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128. 再会

 「皆様のお陰でゲインズ領は持ち直せそうです。ありがとうございます……!」

 「こちらこそ、良い取引が出来て嬉しく思います。ゲインズ領のこれからのご発展をお祈りしております」


 涙にむせぶエルデンを激励しつつ、フェリシテとエリオットはエルデンと固く握手を結んだ後、手を振った。


 まだまだ面白いものが発掘できそうなゲインズ領だが、流石に一週間も滞在するとは思わなかった。

 ヒューイットから「いつ戻って来るのか?」と問う手紙が届いたため、急いでフェリシテ達は食糧輸入交渉をして帰領する事にしたのだ。


 炭鉱が手に入ったゲインズ領はお祭りムードとなり、食糧取引はラザフォードの希望通りにスムーズに契約がまとまってエリオットも上機嫌。


 おまけに、これまでの倍の収穫量が採れる小麦の種を特別に分けてもらえる事になった。

 同じ品種なのに収量が倍になる小麦が手に入り、来年からは栽培面積を無理に増やさなくともラザフォード産小麦の収穫量が倍になる。

 栽培方法や肥料も従来通りでいいのに、売り上げが倍になる。

 きっとローゼル商会も喜んでくれるに違いない。


 エルデンを先頭にゲインズ領の大勢の官吏や大臣達に見送られ、慌ただしく家路についたフェリシテ一行は馬車の中で戦利品を持ち寄って熱弁していた。


「ラザフォードにもランタンを普及させましょう。蜜蝋や獣脂ロウソク以外に、ゲインズ領では大豆ロウソクを使っていると聞きました。ランタンがあれば夜間にもいろいろと活動ができるようになりますよ。それと綿とリネンを大量購入できたので、布団を安価で販売できる補助を行いましょう。領民の家を訪問すると、使い込まれて古びた布団をよく目にして気になっていたんですよ」


 フェリシテの提案に、エリオットが呆れた眼差しを向ける。


「――こっそり個人で大量取引しましたね?止める理由はありませんし、止めても大量のランタンと綿とリネンの在庫を抱えるだけになるのでお好きになさって下さい。あなたは何かしらしでかすので、独自に行動されるより監視の目の届くところに居て頂いた方がましですからね」


「奥様は使用人のみんなにも毛布を新しくして下さったんですよ。布団は高いのでなかなか買えないんです。お安く手に入るなら、皆喜びますよ……!」


 ロビンの無邪気な笑顔が眩しい。

 この旅で年齢にそぐわない知識を身に着けたが、ロビンがエリオットの様にならなかったのは喜ばしい事だ。


「メロンとスイカも時期が来たら輸入しましょうね」


 メロンが大層気に入った様子のロビンが嬉しそうに頷き、フェリシテとエリオットがほっこりする。


「それにしても、掘り出し物のガラス工芸を発見できた事は驚愕でした」


 エリオットが大切そうに隣に置いた木箱に触れる。


 まさかパラス王国の名品のガラス製品が、ゲインズ領で手に入るとは思わなかった。

 脱税犯捕縛の合間を縫ってガラス職人の工房へ直接出向き、フェリシテとエリオットでグラスやゴブレット、皿、アクセサリー、香水瓶を購入した。


 ガラスの表面にレース模様が彫られたものや、金とエナメルで絵付けされたものなど、どれも芸術品としか言いようがないのに安価で購入できてしまった。

 フェリシテは来客用にグラスとゴブレットのセットと使用人皆のお土産にガラスアクセサリーを入手したくらいだが、エリオットはヒューイットと同僚と実家にグラスとゴブレット、皿のセット、香水瓶を。使用人への土産にアクセサリーをと、職人が作った在庫をほぼ買い占める勢いで購入した。

 さすが侯爵家のお坊ちゃまである。


「まだパラス王国の模様をモチーフにしているので大々的にゲインズ領の名品として売り出せはしないでしょうが、ゲインズ領で独自の進化を遂げれば将来的にゲインズ領の特産品になるかもしれないですね」


 フェリシテが言うと、エリオットが深く同意する。


「ゲインズ領でパラス王国と同等の品が安く手に入るとなると、ブランドイメージが崩れますからね……どうにかしてオリジナル性を持たせて別ブランドとして売り出していただきたい」


 品質も良く、高度な技術が使われているのに、ゲインズ領では安く売り過ぎている。

 このままでは問題だらけなので、エリオットがゲインズ領の名産品とするべく、職人とエルデンに商売のアドバイスをしてきた。


「パラス王国では神秘的なダマスク(オリエンタルな花模様)やアラベスク模様(蔦模様)が多いですが、ゲインズ領では華やかなボタニカル模様(西洋的な花模様)のモチーフでのブランド化を勧めてきました。パラス王国の料理とヴェルファイン王国の料理は全く違うので、この国の料理に合うようなデザインを施せば、品質や彫りの技術の高さから人気が出て爆発的に売れるはずです」


「ああ、そうするとローゼル商会にお知らせしておいた方が良いかもしれませんね」


 ルマティが喜んで駆けつけてくる姿が目に浮かぶ。

 彼の手に掛かれば、海外販売も容易になる事だろう。




  ――――今後の展望に話題が尽きずに話し合っていたフェリシテとエリオットが、ゲインズ領を抜けノアゼット領を通り過ぎ、いよいよラザフォード領に入る検問所に差し掛かった時である。


 検問を受ける長蛇の列に並んでいた馬車の扉が突然警備兵によって叩かれ、怪訝に思いつつ開けたフェリシテの前に意外な人物が顔を見せた。


 「…………カシアン・オーストルジュ…………⁈」


 何故、と唖然としたフェリシテへ親し気に微笑みながら、カシアンは懐かしそうに目を細めた。

 


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