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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第88話 ゴールデンゴーレム

 三十階へ続く階段を下りる。


 これまでより少し長い階段だった。


 足音だけが響く中、やがて前方に明かりが見えてくる。


「着きますね」


「はい」


 竜爪剣の柄へ手を置いたまま、最後の段を下りた。


「……広い」


 三十階は、それまでの階層とはまるで違っていた。


 霧はない。


 天井の高い巨大な円形広間。


 壁には淡く光る鉱石が点々と埋まり、広間全体を照らしている。


 そして中央には、巨大な人型の何かが立っていた。


「やっぱりいましたね」


「階層主でしょうか」


 高さは五メートル近い。


 全身を覆うのは、金そのものとは違う光沢を持った黄金色の金属。


 太い腕と脚。


 頭部にある二つの目だけが赤く光っている。


「ゴオオオオ……」


 低い音が広間に響いた。


「《鑑定》」


【ゴールデンゴーレム】


【ベルガント西部ダンジョン第三十階層の階層主】


【高密度の魔力を含む黄金色の特殊金属で形成された大型ゴーレム】


【高い耐久力と筋力を持つ】


「やっぱり階層主です」


「十階がアイアンゴーレム、二十階がミスリルゴーレムでしたからね」


 そして三十階がゴールデンゴーレム。


 相手の赤い目がこちらを向く。


 ズンッ!


 巨大な足が一歩前へ出ただけで床が揺れた。


「来ます」


「はい。まず私が撃ってみます」


 フェリシアが杖を構える。


 杖先へ光が集まり始めた。


「……速い」


 昨日までとは明らかに違う。


 光が集まる速度だけじゃない。


 一発に込められている魔力そのものが多い。


 フェリシア自身の魔力も成長している上に、今は俺から七百を超える魔力が共有されている。


「もう撃てます」


「お願いします」


「《魔弾》!」


 ドンッ!


 光弾が一直線に飛び、ゴールデンゴーレムの胸へ直撃する。


 ドガァンッ!


「ゴオッ!?」


 巨体が後ろへ揺れた。


 胸を覆っていた黄金色の金属が大きくへこみ、表面には亀裂まで入っている。


「……すごい」


 フェリシア自身が一番驚いていた。


「かなり効いてますね」


「同じ《魔弾》なのに、前よりずっと魔力を込められます。それでもまだ全然余裕があります」


 これまでは威力を上げれば、その分だけ消耗も大きかった。


 今は違う。


 魔力そのものが増え、《魔聖》で扱う効率も上がっている。


 ゴールデンゴーレムが走り出した。


 巨体の割に速い。


「アレンさん!」


「大丈夫です」


 巨大な拳が振り下ろされる。


 横へ動く。


 それだけで簡単に避けられた。


 ドォン!


 拳が石床へめり込み、周囲に亀裂が走る。


「当たったら危なそうですね」


「気をつけてください!」


「もちろんです」


 今度はこちらから行く。


 竜爪剣を抜き、魔力を流した。


「……おお」


 昨日までとは感覚が違う。


 以前より遥かに多い魔力を流しているのに、竜爪剣はそれを邪魔しない。


 手から柄へ。


 柄から刀身へ。


 そのまま剣先まで滑らかに魔力が通っていく。


 刀身の周囲を青白い光が覆った。


「まだいける」


 さらに魔力を流す。


 光が強くなる。


 三千五百を超えた魔力。


 その力を《魔力操作》と《魔聖》で制御しながら、一気に竜爪剣へ通す。


 ゴールデンゴーレムが横から腕を振るう。


 低くかわし、懐へ入った。


「はっ!」


 竜爪剣を振り抜く。


 ザンッ!


「ゴオオオッ!」


 黄金色の太い腕が宙を舞った。


「……斬れた」


 自分でやったのに驚いた。


 硬い。


 確かに硬いはずだ。


 それなのに竜爪剣は、途中で止まることなく腕を斬り落とした。


「アレンさん、今の……」


「魔力を増やした効果、想像以上ですね」


 ゴールデンゴーレムが残った腕を振り上げる。


 でも、もう怖さは感じなかった。


 《魔力感知》へ意識を向ける。


 巨大な身体の中を魔力が流れている。


 その中心。


「胸に強い反応があります」


「核ですか?」


「多分」


「では、狙います」


 フェリシアの杖先へ再び光が集まる。


 今度は一つだけ。


 さっきより小さい。


 でも。


「……かなり込めました?」


「はい。一点を狙います」


 光が強く圧縮されていく。


「《魔弾》!」


 バシュンッ!


 細い光がゴールデンゴーレムの胸へ突き刺さった。


 ドンッ!


 さっき入った亀裂が一気に広がる。


 黄金色の装甲が砕け、胸の奥が露出した。


「見えました!」


「はい!」


 赤く光る大きな核。


 踏み込む。


 ゴールデンゴーレムが残った腕を振るうが、遅い。


 簡単にかわして胸元へ飛び込む。


 竜爪剣へ魔力を流す。


「これで!」


 突き出した。


 ガキンッ!


 一瞬だけ硬い感触が返ってくる。


 そのまま押し込む。


 バキンッ!


 核が砕けた。


「ゴ……オ……」


 二つの赤い目から光が消える。


 巨大な身体がゆっくりと後ろへ傾いた。


 ドォォン!


 広間が揺れる。


 静かになった。


「……終わりました?」


「みたいですね」


 表示が浮かぶ。


【階層主討伐を確認しました】


【30,000P獲得】


【保有:31,930P】


【累計獲得P:310,140P】


「三万P……」


「一体でですか?」


「はい」


 昨日五万Pを使ったばかりなのに、一戦で三万戻った。


 でも、それ以上に驚いたことがある。


「思っていたより、かなり楽でしたね」


 フェリシアも同じことを考えていたらしい。


「はい。三十階の階層主なので、もっと苦戦すると思っていました」


「弱い魔物ではなかったと思います」


 あの拳が直撃すれば、普通の冒険者なら無事では済まない。


 身体を覆う黄金色の金属も間違いなく硬かった。


 弱かったんじゃない。


 俺たちが強くなったんだ。


 昨日、五万Pを使って能力を上げた。


 俺は竜爪剣へ流せる魔力量が大幅に増え、フェリシアも以前とは比較にならない量の魔力を《魔弾》へ込められるようになった。


「昨日強化しておいてよかったですね」


「本当にそう思います」


 フェリシアが自分の杖を見る。


「私、ほとんど魔力が減った感じがしません」


「前回とは全然違いますね」


「はい。このくらいなら、まだ何度でも撃てそうです」


 二十六階で引き返した時とはまるで違う。


 あの時は魔力を使い切らないことまで考えて撤退した。


 今日は三十階まで来て階層主を倒しても、二人とも十分な余力が残っている。


 ゴールデンゴーレムへ近づく。


「これも持って帰ります?」


「はい。ただ、すぐ売るのはやめておきましょう」


「昨日の話もありますしね」


「それもありますけど、この金属が何なのか知りたいです」


 黄金色をしているからといって、本物の金とは限らない。


 階層主を構成している特殊な金属なら、装備の素材になる可能性もある。


「ドレイクさんにも見てもらいたいですね」


「いいですね」


 巨体へ触れる。


 《収納》。


 ゴールデンゴーレムの身体が消えた。


「入りました」


「アレンさんの《収納》、本当に何でも入りますね」


「生き物以外ですけどね」


 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ……。


 二人で同時に広間の奥を見る。


「来ましたね」


「はい」


 石壁がゆっくり左右へ開いていく。


 十階。


 二十階。


 もう見慣れた光景だった。


 壁の奥に小さな部屋が現れ、その中央に青白く光る転移石がある。


「やっぱりありました」


 二人で近づく。


 俺が先に触れると、転移石が強く光った。


 続けてフェリシアも触れる。


「これで三十階も登録されたんでしょうね」


「多分」


 転移石の奥を見る。


 何もない。


 これまでなら、その先に下の階へ続く道があった。


「階段、ないですね」


「本当ですね」


 念のため広間を一周する。


 転移石の裏。


 左右の壁。


 ゴールデンゴーレムが立っていた場所。


 どこにも下へ続く階段はなかった。


「ということは……」


「ここが最下層みたいですね」


 三十階。


 ベルガント西部ダンジョンの一番下まで来た。


「最初にベルガントへ来た時は、三階へ行くだけでも慎重でしたよね」


「そうでしたね」


「それが三十階です」


 少しだけ不思議な気分になる。


 あの頃とは、ランクも装備もスキルも違う。


 それ以上に、俺たち自身が強くなった。


「戻りましょうか」


「はい」


 二人で転移石へ触れる。


 青白い光が広がった。


 視界が真っ白になる。


 ◇


 光が消える。


 目の前には、西部ダンジョン一階の小部屋があった。


「戻ってきましたね」


「はい」


 身体はほとんど疲れていない。


 フェリシアにもかなり魔力が残っている。


 三十階まで進み、階層主まで倒したのに、昨日二十六階から戻った時より余裕がある。


「強くなりましたね、私たち」


 フェリシアが小さく笑う。


「ですね」


 表示を見る。


【保有:31,930P】


 五万P使った翌日に、もう三万以上まで戻った。


 そして何より。


 ベルガント西部ダンジョン。


 最下層まで踏破した。


「ギルドへ報告しましょうか」


「はい」


 ゴールデンゴーレムのことも聞かなければならない。


 俺たちは並んでダンジョンの出口へ向かった。


【保有:31,930P】


【累計獲得P:310,140P】




最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
無機物が、筋力?って少し思ってしもうた。
今まで使用していた鑑定をなぜ使わないのでしょうか
地味〜に気になる はじめての戦場、はいつまで続くんだろう 章が変わるの忘れてないだろうか
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