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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第6章 南への旅

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第96話 ミラディア最大の商業都市

 商隊を見送ったあと、街道脇へ寄せていた九体の魔物を《収納》へ入れ、俺たちは再び南へ向かった。


 それから二時間ほど歩いた頃だった。


「……大きい」


 ルナが前を見ながら呟いた。


 緩やかな坂を上った先に、大きな町が広がっている。


 町を囲む石壁の向こうには大小の建物が隙間なく並び、あちこちから煙が上がっていた。


 それ以上に目につくのは、町へ向かう人と荷物の多さだ。


 木箱を何段も積んだ荷馬車。


 布を載せた荷車。


 果物を山積みにした馬車。


 何頭もの荷馬を引き連れた商人たち。


 町の外にも大きな倉庫が並び、荷物を降ろす人たちが忙しそうに行き来している。


「ずいぶん賑やかですね」


 フェリシアが言う。


「ここ、ミラディアで一番大きな商業都市なんだよ」


「一番ですか?」


「うん。北から来た物も南から来た物も、かなりここに集まるって聞いたことがあるよ」


 この先の街道はセルヴァン王国へ続いている。


 北へ向かえばサハル王国にも行ける。


 両方から商人が集まるなら、これだけ大きな町になるのも分かる。


 近づくにつれて、風に色々な匂いが混じり始めた。


 焼いた肉。


 香辛料。


 干した魚。


 甘い果物のような匂いもする。


「いい匂いですね」


 フェリシアが町の方を見る。


「フェリシアさん、もう食べ物探してません?」


「探してませんよ」


「でも、あっち見てますよね?」


「たまたまです」


 ルナが横で笑った。


「フェリシアは食べるのが好きなんだね」


 門を抜けて町へ入る。


 中は外から見た以上に人が多かった。


 大通りの両側には店が並び、その前では店主たちが大声で客を呼び込んでいる。


 積み上げられた布。


 乾燥させた薬草。


 木箱いっぱいの果物。


 金属製の鍋や農具。


 見たことのない色の香辛料まである。


 さらに通りの奥では、大きな倉庫へ荷馬車が次々に入っていく。


「ベルガントとはまた違いますね」


「ベルガントは冒険者や鉱山に関係する人が多かったですけど、ここは商人が多いですね」


 フェリシアの言う通りだ。


 町全体が巨大な市場みたいだった。


「まずギルドに行かない?」


 ルナが言う。


「さっき倒した魔物ですか?」


「うん。売れるんでしょ?」


「そうですね。このまま持っていても仕方ないですし」


 道を歩く冒険者たちの流れを追っていくと、大通りから少し外れた場所に冒険者ギルドがあった。


 建物自体もかなり大きい。


 三人で中へ入る。


◇


 ギルドには受付が何列も並んでいた。


 依頼を受ける冒険者。


 素材を持ち込む冒険者。


 商人らしい人と話をしている職員もいる。


 ベルガントのギルドとは違う忙しさだ。


「素材の買取をお願いします」


 受付で声をかける。


「何をお持ちですか?」


「狼型の魔物が九体です」


「九体?」


「《収納》に入っています」


 受付の女性が少し目を見開いた。


「《収納》持ちでしたか。では、裏の買取場へお願いします」


 三人で案内された場所へ向かう。


 広い石床の上で《収納》を使った。


 一体。


 二体。


 三体。


 ギルド職員が目を丸くしている中、九体すべてを並べる。


「これで全部です」


「そ、それは《収納》ですか? 珍しいですね……」


「はい。重宝してます」


「そうなんですね……。魔物の状態もいいですね」


 職員が一体ずつ確認していく。


「すべて買い取れます。査定に少し時間をいただきますが」


「お願いします」


 待っている間に依頼掲示板を見ることにした。


 大きな掲示板には大量の依頼書が貼られている。


「すごい数」


 ルナが上から下まで眺める。


 街道護衛。


 荷物運搬。


 薬草採取。


 魔物討伐。


 ダンジョン関係の依頼もある。


「依頼は多いですね」


「でも報酬は……」


 フェリシアが何枚か見比べる。


「ベルガントで見た依頼ほど高額ではないですね」


「二人の基準がベルガントになってるのがおかしいんじゃない?」


 ルナが言った。


「そうでしょうか?」


「昨日、二人とも一千万以上持ってるって聞いたばっかりなんだけど」


「それと依頼の報酬は別ですよ」


 さらに見ていくと、一枚の依頼書が目に入った。


【東部ダンジョン調査・討伐】


【対象ランク:B以上】


【依頼内容:ダンジョン内部の魔物生息状況の確認、および魔物の討伐】


【報酬:180,000ジェニー】


「東部ダンジョン」


「この町の東にあるみたいですね」


 依頼書の横には簡単な地図も貼られていた。


「十八万ジェニーか」


「ベルガントにいた頃なら、それほど高い依頼ではないですね」


「また言ってる」


 ルナが呆れた顔をする。


 でも、金額だけで依頼を選ぶ必要もない。


「せっかくここまで来たんですし、何か一つ依頼を受けてみません?」


 フェリシアが言う。


「俺もそう思ってました」


「私もいいよ」


 ルナも依頼書を見る。


「ダンジョンなら何度か入ったことあるし」


「じゃあ、ここへ行ってみますか」


「今日?」


 ルナが聞く。


 窓の外を見ると、すでに日はかなり傾いていた。


「今から準備して行くには遅いですね」


「それなら明日ですね」


 フェリシアが言う。


「今日は必要なものを揃えて、明日の朝これを受けましょう」


「賛成」


 その時、受付から名前を呼ばれた。


「査定が終わったみたいですね」


 三人で戻る。


「九体合わせて二十七万ジェニーになります」


「二十七万」


「はい。こちらの金額でよろしければ、現金ですぐにお支払いできます」


「お願いします」


 しばらくすると、硬貨の入った袋が用意された。


「三人で分けましょう」


「三等分?」


 ルナが聞く。


「はい。一人九万ジェニーです」


「でも、私が仲間になったばっかりなのにいいの?」


「今日倒した魔物は三人で戦ったんですから、三人で分ければいいでしょう」


「私もそれでいいと思います」


 フェリシアも頷く。


「……じゃあ、もらう」


 ルナが袋を受け取り、少し嬉しそうに中を見る。


「九万……」


 フェリシアは自分の袋を《収納》へ入れた。


 俺も自分の分を入れる。


 ルナは袋を持ったまま、自分の荷物を見る。


「これ、どこに入れよう」


「俺が預かっておきましょうか?」


「いいの?」


「袋を分けておけば、俺の分とは混ざりませんから」


「じゃあお願い」


「必要な時はいつでも言ってください」


「うん」


 ルナの九万ジェニーも、その袋のまま《収納》へ入れた。


 ◇


 ギルドを出ると、明日のダンジョンに必要な物を揃えることにした。


 最初に道具屋へ入る。


 ランタン用の油。


 保存食。


 水。


 ルナがいるけど一応、ポーションと解毒薬も追加した。


「解毒なら私ができるよ?」


 ルナが言う。


「ルナ自身が毒を受けるかもしれないでしょう」


「あ」


「それに、魔力が使えない状況になる可能性もあります」


「そっか」


「使わなければ、あとでまた使えますからね」


「準備いいね、アレン」


「ダンジョンは何があるか分かりませんから」


 買った物はフェリシアの《収納》へ入れていく。


「やっぱり《収納》欲しかったなあ」


 ルナが言う。


「見れば見るほど便利なんだよね」


 次に武器屋へ行った。


 俺とフェリシアは装備を買い替える必要はないが、ルナには矢が必要だ。


「何本買います?」


「百本くらい」


「そんなに?」


「ダンジョンだと射った矢を回収できるとは限らないからね」


「なるほど」


 矢と一緒に予備の弦も買う。


 これもフェリシアの《収納》へ。


「これで大体揃いましたかね」


「うん」


「ポーションも十分あります」


 店を出て大通りへ戻った。


 夕方になっても、通りの人は減っていない。


 仕事を終えたらしい人たちが増え、食堂や酒場の前は昼間以上に賑やかになっていた。


「わあ……」


 隣から小さな声が聞こえた。


 ルナが立ち止まっている。


「どうしました?」


 視線の先には宝飾店があった。


 店先に敷かれた濃い布の上へ、首飾りや指輪、耳飾りが並べられている。


 赤。


 青。


 緑。


 小さな宝石が夕日に反射して輝いていた。


 ルナの目が明らかにさっきまでと違う。


「宝石、好きなんですか?」


「うん」


 意外と素直に頷いた。


「見るの好き」


 少し店へ近づく。


 中でも淡い緑色の石がついた耳飾りをじっと見ていた。


「綺麗……」


「買わないんですか?」


「買わないよ」


「さっき九万ジェニー入りましたよ?」


「旅を始めたばっかりなのに、いきなり宝石に使わないって」


 ちゃんとしていることを言っているが、視線は宝石から離れない。


「でも、似合いそうですね」


 フェリシアが言った。


「そうかな?」


「はい。髪の色にも合いそうです」


「…………」


 ルナがもう一度耳飾りを見る。


 少しだけ嬉しそうだった。


「う~。欲しいけど今日は見るだけにしとく」


「欲しくなったら、ルナのお金なので好きに使っていいですよ」


「分かってる。でも今はいい」


 そう言って店から離れる。


「ほら、宿探すよ」


 さっきまでより少し機嫌が良さそうだった。


 ◇


 その日は一人一万ジェニーの宿を見つけた。


「昨日より安い」


 ルナが宿の看板を見る。


「三人で三万ですね」


「昨日はアレンに出してもらったから、今日は私も自分で払う」


「分かりました」


 《収納》からルナの袋を取り出す。


 ルナがそこから一万ジェニーを払った。


「悪いんだけど、残りは預かっておいて」


「はい」


 再び袋を《収納》へ戻す。


 俺とフェリシアもそれぞれ自分の宿代を払った。


 夕食を済ませたあとは早めに休む。


 明日は久しぶりのダンジョンだ。


 ◇


 翌朝。


 朝食を終えると、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


 昨日見つけた依頼書は、まだ掲示板に残っている。


【東部ダンジョン調査・討伐】


【対象ランク:B以上】


【依頼内容:ダンジョン内部の魔物生息状況の確認、および魔物の討伐】


【報酬:180,000ジェニー】


「これですね」


「受けましょう」


 依頼書を外し、三人で受付へ向かう。


「こちらの依頼をお願いします」


 受付の女性が依頼書を見る。


「東部ダンジョンの調査依頼ですね。三名で受けられますか?」


「はい」


「冒険者証をお願いします」


 三人でカードを出す。


 受付の女性が順番に確認した。


「アレン・ヴァルディス様、Aランク。フェリシア・ロート様、Aランク……」


 一度顔を上げる。


 そしてルナのカードを見る。


「ルナ・アルヴェイン様、Bランク。この三名でしたら問題ありません」


 依頼書へ印が押された。


「東部ダンジョンは東門から街道を進んだ先にあります。

 今回は内部の魔物を討伐しながら、種類や数に普段と違う点がないか確認してください」

 

 受付の女性からこれまでの記録を見せられながら質問をする。


「普段と違う点?」


「はい。最近、浅い階層で普段より魔物が多いという報告が何件か入っています」


 俺とフェリシアが顔を見合わせる。


「原因は分かっているんですか?」


「今のところ分かっていません。その確認も含めた依頼です」


「なるほど」


「危険だと判断した場合は無理に奥へ進まず、分かった範囲だけでも報告してください」


「分かりました」


 依頼書を受け取る。


 ギルドを出ると、ルナが弓を背負い直した。


「魔物が増えてるんだ」


「みたいですね」


「ちょうどいいんじゃない?」


「何がです?」


「三人で初めて受ける依頼」


 ルナが笑う。


「昨日よりちゃんと戦えるようになってるか、試せるでしょ」


 フェリシアもロッドを持ち直す。


「無理はしないでくださいね」


「分かってるって」


 俺も竜爪剣を確認する。


「それじゃあ、行きましょうか」


「はい」


「うん」


 目的地は町の東にあるダンジョン。


 三人で受ける、初めての正式な依頼だ。


 俺たちは東門へ向かって歩き始めた。


【保有:37,290P】

【累計獲得P:315,500P】



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― 新着の感想 ―
普段の状態が分からないのにどうやって異常と判断するのよ
スキル付与に制限かけたのは良いですね。 PT経費は一元管理してることにしたほうがよくない? 毎回宿代を個別に出す出さないとか、せせこましい
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