「新しい環境と新しい出会い」
春――
別れと出会いの季節・・・
咲は樹との新しい未来を掴み、その一歩を踏み出していった。
****
桜が舞う季節、また“何かが始まる音”が…
新しい環境での日常が始まった…
ここで感じる音がどんなふうに聞こえてくるのかな
配属された部署は、佐々木恭兵がいる総務部。
(……いいのか悪いのか……複雑すぎる)
まあ、そんなこと考えている余裕もないくらい…
忙しすぎた…
新しい業務は覚えることもいっぱい。
備品管理、施設管理、福利厚生といった会社全体、幅広い業務がある。
しかし、事務職の中でも、総務、人事、経理関連の仕事は、
携わった人にしか、わかり得ない苦悩がたくさんある。
適材適所のバランスも欠かせない。
そんな中、蘭の耳に飛び込んできたのは――
「この書類を閉まって帰らなかったのは、覚えてますか?」
「はい、でも、朝来たらなくてキャビネットに入ってるのはみました…」
「そうだね…他の人が閉まってくれたからでしょ…しまわないでいいって
誰かに言われたの?」
「いいえ、自分で判断しました…別に個人情報じゃないと思ったんで…」
「たとえ個人情報ではなかったとしても、管理はちゃんとしてもらいたい、
これが行方不明になっても困るから…これからは書類はちゃんと
キャビネットに閉まってくださいね…」
「は〜〜い」
隣から聞こえてきた会話に、蘭は聞こえてないふりをしていた…
新人派遣 池田千紘…多分25、6歳あたり、またすごいのがきましたね。
言い方・・・愛想はないね〜、可愛い顔してるのに……残念だな
…って 私には関係ないか…
*****
「………蘭………」声をかけてきたのは、律だった…
そう、律はまた四月からシステム開発部で働くことになった…
これも総務部人気No1の”佐々木恭兵” こと、”律のいとこ”が
依頼したことだった…。
「蘭、今夜は外でご飯たべようか、気分転換に」
「うん!行きたい!何食べようか〜」
蘭は午前中のモヤモヤが吹き飛び、蘭の表情は緩んでいく。
*****
「吉野さん、申し訳ないんだけど、池田さんのフォローよろしくね」
(はぁぁぁ……またか。これ何回目?)
と心の中で叫びながら、ため息を飲み込む。
何を教えるんだよ…愛想よくしろって教えるのがいいのか??
「センパイ!ちょっといいですか?」
ん?センパイ?だれ? え?私? 振り返ったら池田千紘が立っていた。
「センパイって…呼び方 なにそれ… なんでしょうか?」
「あの 仕事とのことじゃないんですけど… 」
「あ そう… ここじゃ話にくいよね… お茶買いにいこうか」
二人は社内のカフェテリアへ移動した…
「それで、話って何?」
蘭はコーヒーを一口 口にして切り出した。
「センパイ、ここ長いんですよね?」
「う うん、前は違う部署にいたけど…」
「センパイって佐々木さんとよく、話してますけど、狙ってますか?」
「は?」 狙ってる?何を?
「どうして?私が?狙ってませんけど!
___彼氏いるんだけど___」
「そうなんですか〜…いるんですね…よかった〜」
「なにその反応、ちょっとなんか失礼じゃない?」
「あ すみません… センパイが彼女だったらって
勝ち目ないと思ってたんで…
私………佐々木さんカッコいいなって…」
(え、なんかしおらしい態度してる…なんか可愛い…)
(恭兵さんは…律のいとこで、優しくて、頼りにもなる、
でもチャラところもあるけど…でも 恭兵さんのタイプなのか?)
「へ〜 好きになったってこと?まあ 一応社内でも
”総務部人気No1の”佐々木恭兵” って有名だから…敵は多いね」
「そうなんですね、やっぱりそうですよね、モテますよね…
センパイ 佐々木さんと仲良いのかなとおもって…
佐々木さんを紹介してもらえませんか…」
「はあ〜〜〜〜??私が?
なんで、池田さんのことよく知らないのに
私にはメリットないよね?」
「そう言わないでくださいよ、じゃあセンパイ仲良くしてください!
お願いします!」と頭を下げてきた。
(なんだ この子さっきと全然態度が違う…)
「じゃあその前に あなたのことちゃんと知りたい…」
蘭は恭兵を紹介するにしても、私がこの子を何も知らない
見極めてさせてもらう。
****
蘭は待合せのレストランで律を待っていた。
さっきの池田千紘の言葉が、まだ耳の奥でリピートされている
しばらくすると律が恭兵とやってきた。
(え!恭兵さん…もきたの? うわ〜このタイミングでか)
「お待たせ… 恭兵もついてきちゃって…ごめんな」
「あ うん 大丈夫… 」
(おう…こっちも探ってみて
どんなリアクションするかみてみよう)
三人で食事をしながら、律を呼び戻した経緯や、
総務のひとの雰囲気など、恭平に教えてもらった。
その流れから、恭兵から
「そう言えば、蘭、うちに新しい子入ってでしょ なんだっけ、
可愛い子 えーっと、い い…」
「池田さん?」
「そうそう!あの子可愛いよね…」
(わお〜〜〜〜マジで?恭兵さんから聞いてくるとは、
…そうきたか…)
「恭兵さん あの子タイプなの?」これはチャンス!
「ん〜〜 どんな子かわかんねえけど、お前らみてたらさ〜
なんかいいなあって思ってさ…彼女欲しくなったんだよな」
「恭兵、おまえ、彼女ってめんどくさいって言ってたじゃん
人肌恋しくなったんだな…」
「うるせー いいだろ」
いつもの軽いノリの恭兵ではない感じがした。
まだ、池田のこともよくわからないし……
蘭は自分の勘と、どんな音で聞こえてくるのか
試してみようと思った。 少し楽しみが増えた気がした。




