112.少女の恩返し…魔法使い編
おいっす。
俺は今メイカさんの部屋の前にいます。
これからメイカさんに、ユーリさん特製スープをお見舞いするところです。
というわけでレッツらゴー。
「メイカさん、スープ持ってきました~。入りますよ~」
「あっ…どうぞ~…」
…こっちもまだ辛そうかなぁ……。
「失礼しま~す」
スープ片手に部屋に入る。
「マーガレットちゃん…ありがとうねぇ~……」
「メイカさん…大丈夫ですか……?」
「うん…ちょっとだけね……」
((駄目そう……))
やっぱりマグもそう思うかぁ……。
ん~……なんとか元気付けたいなぁ……。
(う~ん……何かメイカさんが元気になりそうなことないかなぁ……)
(ん~……)
「マーガレットちゃん…?」
「あっすみません……」
元気付ける方法考える前に、ユーリさんお手製スープをお見舞いしないと……。
「こほん…お待たせしました、メイカさん。ユーリさんお手製スープですよ」
「ありがとー………んー…でもちょっと怠いなぁ……」
あ~…やっぱりフルールさんと同じ感じかなぁ……。
「どうしようかなぁ……このままじゃスープ冷めちゃうなぁ……」
……ん~?
なんっか怪しくなってきたぞぉ~?
「困ったなぁ~…冷めちゃったらユーリちゃんに悪いなぁ……でも辛いしなぁ~(チラチラ)」
「(……)」
お~ん……?
こ~れ~は~……?
(……あーんしてほしいってことでしょうな……)
(…メイカさん……)
そこまでして……。
俺たち結構本気で心配したんだけど……?
(どこまでが演技だったんでしょうか……?)
(う~ん……二日酔いは演技じゃない…はず……)
少なくとも最初きたときは本当に辛そうだったけど……。
(あ~……もしかしてあれかな?ある程度回復してきたことで余裕が生まれて、このままだと看病してくれないって思ったんじゃないか……?)
(あぁ…それで演技を……。ありそう……)
(ね……)
俺とマグが話している間も、メイカさんは期待した目でチラチラと見てくる。
(…しかし…そんなにか……)
(羨ましかったんですかねぇ……?)
(あぁ〜…それはあるかも)
俺はマグを始め、メリーちゃん、ユーリさん、チェルシー、モニカちゃんなど、色んな子を甘やかしてきた。
そしてメイカさんはその大半を見てきたわけだ。
メイカさんは元からストーキングするほどの可愛いもの好きだ。
これまではマグの皮を被った俺が他者を甘やかす…いわば美少女同士の戯れを見ているだけで尊死仕掛けるほどの幸福感を得ていたようだが、昨日のユーリさんを見てなのかどうなのか、自分も甘やかされてみたいと思った……のかもしれない。
俺はその予想をマグに話してみた。
(…なるほど……)
マグはしばし考え込んでから、俺にあるお願いをしてきた。
(コウスケさん。メイカさんの看病、私がしても良いですか?)
(うん、構わないけど…どうしたの?)
(メイカさんに、少しでも恩返しがしたくて……)
(なるほどね。そういうことなら喜んで。メイカさんもマグにお世話される方が嬉しいだろうしね)
(あはは…ちょっと否定しきれないですね……)
そりゃあねぇ。
俺だって、美少女の皮を被った男より、ガチの美少女の方が嬉しい。
「マーガレットちゃん…?」
俺の反応が無いために、遠慮がちに声をかけてきたメイカさん。
大丈夫ですよ、メイカさん。
今から食べさせてあげますから。
マグが。
(んじゃ、よろしく)
(はい、任せてください!)
「…こほん。お待たせしましたメイカさん。そういうことなら私がメイカさんに食べさせてあげます」
「!やった!マーガレットちゃんのあーん……いたたたた……!」
「あぁもう…じっとしててくださいよぅ……私が食べさせる意味が無いじゃないですか……」
「ごめんごめん……」
しょうがないなメイカさんは……。
やれやれ……この調子じゃあ、食べさせてるのがマグ本人だって分かったらどうなることやら……。
「はい、メイカさん…まずは体を起こしてください。ゆっくりですよ?」
「うん…分かった…!」
今しがた頭を痛めたメイカさんにスープをお見舞いするため、まずは体を起こさせるマグ。
……?
…何か忘れているような………っ!?
「メ、メイカさんっ!?」
「うん…?どうしたの?」
「な、なんで服を着ていないんですかぁ!?」
「えっ?あっ……」
体を起こしたメイカさんは何故か服を着ていなかった。
そういえばさっき、布団から出てる部分に布が見当たらないって言ってたわ!
(ん…?てことはこの辺に散らばってる服って……)
「メイカさんの脱ぎ捨てた服……って、コウスケさん!見ちゃダメです!」
(おおう!すまん!)
「コウスケ……?えっ!?まさか今出てるのってマーガレットちゃん!?」
あ、バレた。
「そんなことより服を着てくださいよ!なんで着てないんですか!?」
「えーっとね……確か夜中に起きたときに、体が熱かったから脱いじゃえ〜って……」
「そ……なっ……!…んもぅ!とにかくまずは服です!」
「えっと……ごめんねマーガレット……。体が怠いのは本当だから、まだちょっと動くのは……」
「〜〜〜〜っ!」
そんな理由で脱ぐんか!?という言葉が出てこずに、とりあえず服を着てもらいたいマグだったが、メイカさんが動くのが辛いというのを思い出し、怒りと羞恥と焦りで若干パニクっている。
助け舟を出しておこう……。
(マグ。その辺に畳んだ服があるから、そっから適当に見繕って)
「はっ!そっか!えーっと………メイカさん。さすがに下は履いてますよね……?」
えっ?さすがにそれは……。
「えっと…さすがに下は履いて……ん〜……ごめん、お願い……」
「も〜〜〜〜っ!!!」
…なんか…ズボラな姉の世話を焼くしっかり者の妹みたい……。
それ言ったら、メイカさん喜びそうだなぁ……。
今は落ち着いててほしいから黙ってよ。
「じゃあこれとこれと……はい!メイカさん!手を上げてください!」
「は〜い…♪」
楽しんでるなぁ…メイカさん……。
と、さすがに着替えを見るのはヤバいやな。
(んじゃあ何かあったら呼んでね)
(はい、ありがとうございます!)
俺はマグに後を託し、風呂の時と同じように心の奥底に撤収した。
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〔マグ〕
はぁ…はぁ……どうにか服を着せることが出来た……。
特に下が大変だった……。
足に通さないとだったから本当に大変だった……。
同性とはいえ、人の…その……あの部分を間近で見るのはちょっと…緊張したというか……やっぱり恥ずかしいものがあるというか……。
それにメイカさんは綺麗だし……足も……その…そこも……はい……。
上も上で大変だった。
主にふにふにを我慢するのが大変……こほん……。
なんにせよ、コウスケさんの力を借りずに着せることが出来てよかった……。
今更な気はするけど、それでも男の人に女の人の裸を見せるのはちょっとね……。
「ふぅ…それじゃあスープを飲みましょうねメイカさん……」
「ご、ごめんねぇ…マーガレットちゃん……」
「いえ……私がしたいって言い出したことですし……あっ……」
…さすがに冷めちゃったなぁ……。
ユーリさんに謝って、温かいのをもらってこよう……。
「…ごめんなさいメイカさん……。スープ冷めちゃいました……新しいのをもらってきます…」
「ううん!いいのいいの!私のせいなんだし、マーガレットちゃんが気にすることじゃないよ!」
「う〜ん……でも……」
それは……うん…そうなんだけど……。
「でも…せっかくユーリさんが作ってくれたものですし、あったかいものを食べさせてあげたいですし……」
「あぅ…!マ、マーガレットちゃんの気持ちはありがたいけど、そこまでしてもらうのはさすがに申し訳ないよぉ……!」
「でもぉ……!」
どうしよう…どうしよう……。
うぅ……
「コウスケさん…コウスケさ〜ん……!」
(……ん〜……?呼んだ……?)
(助けてくださいコウスケさ〜ん……)
(ん…とりあえず何があったか教えてくれる?)
(はい……)
私はここまでの経緯をコウスケさんに話した。
(…なるほどねぇ……)
(コウスケさん…一体どうすれば……)
(そうさなぁ……このままどっちかがゴリ押しても、もう片方は気にしちゃうから……あーでもそんな解決方しか出てこないなぁ……なら…1番良さそうなやつにするべきか……)
私が助けを求めると、コウスケさんはあれこれと考えを巡らせる。
そして結論が出たのか、私に指示を出してくれた。
(マグ。俺の言う通りにしてくれる?)
(はい)
(よし。んじゃあまずは……)
(ふんふん……え…?それを言うんですか……?)
(うん。そっから……)
(ふむふむ……なるほど……)
それなら確かに解決するかな……。
よし。
「こほん…メイカさん」
「う、うん……なぁに……?」
「えっと……あれこれやって喉が渇いちゃったので、スープをちょこっともらっていいですか?」
「えっ?う、うん…いいけど……」
「ありがとうございます」
そう言って、私は冷めてしまったスープをひと口食べる。
「ん…冷めてても美味しい……」
ユーリさん、あの手際の良さといい、本当にお料理が上手なんだなぁ……。
私は再びスープを口にする。
「マーガレットちゃん…?」
メイカさんが声をかけてきたけど、私はそのままスープを飲み干した。
そして、コウスケさんに言われた通りの言葉を言う。
「あ…あーっと…しまったぁー…!メイカさんにって持ってきたのに飲み干しちゃったー……!」
「う、うん?マーガレットちゃん……?どうしたの?凄くわざとらしいよ……?」
うっ……やっぱり……。
でもメイカさんに言われるのはちょっと納得しない……。
「ごめんなさいメイカさん。新しいのを持ってきますので、ちょっとだけ待っててもらえませんか?」
「えっ?う、うん……あっ…もしかして…」
「ありがとうございます失礼しま〜す!」
「あっ!……もう」
メイカさんにバレそうになったので、後半は早口で捲し立て、そそくさと部屋を出る。
これがコウスケさんの作戦。
「うっかり食べちゃった☆」作戦。
そのまんまだと思う。
コウスケさんもそう言ってたし。
とにかくこれでメイカさんにあったかいスープを持っていく口実が出来た。
(ありがとうございます、コウスケさん)
(どういたしまして。今度はバレないようなものを考えるよ)
(あはは…こんなことにならないのが1番ですけどね……)
(まぁね)
コウスケさんにお礼を言いながら、リビングへ。
ユーリさんに事情を説明して、新しいスープをもらう。
そしてそれをすぐさまメイカさんの部屋へ持っていく。
「メイカさん、持ってきました〜」
「は〜い、どうぞ〜」
最初よりも声が出ている。
元気になってきた証拠だ。
だからって看病はやめない。
1度決めたことだし、今やめたらメイカさんが悲しんじゃうからね。
「わざわざありがとうねマーガレットちゃん」
「いえ、私のうっかりなので」
「ふふふ…そういうことにしとこうか」
そういうことですよ〜。
私は机にスープを置いて、椅子をベッドに近づける。
そしてスープを持って座る。
「それではメイカさん、お待たせしました。食事にしましょう」
「うん!お願いしま〜す!」
メイカさんはすでに回復してる気がするけど……まぁ、言わない方が良いよね。
「くすくす…それでは……はい、あ〜ん…」
「あ〜…ずず……はぁ…美味し〜い!ユーリちゃんお料理上手なんだねぇ!」
うんうん!美味しいですよね〜!
冷めてても美味しかったんだから、あったかいものなら尚の事美味しいに決まってます。
くるるる……
「あっ……」
「あれ?マーガレットちゃん、もしかして朝ご飯食べてないの?」
「あぅ……はい…まだです……」
お、お腹鳴っちゃったし、それ聞かれたぁ……恥ずかしい……!
「そっかぁ…それは悪いことしちゃったね……」
「いえ、大丈夫ですよ!それよりもメイカさんたちの方が大変なんですし!」
メイカさんは演技出来るぐらいには回復したみたいだけど。
「ほらほら、メイカさん!あーんですよ、あーん!」
「ん…あ〜……」
どうにか勢いで誤魔化して、メイカさんにあーんを続け、食べ切らせることに成功した。
…うぅ……さっき一杯食べたから余計にお腹が空いちゃったみたい……。
メイカさんも美味しそうに食べるし……
くるる……
あぅぅ……また鳴っちゃったぁ……。
改めて自分の小説まだ8日目かぁ…って思って長いと感じてしまった……。
コンパクトになるようにちょっと頑張ってみようと思います。
…でもまだしばらくはこんな感じです。




