113.かわゆき妹分…食卓のお悩み
マグの手でメイカさんの看病をし、スープをあーんして食べさせきったマグは、お腹が鳴った恥ずかしさを誤魔化しながらメイカさんの部屋を後にした。
だがまったく誤魔化せてないよ。
顔真っ赤で早口でそそくさと立ち去ったら誤魔化せてるとは言いづらいよ。
可愛いよマグ。
そのまま1階に降り、リビングの扉を開ける。
「…戻りました……」
「おかえり……ってどうしたの?顔赤いよ?」
「えっと……」
「あ〜…またメイカに何かされたか?」
「い、いえ……そういうわけでは……」
中にいたユーリさんたちと話すマグだったが、そこで…
くるるる……
再びお腹が鳴ってしまった。
「…あ〜…そういうことか……」
「なるほどね……」
「〜〜〜〜っ!」
あ〜……収まりかけてた紅潮がまた……。
「マーガレット、お疲れ様。2人の様子はどうだった?」
と、そこでユーリさんが優しく話しかけてくる。
「えっ…あっえっと……お2人ともさっきよりは良くなってました……」
「そっか、よかった。それじゃあマーガレットも食べよう?準備は出来てるから」
「は、はい……」
おぉ…ユーリさんが有耶無耶にしてくれた……!
あっそっか。
ユーリさんにはオーラが見えるから、マグと俺の違いが分かるのか。
それで、今のマーガレットは甘やかされる側だって分かったから気を遣ってくれてるのだな。多分。
出来るキツネさんやで……!
「あ、あれ…?まだ皆さん食べてないんですか…?」
「あぁ、看病に行ってもらってるのに、俺たちだけが食べるのはアレだろ?」
「うん、だからマーガレットちゃんが戻ってきたらって、用意して待ってたんだ」
あらら…律儀に待っててくれたんだ……。
「えっ、そうなんですか!?それは…すみません…お待たせしました……」
「いやいや、むしろ俺たちが役立たずですまないっつーか……」
「昨日のは仕方ないとしても、やっぱり女性の部屋に入るのは…しかも弱っていますし……」
「まぁメイカは良いとして、フルールさんはな」
メイカさんはいいのか……。
ん〜…そういえば、ディッグさんたちって、なんでその3人で冒険者をやってるんだろう……?
今度聞いてみるか……。
「ま、そういうわけだから、座ってくれ嬢ちゃん」
「はい、わかりました!」
ディッグさんに言われ、意気揚々と食卓に着くマグ。
それを微笑ましげに眺めた後、ユーリさんが音頭を取る。
「それでは皆さん、大丈夫ですか?」
「はい!」
「おう」
「えぇ」
「では!いただきます!」
「「「いただきます!」」」
そうして食事が始まる。
…いいなぁ…ユーリさんの手料理……。
超美味しそう……。
俺も腹減ってきたな……身体的には満たされてるはずなのに……我が魂が食事を求めている。
あぁ……いいなぁ……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…おはよう……」
「あっおはようございます、フルールさん」
「おはようさん。もう大丈夫なのか?」
「えぇ…だいぶ落ち着いたわ……」
食事が済み、後片付けをユーリさんを手伝っていると、フルールさんが起きてきたようでリビングで今日の準備をしていたディッグさんとケランさんと話しているのが聞こえてきた。
それと小さな足音がこちらに近づいてきた。
マグがそちらを見ると、キッチンを覗き込むようにメリーちゃんが顔を出した。
「おかえり、メリーちゃん」
「……うん、ただいま」
「ごめんね、いつ帰ってくるか分からないから先に食べちゃった」
「…………うん、いいよ……」
よろしくねぇな。
「あっ…えっと……ユ、ユーリさん……」
「えーっと…そうだね……う〜んと……ど、どうしようか……?」
どうしたもんかと焦る2人。
俺は思いついたことがあるので、マグに話しかける。
(落ち着け〜)
(で、でも…メリーちゃんがすごく寂しそうですし……)
(安心せい。私に良い考えがある)
(本当ですかコウスケさんっ!)
(任せよ)
(まかせます!)
「…ユーリさん」
「う、うん…?…!もしかして何か思いついたの?」
「はい。私まだちょっと食べ足りないので、メリーちゃんと一緒して良いですか?」
「……!」
よし、メリーちゃんが期待した目で見てきたぞ。
「…うん、いいよ。私ももうちょっと食べようかな」
「……!」
「良いですねぇ。フルールさんもスープ一杯しか食べてないので誘ってみましょう」
「そうだね。そうしようそうしよう!」
「……(わくわく)」
よ〜しよし、メリーちゃんがうきうきし出したぞ。
成功だな。
しかも俺もユーリさんの料理が食べられる。
完璧だ……!
「よし、じゃあメリーちゃん。フルールさんに聞いてみよう!」
「……うん♪」
…それに、いつもメリーちゃんは出発ギリギリに起きるからな。
それでも頑張ってるのは分かるんだけど、それだと俺たちとは食べられない。
だからいつもフルールさんと2人で食べてるんだろう。
フルールさん、俺たちとは食べないからな。
メリーちゃんを待ってるんだろうね。
休日ぐらい寂しい思いをさせないようにしよう。
「というわけで一緒に食べましょうフルールさん」
「ん…そうね……。落ち着いてきたらお腹が空いてきたわ」
「……いっしょ♪」
「くすっ…えぇ、一緒ね」
はい、オッケーで〜す。
フルールさんの微笑みいただきました〜!
綺麗ですね〜。
「ん…それなら俺たちは部屋に戻っとくか?」
「え?食べないんですか?」
「もう目一杯食っちまったからな……。冒険の準備を食事してる横でってのもあれだろ。メリー嬢ちゃん、悪いな」
「……うん…がんばってね…」
「「……」」
少し寂しそうに言うメリーちゃんに、ディッグさんとケランさんは顔を合わせる。
そして互いに頷くと、まずはケランさんが口を開いた。
「あ〜…でもユーリさんのスープ美味しかったから、もう一杯ぐらいもらおうかな〜…」
「……!」
「そうだな。なら俺はメイカを呼んでくるわ。こんな機会を逃したと分かったら、後が面倒だしな」
「……!!」
「じゃ、2人が戻ってきたら食べましょう!メリーちゃん、もう少しだけ待てる?」
「……うん!」
あ〜!良い笑顔じゃわぁ〜!
かわいい!
(むぅ…私も一緒に食べたいなぁ……)
……。
(…マグ)
(はい…?)
(代わろっか)
(…!…いいんですか……?)
…正直惜しい……。
ユーリさんの料理も…みんなとの食卓も……。
でも…
(…マグが寂しいんじゃ俺も悲しいからさ)
(!…〜〜〜っ♡)
それに、俺は何回かみんなと食べてるからな。
…メリーちゃんとはまだだけど。
…いつか…マグも入れて、みんなで食卓を囲んで、一緒に食べたいなぁ……。
うん、やっぱりハルキに相談してみよう。
またマグと交代しつつ、そんなことを考える。
その間にディッグさんがメイカさんを呼びに、ケランさんはフルールさんを介護する。
「メリーちゃん、私たちも座って待ってよっか」
「……うん♪(こくり)」
ふふふ……しかし、美少女たちが手を繋いでるのを見てるのも良いな……。
マグの視点だから、手を繋いでるところは見れないけど……。
あ〜…惜しいなぁ……。
嬉しそうなマグとメリーちゃんの姿を見たいのになぁ……。
絶対尊い……!
マグ視点で外の様子を見るのって、人のFPSの画面を見ているような感覚というか……端的に言えば酔いそう。
マグの動きはまだ緩慢なものだからいいけど、例えばこれが戦闘中の冒険者とかだった場合やばい。
絶対酔う。
魂しかないから吐くこた無いけど。
「……マーガレット?」
「うん?」
「……(そわそわ)」
およ?メリーちゃんがそわそわしだした。
マグとユーリさんのいるキッチンを交互に見ながら、とてもそわそわしている。
(むぅ……)
(ん?どうしたのマグ)
(メリーちゃん…コウスケさんの方が良いって……)
(えっ?そんなこと言ってたの?)
やべぇなんにも聞いてなかったんだけど。
(いえ…言ってはいません……。ユーリさんがいますから。…でも、私とユーリさんの方をチラチラ見てるから……)
(それで俺と話したいんだろうなって思ったの?)
(はい……私だって気づいたような瞬間にそわそわしだしたので……)
ふぅむ……メリーちゃんは本当に俺に懐いてるんだな……。
それは嬉しいんだが……マグとも仲良くしてくれると嬉しいんだけど……難しいねぇ……。
(ん〜…じゃあ、交代しつつ食事にする?ちょっと忙しくなるけど……)
(いえ、それでお願いします。私じゃメリーちゃんは満足しないようなので……)
そっかぁ……。
…あぁ…なるほど。
最近、寮にいる間マグである時間が長いから、その分俺とメリーちゃんが話す時間が減っちゃってるんだ。
マグは外じゃ基本的に表に出ないから、その分寮の中にいるときは好きにしてほしいんだけど……そうするとメリーちゃんが寂しがってしまう……。
…えっむずっ。
この問題むずっ。
どうすりゃ良いの?
くいくい
「……マーガレット?」
「ん……あぁごめん、ぼんやりしてた。うん、どうしたのメリーちゃん(なでなで)」
「……♪」
俺が難問に頭を抱えていると、メリーちゃんに服をくいくいされ呼ばれた。
俺はそれに答えつつ、俺に代わったことを伝えるために頭を撫でてあげると、メリーちゃんは嬉しそうに目を細めて微笑んだ。
…本当に俺に会いたかったのか……。
はぁ……これはちょっと……ほんとどうしよう……?
「みんな揃って食べると聞いて!」
「おいメイカ!ちゃんと服を着ろ!」
…ゆっくり考え事もできねぇなぁ……。




