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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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85/200

第85話 引き際

 二十三階の探索を続ける。


 ここも二十一階、二十二階と同じ高温地帯だった。


 赤黒い岩壁の間を進んでいると、《魔力感知》に反応が出る。


「前から二体です」


「来ますね」


 岩陰から現れたのは、大きな角を持つ山羊のような魔物だった。


「《鑑定》」


【フレイムホーン】


【高温地帯に生息する大型魔獣】


【高熱を帯びた角による突進を得意とする】


「二体ですね」


「一体ずつで」


「はい!」


 二体が同時に地面を蹴る。


 俺は左へ向かった。


 角が赤く光っている。


「メエエエッ!」


 真正面から突っ込んでくる。


 横へかわし、首元へ竜爪剣を振った。


 ザンッ!


【2,200P獲得】


 フェリシアを見る。


「《魔弾》!」


 三つの魔弾が一体のフレイムホーンへ別々の方向から飛ぶ。


 頭。


 前脚。


 胴。


 ほとんど同時に直撃した。


 フレイムホーンが倒れる。


「やりました!」


「もう普通に使ってますね」


「少し慣れてきました」


 二体を《収納》する。


 その先では地面が突然盛り上がった。


「下です!」


 岩を弾き飛ばし、巨大な赤黒いミミズのような魔物が飛び出してくる。


 三体。


「《鑑定》」


【マグマワーム】


【地中を移動する大型魔獣】


【熱を帯びた巨体を使って獲物へ襲いかかる】


 一体が地面へ潜った。


「見えなくても分かります」


 《魔力感知》に反応がある。


 真下。


 横へ跳ぶ。


 直後、さっきまで立っていた場所からマグマワームが飛び出した。


「そこ!」


 首元へ竜爪剣を叩き込む。


【2,500P獲得】


 もう一体。


 今度は地面へ潜る前に追いつく。


 胴を斬り、そのまま頭へ二撃目。


【2,500P獲得】


 最後の一体はフェリシアの魔弾が頭部を撃ち抜いた。


「地面に潜られると面倒ですね」


「《魔力感知》があってよかったです」


 三体とも《収納》。


 さらに進むと、今度は岩の上に大きな影が並んでいた。


 四体。


 赤い毛に覆われた猿型の魔物だ。


「《鑑定》」


【バーニングエイプ】


【高温地帯に生息する大型猿型魔獣】


【高い身体能力を持ち、岩を投げて攻撃する】


 一体が岩を持ち上げた。


「投げます!」


 飛んできた岩を避ける。


 すぐ後ろから二つ目。


 三つ目。


「結構厄介ですね!」


「私が止めます!」


 フェリシアの周囲に四つの魔弾が浮かぶ。


「《魔弾》!」


 四体へ一発ずつ。


 二体が岩から落ちる。


 残り二体も体勢を崩した。


「今です!」


 落ちてきた一体へ走る。


【2,300P獲得】


 もう一体。


【2,300P獲得】


 残る二体はフェリシアが仕留めた。


 全部《収納》へ入れる。


「結構入れましたね」


「帰ったら解体場が大変そうです」


「また謝らないとですね」


 その後もフレイムアーマーリザードが二体現れた。


 一体を俺。


【2,100P獲得】


 もう一体をフェリシアが倒す。


 死体を《収納》して、さらに奥へ進んだ。


 ◇


「階段ですね」


 二十四階へ続く階段が見つかった。


 現在のPを確認する。


【保有:48,230P】


「もう五万近いですね」


「本当ですね」


「さっき《魔聖》を買ったばかりなのに」


「深い階層はすごいですね」


 二人で階段を下りる。


 途中から空気が変わった。


「……涼しい」


「ですね」


 二十四階へ入る。


 二十三階までの赤黒い岩壁とは違い、こちらは黒っぽい岩が濡れている。


 天井から水滴が落ち、通路の脇には細い水が流れていた。


「高温地帯は終わりみたいですね」


「三階層ごとに環境が変わるんでしょうか」


「まだ分かりませんけど、ありそうですね」


 先へ進む。


 水の流れる音に混じって何かが動いた。


「二体います」


 浅い水の中から、大きな口が現れる。


「ワニ?」


「《鑑定》」


【ケイブクロコダイル】


【地下水脈に生息する大型魔獣】


【硬い鱗と強力な顎を持つ】


 二体が水を蹴って向かってくる。


「一体お願いします!」


「はい!」


 正面から来た一体を迎える。


 大きな口が開く。


 噛みつかれる直前に横へずれ、首の付け根へ竜爪剣を振る。


 硬い。


 でも、斬れる。


 もう一撃。


【2,600P獲得】


 もう一体はフェリシアが目を狙って動きを止め、そのまま仕留めた。


 二体を《収納》。


 そこから先でも魔物との遭遇が続いた。


 水の中を高速で泳ぐ蛇型魔獣。


【アクアサーペント】


 四体。


 フェリシアが二体。


 俺が二体。


【2,200P獲得】


【2,200P獲得】


 全部《収納》。


 巨大な蟹型魔獣。


【ロッククラブ】


 三体。


「甲羅、硬そうですね」


「硬いです」


 一撃入れた感触で分かった。


 正面から割る必要はない。


 脚の付け根へ刃を入れる。


 一体。


【2,400P獲得】


 二体。


【2,400P獲得】


 残る一体はフェリシアの魔弾が関節を次々と撃ち抜いた。


「倒せました」


「もう俺より硬い相手を倒すの上手くないですか?」


「アレンさんほど近づかなくていいので」


「それはずるいですね」


「魔術師ですから」


 三体とも《収納》。


 しばらく進んだところで二十五階への階段が見つかった。


【保有:60,030P】


「六万……」


「順調ですね」


「順調すぎるくらいです」


 でも、まだ身体には余裕がある。


 二十五階へ下りる。


 ◇


 二十五階も地下水脈のような景色が続いていた。


 ただし二十四階より水が多い。


 場所によっては通路の半分ほどまで浅い水に覆われている。


「滑りそうですね」


「気をつけましょう」


 水辺から大きな蛙が飛び出した。


 一体。


 二体。


 三体。


 四体。


「《鑑定》」


【ポイズンフロッグ】


【地下水脈に生息する大型魔獣】


【口から毒液を吐く】


「毒です!」


 四方へ散る。


 緑色の液体が飛んできた。


「当たらないようにしてください!」


「もちろんです!」


 フェリシアが二体へ魔弾。


 俺は残り二体へ向かう。


 一体目。


【2,000P獲得】


 振り向く。


 毒液を横へかわして二体目。


【2,000P獲得】


 フェリシアも二体を倒した。


「毒は嫌ですね」


「防具が強くても試したくないです」


「同感です」


 四体を《収納》。


 続いて、水面ぎりぎりまで身体を伏せていた巨大なカマキリ。


【ウォーターマンティス】


 二体。


 水面を蹴ったと思った瞬間、目の前まで来た。


「速い!」


 鎌を受け流す。


 もう一撃。


 さらにもう一撃。


 バーニングマンティスとは違う。


 水の上でも速度が落ちない。


「アレンさん!」


 横から魔弾が飛び、片方の鎌が跳ね上がった。


「ありがとうございます!」


 その隙に踏み込む。


【2,800P獲得】


 もう一体はフェリシアが倒す。


 二体を《収納》。


 さらに硬い甲羅を持つ亀型魔獣も現れた。


【シェルタートル】


 二体。


 フェリシアが一体をひっくり返し、腹を撃ち抜く。


 俺も横へ回り込み、首を狙う。


【2,500P獲得】


 当然、二体とも《収納》。


「結構戦いましたね」


「ですね」


 まだ動ける。


 魔物が出れば倒せる。


 でも、二十一階へ入った頃と比べれば身体は明らかに重くなってきている。


「二十六階まで行ってみます?」


「そこまでは行きたいです」


「私もです」


 二十五階の奥で階段を見つけ、そのまま下りた。


 ◇


 二十六階。


 景色はまだ変わらない。


 黒い岩壁。


 流れる水。


 地下水脈地帯が続いている。


「ここまで同じですね」


「二十四階から三階目です」


「次で変わるかもしれませんね」


「ありそうです」


 その会話を終えた直後、《魔力感知》に三つの反応。


 水の中。


「来ます!」


 青黒い大型のトカゲが三体飛び出した。


「《鑑定》」


【ディープウォーターリザード】


【地下水脈の深部に生息する大型魔獣】


【水中での高速移動と強力な尾を武器とする】


 一体の尾が横から来る。


 竜爪剣で受ける。


 重い。


「っ!」


 押し返し、そのまま首元へ踏み込む。


【2,400P獲得】


 残る二体はフェリシアが魔弾を連続で撃ち込み倒した。


 三体を《収納》する。


「ふう……」


 息を吐く。


「大丈夫ですか?」


「はい。少し疲れてきました」


 フェリシアが一瞬黙ったあと頷いた。


「私もです。魔力もだいぶ使いました」


「ですよね」


 それでも探索を少し続ける。


 巨大な人型の魔物が二体。


「《鑑定》」


【マッドオーガ】


【地下水脈に生息する大型亜人型魔獣】


【高い筋力と頑丈な肉体を持つ】


「二体です」


「いけます」


「無理はしないでください」


「アレンさんもですよ」


 一体へ走る。


 太い腕が振られる。


 かわして脇腹へ一撃。


 浅い。


「硬いな……」


 もう一度。


 今度は魔力を刃先へ集中させる。


 ザンッ!


【3,000P獲得】


 フェリシアももう一体を倒した。


 《収納》。


 さらにアクアサーペントが三体。


 一体を俺。


【2,200P獲得】


 残る二体をフェリシアが仕留めた。


 全部《収納》したところで、俺は足を止めた。


「フェリシアさん」


「はい?」


「ここで戻りませんか?」


 フェリシアもすぐには答えなかった。


 少し考えてから頷く。


「私も、それがいいと思います」


「まだ戦えますけどね」


「はい。でも、さっきより魔力を使うのが重くなってます」


「俺も身体が重くなってきました」


 今いるのは二十六階。


 このまま進めば二十七階。


 その先には三十階もある。


 十階にはアイアンゴーレム。


 二十階にはミスリルゴーレムがいた。


 三十階にも強い魔物がいる可能性は高い。


「この状態で三十階まで行って、階層主みたいなのがいたら危ないですよね」


「はい」


「それに帰りもあります」


 二十階の転移石まで戻らなければならない。


 今来た六階層分。


 戻る途中でも魔物に遭遇する。


「フェリシアさんの魔力が切れた状態で囲まれたら面倒です」


「アレンさんだって疲れてるじゃないですか」


「だから二人ともですね」


「ですね」


 進めるかどうかだけなら、まだ進める。


 でも、帰れるかどうかは別だ。


「戻りましょう」


「はい」


 表示を見る。


【保有:76,930P】


「かなり貯まりましたね」


「七万六千……」


「戻る前に何か使えないですか?」


「使えるもの?」


「帰りを楽にできるような」


「見てみます」


 《会員》を開く。


 固有スキル購入。


 五千Pの一覧を見る。


【5,000P】


《身体強化》


《気配察知》


《暗視》


《高速思考》


《魔力操作》習得済み


《剣士》


《再生》


《収納》習得済み


《隠密》


《魔力感知》習得済み


「……隠密」


「隠密?」


「これ、使えるかもしれません」


 詳細を開く。


【《隠密》】


【自身の気配や魔力の漏れを抑え、周囲から認識されにくくする固有スキル】


「見えなくなるわけではないみたいです」


「でも、魔物に気づかれにくくなるなら十分じゃないですか?」


「ですよね」


 購入する。


【《隠密》を購入しますか?】


【必要P:5,000P】


「買います」


【《隠密》を習得しました】


【5,000Pを消費しました】


【保有:71,930P】


 意識して《隠密》を使う。


「……どうです?」


 フェリシアがこちらを見る。


「変な感じです」


「変?」


「目の前にアレンさんがいるのに、意識を外すと気づかなくなりそうです」


「それなら使えそうですね」


 《付与》を開く。


【スキル付与対象】


【共有メンバー】


【フェリシア・ロート】


 対象を選ぶ。


【付与可能スキル】


【《魔力操作》 付与済み】


【《魔聖》 付与済み】


【《隠密》】


「ありました」


「お願いします」


【フェリシア・ロートへ《隠密》を付与します】


 決定。


「……あ」


「どうです?」


「自分でも分かります。気配が薄くなった感じがします」


「これで戻ってみましょう」


「はい」


 でも、その前に。


「もう一つやっておきます」


「まだ何か?」


「強化です」


 能力強化を開く。


【筋力強化(極) 5,000P】


【耐久強化(極) 5,000P】


【敏捷強化(極) 5,000P】


【魔力強化(極) 5,000P】


【一回の購入につき基礎能力値+400】


「全部一回ずつ買います」


「全部?」


「この先、もっと強い魔物が出るでしょうから」


「また一気に使いますね……」


「また貯めればいいです」


「アレンさんらしいです」


 四つを順番に購入する。


【筋力強化(極)を購入しました】


【耐久強化(極)を購入しました】


【敏捷強化(極)を購入しました】


【魔力強化(極)を購入しました】


【20,000Pを消費しました】


【保有:51,930P】


 身体の感覚が変わる。


 力。


 身体の頑丈さ。


 速さ。


 魔力。


 全部が一段上がった。


「……やっぱり」


 フェリシアが自分の手を見る。


「私も強くなりました」


「共有分ですね」


「かなり違います」


 ただ、身体が強くなっても疲労そのものが消えたわけではない。


 フェリシアも魔力をかなり消費している。


「戻る判断は変えませんよ」


「もちろんです」


「よかった」


「今から三十階まで行くって言われたら止めます」


「そこまで無茶しません」


「少し安心しました」


 帰路につく。


 ◇


 二十五階へ戻る。


 《魔力感知》に反応。


「三体います」


「どうします?」


「《隠密》を使って少し待ちましょう」


 《隠密》を使い通路の脇へ寄る。


 しばらくして、ポイズンフロッグが三体現れた。


 こちらへ近づいてくる。


 俺もフェリシアも動かない。


 一体が足を止めた。


「…………」


 喉を鳴らす。


 こちらを向く。


 しかし、そのまま別の方向へ歩いていった。


 三体とも通り過ぎる。


「……気づいてない」


「すごいですね」


「これは便利です」


「もっと早く買ってもよかったんじゃないですか?」


「今まで必要なかったですからね」


「それもそうですね」


 魔物が離れたのを確認して進む。


 二十四階。


 途中で《魔力感知》に何度も反応が出た。


 そのたびに進路を変える。


 近くを魔物が通ったこともあった。


 でも、襲われない。


 二十三階へ上がる。


「暑い……」


「戻ってきましたね」


 二十二階。


 二十一階。


 魔物の反応を避けながら進む。


 一度も剣を抜かなかった。


 一度も魔弾を撃たなかった。


 そして。


「ありました」


 二十階へ続く階段。


 二人で上る。


 見覚えのある小部屋へ入った。


 転移石が青白く光っている。


「戻れましたね」


「一度も戦わずに」


「《隠密》、かなり便利ですね」


「五千Pなら安かったかもしれません」


「それ、買う前には分からないですけどね」


「ですね」


 転移石へ手を触れる。


 フェリシアも隣で手を伸ばした。


 光が強くなる。


 今日は二十三階から二十六階まで進んだ。


 大量の魔物を倒した。


 Pも増えた。


 強くもなった。


 でも、進めるからといって進み続ければいいわけじゃない。


 帰るための余力も残しておく。


 それも冒険者には必要なんだと思う。


【保有:51,930P】


【累計獲得P:280,140P】



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
もう少し、メインの2人に抑揚があって、箇条書きでない地の文だったらもっと面白いだろうと思いました。が、そろそろ限界。
こんなに読み飛ばしたくなる作品はなかなかない!
まさかの大人買い!
感想一覧
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