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448.あの子たちは今リターンズ…忘れてたとかではないですよ?えぇ

〔フレデリカ〕


ごきげんよう皆様。

ワタクシの名前はフレデリカ。


王都から北へ行ったところにある街「ナージエ」にある、ナージエ騎士・魔法学園の生徒で、一流の魔法使いを目指しているわ。

ちなみにこの学校で唯一の友だちで一緒に迷宮都市に行ってたエリーゼ…エリーって呼んでる子は魔法も剣も使える魔法騎士を目指しているわ。


なんでワタクシは唐突に自己紹介をしているのかしら?

そして前もこんなことをまるっきりそのまま考えた気がするわ?

疲れてるからかしら?


とりあえず、その疲れてる原因だけど……


エリーゼ「はぁぁ……」

フレデリカ「エリー……またため息出てるわよ?」

エリーゼ「ごめ〜ん……」

フレデリカ「まぁ気持ちはわかるけどね……」

エリーゼ・フレデリカ「「……はぁ……」」


沐浴が終わり部屋でゆっくりとしている時間。

短いスパンでため息を吐くエリーに注意しつつも、自分も同じ気持ちなのでついつい一緒にため息を吐いてしまう。


理由は今日学校で教員から伝えられたお知らせ。

内容は聖歌隊がこの学園にやってくること。


聖歌隊は教会が (表向きは)信仰している光の神、セインディア様の素晴らしさを歌と共に伝えるために旅をしている巡教者たち。

なのでエリーは聖女の妹として必ず顔を見せなきゃいけないという役目がある。

ワタクシも一応この国の第二王女なので同じだ。


聖歌は過去に何度か聴いたことがあるけど、とても美しい声と迫力に心を奪われた記憶があり、それ自体は嫌いじゃないどころかむしろ楽しみなまである。

役目という響きが堅苦しくて面倒くさいのだ。


しかしそれだけならこんなにため息は吐かないわけで……


エリーゼ「みんなにも聴いてほしかったなぁ……」

ソバッソ「しかたありませんよ。奴隷は授業の一環で連れることが許されているだけで、本来はこのように常に一緒にいることも許されない立場なのですから」

エリーゼ「ぶー……シュシュとリオンにも聴かせてあげたかったのに……」

シュシュ「エリーゼ様……」

リオン「そう言っていただけるだけでも嬉しいですよ」


エリー付きのメイド…実は優秀な冒険者であるソバッソ (本名ソヨコモさん)が嗜めると、エリーはずっとむくれてた理由を口にした。

その言葉に奴隷として買って早ひと月が経とうとしている羊人族のシュシュと、人間族のリオンが喜びながらも遠慮がちにそう言った。


そう、聖歌隊の来訪に際して授業の一部を聖歌隊との交流、並びに聖歌清聴の時間になるのだが、その時間奴隷を連れることは禁止されているのだ。

同時に付き人も1人までだけど、これはワタクシもエリーもそれぞれディエレッツァとソバッソしかいないし近づかせないので別にいい。


ちなみにディエレッツァ (本名ディーノさん)はソヨコモさんと同じパーティの冒険者。

あと2人ほどパーティメンバーがいるのだが、その2人は男性だし兵士になったしでこの部屋に入ってくることはなく顔を見る機会が限られている。


まぁともかく、つまり聖歌を聴くときはシュシュとリオンだけを部屋かどこかに置いてこいというわけだけど……こんなろくでなし共の学舎に奴隷だけで置いとくなんて心配すぎてやりたくない。


エリーゼ「大体聖歌って確かセインディア様の良さを讃えて広めるための歌なのに…なんで聴く人を制限するの?おかしいよ!」

フレデリカ「なんなら歌の中に『セインディア様はすべての者に平等に光を与えてくださる』とか入ってるはずだけどね」

エリーゼ「全然平等じゃないじゃん!」

ディエレッツァ「貴族たちの階級差別は今に始まったことではありませんよ」

エリーゼ「そうだけどさー……」


ディエレッツァの言う通りである。

なのでそう簡単になんとかなる問題でもなくて、それらが全部わかってるからワタクシたちはただため息を吐くしかないのだ。


だから決して2年以上出番がなかったからではないのだ。

そもそも出番って、何に対しての出番なのか?

さっきからずっと頭の片隅に何故かチラッとあったのだけど、やっぱりストレスでおかしくなってきたのかしら……。

今度のお休みはディエレッツァのハーブティーを飲みながらぼんやりと花でも眺めてリラックスしようかな……?


…花といえば……


フレデリカ「ねぇ、ディエレッツァ。今日もマーガレットからの手紙は届いてないの?」

ディエレッツァ「はい。残念ながら」

フレデリカ「そう……」


今まで毎月届いていたマーガレットの手紙が、いつもなら届いてるはずの日を過ぎてもまったく来る気配がないのだ。


エリーゼ「マーガレット…何かあったのかなぁ……?」

フレデリカ「そうね…心配だわ……あの子も面倒ごといっぱい抱えちゃうタイプだから……」

エリーゼ「友だちに何かあって書く暇がないとか?」

フレデリカ「あり得るわねぇ……その子が実は特別な立場の人間で、それから解放するために旅に出てる…とか?」

エリーゼ「ありそうありそう♪その途中で神様と会ってたりして〜♪」

フレデリカ「それならその神様ともなんやかんや友だちになってそうね♪」

エリーゼ「ね〜♪」

シュシュ・リオン「「マーガレットさんっていったい……」」

ソバッソ「あはは……」

ディエレッツァ「……(苦笑)」


たった1日、ほんの数十分だけのお話と毎月のお手紙だけだけど、マーガレットが優しいことを知っている。

そして何かと話題に事欠かないことも知っている。

毎回手紙にツッコミどころがあるから。


だから大丈夫。

ワタクシたちのことが面倒になったとかじゃない。

あるとしてもちょっと忘れちゃってたとかそんなところだろう。

…それも少し悲しいけど……。


とにかく、遅くても必ず手紙はくるから、大丈夫。

でも……


シュシュとリオンと一緒に聖歌が聴けなくて、それでいて王族として聖女の妹としての立ち振る舞いはしなくちゃいけなくて……。

毎日不快なクラスメイトを見て…黒いウワサばかりの使用人たちを見て……。

そんな生活の中でマーガレットからの手紙は数少ないワタクシたちの楽しみだったのに……!


うぅぅ……!

いったい何やってるのよマーガレットォ……!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


エリーゼ・フレデリカ「「はぁ〜……」」


聖歌隊がやってくる日がいよいよ明日に迫った。

しかし結局今日までマーガレットからの手紙は届いていない。


大丈夫大丈夫と自分たちに言い聞かせてきたものの、来ない日が続いていくとどうしても嫌なことが頭をよぎってしまうわけで……。


本当に何かあったのかな……とか。

ワタクシたちのことすっかり忘れちゃったのかな……とか。

もしかして前の手紙で変なこと書いちゃったかな……とか。


そんなことを、特に夜寝る前や夜中に目が覚めてしまったときに考えてしまう。

おかげでワタクシもエリーも最近ちょっと寝不足だ。


はぁぁ……こんな状態で聖歌隊と交流なんてめんどくさい……。

今聖歌を聴いたら凄いよく眠れそうだけど、一国の姫と教会トップの親族がそんなことをするわけにもいかないし……。


最悪授業を休んででも仮眠を取ることを考えるべきかしら……?


それにあの聖歌隊、いつも魔物に襲われたり馬車が壊れたり突然の豪雨に襲われたりで遅れて、予定通りに来たことが1度も無いし……。


そう考えると今日と明日を休養に回してでもしっかり対応出来るようにしといたほうがいいわよね。

政治はめんどくさいけど、適当にするわけにもいかないもの。


ディエレッツァたちもワタクシたちが不調なのは知っているし、他の大人たちもしっかりした理由があることを伝えれば許してくれるでしょう。

もしワタクシたちが変なことをしたら怒られるのはワタクシたちだけじゃなく、ちゃんと見てなかったってことで周りも言われるんだから。


そうと決まれば早速……


なんてことを教室から外を眺めてぼんやり考えていると、何やら正門に伝令の兵士が走ってきたかと思うと、警備兵たちも慌ただしくなり始め、校舎に1人走ってきた。


……なんだかいや〜な予感がするわね……?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


講堂にて。


カダノ「フレデリカ王女様、エリーゼ様、そして各諸侯のご子息様ご息女様方。お久しぶりでございます。初めましての方はお初にお目にかかります、この聖歌隊を取り仕切っております、カダノと申します。以後お見知り置きを」


先頭の優しい顔をした坊主頭の聖職者に合わせ、その後ろに控える聖歌隊の面々も両手を組み、祈るようにして深々と頭を下げた。


ワタクシの嫌な予感は見事に的中し、いつも遅れていたはずの聖歌隊は、よりによってワタクシたちの体調が優れないときに限って普段よりも早く到着したのだ。


セインディア様…ワタクシたち何かしましたか……?

何故横領、恐喝、本人の人間性が皆無な他の貴族たちでなくワタクシたちに試練を与えるようなことをするのですか……?


心の中で悲観に暮れるも、それを表に出すわけにはいかないので愛想笑いを浮かべて隠し、王族としての気品ある挨拶を返さねば。


今ここにいる者の中ではワタクシが1番(くらい)が高いのだから下手な真似はできない。


フレデリカ「お久しぶりでございますカダノさん。お変わりなく健康なようで何よりと存じます」

エリーゼ「そして此度も無事に出会えたことを喜ばしく思います」


私たちに合わせて他の生徒、教員たちも各々礼をする。


こちらが顔を上げるとカダノさんたちも顔を上げるが……その顔が少し驚いた顔に見える。


フレデリカ「どうかされましたか?」

カダノ「いえ…以前お会いした時よりも大人びたように感じまして……」

フレデリカ「そ、そうでしょうか?」

ナバラ「えぇ、良い成長をしたように思えます」


良い成長…だとしたらキッカケは当然……。


カダノ「失礼。上からものを見る言い方をしてしまいました。申し訳ございません」

フレデリカ「いえ、お気になさらず。お褒めに預かり光栄ですわ」

カダノ「寛大な慈悲に感謝いたします」


少なくともお世辞ではなさそうなので素直に受け取っておく。

それにワタクシたちの成長を褒められるのは、その変化のきっかけになったマーガレットのことを褒められているようで気分が良いし。


カダノ「では挨拶もほどほどに、早速ですが聖歌を歌わせていただきたく思います」

フレデリカ「もうですか?少し休んでからでも良いのですよ?」

カダノ「お気遣い痛み入ります。ですが私どもの役目は聖歌を世界の人々に届けること。今回この地に予定よりも早くたどり着いたことは神のお導きがあってのことと思います」

フレデリカ「ワタクシたちが聖歌を心待ちにしていることを神は知っていたということですか」

カダノ「その通りでございます」


お互いにどこまで本心かわからない形式的な会話。

ほんとに聖歌を心待ちにしている者は学園関係者の中ではごくわずかだろうが、少なくともワタクシとエリーは楽しみではあったのでウソではない。


たとえ他の届けるべき相手…貧困により心の拠り所が欲しい平民などのもとに急いで行きたいがためにこの場をさっさと終わらそうとしていたとしても。


まぁ…ねぇ……この場にいるのって本来聖歌を必要とする人たちを生み出している元凶みたいなのばかりだし……。

仕事じゃなきゃこんなところよりも、もっと恵まれない人たちのもとに行きたいわよねぇ……。


でもワタクシたちだって本当はシュシュとリオンにも聴かせてあげたかったのよ?

差別主義者たちの前(ここ)じゃ言えないけど。


改めて自分の地位に対する力の無さにやるせなさを感じながら、ワタクシは平静を装ってカダノさんに歌をお願いする。


フレデリカ「…ではお言葉に甘えて、久しぶりに聖歌をお聴かせ願いますわ」

カダノ「かしこまりました」


ニコリと笑って承諾するカダノさん。

愛想笑いであろうその瞳が、少しだけ(あわ)れんでいるような気がしたのは…さすがに被害妄想か。


やっぱり1度思いっきり羽を伸ばして心をリフレッシュさせたいなぁ……。


心の中でため息を吐きながら、聖歌隊の人々が準備のために移動し始めるのを見てからワタクシたちも移動…しようとしたところで。


女の子「およ?」

エリーゼ「あっ!」


ワタクシたちと同じくらいで、おそらく聖歌隊で最年少であろうおさげの女の子が何もないところで押されたでもなく足が絡まったでもなく突然躓いた。


エリーゼが咄嗟に飛び出そうとしたのをソバッソが静止し、女の子はエリーゼよりも早く飛び出していたディエレッツァが支えて助けていた。


ディエレッツァ「お怪我はありませんか?」

女の子「大丈夫です、ありがとうございます〜♪」


なんともほわほわした子ねぇ……って、あら?


フレデリカ「何か落としてるわよ?」

女の子「ほぇ?」

ディエレッツァ「お拾いします」


そう言ってディエレッツァは女の子の落とし物…いろんな可愛い服が描かれた絵を拾ってあげた。


女の子「わぁ〜、ありがとうございま…ハッ!」


と、ディエレッツァから絵を受け取ろうとした女の子は、その絵を見てハッと声を上げ慌てだした。


女の子「あわわ…!ありがとうございますぅ!」

ディエレッツァ「え、えぇ…ですが例には及びません」

女の子「そんなことないですよ〜!この絵は私の宝物なので〜!」

ディエレッツァ「そうなのですね。でしたら絶対に落とさない場所に保管されたほうがよろしいですよ」

女の子「えへへ…ごめんなさい〜。つい持ち歩いちゃって〜…」


常に持っていたかったのね。

そんなに大事な絵なのね〜。


フレデリカ「確かに可愛らしい絵だったわね」

エリーゼ「うん。マーガレットが好きそうだったね」

女の子「え?」


周りにいた他の貴族たちはみんな自分の席に移動中。

ここにいるのはワタクシたちとこの女の子。

そしてちょっと距離を空けて心配そうにこちらを見つめている聖歌隊の人たちだ。


普段は変に関係性を疑われたり、マーガレットの婚約者であるブゴデ(ごみデブ)に変な気を持たせないために表立って名前は言わないようにしていたのだけど、今は近くにいない。


だからエリーゼがうっかり名前を出しちゃったのも咎める気はない。

それにマーガレットの名前を出しても不思議に思われない、せいぜい学園の知り合いかな?程度に思われるのが普通だと思ったのだけど、女の子は驚いた声を出して……


女の子「マーガレットちゃんを知ってるの…?」

フレデリカ・エリーゼ「「え?」」


女の子からマーガレットのことをよく知っているふうの言葉が続いて、今度はワタクシたちが驚かされた。


…あれ?

そういえば前にもらった手紙で聖歌隊のことが書いてあったものがあったような……。

確かそこには聖歌隊の子と新しく友だちになれたとも書いてあって、その名前は……


フレデリカ「もしかして…あなたがミハク……?」

女の子「はわっ…!?どうして知ってるんですか〜!?」


女の子…ミハクは、心底驚いたといったふうに両手で口を塞ぐようなポーズをして叫んだ。


このほわほわっぷりはマーガレットの手紙に書いてあった特徴そのまんまだ。


私は周りをチラッと警戒してから、小さい声で答えを教えてあげる。


フレデリカ「前にワタクシたちも学園(ここ)をこっそり抜け出したことがあるのよ」

エリーゼ「それで街でマーガレットに助けてもらったんだよ〜♪」

フレデリカ「こっちに帰ってきてからも月に1度手紙のやり取りをしてるの」

エリーゼ「そこに聖歌隊の子とお友だちになったって書いてあったんだ」

ミハク「おぉ〜!さすがマーガレットちゃ〜ん♪」


ふふっ、そうよねそうよね♪


ソバッソ「ご歓談中申し訳ございません。そろそろ離れた方がよろしいかと……」

フレデリカ「おっと……」


そうね…あんまり話し込んでると怪しまれちゃう。

ワタクシたちはまだしも、ミハクや聖歌隊の人たちに迷惑がかかるようなことになったら大変だわ。


貴族連中(あいつら)、いついかなる時もワタクシたちに取り入る手段を探ってるから油断ならないったらないわ。


フレデリカ「はぁ…名残惜しいけど、そろそろ行くわ。聖歌、頑張ってね」

エリーゼ「楽しみにしてるよ〜♪」

ミハク「ありがと〜ございま〜す♪」


こっそり小さく手を振ると、ミハクもひっそりと手を振りかえしてくれた。


フレデリカ「可愛らしい子ね」

エリーゼ「ねっ。お友だちになりたかったなぁ……」

フレデリカ「そうね…ワタクシも同じ気持ちだわ……」


あの子とも友だちになれたらどれほど嬉しかっただろうか。

でも今の自分の地位は無駄に高く、そしてそれに見合った力も無い……。


だからもしもあの子がワタクシたちへの要求のカードにされては…ふざけた政治(おとなのおあそび)に巻き込まれるようなことがあってはいけないのだ。


そのためには自分の手の届く範囲内だけに留めておき、何かされてもすぐに気づける状態にしておかないと……。


はぁ…友だち1人好きに作れないなんてほんと嫌になる……。


……いっそのこと全部投げ捨てて……


エリーゼ「フレン?」

フレデリカ「!」


エリーゼの声でハッと我に帰る。


エリーゼ「どうしたの?凄い怖い顔してたけど……」

フレデリカ「そ、そう?ごめん、ちょっと考え事をね……」

エリーゼ「そっかぁ……じゃあしょうがないね。私も色々考えちゃうもん……」

フレデリカ「エリーも?」

エリーゼ「うん。フレンほどじゃないけど、私だって立場があるからね……」

フレデリカ「…そうね……」


そんなことを言っているが、エリーの「聖女の妹」という立場だってワタクシからすれば相当大変だ。


聖女ともてはやされてはいるものの、それは城下町を含め首都の全てを魔物避けの結界で覆う力があってこそ。


さらに今の代の聖女は貴族の出なので地位が確約されているが、それ以前の代では平民や孤児など身寄りのない者もいたという。


同じ貴族内でさえ身分の高さを誇示する者が多いやつらが、そんな出生が下の身分の者たちをキチンと丁重に扱うわけもなく、ある程度の自由が認められている今代とは対照的に一切の自由がなく、ただ結界のために魔力を絞り続ける魔道具のような扱いだったとされる。


そして、エリーたちもその危険に常に晒されている。


もしも魔物が1匹でも結界の中に入ってきたら?

もしも結界を維持する魔力が出せなくなったら?


平民や身寄りのない者たちならそこでさよならだ。

おそらく口封じのために……。


貴族ならば、職務を全うしたのだということで多少はマシな扱いを受けるだろう。

しかしそれも家の(くらい)がある程度高ければの話だ。


そしてエリーの家は…はっきり言って中の下といったところだ。

つまり代わりになる家はそこそこある。


だからその代わりになれそうな家の者たちが聖女に対して大なり小なり妨害をしているなんて噂もある。


残念ながら学園と聖女のいる王都では距離がありすぎて不確かな情報ではあるのだが、アイツらの性格からしてほぼ間違いなく行なっていると見ていいだろう。


その行為で結界が切れたら、住んでいる者たちがどれほどの危険に晒されるかわからないというのに、彼らは自分たちの地位のためだけにそれを犯そうとしている。

自分たちさえよければそれでいいのだ。


…まぁ、この国全体がそんなもんなので今さらではある。

もう終わってるとも言える。


ともかく、もしもそうなったとき、仮に事態がうまくおさまったとしても聖女の実力を疑われるのは必須。

どう言った事情であれ、必ず槍玉にあげるやつが出てくるからだ。


そのとき聖女を守ってくれる者がどれほどいるか……。

ずっと言っているように、自分の地位に固執するものは大勢いる。

聖女の結界によって守られてきた民たちの指示はあるだろうが、それで聞くなら今こうなってはいない。

おそらく負けるだろう。


そうなったら…こんなふうにエリーと話す機会も無くなるだろう。

最悪家が取り潰される可能性だってあるのだ。

そしてもっともらしい理由を付けて家の財産を奪っていくのだ。

獲物を横取りするハイエナのように。


フレデリカ「本当にくだらない連中だわ……」

エリーゼ「?」

フレデリカ「なんでもないわ」


ぽそっと漏れ出た言葉は幸いエリーには聞こえなかったようだ。

ディエレッツァたちは…普段からどこで聞いてたのかと尋ねたくなるぐらいなので聞こえていただろうが、何も言わずに後をついて来てくれている。


はぁ……せっかく良いことがあった後だというのに、もう憂鬱な気分になってしまったわ……。

キレイな聖歌を聴いて少しでもこのささくれだった心が休まればいいんだけどね……。

はぁ……。


セインディア様…ほんの些細なことでもいいんです……。

何かこう…ちょっとでも明るい気分になれること…できたりしないでしょうか……?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


なんて考えてはいたけど……。


ミハク「♪(ニコニコ)」

フレデリカ・エリーゼ「「……」」


なんでかワタクシたちはミハクとのお茶会がセッティングされた。


いや…嬉しいけど……ほんとになんで……?

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