「いろいろな距離感」
池田と少しずつ距離を縮めることができた蘭は、
彼女が素の自分見せるようになって、態度も良くなったことに
どこかホッとしていた。
(本当は素直で可愛い子なんだな)
と感じることも増えていた。
だが、最近の彼女は若手男性から人気で、いつも周りには男が集まっている…。
これはこれで、女性陣の反感をかってしまう…と思ってた矢先
耳に入ってきたのは、やはり…女の嫉妬というものであった…
「最近、池田さんの周りに男ばっか集まってるよね〜」
「そうそう ちょっと若くて可愛いからってさ〜」
あ〜また、女の嫉妬があからさまに…だが、
( 可愛いのは生まれつきなんだから、仕方ないだろ…)
と蘭は巻き込まれたくなくて、その場をそっと離れた。
カフェテリアに向かうと、打合せスペースに男女合わせて4〜5人いた中に、
律の姿を見つけた。
(あ 律だ… 律が打合せしてるところあんまりみたことなかったなあ)
蘭は少し離れたところから、律を眺めていた…そのとき
一人の女性が律に近づき、耳元で何かを囁いた…
その瞬間ーー
心臓がドクンと鳴った、嫌な音がする…
思わず下を向いて、目を逸らしてしまった…
蘭は心拍の速さに動揺しながらも、席を立ち自席に戻ることにした…。
戻った後も、さっきの光景が離れない…
(あれは何?あの女の人、律に対する距離が近かったよね…)
不協和音のように思考がまとまらず胸が締め付けられていく。
「吉野さん、吉野さん…」
と声をかけてきたのは、恭兵だった…
「どうしたの? 顔色悪いよ?…」
ハッと現実に戻った蘭は、深く息を吸い込んで答えた。
「…だ… 大丈夫です」そう言って 仕事に戻った。
ーーそして仕事は終わり
池田が蘭のところに来た。
二人は一緒に帰る約束をしていた。
エレベーターを降り、エントランスを歩いているとーー
目の前に、さっき律に耳打ちしていた女性がいた…。
その、女は私の方にどんどん向かって歩いてきた…
(え なんでこっちくるんだろう…)
と、その時・・・通り過ぎると同時に彼女は
「律センパイ〜こっちですよ」
といった…そして後ろから
「なんだよ…」と聞こえた声は…
”律だった…”
蘭は、とっさに後ろを振り向いて律の顔を見た…その瞬間律と目が合った。
律は彼女に腕を引っ張られながら、蘭に向かって叫んだ。
「蘭、あとで電話すから・・・なっ」
と言って彼女と同僚たちの輪に連れて行かれてしまった…。
蘭は返事もできないまま、声が出ない…
(律から何も聞いていない…いつも事前に必ず連絡してくれるのに…
なんで?どうして?律………!)
戸惑いを隠せない蘭は、しばらく黙ったままだった。
そんな蘭を見て、池田が話し始めた…
「あの人、”蘭”っていいましたね・・先輩の彼氏ってあの人だったんだ…
センパイ…カッコイイ彼氏持つとこんなこと当たり前ですよ。
覚悟して付き合わないと大変ですよ!
……ねえ、センパイ、飲みに行きません?センパイのおごりで…」
池田の明るい一言で、ふっと心が軽くなった…
(そっか…そうだよ、カッコイイもんな律は…)
「なんで私のおごりなんだよ〜 でも、まあ、いいよ!
おごるからつきあいなさい!」
蘭は、このまま一人になったら胸が苦しくなる、
今は池田と一緒にいた方がいい。
一時的にでも 律のことは考えるのやめよう。
大丈夫。律を信じてる…




