第1話 古の記憶と、憎しみの真実
玉座に腰を下ろしたまま、混乱する俺・黒金鉄也の頭の中に、突如として激流のように押し寄せてくる見知らぬ記憶――
血のにおい、燃える故郷、絶望の叫び…そして、底知れぬ憎しみが渦巻いていた。
「……頭が…!」
俺はこめかみを押さえ、うめくように声を漏らす。
すると、最も高位の従者がゆっくりと顔を上げ、遠い眼差しで語り始めた。
その声は、まるで千年の時を超えて響くかのように重く、深い――
「ブラック様…その記憶こそが、我らの真の姿…そしてこの帝国が生まれた理由です…。
お聞きください…もともと我らも、貴方と同じただの人間だったのです…」
「……何?」
俺は息を呑み、耳を疑った。
従者は続ける。
「古の時代――我らの祖先も、平和に畑を耕し、家族と笑い合う何の変哲もない民でした。
だが、善良な顔をした権力者たちが現れたのです。
自らの保身と欲望のために、我らを陥れ…ありもしない邪悪な罪をでっち上げた…。
次々と家は焼かれ、男は虐殺され、女は辱められ、無垢な子供たちまで容赦なく踏みにじられた…。
我らの部族を…我が妻を…我が子を…愛する家族を…皆、残虐に殺し尽くしたのです!」
その言葉に、流れ込む記憶が鮮明に疼く。
絶望の淵で、祖先であるこの身体の元の主が、天に向かって叫んだ光景が浮かぶ――
「『助けてくれ…』と、我は必死に祈った…。
だが…神など、どこにも居なかった!!
ならばもう何でもよかった…!
邪悪な者でも、悪魔でも構わない…我に復讐の力を与えてくれるなら、この身も命も魂も、全てくれてやる!!――とな!」
従者の声が高まり、大広間の空気が震え上がる。
「その瞬間!空を引き裂いて一筋の閃光が走り、巨大な隕石が大地に落ちたのです!
近づいてみると、その隕石の中心から、微かに脈打つ未知なる生命の核が輝いていました。
その核は、絶望と憎しみに満ちて死にゆく我らの身体に自ら入り込み…
寄生し、融合し、新たな命を与えたのです!
こうして我らは不死身の闇の民となり、力を得て復讐を誓った…。
正義を騙る者どもへの、永遠の闘いが始まったのです…」
記憶の奔流が収まり、俺は玉座にもたれたまま、言葉もなく天を仰いだ。
――悪と決めつけられていたこの帝国に、こんな悲痛な真実が隠されていたなんて…。
正義の戦隊ブラックとして育った俺の常識が、今、音を立てて崩れ落ちていく。
「さあ我らが総帥…ブラック様よ。
貴方こそが、この宿命を受け継ぐ者…
さあ、正義を騙る連中へ、復讐の裁きを下してください…!」
従者たちが一斉に拳を掲げ、闇の帝国全体が俺の決意を待っていた――




