第243話 アストログラフ
ルシファーは羽の剣を地面に落とす。すると、羽はバラバラになって形を保てなくなった。
「これでおしまいだな」
ルシファーは振り返った。
「……」
その後ろで真耶は立ち上がる。そんな真耶の体は既に再生している。
「っ!?」
ルシファーは咄嗟に振り返った。しかし、時すでに遅し。真耶の剣がルシファーの胸に深々と突き刺さった。
「死んでない……!?」
「死なないよ。否定したから。”不死の魂”」
真耶は剣を引き抜き血を払う。そして、ルシファーの心臓目掛けて手を突き出した。どうやら心臓をえぐり出すつもりのようだ。抉り出して、不死の理由を突き止めでもするのだろうか。真耶はどういう理由があってか心臓を抜き取ろうとした。
しかし、ルシファーは体を転がらせ真耶の手を躱す。そして、直ぐに体を起こして立ち上がる。だが、その手には剣は握られていない。
「煽りか!?自分の方が力が強いって言いたいのか!?」
ルシファーは拳を握りしめ真耶に殴り掛かる。しかし、その拳は当たらない。完璧に真耶の顔のど真ん中に拳が向かったはずなのに、体をすり抜けてしまう。
「”不明の魂”」
その瞬間、真耶の姿が消えた。目の前からスっといなくなり、気配すらもなくなる。触れることはおろか、見ることさえできない。どこにいるのか、必死に探していると、突然気配が現れる。それも、自分の真後ろに。ちょっとでも後ろに下がればぶつかってしまうほど近くの真後ろに……。
「何故!?」
「”冥剣・魁皇詩”」
青く揺らぐ光の剣がルシファーに襲いかかる。真耶の剣から出てくるのは、まるで歌を演奏するような譜面のような波動だ。それが、ルシファーの体をすり抜け内蔵を揺らしていく。
「……!」
ルシファーはその衝撃で体が硬直する。そして、真耶はその隙を逃さない。心臓目掛けて手を突き出す。
「っ!?」
しかし、その手は届かなかった。謎の力によって拒まれ真耶の腕はぐちゃぐちゃに潰される。思わず真耶は手を引っ込めた。
「君が僕の考えを読むように、僕も君の考えを読んでいる。君が僕の心臓を狙うのがわかっているなら、対処は簡単だろ?」
ルシファーはそう言って振り返った。どうやら動けないのもフリをしていただけらしい。
「君はこれまで攻撃が通用しなかったのに、ここに来ていきなり有効打となった。それは何故か?君の中に僕と同じ力が流れているからだ。それも、極小量の。アーサーから力を貰った時一緒に貰ったのだろう?だから、同じ力どうし攻撃が有効になったんだ」
ルシファーはそう説明した。そして、羽を大きく広げてもう一度剣を取り出す。すると、真っ白な羽がたくさん舞い落ちる。地面を白く染め上げるほど沢山落ちる。
「君の羽は……赤いんだよ」
ルシファーの声が聞こえた。そして、真耶の体に3本ほど羽が突き刺さる。羽は、突き刺さるなり即座に膨張し大爆発した。
「……」
ルシファーは無言で笑みを浮かべる。
「……?」
羽が空から舞い落ちてきた。しかし、その頭上には羽を落とすような生物はいないし道具もない。鳥がどこかに飛んでいるという訳でもない。
「っ!?」
その羽は突如真耶を襲う。半壊した真耶の体にグサグサ突き刺さる。そして、同じように爆発した。
「怖いな」
ルシファーは思わずつぶやく。そして、目の前にいる男の姿を確認した。その男はぐちゃぐちゃな体を無理やり再生させている。
「……」
真耶は無言で体を完全に再生させる。
「不死身の体……でも痛みはあるんだろ?ヒトというのは本当に弱い生き物だよな?」
「そうでもないさ。ヒトだから、出来ることだってある」
「……君はまだ知らないだけだ。ヒトのままでは、出来ないこともあるということを。”堕天星・思懐”」
ルシファーは手を前に突き出す。すると、そこから不穏な光を放つ魔力の波が襲いかかってきた。その光は一瞬で真耶の脳を飲み込む。そして、思考を破壊する。
「っ!?」
(脳を……思考を壊す気か……!?だったら……!)
真耶はその目に邪眼を浮かべる。そして、唇を噛み切り血を流しながらルシファー飲めの中を見つめた。
「”邪眼””思念瞳開眼”」
真耶の緑の目がルシファーの脳を揺らす。目を離そうとするのに思わず惹き付けられてしまう魅力的な目はじわじわとルシファーの体を侵食し始めた。
どれだけ頭の中で目をそらそうと考えても、体は正直だ。全くと言っていいほど離れられない。そして、次第に思考も崩れていく。まるで乗っ取られるかのように体が動かなくなっていく。
「な……ぜ……?」
ルシファーは思わず言葉に出した。そして、目の前の自分と同じ能力の真耶に感動すら覚える。
「悪いな。俺も得意なんだそういうのは」
真耶はそう言って自分にもかけた。すると、壊されていく思考が元に戻る。真耶は元に戻った頭でルシファーの前に立ち剣を構えた。
「やっと終わりだ。この物語の終止符を打つ」
真耶は剣を振り下ろす。ルシファーはそれを見て咄嗟に唇を噛んだ。
「”堕天星・臨壊”」
ルシファーの目が光る。そして、ルシファーの体を中心にドーム状のエネルギーが放たれた。そのエネルギーは真耶の体を通過した瞬間、凄まじい波動を放つ。真耶はその波動に押し返され吹き飛ばされた。
「っ!?まだこいつこんな力が……」
「まだ……?僕はずっと本気を出してない。僕はずっと弱いままだった。僕はやっと本気を出すんだ!君みたいなやつを殺すためにね!”星詠の王”」
ルシファーの言葉が終わると共に体が青く変色した。先程までとは比べ物にならない程の魔力が体に溜まっていく。そして、明るい青の光が体を埋めつくした。その姿は、まるで銀河をそのまま体に移したようだ。
「君にここまで本気を出さなきゃならない自分に腹が立つよ。こうなったのはあの時君を殺しきれなかったから。だから、今後の未来のために君はここで死んでもらう」
「全く同じセリフを言おうと思ってた」
「そうか。でも君じゃ僕に勝てない」
「それはどうかな?”冥王状態”」
真耶の体が淡い紫色の光で包まれる。
「それは、弱い。それは僕に到底叶わない。それは君を死なせる技だ」
ルシファーはそう言って腕を振り払った。すると、真耶の真横を凄まじい斬撃が通っていく。斬撃から放たれる風が真耶の服や髪をしならせた。
「これが僕の力。技ではない。ただの力だ」
「自慢か?」
「そう思ってるなら、君は死ぬ」
「それ何回も聞いたわ。いつ俺は死ぬんだよ」
真耶はそう言って笑う。そして、手のひらを前に突き出し冥界のエネルギーを集中させた。すると、淡い光の球体が現れる。
「……」
ルシファーはそれを見た瞬間に腕を真耶に向けて振り払った。すると、凄まじい斬撃が真耶の体に直撃する。
「っ!?」
しかし、斬撃はすり抜けた。まるで真耶の体が無くなったかのようにすり抜けてどこかに行ってしまった。当然真耶も球体も無事だ。
「不死の力ではない……。これはまた別の……」
ルシファーがそう呟いている時、真耶はサッとルシファーの懐に潜り込んだ。そして、球体をルシファーの体にぶつける。そして自分は直ぐにその場から離れる。
「”天冥導”」
その刹那、球体が一気に膨張した。
「っ!?」
ルシファーは咄嗟に避けるが、体の半分が中に埋まる。そして、その体の半分は無くなってしまった。
「強制的に冥導に送る技。当たれば俺の勝ちってわけだな」
真耶はそう言って落ち着いて笑みを浮かべる。そして、先程とおなじ球体を7つほど作り、体の周りに浮かせた。
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