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「日常の不協和音」  作者: Harumin


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28/31

「不穏」

(あーー…頭が痛い……)

昨夜は池田と飲みに行き、記憶がところどころ曖昧だ。

完全に二日酔い。最悪の朝だった。


律からの連絡は、まだない。

あの耳打ちしていた女性――一体誰なんだろう。


こめかみを押さえながらベッドから起き上がったそのとき、

着信音が鳴った。

画面には「恭兵」の名前。


「もしもし…」

「あ、蘭。いまから少し出て来れるか?」

「え?なにかあったの?」


恭兵の声の調子に、蘭の胸にざわりと黒い予感が走った。


***


呼ばれて向かった先は――病院だった。


(なんで…病院?)


待合室の椅子に座る恭兵が見えた。

蘭に気づくと、彼はゆっくり立ち上がり、こちらへ歩いてきた。


「恭兵さん、どうしたんですか?なんで病院にいるんですか?」

「……昨夜、律が事故にあったんだ」


「……え? いま…なんて言った? 事故? 律が…?」


思考が凍りつき、身体が動かなくなった。

恭兵はそんな蘭の肩をそっと抱き、導くように歩き出した。


「行こう。病室に」


病室の扉を開けた瞬間、

ベッドで眠る律の姿が目に飛び込んできた。

点滴、白いシーツ、静かな呼吸。


「あ……律……」


膝から力が抜けそうになりながら近づき、

蘭は律の手を握りしめて額を寄せた。

溢れる涙が止まらない。


そんな蘭の背中に、恭兵の声が落ちてきた。


「昨夜、会社の懇親会のあと、みんなで帰ってる途中でな。

 柏木貴子っていう子が道に飛び出したんだ。

 それを律が助けようとして……巻き込まれたらしい」


蘭は息を飲んだ。


「同僚の話だと、どうもその子、律に迫ってたらしい。

 律は“付き合ってる人がいる”ってちゃんと断ったんだけど…

 そしたら彼女、急に道路に飛び出して――」


恭兵は事実を包まず話してくれた。


蘭の胸の中で、怒りと恐怖が渦を巻いた。

律の身を案じる気持ちと、

身勝手な行動をしたその女への怒りで、

胸が煮え立つようだった。


しばらく沈黙したのち、蘭は静かに尋ねた。


「その女性は?いまどこにいるの?」


「……軽症だったから帰らせたよ。

 蘭に会わせるわけにはいかないだろ」


「……そう」

それ以上、言葉が出なかった。


「律の容態は?」

蘭は震える声で聞いた。


「頭を打ったみたいでな。検査入院だ。

 いまは眠ってる」


恭兵の声は落ちついていたが、その奥に不安が滲んでいた。


「……わかった」


いまはただ、

――律が目を覚ましてくれることを祈るしかなかった。

 


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