二学期と特別実習 1
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リッチーのお店で精霊に関する何かしらの情報が得られないかと期待したんだけど、ウルリッヒ様案件でそれどころではなく、結局手掛かりが何もないまま新学期がはじまった。
ウルリッヒ様は無事編入試験をパスして、アレクサンダー様と同じ四学年に在籍することとなった。
社交界を騒がせているグレックヒェン公爵家の隠し子の編入に、学園の生徒たちはみんな興味津々だけど、アレクサンダー様がウルリッヒ様と共に行動しているので表立って失礼な言葉を浴びせる人はいない。
……アレクサンダー様はナルツィッセ公爵と相談して、結局ウルリッヒ様の庇護をすることに決めたみたいだからね。
アレクダンサー様という強力な盾。
加えて、ウルリッヒ様のものすごく整った顔立ち。
社交界の醜聞よりも、美形二人の組み合わせに女生徒たちが大はしゃぎしているとかで、ヴィルマがどこからか仕入れてきた情報によれば、ウルリッヒ様は周りに邪険にされてはいないみたい。
むしろ、グレックヒェン公爵を継ぐかもしれない新たな美形男子の登場に、女生徒たちは浮足立っていて、積極的にウルリッヒ様に関わろうとしているのだとか。
ウルリッヒ様は物腰穏やかなタイプで、顔立ちも優しそうだから、話しかけやすいと言うのもあるのだろう。
もっと言えば、ウルリッヒ様を出汁にアレクサンダー様と関わろうとする子もいるみたいで、四学年は現在、その二人を中心に大盛り上がりだとか。
……っていうかヴィルマ、あんた、まさか学園内で諜報活動とかしてないでしょうね。びっくりするほど情報通じゃないの。
わたしは学年が違うので、二人の情報はほぼ入らないというのに、どうして侍女のあんたがわたし以上の情報を持っているのよ。
「お嬢様、今日は小テストの結果が張り出されるそうですよ」
「知ってるわよそんなこと。忘れようとしていたんだからいちいち言わないで……」
言わなくてもわかるかもしれないけど、学園がはじまってすぐにあった小テストは散々だった。
今日はその結果が張り出される日だけど、悪いとわかっている結果なんて見たくない。
げんなりしながら鞄を持って寮の部屋を出る。
ひらひらとクッキーを食べながらハイライドが手を振っているのが見えたけど、手を振り返す元気もなかった。
……どうか、お兄様が二学年の小テストの結果を見に来ませんように!
お兄様は最終学年の五年生。
卒業研究もあるから、二学期は特にお忙しいはずだ。わたしの成績なんかに構っている暇はない。そのはず。そう思いたい!
だけど……あの人、チートだから。
卒業研究もさらっとスマートに終わらせて、わたしの成績の監視に来ないとも限らない。
そして悲しいことに、ニコラウス先生の週に二回の補修は二学期も継続である。
……っていうか、ニコラウス先生、ハイライドの存在を知ってから目的が変わったのよね。補習のときにハイライドへの質問をまとめた紙を渡されるのよ。
もしかして、もうわたし、補習を受けなくてもいいレベルに達しているのにニコラウス先生がハイライドにいろいろ質問したいがために補習が継続されているんじゃないかしら。
な~んてね。
自分の学力の進歩が亀の歩みだと言うのはわかっているから、補習はまだ必要なレベルでしょうけども!
とぼとぼと寮から校舎に向かって歩いていると、途中でヴォルフラムと合流した。
ヴォルフラムにはもう寮まで迎えに来なくていいのよって言ってあるんだけど、寮を出てしばらく歩いたところで待っていることが多い。
いつも偶然を装っているみたいだけど、さすがにわざわざ待ってくれているのは気づいていますよ。
「おはよう、ヴォルフラム」
「ああ、おはよう。先に小テストの結果を見に行くか?」
行きたくないけど、行かなきゃダメですかね。
きっとヴォルフラムは、学年でもトップの成績なんだろうなあ。その頭脳の十分の一でもいいから分けてほしいわ。
靴を履き替えて、小テストが張り出してある、二学年の教室が並ぶ階の廊下の一角へ向かう。
……ヴォルフラムは……うん、すぐに発見出来るわ。学年二位ですか。って、二位でも悔しいんですね。
ヴォルフラムは二位のところの自分の名前を見て、悔しそうに「くっ」とうめいていた。
わたしがもし二位だったら飛び上がって叫んで小躍りするわよ。いいじゃないの、二位。わたしなんて……ああ。
必死に自分の名前を探したわたしは顔を背けて逃げたくなった。
思いっきり下の方。
最下位じゃないだけましなのか……いや、どんぐりの背比べもいいところね。
ヴォルフラムは、がっくりと肩を落とすわたしの肩を慰めるように叩いてくれる。
「ま、まあ、今年の夏はあれだ。君は忙しかったからな、ええっと……」
新婚旅行でバカンスに行っていたあれを、忙しいと称していいものか。
……はっきり言ってくださっていいですよ。お前、遊び惚けていたから当然だよなって。
わたしと同じように旅行に行っていたお兄様は、けれどもきっと学年トップを維持しているに違いない。チートめ、くそぅ。
「しかし、逆にこれだけ順位が離れたら案外特別実習で同じ班になるかもな。総合力に開きがないように組まれるから」
「特別実習?」
わたしが首をひねると、ヴォルフラムが逆に「え?」と目を丸くした。
「マリア、君、二学期の行事表に目を通していないのか? 二学期がはじまってすぐ、二年生は特別実習で魔物狩りがあるぞ」
「ええっ⁉」
「自己防衛能力を鍛える実習だ。五人から六人くらいの班に分かれて、学園が保有する森で魔物討伐がある」
……そんなんゲームではなかったわよっ!
って、ああ……そうよね。ゲームがはじまるのは来年の春だもの。ゲームに登場しなくても仕方がないわね。
学園の行事には二つあって、毎年恒例で行われるものと、その年だけに行われるものがある。
おそらく特別実習は今回が初……いや?
……うーん、何か忘れているような?
思い出せないわね。
ってことは、きっとたいしたことじゃないのね!
わたしが何かを忘れるのはいつものことだし、考えたところで思い出せないだろうから諦めよう。
今はそれどころじゃないし。
「魔物狩りって、わたし、ファイアボールとストーンブレットしか使えないんだけど⁉」
アクアラングも覚えたけど、あれは攻撃魔法じゃない。ライトもしかり。というかライトなんて使ったら素質持ちなのがばれるので絶対に人前じゃ使えない。そもそも魔法討伐にハイライドはついてこないでしょうし。
「だから、総合力が同じくらいになるように班分けされるんだってば。今回の小テストと一学期の実技成績を基準に班分けするようだから、ええっと何というか……成績があまりよくない君と、成績がそこそこいい俺は、同じ班になる可能性が高い」
はっきり言っていいわよ、おバカだって。
そして、学年二位で悔しがるようなあなたは「そこそこ」じゃなくて、とっても成績がいいのよ。
……でも、ヴォルフラムと一緒なら安心ね。というかヴォルフラムと一緒の班でないとまずいわ。だってわたし、友達がいないんだもの‼
班の中でぼっちになるとか嫌すぎる。
神様仏様先生様、ヴォルフラムと同じ班にしてください~‼
必死に心の中で神様たちに祈るわたしをしり目に、ヴォルフラムは再び小テストの成績表に視線を向けて、ぽつりと言った。
「それにしてもマリア、百点満点中十二点はまずいと思うぞ。五十点満点じゃないんだから」
お願い声に出して言わないで‼
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