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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第6章 南への旅

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第91話 エルフの里

 ルナと並んで、南へ続く街道を歩く。


 三人になっただけなのに、昨日までとは少し雰囲気が違った。


 ルナは俺たちの少し前を歩きながら、時々街道脇の森へ視線を向けている。


鳥の鳴き声や茂みが揺れる音にもすぐ反応していて、この森にかなり慣れているようだった。


「ルナはこの辺りに住んでるんですか?」


「もう少し南。街道から東へ入ったところに私の村があるよ」


「エルフの集落ですか?」


「そう。エルフとハーフエルフが住んでる」


 国境の兵士が言っていた集落だろう。


「じゃあ、昨日は村へ帰る途中だったんですね」


「うん。北の町で依頼を受けてたから」


「ルナも冒険者なんですね」


「見れば分かるでしょ?」


「弓使いなのは分かりましたけど」


「冒険者だよ。あなた達と一緒」


 ルナが振り返る。


「何ランク?」


「Aです」


 ルナの足が止まった。


「……何?」


「Aランクです」


「二人とも?」


「はい」


 フェリシアも頷く。


 ルナが俺とフェリシアを交互に見る。


「本当に?」


「本当ですよ」


「ちょっと見せて」


 完全に疑われている。


 肩に掛けている小さなバッグから冒険者証を取り出した。


フェリシアも自分のバッグから冒険者証を出す。


 ルナが俺の冒険者証を見たあと、続けてフェリシアのものを確認する。


「……本当に二人ともAランク」


「だから言ったじゃないですか」


「だって、私とそんなに歳変わらないでしょ?」


「よく驚かれます」


「サハル王国ってAランクになるの簡単なの?」


「多分、違うと思います」


「そうですよ。でも私たちの場合、アレンさんが凄すぎるんです」


 フェリシアが言う。


「フェリシアさんだって活躍されてるじゃないですか?」


「そ、そんなことないです」


 ルナが吹き出した。


「二人とも変なの」


「ルナは何ランクなんですか?」


「Bランク」


「やっぱり高いですね」


「やっぱり?」


「まぁ、あの弓の腕を見てたので」


「……まあね」


 少しだけ得意そうな顔をする。


 褒められると照れるのに、実力には自信があるらしい。

 

 ◇

 しばらく話しながら歩くと、ルナが街道の東側を指した。


木々の間に、人が二人並んで歩けるくらいの細い道が続いている。


「私の村、こっち」


「じゃあ、俺たちはこのまま街道を進んでますね」


「何で?」


「え?だって人間が勝手に入ったら駄目なんですよね?」


 国境の兵士にそう言われている。


 そもそもエルフの村に行く予定はなかった。


「私と一緒なら大丈夫だよ。村の人に会ったら私が説明するし、このまま南へ行っても今日は近くに大きな町ないから、ウチに泊っていきなよ」


 フェリシアを見る。


「どうします?」


「せっかくですし、私は行ってみたいです」


「俺もです」


「じゃあ決まり」


 ルナが森の中へ続く道へ入った。


◇


 街道を離れると、森は少しずつ深くなっていった。


 何人かで腕を回しても届かなそうな巨木が増え、頭上では太い枝が幾重にも重なっている。


昼間なのに森の中は薄暗く、木漏れ日が苔の生えた地面をまだらに照らしていた。


 それでも歩きにくさはない。落ち葉は道の両側へ寄せられ、地面から大きく飛び出した根には土が盛られている。


自然の森に見えるが、人の手できちんと管理されているようだ。


「この辺りから村の人が手入れしてるんですか?」


「そうだよ。森を傷めないようにしながらね」


「木は切らないんですか?」


「必要なら切るよ。でも、育つのに何十年もかかった木を、何でも切ればいいってものじゃないでしょ?」


「なるほど」


 さらに進むと、道の横を澄んだ水が流れ始めた。


浅い水路には小さな魚が泳ぎ、その上には丸太と板を組み合わせた橋が架けられている。


 橋を渡った先で木々の間が大きく開けた。


「着いたよ」


「……すごいですね」


 フェリシアと一緒に足を止める。


 巨大な木々の間に家が並んでいた。


 地面に建てられた家だけではない。太い幹の途中にも木造の家があり、枝から枝へ吊り橋が渡されている。


木を全部切り倒して場所を作るのではなく、森の形を残したまま、その中へ村を組み込んだような景色だった。


 家々の間には薬草らしい植物が整然と植えられ、小さな水路を透明な水が流れている。


弓を背負った長い耳のエルフが歩き、その横を人間とほとんど変わらない耳の子供たちが駆け抜けていった。


「エルフだけじゃないんですね」


「ハーフエルフも多いよ。人間も少し住んでる」


 ルナよりずっと長く尖った耳を持つ人もいる。あれが純血のエルフなのだろう。


「ルナ!」


 突然、声が飛んできた。


 一人の少年がこちらへ走ってくる。


ルナより長い耳をしているので、エルフらしい。


「どうしたの?」


「大変なんだ!また人が倒れた!」


 ルナの表情が変わった。


「また?」


「今朝から六人。マリエルさんたちが治療してるけど、良くなってもまた熱が出るんだ」


「母さんは?」


「大丈夫。ずっと治療してる」


「分かった」


 ルナがすぐに走り出そうとして、俺たちを振り返る。


「ごめん。村で何かあったみたい」


「俺たちも行きます」


「でも――」


「何か手伝えるかもしれません」


 フェリシアも頷く。


「私にもできることがあるかもしれません。行きましょう」


 ルナは少し迷ったあと、頷いた。


「……分かった。来て」


◇


 連れてこられたのは、村の中央近くにある大きな木造の建物だった。


 中には十人近い人が横になっている。エルフもいればハーフエルフもいて、まだ幼い子供までいた。


 顔を赤くして眠っている者や、腕を押さえながら苦しそうにしている者もいる。


「ルナ?」


 奥から一人の女性が歩いてきた。


 ルナと同じ淡い金色の髪をしているが、耳はずっと長い。


年齢は分かりにくいものの、人間なら二十代くらいに見える。


「母さん」


「戻っていたのね」


「今さっき。それより、みんなは?」


「まだ原因が分からないの。熱と手足の痺れがあって、魔力もうまく扱えなくなるみたい」


「回復魔法や解毒魔法は?」


「症状は少し和らぐけれど、しばらくすると戻ってしまうわ」


 ルナが横になっている男の額へ手を当てる。


「熱い……」


「ルナ、その二人は?」


「あ、昨日会った冒険者。アレンとフェリシア」


「初めまして。アレン・ヴァルディスです」


「フェリシア・ロートです」


「私はマリエル。ルナの母です」


「二人とも冒険者Aランクなんだよ」


「Aランク?」


 マリエルさんが驚いたように俺たちを見る。


「二人とも?」


「はい」


「ルナとあまり歳が変わらないように見えるけれど……すごいのね」


「母さん、それより」


「そうね」


 マリエルさんが机の上に置かれていた木の器を手に取った。


「症状が出た人たちに共通しているのは、今朝この水を飲んでいることなの」


「村の西の泉の水だよね?」


 ルナが聞く。


「ええ。昨日までは何ともなかったし、見た目も匂いもいつもと変わらないのよ」


 器の中には澄んだ水が入っている。濁りもなく、変な匂いもしない。


「少し見てもいいですか?」


「もちろん」


 器を受け取る。


「《鑑定》」


 文字が浮かんだ。


【泉の水】

【毒ゴケの毒素が混入している】


「……毒が入ってます」


「分かるの?」


 ルナがすぐ横へ来る。


「《鑑定》では、毒ゴケの毒素が混じっていると出ています」


「アレン、《鑑定》なんてもってるの?」


「うん」


 マリエルが眉を寄せる。


「泉の周りには毒ゴケなんて生えてないわ」


「水はどこから来てるんですか?」


「この泉の水は西側から流れてきてる」


 ルナが答えた。


「もっと上流があります?」


「あるよ。でも、かなり森の奥。道もないし、魔物も増えるから普段はほとんど行かない」


「だったら、上流で毒ゴケが増えている可能性がありますね」


 水そのものが原因なら、泉だけ調べても解決しない。


「明日、上流を確認しましょう」


「アレンさん」


 フェリシアが俺を見る。


「行くつもりですよね?」


「もちろんです」


「ですよね」


「ちょっと待って」


 ルナが俺たちを見る。


「これは私たちの村の問題だよ。二人はセルヴァンへ行く途中なんでしょ?」


「一日や二日遅れても困りません」


「でも……」


「原因が分かるかもしれないのに、そのまま行く方が気になります」


 フェリシアも頷く。


「私も手伝いたいです」


 ルナが俺たちを見て、少し困ったような顔をした。


「……変な人たち」


「最近、よく言われる気がします」


 横でマリエルが小さく笑った。


「ありがとう。二人とも」


「いえ」


「今日はもう日が傾いているから、上流へ入るのは明日にした方がいいわ。

森の奥は日が落ちると危険よ」


 窓の外を見ると、木々の間はすでに薄暗くなり始めている。


「そうします」


「今夜はうちへ泊まっていって。空いている部屋があるから」


「いいんですか?」


「村を助けようとしてくれている人を、森の外で寝かせるわけにはいかないでしょう」


「ありがとうございます」


 ありがたく泊めてもらうことにした。


◇


 夜。


「うちはたまたま他の泉の水を使ってるから毒ゴケの心配はないはずよ」


 俺は≪鑑定≫で水を確認したが異常がないことを確認した。


「さぁ、夜ご飯にしましょう」


 今夜はマリエルさんの家で、三人一緒に夕食をご馳走になっていた。


 家の中には乾燥させた薬草がいくつも吊るされ、木と香草の匂いが混じっている。


料理にも森で採れたらしいキノコや山菜が多く使われていた。


「美味しいです」


 フェリシアが嬉しそうに言う。


「よかった。口に合うか心配だったの」


「フェリシアさん、何でも美味しそうに食べますから」


「そんなことないですよ」


「昨日も食事の話してましたよね」


「食事は大事です」


 ルナが笑う。


「フェリシアって面白いね」


「そうですか?」


 昨日会ったばかりなのに、もう随分話しやすくなっている。


「そういえば、二人はセルヴァン王国へ向かっているのよね?」


 マリエルさんが聞いた。


「はい」


「実はルナも、前から森の外をもっと見てみたいと言っているの」


「母さん」


 ルナの顔が少し嫌そうになる。


「本当でしょう?」


「そうだけど」


「北の町までは一人でも行くようになったけれど、国外へ出たことは一度もないのよ」


「それはまだ必要なかったから」


「あなた、セルヴァンへ行ってみたいって何度も言ってたでしょう?」


「……言ったけど」


 マリエルさんが俺たちへ向き直る。


「この子はBランク冒険者ですし、森の中なら私よりずっと頼りになります。

弓も回復魔法も使えるので、自分の身を守る力はあります」


「母さん、急に褒めるのやめて」


「でも、この里だけで育ったので世間知らずなところもあります」


「ちょっと!」


 ルナが抗議するが、マリエルさんは気にしない。


「北の町には行けても、他国の習慣や長い旅のことはほとんど知りません。

一人で国外へ行かせるのは心配だったんです」


 なるほど。


 戦えないから心配しているわけではないらしい。


「今日会ったばかりの二人にこんなお願いをするのは失礼だと思っています。

でも、村のことを聞いてすぐ助けようとしてくれた。

それに二人ともAランクだと聞きました」


 マリエルさんが少し頭を下げる。


「もし今回のことが無事に片付いて、二人の迷惑でなければ、ルナを一緒に連れていってもらえませんか?」


「母さん!」


「あなたはどうなの?」


「え?」


「行きたくないの?」


 ルナが黙る。


 少しして、こちらを見た。


「……行きたい」


「ルナ?」


「セルヴァンも見てみたいし、その先にも行ってみたい。でも、二人が嫌なら――」


「私は嬉しいですよ」


 フェリシアがすぐに答えた。


「回復魔法を使える人が一緒にいてくれるのも心強いですし、ルナともっとお話ししてみたいです」


 ルナが少しだけ目を丸くする。


「俺も大丈夫です。ただ、まずは村のことを何とかしてからですね」


「……うん」


 ルナが頷いた。


「よろしく」


「こちらこそ」


「よろしくお願いします」


 まずは泉の異変を解決する。


 明日は三人で水の上流を調べることになった。


 そこで何が待っているのかは、まだ分からない。


【保有:31,930P】

【累計獲得P:310,140P】



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