第5話 絶望の宴と、闇に射す光
~仮面の下の悲しみ~
月明かりも届かぬ闇の城の奥深く。
桃子は気配を殺し、忍び足で長い回廊を進んでいた。
古びた壁に浮かぶ赤黒い紋様が、まるで彼女の行く先を見張るように脈打っている。
(鉄也さん…今度こそ、貴方の心に届いてみせます…!)
奥から漏れ聞こえる音楽と笑い声。
導かれるように大広間の重い扉を細く開けると――
そこに信じられない光景が広がっていた。
豪奢な宴の中央、一段高い壇上。
黒い衣装に身を包んだ鉄也が、だらしなくソファにもたれている。
その周りには、彼と同じ赤い瞳と紋様を持つ美女たちが寄り添い、媚びるように彼の胸に腕を回し、酒を口元に運んでいた。
「総帥様~♡」
「もっと楽しみましょう?」
女たちの甘い声が響き、鉄也は無造作に彼女たちを抱き寄せ、高笑いを上げる。
「はっ!そうだ!楽しませてもらうぞ!この世に正義も愛も希望もない!あるのは快楽だけだ!!」
まるで自分自身を捨てるように、彼は次々と杯を空け、女たちの誘いに身を任せていく。
だが――
桃子の目には見えた。
(嘘…こんなの鉄也さんじゃない…!)
彼の口元は笑っていても、仮面の隙間から覗く赤い瞳の奥は、凍てつくように悲しげで、どこまでも絶望に沈んでいた。
まるで自分を傷つけるかのように、やけっぱちで快楽に溺れようとしているのが痛いほど伝わってきた。
「鉄也さん!!」
桃子はもう我慢できず、扉を開け放って駆け出した!
「何者だ!?」
警備の闇の戦士たちが剣を抜くが、彼女は臆することなく真っ直ぐ壇上へと進む。
鉄也ははっと顔を上げ、やがて嘲笑うような冷たい表情を浮かべた。
「ほう?よくもこんな所まで…正義の味方、ピンク様か。
見ての通り、俺は今最高に楽しんでいるところだ。
お前もこっちに来て、一緒に快楽に溺れてみるか?」
彼はわざと女の一人を抱き寄せ、情事の最中であるかのような素振りを見せる。
「俺はもう昔の俺じゃない。人間でもない。
愛なんてくだらない幻想だと知ったんだ!
さあ、見せてやろう…闇の総帥としてのこの姿をな!」
だが桃子は怯まなかった。
涙をこらえ、真っ直ぐに彼の瞳を見つめ返す。
「違います…!貴方は今、自分を痛めつけているだけ!
瞳が…貴方の心が、悲しくて泣いているのがわかります!
鉄也さん…貴方は私を守って命を懸けてくれた…その優しさまで捨てないでください…!」
彼女の言葉に、鉄也の体がわずかに震えた。
高笑いがぴたりと止み、周囲の笑い声も凍りつく。
抱いていた女を無造作に突き放し、彼はゆっくりと立ち上がる。
赤い瞳が妖しく、そして切なく彼女を射抜く――
果たして彼の心は、この一途な想いに応えるのか…?




