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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第6章 南への旅

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第89話 従魔?

 西部ダンジョンを出たあと、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


 中へ入ると、いつもの受付嬢がこちらに気づく。


「お帰りなさい。今日はどこまで行かれたんですか?」


「三十階までです」


「では、最下層まで行かれたんですね」


「はい。下へ続く階段はありませんでした」


 以前にも三十階まで到達した冒険者がいるので、最下層であること自体はギルドも把握している。


「それと、階層主が出ていました」


「もしかして、ゴールデンゴーレムですか?」


「はい」


「以前、クロードさんたちが倒したあと、しばらく出現報告がなかったんですが……また出ていたんですね」


 やっぱり十階や二十階と同じらしい。


 階層主は一度倒されても、時間が経てば再び現れる。


「討伐されたんですよね?」


「はい」


「やっぱり」


 受付嬢が少し笑った。


「もう驚かないんですか?」


「驚いてはいます。でも、お二人が三十階まで行ったと聞いた時点で、倒して戻ってこられたんだろうなと思いました」


「そうですか」


「ゴールデンゴーレムの素材も回収されました?」


「丸ごと《収納》に入れてあります」


「丸ごと……」


 一瞬だけ受付嬢の表情が止まった。


 でも、昨日ほどではない。


「今回は売らずに持っておこうと思います」


「そうなんですか?」


「何に使える素材なのか、まだ分かりませんから。

 必要になった時のために残しておこうかなと」


「それがいいかもしれません。ゴールデンゴーレムの素材は、滅多に手に入るものではありませんから」


「じゃあ、このまま持っておきます」


 今は金にも困っていない。


 竜爪剣だって、レッドドラゴンの素材を残していたからこそ作ることができた。


 使い道の分からない希少な素材なら、無理に金へ換えるより《収納》へ入れておいた方がいい。


 ゴールデンゴーレムとの戦闘や転移石について報告を済ませ、ギルドを出た。


 ◇


 その日の夜。


 《銀麦亭》の食堂で、フェリシアと夕食を食べていた。


「これで西部ダンジョンも一番下まで行きましたね」


「ですね」


 ベルガントへ来たばかりの頃は、三階へ行くだけでも慎重だった。


 それが今では最下層の三十階まで行き、階層主まで倒した。


 冒険者ランクもAになった。


 装備も揃っている。


 金も十分にある。


「フェリシアさん」


「はい?」


「そろそろ、ベルガントを出ませんか?」


 フェリシアがスプーンを止めた。


「別の場所へ行くんですか?」


「はい。ここでできることは、かなりやったと思うんです」


「確かにそうですね」


 西部ダンジョンは最下層まで攻略したし、周辺の依頼も何度も受けた。


 Aランクになった今なら、もっと遠くへ行くこともできる。


「フェリシアさんは、行ってみたい場所あります?」


「すぐには思いつきませんけど……私も別の国や街は見てみたいです」


「俺もです」


 《収納》があるから長旅でも荷物には困らない。


 旅費を心配する必要もないので、あとは行き先を決めるだけだ。


 そんなことを考えていると、少し離れたテーブルから冒険者たちの会話が聞こえてきた。


「セルヴァンまで行ったんだろ?」


「ああ。さすがに遠かったけどな」


 セルヴァン王国。


 その名前は当然知っている。


 ヴァルディス家にいた頃、周辺国については一通り習った。聖教領ミラディアのさらに南にある国だ。


 向かいに座るフェリシアも特に反応していない。


 フェリシアも宰相の家で育っているので、セルヴァン王国のことは知っているはずだ。


「何か面白いものあったか?」


「色々あったけど、一番驚いたのは冒険者だな」


「冒険者?」


「あっちじゃ、魔物を連れて歩いてる奴がいるんだよ」


 そこで手が止まった。


「魔物?」


「ああ。従魔って呼んでた。ちゃんと人間の言うことを聞くんだ」


「……従魔?」


 思わず口に出した。


 フェリシアもこちらを見る。


「アレンさん、従魔って知ってました?」


「いえ。フェリシアさんは?」


「私も初めて聞きました」


 セルヴァン王国そのものは知っている。


 でも、魔物を従える冒険者がいるなんて習ったことはない。


 魔物はこれまで何度も倒してきた。俺にとっては、基本的に襲ってくる相手だ。


 それを人間が従える?


 気になった。


 俺は隣のテーブルへ声をかける。


「すみません。その従魔というのは、魔物を人間が従えているんですか?」


「ああ」


 冒険者の男が頷いた。


「俺が見たのは狼みたいな魔物だったな。呼べば来るし、指示すれば戦う。普通に仲間みたいだったぞ」


「その人だけが特別だったんですか?」


「詳しいことまでは知らねえけど、セルヴァンじゃ他にも何人か見たぞ。

 こっちより従魔を連れた冒険者は多いんじゃないか?」


「そうなんですね」


「興味あるのか?」


「あります」


「なら一度行ってみればいい。あそこは食事もうまいし、強い魔物も多いぞ」


「ありがとうございます」


 礼を言って、自分たちのテーブルへ戻る。


「魔物を従える、か……」


「気になりますね」


 フェリシアも興味を持ったようだ。


「どうやって従えるんでしょう?」


「スキルなのか、魔法なのか、それ以外なのかも分かりませんね」


「一緒に戦ってくれるなら、心強そうです」


「ですよね」


 今まで戦ってきた魔物を思い出す。


 強い魔物はいくらでもいた。もし、そんな魔物を味方にできる方法があるなら、一度見てみたい。


「セルヴァン王国か……」


 遠い。


 ここからなら、まず聖教領ミラディアへ入り、そこからさらに南へ進むことになる。


「フェリシアさん」


「はい」


「行ってみませんか? セルヴァン王国」


 フェリシアは少しだけ目を見開いたあと、すぐに頷いた。


「私も行ってみたいです。従魔も見てみたいですし、それにセルヴァンへ行くならミラディアを通りますよね?」


「はい」


 以前、ベルガントの南にある森へ行った時、遠くにミラディアの白い塔を見たことがある。

 

 あの時、二人でいつか行ってみたいと話した。


「前に話しましたよね」


「はい。いつか行ってみたいって」


「ちょうどいいですね」


「私もそう思います」


 セルヴァン王国まで行くなら長い旅になる。でも、今の俺たちなら問題ない。


「じゃあ、決まりですね」


「はい」


「その前に、挨拶しておきたい人がいます」


 フェリシアもすぐに分かったらしい。


「伯爵様と、クロードさんたちですね」


「はい。何も言わずにいなくなるのは嫌なので」


「私もそう思います」


 明日、出発の準備をしてから挨拶へ行くことにした。


 ◇


 翌朝。


 旅に必要な食料や水を買い足したあと、俺とフェリシアはベルガント伯爵邸を訪れた。


 門で名前を告げると、しばらく待ったあと中へ通される。


 案内された応接室には、ベルガント伯爵がいた。


「どうした? 今日は何か報告があったか?」


「いえ。今日はご挨拶に来ました」


「挨拶?」


「ベルガントを離れようと思っています」


 伯爵が少しだけ目を見開いた。


「そうか」


「はい。セルヴァン王国まで行ってみようと思っています」


「セルヴァンか。随分と遠くへ行くんだな」


「途中でミラディアにも寄るつもりです」


「なるほど」


 伯爵は少し考えたあと、俺たちを見る。


「ベルガントへ来た時、君たちはまだ駆け出しに近い冒険者だったな」


「はい」


「それが戦争へ行き、Aランクになり、西部ダンジョンの最下層まで攻略した。短い間に随分変わったものだ」


 自分でもそう思う。


「ここでは本当にお世話になりました」


「戦争のことも、森林調査のことも、俺たちだけではできませんでした。ありがとうございました」


 二人で頭を下げる。


「礼を言うのはこちらの方だ。君たちには何度もベルガントのために働いてもらった」


 伯爵が少し笑う。


「冒険者なら、一つの街にずっと留まる必要もない。行きたい場所があるなら行ってくればいい」


「はい」


「またベルガントへ来ることがあれば、顔を出してくれ」


「もちろんです」


「ありがとうございます」


 伯爵へもう一度頭を下げ、屋敷を後にした。


 ◇


 そのまま冒険者ギルドへ向かった。


 扉を開けると、奥のテーブルに見覚えのある四人がいた。


 クロードさん。


 ボルクさん。


 リディアさん。


 セシルさん。


 《銀狼》の四人だ。


「クロードさん」


「ん?」


 クロードさんがこちらを見て手を上げる。


「おお、アレン。フェリシアも。どうした?」


「ちょうどよかったです」


「何が?」


「俺たち、ベルガントを出ることにしました」


「え?」


 ボルクさんまでこちらを見る。


「出るって、どこ行くんだ?」


「セルヴァン王国です」


「セルヴァン!?」


 ボルクさんの声がギルド内に響いた。


「遠いところまで行くのね」


 リディアさんが言う。


「はい。少し気になることがあって」


 クロードさんが椅子の背にもたれながら俺たちを見る。


「そうか。まあ、お前たちもAランクだしな。いつまでもベルガントにいる必要はないか」


「クロードさんたちには、かなりお世話になったので、出る前に挨拶しておきたかったんです」


「改まって言われると変な感じだな」


 クロードさんが笑った。


「最初に会った頃は、本当に冒険者を始めたばかりだったのにな。気づいたら俺たちと同じAランクだ」


「色々ありましたからね」


「ありすぎだろ」


 ボルクさんが笑う。


 クロードさんは少しだけ表情を柔らかくした。


「国外へ出れば、今までとは勝手が違うこともあるだろう。お前たちなら大丈夫だとは思うが、無茶はするなよ」


「はい」


「分かりました」


「フェリシアも気をつけてね」


 リディアさんが言う。


「はい。ありがとうございます」


「今度会った時、セルヴァンの話を聞かせて」


 セシルさんも言った。


「もちろんです」


「土産話、いっぱい持ってこいよ!」


 いつもの調子に、思わず笑ってしまう。


「じゃあ、行ってきます」


「ああ。またな」


「気をつけろよ!」


 《銀狼》の四人に手を振り、ギルドを出た。


 ◇


 ベルガントの南門。


 何度も通った道の先に、南へ続く街道が伸びている。


 フェリシアが隣に立つ。


「本当に出るんですね」


「はい」


 ベルガントへ来てから、本当に色々なことがあった。


 ダンジョンへ潜った。


 戦争にも行った。


 Aランクになった。


 そして今度は、国を越えてさらに南へ向かう。


「行きましょうか」


「はい」


 俺たちは南へ続く街道を歩き始めた。


 まずは聖教領ミラディアへ。その先にあるセルヴァン王国で、魔物を従えるという「従魔」をこの目で見てみたい。


 次の目的地は、セルヴァン王国だ。


【保有:31,930P】

【累計獲得P:310,140P】



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