出来るが先に否定されてしまえば肯定しても無意味だ。全ては無駄なんだ。お前の存在そのものが無駄なんだ」
真耶はそう言ってエクスカリバーをルシファーの方から無理やり引き抜く。そして、両手で握りしめ振り上げた。
「”エクスカリバー”」
真耶はそう言って剣を振り下ろす。金色のエネルギーが剣を強化し空気をピリつかせる。真耶のその剣は、誰がどう見ても真耶の勝ちを思わせるものだった。
「……フフフ……アハハハハ!君と僕との違いは、力の代償を超越してるかしてないかというところだな!」
ルシファーのその言葉が聞こえる瞬間、金色のオーラは消え去った。
「っ!?な……!?」
「君のその一撃は君の勝ちを示す。それは僕にとって負けだ。でも、僕は勝つ。何をやっても勝つ。それが僕の能力だ。僕は”僕が勝つことを肯定した”。もう君は僕に勝てない」
ルシファーのその言葉は衝撃そのものだ。そして、ルシファーの攻撃が真耶に向かって放たれる。どす黒いエネルギー弾が真耶の心臓に直撃した。
「っ!?」
真耶の体が弾け飛ぶ。心臓部分が大きくえぐられてしまった。そして、強い衝撃波で飛ばされ、ルシファーが作り出した空間さえ壊れてしまった。
「結局僕の能力が1番さ。君が何かをすることは、僕の勝ちを揺るがしてしまう。だから、君は僕に何も出来ない。僕の勝ちは絶対なんだ!」
ルシファーの言葉はその場に大きく響き渡った。
「……」
「僕の勝ちを否定するか?でも、君はその代償を受け切れるかな?君はそれほど力があるのかな?」
「煽りか?」
「違うね。勝利宣言だよ。そして、君の敗北のお知らせだ」
ルシファーは羽の剣を振り上げた。そして、勢いよく振り下ろす。その剣は真っ直ぐ真耶の頭を目掛けて振り下ろされていた。
「っ!?」
ルシファーの剣は真耶の脳天を切り裂いた。当たらない能力をすり抜け真耶の体に当たったのだった。
「僕の……勝ちだ」
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