リッチーと新しい従業員 4
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ええっと、話を整理すると?
「ウルリッヒ……いえ、ウルリッヒ様は、孤児院で暮らしていたから今まで学園には通っていなかったけど、頭がいいから編入試験を受けての途中編入が可能みたい、と。魔法も上級まで使えるけど、ほぼ独学で学んでいたから学園できちんと学び直した方がよくって、だから学園に編入させたい。これはグレックヒェン公爵もお望み……ってことでいいのね?」
「そうそうマリアちゃん! 理解してくれて嬉しいわ~」
いえ、理解したんじゃなくて、ごちゃごちゃしてわかりにくかったリッチーの説明を何とかまとめただけですよ?
リッチーの説明は要所要所にリッチーの主観が入って整理しないとわかりにくいんだもん!
……っていうか、ウルリッヒ様すごいわね。独学で上級魔法って……。まあ、ヒルデベルトも独学で魔法を習得していたけど、スペック高すぎよ。高杉君だわ!
アレクサンダー様も、これには言葉を失っている。
アレクサンダー様ももちろん上級魔法まで使えるけれど、彼の場合は幼いころからの英才教育の結果でもあるのよね。だから独学と聞いてショックを受けているみたい。
……そんなことを言ったら幼いころから家庭教師が付けられていたわたしはどうなるのかしらって話よね。優秀な家庭教師を付けられていてなおこれよ。まあ、家庭教師に我儘言って一緒に遊んでいたんだから、当然の帰結ともいえるけど。
「ざっと学力を測ってみたけど、アレクちゃんと同じ学年に編入できそうなのよ。ほら、ウルちゃん、アレクちゃんと同じ年でしょ?」
「そう言えばラインハルト・グレックヒェンより一つ上でしたね、彼は」
アレクサンダー様は十二月のお誕生日が来たら十九歳。
ウルリッヒ様は八月が誕生日だから今十九歳。
学園に通っていたら同学年なのよね~。
「ウルちゃんの立場的に、一人で学園に放り込むのは酷じゃない? 悪い意味で注目の的になると思うのよ~。だから~、ウルちゃんを守ってくれる人が必要なわけ。その点アレクちゃんならばっちりでしょ?」
無事編入試験をパスすればアレクサンダー様と同じ四学年に在籍することになるからね。
アレクサンダー様の目が光っていたら、さすがに陰口なんて叩けないでしょうよ。リッチーは突拍子もないことを言うけど、アレクサンダー様以上に頼れる人はいないと思うし、ウルリッヒ様を守るという点では最高の選択肢よねえ。
アレクサンダー様の心情はおいといての話だけど。
「フォルクちゃんとしても、ウルちゃんにきちんと貴族として教育を受けさせてあげたいって言っているの。一学年からの編入だと在籍期間も長くてウルちゃんの負担が大きいけど、四学年から編入可能なら実質一年半だもの。あたしも、フォルクちゃんの考えに賛成なのよぉ。このままもしウルちゃんが貴族の中で生きていくことを選択したなら、絶対に学園は卒業しておいた方がいいわ。特に男の子はね」
そうね。貴族女性は在学中に結婚して退学を選択する子も多い。結婚してすぐに退学しなくても、在学中に子供ができることもあるし、そうなったら必然的に退学せざるを得ない。
……妊娠中に魔法を使うのは、あまり推奨されていないからね。
学園では魔法の授業があるけれど、妊娠中に魔法を使うと流産しやすくなると言われているのよね。本当かどうかは実験したわけじゃないけど、可能性があるなら安全を取るべきじゃない?
ということで、貴族令嬢が学園を途中でやめることには貴族社会も暗黙の了解と言うか、まあ仕方がないことだよねって言う扱いなんだけど、男性の場合はそうじゃないのよねえ。
貴族男性は学園を卒業するのが一つのステータス。というか、当然のことだという風潮があるから、学園を出ていないとなると「わけあり」とみなされる。
ウルリッヒ様がわけありなのは間違いないけど、公爵家を継ぐ継がないに関係なく、彼が貴族社会で生きていくなら、卒業しておいた方がいい。
アレクサンダー様もそれがわかっているから難しい顔だ。
自分が巻き込まれるのは納得いかないが、かといってリッチーが出してきた案がウルリッヒ様にとってはベストであると理解しているのだろう。
アレクサンダー様、優しいからね。
「叔父上が言いたいことはわかりました。ですが、よく考えてください。今この状況で私がウルリッヒの学園での盾になれば、ラインハルトを重用しているルーカス殿下は少なからずいい気はしないでしょうね。私の判断だけではどうにもなりませんよ。父上に判断を仰がなくては。これは、ナルツィッセ公爵家が今後どちらの殿下に味方するのかと言う問題にまで発展する可能性があります。最悪王位継承問題が絡んできますよ」
「もう! なんでアレクちゃんは話を複雑にするのかしら? 困っている子を助ける。それでいいじゃないのぉ」
「そう単純な問題じゃないんです。叔父上だって、今は貴族社会と距離を置いていますが、かつてそのど真ん中で生活していたのですからわかるでしょう?」
「……あ~ぁ、やあねえ、貴族って今も昔も変わらないわ~」
「それほど昔でもないでしょうに」
アレクサンダー様がやれやれと嘆息する。
「ですので、アラトルソワ家を巻き込まないように。ナルツィッセ公爵家とアラトルソワ公爵家が結託してルーカス殿下を追い落とそうとしているなんて勘違いされても困ります」
「でもぉ、アグネスちゃんに、ラインハルトちゃんとの縁談が来てるんでしょ? なら、ルーカス殿下と距離をおくって話にはならないんじゃないかしらぁ」
「本当に余計な情報ばかり持っていますね、叔父上は。……アグネスとラインハルトとの縁談は、私も父上も反対と言うことで意見は一致しています。だいたいアグネスはまだ十三歳ですよ?」
「貴族社会じゃあ珍しいことでもないでしょう? 生まれた直後に婚約者が決まることだってあるもの。……ま、あたしも、アグネスちゃんには幸せな結婚をしてほしいから、政略結婚は反対なんだけどぉ」
「政略結婚以前にラインハルトに問題がありますよ。あれはルーカス殿下至上主義です。あんなのと結婚したらアグネスがないがしろにされる未来しか見えません。断固阻止です」
……あれで、一本気な性格だから、好きになったらめちゃくちゃ溺愛するんだけどね、ラインハルト様は。ま、ゲーム情報だから現実でどうなるかはわからないけども。
わたしとしても、アグネスには幸せになってほしいから、今のところルーカス殿下しか見ていないラインハルト様との結婚は反対だけどね。
「ひとまず、今の話は持ち帰って父上の判断を仰ぎます。学園の編入試験はいつですか?」
「昨日よ。結果は明日でるの~」
アレクサンダー様はじろりとリッチーを睨む。
昨日ってことは、アレクサンダー様の回答がどうあれ、ウルリッヒ様を編入させる方向で進められていたということだ。
この場合、面倒見のいいアレクサンダー様は、ウルリッヒ様を無視できないだろうから、どちらにしても巻き込まれるということである。リッチーもそれをわかっているはずなので、絶対に確信犯だ。断らないだろうと踏んでいる。
アレクサンダー様はふっと冷ややかな笑みを口元に浮かべた。
「叔父上。近いうちに、母上にこの店に抜き打ちで訪れるように言っておきます」
すると、にこにこ微笑んでいたリッチーはざあっと音がするほどの勢いで顔色をなくした。
「それだけは勘弁してええええええええッ‼」
何はともあれ、新学期……前途多難そう。主にアレクサンダー様が。
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