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「日常の不協和音」  作者: Harumin


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20/31

「今と過去 ー探してた人ー」

長井が会社から姿を消したことで、あの“圧”のような怖さは消えた。

けれど、社内には相変わらず様々な音が混ざり合い、

いつも通り雑多な一日が流れていた。


蘭は、その波の中で静かに過ごしていた。


——でも、律とはあれ以来会えていない。短いメッセージで終わる。

なんとなく、胸がざわついてリズムがずっと乱れている…。


(それにしても、総務の佐々木さんってどんな人なんだろう…

 救世主なんて言われちゃって……そんな人いるんだなあ)


その日は珍しく、何もなく穏やかに終わろうとしていた。

ほんの少し、心も軽かった。


「帰りに……律に会いに行ってみようかな」

 ケーキを選んでいた時、隣にスッと人影が…


「あ〜このケーキ、律が好きなやつ!… 美味しいよね〜」


と話しかけてきた…

(え? 律?っていった? 誰この人・・・律の知り合い?)


「ちなみに蘭ちゃんは何が好き?〜 迷うよね〜」


(はあ?え?今、私の名前呼んだ?ちゃんづけ?? 

だれ、私この人知らないけど…

 怖いこわい、律の名前、私の名前ちゃんづけで呼んでくるヤツ 

 ヤバい ホントあんた誰? )

 

 思わず一歩、後ずさる。


「あなた誰ですか?」

 失礼にも冷たく聞いてしまった…


その人物は驚くこともなく、柔らかな笑みを浮かべた。

「あ〜 すみません…総務の佐々木恭兵と言います。初めまして…」


(え〜〜〜この人が救世主の佐々木さん?)

 追い討ちをかけるように

「あ〜〜〜それと…水城 律のいとこの佐々木恭兵です。よろしく!」

 と笑顔で挨拶された。


 (はあ〜〜〜律のいとこ?何それ 嘘でしょ えーーー?

  待って待って、ちょっと えっ身内? 

  あの総務の佐々木さんが、律のいとこ…?!

そんなこと聞いてないけど)


 もう蘭の頭の中が、一斉に音が鳴り響き やかましすぎて

 しばらく声が出なかった…


恭兵はすぐに「あっ、怖がらせた」と気づいた。


「ごめん、ごめん……!」

慌てて両手を軽く上げ、距離を一歩引く。


「急に話しかけられたら、びっくりだよね。

 律の名前とか、蘭ちゃんの名前とか……言われたらね〜〜

 ごめんね」


少し間をおいて、軽いテンションを少し、柔らかい声で続けた。

「律から話、聞いてるよ。蘭ちゃんのこと!

 でも……変な意味じゃないから安心してね」


蘭はまだ混乱していて、言葉にして声が出ない…

ただ、どうしたらいいのか…逃げ場を探すように視線が定まらなかった


「えっと……まずは、これね はい!」

恭兵は自分の名刺を渡した。

それと社員証を取り出して見せた。


「俺、怪しい人じゃないってわかってくれた?

 ほんとに“律のいとこ”です」


「それで……もしかして蘭ちゃん 今ケーキ買って

 ……律のとこに行くつもり、だった?」


優しい声。

蘭は、律に似た波長だと だんだん気づいてきた

最初は驚きすぎて…感じ取れなかったけど…


恭兵は蘭の戸惑いに気づいたまま、

踏み込みすぎないように微笑んだ。


「……怖がらせたなら、ほんとにごめんね。

  でも、話がしたかったんだ」


蘭は小さく瞬きをした。

さっきまでの軽い雰囲気とは違う。

声のトーンが、ほんの少しだけ深く落ちる。


「……で、律の状態 のことなんだけど」


蘭ははっとした、何かあったの?律が?何?


「アイツさ……最近、まともに眠れていなくて

 仕事の疲れだけじゃなくて…ね

 気持ちが揺れてる時の律って、めちゃくちゃ不器用になるんだよ。

 連絡が短かったり、返信しなくなったり、沈黙してしまうんだ…

 冷たく感じたりするかも知れないけど……

 それ、たぶん今、必死に整理してるところなんで

 わかってやってくれないかな」


蘭は、少し気持ちがわかった…その不器用になる感じも

どうやって伝えたらいいのか…変わらなくなる私の不協和音と同じ

律も今、音が混ざってるんだきっと…


恭兵は優しく笑った。


「で、まぁ……その揺れの原因の半分は“蘭ちゃん”で、

 もう半分は“過去”」


「私と……過去?」やっと 声が出せた。


「カオリって子と会ったでしょ?」

「はい…」

「別れたのは結構前だけど…

 アイツは、ちゃんと向き合えてなかったんだよ。

 逃げて、罪悪感だけ抱えたまま。俺にも責任があるんだ、

 逃げろって言ったの俺だから(気まずそうな顔をする恭兵…)

 でもね、蘭ちゃんと会って……やっと、あの頃の自分に決着つけようとしてる

 わかってあげて…くれないかなっ」


 「誤解しないでね?律はちゃんと前に進んでるよ、

 蘭ちゃんと出会ってから…アイツ変わったし、

それに 俺、律にむちゃくちゃ頼まれて…動いたんだから…


 あの長井を飛ばしたの、半分は会社のためでもあるけど……

 もう半分は“蘭ちゃん守るため”でもあったんだからね

 律はそういう一途なヤツなんだ。」


 ただ……ちょっとだけ、アイツも痛むんだよ。

 誰でも、古傷は天気悪いと疼くでしょう?


 だから、あの不器用男が変な距離感でも、怒らないでやってね

 律は“同じ波長の人”をずっと探してた…やっと出会えたのに、

 でも、ちょっとタイミングが合わなかっただけ…」


蘭は——私のために 長井さんのことを?そこまで…………

律のさがしてた人は同じ波長で…心地よくて…調律された安心する音。

律は私を見つけたくれた…

私も同じ…だから律を見つけた。

これって奇跡じゃん!!奇跡が起きたんだよ!

蘭はこの気持ちを、早く律に伝えたいと思った。


恭兵は蘭の反応を確かめるようにしばらく見つめていたが、

やがてふっと表情を緩めた蘭をみて、

(……ああ、律が惹かれた理由、わかる気がする)

”律 よかったな”と 恭兵は心からそう思えた。


「じゃあ 律のところ行こっか」

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