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 ラザフォードへ行ってフェリシテが美しくなった、多少いざこざはあったが結果的に幸せだったのだろうと、ヒューイットへの評価が上がっていくのがカシアンには面白くない。


 しかも、社交界の華で才能豊かと誉めそやされていたエルヴィラとの結婚生活は思っていたのと違っていた。


 領地経営をノアゼット伯爵とエルヴィラに任せて自分は近衛騎士のままでいられると思っていた。

 実際、フェリシテと婚約している時はそういう約束だったのだが、ノアゼット領の領地経営は実際にはフェリシテがほとんどを行っており、伯爵とエルヴィラは近年視察に行った事が無いと判明し唖然とした。

 カシアンの両親や跡継ぎの兄が、熱心に領地経営の取り組んでいるのを見て来たカシアンには信じがたい話だったのだ。


 自分は領地経営に関わっていなかったが、領地の状態がどうなっているかはよく話題になったので聞き知っていた。

 オーストルジュ領は商業が盛んな為、王都で流行している物や流行りそうな物を両親と話し合う事もある。

 自領の発展で領民を豊かにし、盤石な経済を作る事が当たり前だと教わってきただけに、エルヴィラと伯爵のいい加減な態度に思わず眉を顰めてしまった。

 しかも全く知らなかったグランデールの水害の話などは王宮第二騎士団の騎士から直接聞かされ、ノアゼットの対応を批判されて酷く恥をかいた。


 おまけに、エルヴィラの浪費癖を知って頭を抱えている。

 よく考えれば毎回違うものを着けている豪華なドレスやアクセサリー類は、タダで湧いて出てくるものではない。

 子供の養育費を交えた予算を組みたいのだが、欲しいものは手に入れないと気が済まないエルヴィラの服飾品の購入でいつも予算オーバーしており、彼女の我儘がこんなに酷いと思わなかったカシアンはほとほと困り果てていた。


 パッとしないフェリシテと美しいエルヴィラを交換して順風満帆な結婚生活だ!と浮かれていたカシアンの目論見は外れまくり、仕事をしないエルヴィラと伯爵の肩代わりをしなければならず、ノアゼット家の補佐官や家令に泣きつかれて休日返上で領民の嘆願書や重要書類に目を通している。

 毎日疲れてへとへとだ。


 こんな事ならフェリシテと結婚すれば良かった……これではいつか過労で倒れてしまう。


 そんな危機感を抱いていたカシアンは、フェリシテ達がゲインズ領に居るのを知り疑問に思った後、すぐに「そう言えば」と思い出した。

 ノアゼット伯爵がラザフォード領と契約した安価な小麦を、契約違反を犯してコレラ被災地域の支援品にしてしまったのだった。

 恐らく安い小麦を求めて、治安の悪いゲインズ領と交渉せざるを得なかったのだろう。


 ノアゼット伯爵の愛情が大きくエルヴィラに傾いているのは知っていたが、間近で見たフェリシテへの態度は流石に同情せざるを得なかった。

 伯爵が小麦欲しさにフェリシテが頭を下げて来るだろうと悦に入っているのを知っていたので、ゲインズ領と取引していると知ったら妨害しそうだ。カシアンは領境の通行時にフェリシテが通過したことをノアゼット伯爵に知られない様、こっそり各所に手を回しておく事にした。


  …………フェリシテも苦労しているんだろうな…………

  

  まだ結婚して一年足らずだが、長い間フェリシテと会っていない気がする。

  カシアンは自分が裏切ったのを綺麗に忘れてフェリシテを懐かしんだ。



 ――そして同時に、フェリシテが領境の検問所にやって来たら自分に知らせるよう、手配したのだった。

 


 


 

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