110.8日目の朝…料理とフォロー
「《【我が意志に応える雷[玉]】よ、【我が手より現れ出でよ!】[サンダーオーブ!]》」
「おぉ〜!きれ〜い!」
「……!(こくこく)」
「ありがとうございますユーリさん。はい、メリーちゃん、どうぞ」
「……ありがとう♪」
「くすっ…どういたしまして」
身支度を整えたポニテ三人衆はリビングへ降りてきた。
その時ユーリさんに、この寮のトイレの使い方を教えた。
さすがに一緒にいてとは言われず、とても安心した。
でもメリーちゃんは昨日と同じようにおねだりしてきた。
慣れることにした。
そのまま俺は日課のトレーニングをしようと思ったのだが、2人がどうしても見たいと言うので、こうして見られながら準備体操を済ませた。
ちょっと恥ずかしかった。
そして諸々が終わり、魔法のトレーニングをしようとしたところで、メリーちゃんからリクエスト。
「……前のオーブが見たい」
と、おねだりされりゃあ断ることは出来ません。
というかもともとやる予定ではあったので、何の問題も無いんだけどさ。
んで、もはや十八番と言っても良いサンダーオーブを生み出した俺は、興奮するメリーちゃんの周りにふよふよ移動させたのだ。
そったらめっちゃいい笑顔でお礼言われた。
ウチの妹分、可愛すぎる。
「マーガレット凄いねぇ!自由自在に動かせるんだ!」
「やっぱりこれって凄いことなんですか?」
「分かってないの!?」
「正直なところ、あんまり……」
割とぽんっと出来たから難しいんだよって言われても分かんないんだよなぁ……。
確かにMPの減りは早い気はするけど、それも感覚的なものだし……。
「そっかぁ…マーガレットは天才なんだね!」
「う〜ん…そういうことは無いと思うんですけど……」
「本当に難しいんだよ?私も子供の頃から練習してるけど、出来る様になったのは割と最近なんだから」
「そうなんですか?」
「うん、大変だったよ〜……」
隠密ギルドの試験で見たときのユーリさんの魔法凄く綺麗だったけど、やっぱり物凄い練習してたんだ。
…なんか…ぽんっと出来てしまって申し訳ないような……だからって謝るのも違うよなぁ……。
「おはようみんな。早いね」
「あっケランさん。おはようございます」
「お、おはようございます!」
「……おはよう」
ちょっとどうしようか困ったところで、洗濯カゴを持ったケランさんが上手いこと現れた。
ナイスタイミン、ケランさん!
「ケランさん、他の人は?」
「まだ寝てるよ。メイカさんとフルールさんは知っての通り、ディッグさんも昨日はそこそこ飲んでたからね。それでも後片付けを手伝ってくれたから助かったよ」
「あっと…昨日は片付けを任せてしまってすみません」
「いや、いいよ。マーガレットちゃんもやることあったでしょ?」
「うっ……」
昨日真っ先に力尽きたユーリさんが気まずそうな顔をする。
通りでさっきどもってたわけだ。
「あれはまぁ、役得な部分もあると言いますか、私もノリノリでやってたのでその辺は気にしてないと言いますか……」
「ははは、確かに。マーガレットちゃん楽しそうだったもんね」
えぇとても楽しかったですとも。
誰かに求められるのって嬉しいですもの。
「うぅ…そっかぁ……見られてるよねぇ…そりゃねぇ……」
ユーリさんが昨日のことをみんなに見られたことに気がついて、顔真っ赤の耳ペターンの尻尾しゅーんで俯いてしまった。
うん、まぁ…頑張れ。
「それじゃあ3人とも、洗濯物干すからちょっと空けてくれる?」
「あっ手伝いますよ」
「ありがと、マーガレットちゃん」
「あっ!わ、私も!」
「ありがとうございますユーリさん」
というわけで、手分けして洗濯物を干していく。
その間、ちょっと気になったのでケランさんに聞いてみた。
「ケランさん」
「うん?」
「昨日フルールさんは無事に運べました?」
「ゔっ!?う、うん運べたよ!?」
おっと……?
焦りすぎて早口になってるぞ……?
「えっ…まさか手ぇ出したりとかは……」
「そんなことしないよっ!」
「あっよかった」
してたらちょっと他の人にご相談が出来るところだった。
「ごほん…!キチンとベッドに運んで、布団をかけて帰ってきたよ…!」
「なるほど、お疲れ様です」
(むぅ〜…なにも無かったんですかねぇ……)
(どうだろ?結局俺たちが部屋に行くまで戻ってこなかったし、すれ違いもしなかったからなぁ……何かはあったと思うんだけどなぁ……)
まぁいいか。
泥酔女性を襲って無いなら。
「そういうのはちゃんとお互い素面のときにやらないと、後で問題になりますからねぇ…」
「そうそう…それに手順もあるし……!ごほんごほんっ!」
ケランさん大丈夫かな……?
自分から墓穴掘りにいってるけど……。
やっぱり昨日凄い疲れたんじゃないか……?
でもそれ言っても追い討ちにしかなりそうに無いし、ここはそっとしておこう。
そんなこんなで黙々と作業を終えた俺たち。
と、そこで俺は気づく。
「あっ…フルールさんがダウンしてるんじゃ、朝ごはんはどうしましょう……?」
「昨日の残りがあるからそれにしようか。あぁでも、メイカさんとフルールさん用にスープは作っといた方がいいかもしれないね」
「作れますか?」
「…スープぐらいならいけると思う…よ……?」
わぁ不安。
と、そこでユーリさんが手を挙げる。
「あっ!はいはいっ!私料理出来ます!」
「そうなんですか?」
「うん!昔からいろいろ教え込まれたから、一通り出来るよ!」
へぇ…それでいて冒険者としての腕も良いって、ユーリさん…中々ハイスペックなお狐さんだったんだ。
「それじゃあ、お願いしても良いですか?私もお手伝いぐらいなら出来ますから」
「うん、任せて!」
「それじゃあ僕はそろそろ他の人を起こしてくるよ」
「はい、お願いします」
てなわけで、練習はここで切り上げて、俺たちはキッチンに向かった。
「……ビリビリ♪」
未だサンダーオーブと戯れるメリーちゃん…サンダーメリーちゃんはもうしばらくそのまま遊ばせてあげよう。
「それでユーリさん。何スープを作るんですか?」
「そうだねぇ……胃に優しいあっさりした味付けにしたいかなぁ……」
「いいですねぇ…あとは葉野菜と、お肉もちょこっと入れましょう」
「お肉入れたら重くならない?」
「脂身の少ない鶏肉なら大丈夫だと思います」
「鳥かぁ…いいねぇ。あっでも、鳥肉はあるの?」
「確かこの前買った食材の中に鶏肉があったと思うんですけど……」
メニューは決めたので、家の中の食材を確認してみる。
まずは冷蔵庫。
「わっ!すご~い!なにこれ、氷室!?」
「似たようなものですね。あの辺にある魔石が冷気を出してくれる魔道具なんです」
「へぇ~!すごいねぇ!マーガレットのお家!これで借り家なんでしょ?」
「はい。ハルキさん…この前教会に行くときにいた男の人が貸してくれたんです」
「あの人かぁ…確かマーガレットの村の人たちのためのお家も建てるって言ってたよね……。いったい何者なの……?」
ダンジョンマスターです。
とは言えない。
俺は食材を取り出しながら適当に誤魔化す。
「ダンジョンマスターのお抱え商人……」
「えっ!?」
「みたいな感じかもですねぇ……」
「あっ…マーガレットも知らないんだ……」
すいません誤魔化しました。
野菜を洗ってユーリさんに手渡し、それを彼女が慣れた手つきで切っていく。
「そうですねぇ……でも、いい人ではありますから」
「……ねぇマーガレット……」
「はい」
「…もしかしてあの人のこと好きなの……?」
「いいえ?」
「えっ」
なにを急にユーリさん……それはない。
切った野菜を鍋にぶち込み、次に鶏肉を切り始めるユーリさん。
「確かに話は合いますしある程度仲もいいですが、私とハルキさんはただの友人ですよ」
「そ、そうなの……?」
「えぇ。それにハルキさん、既婚者ですよ?」
「えっ!?そうなのっ!?」
(きゃあっ!?危ないっ!)
危ない危ない危ない危ない、ノールックカット危ない。
それでもきれいに切れてるの凄いと思う。
真似は絶対しないけど。シンプルに危ないから。
「はい。ララさんとリンゼさんとチェルシー含めた計6人の妻がいます」
「6人っ!?あ、あれ?しかも待って……?チェルシーって子は確か…マーガレットと同じぐらいじゃなかった……?」
「そうですね。正確には分かりませんが、多分私よりは上で、でも成人はしてない…ぐらいじゃないですかね?」
「…………そっかぁ……」
おっとぉ……?
切り終えた鶏肉を鍋に入れるユーリさんの中のハルキの評価が下がった気がするぞ~?
これは…俺のこと教えたら、ほんとどうなるか分からんぞ……?
と、とにかく…フォローを入れておこう……。
「あ~…まぁ……チェルシーも嬉しそうに話してましたし、ララさんたちも幸せそうなのでいいんじゃないですかねぇ……?」
「ふ~ん…」
あっ駄目そう。
コトコト煮込みながら興味無さげな返事を返すユーリさん。
だがここで諦めてはハルキに悪いし、何より俺のことを話したときの反応が怖い。
とりあえずユーリさんが怒ってる理由を探らないと……。
「えっと…ユーリさん……?」
「なぁに?」
「あの…やっぱり……小さい子…未成年と付き合うのって許せませんか……?」
確かに俺も、論理的に引っかかるものはあると思ってるけど。
「ううん?別に私は良いと思うよ?愛に歳の差や種族差なんて関係無い!っていう感じは素敵だと思うの」
あれ?
「えっと…それならなんで怒ってるんですか……?」
「えっ?怒ってる?私が?」
「はい…」
(すごく…)
「(怒って見えます)」
「……なんだろう…今マーガレットに別のオーラが重なってたような……」
ユーリさんが目をごしごしと擦り、俺をじっと見つめてくる。
うん、今マグと上手いことなったからね。
俺も驚いた。でも楽しい。
「う〜ん……?ん〜…まぁいっか……。それで…えーっと?私が怒ってるように見えたんだっけ?」
ユーリさんは何回か俺を見た後、特に異常を見つけられなかったのか諦めて俺の問いに答えた。
「う〜ん……多分、考え事をしてたからそう見えたんじゃないかなぁ……?」
「考え事ですか……?」
「うん、ちょっとね…私の…親のことを思い出しちゃって……」
(えっ?)
「親?」
今の話で?
もしやユーリさんのお母さんはロリっ子ですか?
「私のお父様も何人か妾を囲ってたなぁって……」
「あっそっちですか……」
「えっ?そっちってどっち?」
「いえ…もしかしてユーリさんのお母さんは私ぐらいの頃に結婚したのかなって……」
「あぁ…そういう……」
ある程度灰汁を取った後、鍋に蓋をするユーリさん。
ん〜…妾かぁ……。
「ユーリさんのお父さんは何か重要な役職の方なんですか?」
「ん〜…!…ごめんマーガレット……村のことをあまり外の人に言うのは……」
「あー…まずい感じですか?」
「まずい感じだねぇ……」
「えっ、まずいの?」
俺とユーリさんが鍋の前で会話をしているところに、ケランさんが帰ってきた。
「あっケランさん、おかえりなさい。まずいって言ったのはユーリさんとのお話の感想ですよ」
「そうなんだ。それじゃあ、料理の方は……」
「あっはい、もうすぐ出来ますよ」
「ありがとうございます。それとマーガレットちゃん。メイカさんとフルールさんはやっぱりマーガレットちゃんが起こしてくれないかな?昨日は仕方ないにしても、さすがに起こすのも男性である僕がするのはちょっとね……」
じゃあ何故俺に振るのか。
「分かりました。起こしてきますね」
「ありがとう」
でもユーリさんの前でごねるとややこしいことになるので言わない。
ケランさんはそんな理由、ユーリさんは鍋を見とかないとなので、必然的に俺しかいないのは分かってるし。
メリーちゃんは……下手したら布団に潜り込みそうで……。
などと考えながら2人を起こしに行くためにキッチンから出ると、リビングにサンダーメリーちゃんが帰って来ていた。
「あっ、メリーちゃん。おかえり。もういいの?」
「……うん、ありがとう。ただいま」
メリーちゃんからサンダーオーブを返却してもらい、それを自分の掌から吸収する。
ふむ……最初の頃よりも気怠さは感じないな……。
オーブを自分の魔力に戻すのも慣れてきた。
最初の頃は戻ってくる魔力の感覚がくすぐったくて声が出てたけど、今は我慢できる。
日々の練習の賜物だな。
「私はメイカさんとフルールさんを起こしてくるよ」
「……一緒に行く」
「うん?来てくれるの?」
「……うん(こくり)」
「…ありがと、じゃあ行こっか」
ここまで懐かれてると嬉しいねぇ。
リアルの妹は夢が無いってよく聞いたけど、そんなことは無かった……!
…まぁ血は繋がってないし異世界だしで、これをリアルと言い切れるのかは甚だ疑問なんだけどさ……。
「……ん」
「?……あぁ、はい」
「……♪」
手を繋いでアピールしてきたメリーちゃんの手を優しく握り、ご満悦なこの子と階段を上がる。
(……)
何か無言の圧力を感じるので、後でマグともお話をしようと思う。
第1章の終わりに登場人物まとめをようやく載せました。
待っていた方々、お待たせして申し訳ございません。




