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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第81話 竜の装備

 レッドドラゴンを倒してから四日後。


「そろそろ行きますか」


「はい」


 俺とフェリシアは宿を出た。


 向かうのはドレイクさんの工房。


 あの日、レッドドラゴンの鱗と爪、俺のミスリルブレード、それに傷んだ防具を預けた。


 四日後に来い。


 そう言われている。


「何ができたんでしょうね」


「楽しみです」


「私はちょっと怖いですけど」


「何がです?」


「ドレイクさん、ほとんど説明してくれなかったじゃないですか」


「確かに」


 何を作るのか聞いても教えてくれなかった。


 ただ、あの時の顔。


 レッドドラゴンの素材を見ていたドレイクさんは完全に職人の顔だった。


 村の北側へ続く坂を上る。


 やがて工房が見えてきた。


 煙突から煙が上がっている。


 水車も動いていた。


 ゴウン。


 ゴウン。


 大きな音。


「動いてますね」


「ですね」


 扉の前まで行く。


 中から金属を叩く音は聞こえない。


 ノックする。


「ドレイクさん」


 少しして。


「開いてる」


 中から声が返ってきた。


「失礼します」


「失礼します」


 工房に入ると、中は以前より散らかっていた。


 金属片。


 削られた赤い鱗。


 黒く焼けたような爪の欠片。


 作業台の上には使った工具が並んでいる。


 そして。


「来たか」


 ドレイクさんが椅子に座っていた。


「……大丈夫ですか?」


「何がだ」


「顔色が」


 目の下に隈がある。


「寝てます?」


「寝た」


「どれくらいです?」


「昨日は三時間」


「少ないですよ」


「うるせえ」


 やっぱり無茶したらしい。


「レッドドラゴンだけあった」


 ドレイクさんが立ち上がった。


「久しぶりに苦労したぜ」


「そんなにですか?」


「ああ」


 作業台の奥へ向かう。


「鱗は硬い。熱にも強い。普通に叩いたくらいじゃどうにもならねえ」


 赤い鱗を一枚持ち上げる。


「爪も同じだ」


「加工できたんですか?」


「あぁ、なんとかな。まずはこっちだ」


 布を取る。


 その下。


「……おお」


 剣が一本置かれていた。


 形は前のミスリルブレードとよく似ている。


 でも色が違う。


 銀色の刀身。


 その中に赤黒い筋のようなものが走っている。


「これ……」


「持ってみろ」


「はい」


 柄を握り持ち上げる。


「……軽い?」


 いや、重さは前とほとんど変わらない。


 それなのに軽く感じる。


 振ってみる。


 ヒュンッ!


「振りやすい」


「重心を調整した」


 もう一度振る。


 前より剣が身体についてくる。


「すごい……」


「それだけじゃねえ」


 ドレイクさんが刀身を見る。


「レッドドラゴンの爪を削って加工した」


「爪を?」


「ああ」


「それをミスリルと合わせたんですか?」


「簡単に言えばな」


 簡単じゃないらしい。


「ミスリルだけでも十分硬い」


「はい」


「だが、竜の爪はそれ以上だった」


 刀身を指で軽く叩く。


 キンッ。


 澄んだ音がした。


「ミスリルの魔力伝導性を残したまま、竜の爪の硬さを加えた」


「そんなことできるんですね」


「普通はやらねえ」


「どうしてです?」


「素材がねえからだ」


「あ」


 レッドドラゴンの爪は簡単に手に入るものじゃない。


「それに加工も面倒だ」


 ドレイクさんが嫌そうな顔をする。


「二度とやりたくねえ」


「そんなに?」


「四日でやらせたのはお前だろ」


「俺ですか?」


「おまえが極上の素材を用意したから夢中になっちまったじゃねえか」


「それはそうかもしれないですけど……」


 理不尽な気がする。


「切れ味は前より上だ」


「はい」


「硬さもな」


「はい」


「耐久性も上がってる」


「全部上がってるじゃないですか」


「そういう素材を使ったからな」


 剣を見る。


 せっかくだ。


「《鑑定》」


 表示が浮かんだ。


【竜爪剣】


【ドレイクがミスリルとレッドドラゴンの爪を組み合わせて鍛えた特殊な長剣】


【極めて高い硬度、切れ味、耐久性と魔力伝導性を持つ】


【製作者:ドレイク】


「……竜爪剣」


「何だ?」


「《鑑定》でもそう出ました」


「そうか」


「名前、決めてたんですか?」


「いや」


「え?」


「今決めた」


「今!?」


「分かりやすいだろ」


 前も同じようなことを言っていた気がする。


「竜爪剣……」


 もう一度見る。


 世界にこの一本しかない俺だけの剣。


「良いですね!」


「だろ」


 ドレイクさんが工房の裏を指す。


「来い」


「どこへ?」


「試すんだよ」


◇


 工房の裏へ出る。


 以前。


 ミスリルブレードを試した場所。


 そこには大きな岩が置かれていた。


「これを?」


「ああ」


「……いいんですか?」


「お前の剣だろ。試せ」


 竜爪剣を構える。


 前より振りやすい。


 でも、いきなり全力はまずい気がした。


「普通に振ればいいです?」


「まずはな」


「分かりました」


 一歩踏み込み剣を振った。


 スパンッ。


「……え?」


 ほとんど抵抗がなかった。


 刃が岩へ入り、そのまま抜けた。


 数秒。


 何も起きない。


 そして。


 ズズッ。


 岩の上半分がずれた。


 ドンッ!


 地面へ落ちる。


「…………」


「…………」


 フェリシアが目を丸くしている。


「アレンさん」


「はい」


「今、力入れました?」


「そんなに」


 剣を見る。


 刃こぼれはない。


 傷もない。


「すご……」


「本気で振るなよ」


 ドレイクさんが言った。


「え?」


「工房まで斬られちゃ困る」


「そこまでですか?」


「知らん」


「知らないんですか?」


「作ったのは俺だが、振るのはお前だ」


 それはそうだけど。


「少なくとも」


 ドレイクさんが割れた岩を見る。


「前の剣より、お前の力を邪魔しなくなった」


「俺の力を」


「ああ」


 剣の仕事は俺の力を邪魔せず伝えること。


 前にもドレイクさんが言っていた。


 その完成形なのかもしれない。


「大事に使います」


「大事にしすぎるなよ」


◇


 工房へ戻る。


「次だ」


 ドレイクさんが別の場所へ移動する。


「防具だ」


 そこには二つ。


 俺の軽鎧。


 そして。


 フェリシア用の防具。


「これ……」


 俺の軽鎧は。


 形そのものは大きく変わっていない。


 でも、胸、肩、脇腹と要所に赤黒い素材が使われている。


「レッドドラゴンの鱗ですか?」


「ああ」


 触る。


 硬い。


「でも思ったより軽いですね」


「薄く削ってある」


「これを?」


「ああ」


 レッドドラゴンの鱗。


 あれだけ硬かったものを。


「そのまま使ったら重くて動けねえからな」


「なるほど」


「軽鎧の内側にも細かく加工した鱗を仕込んである」


「内側にも?」


「衝撃を逃がすようにしてある」


 ドレイクさんが俺を見る。


「前よりかなり丈夫だ」


「どれくらいです?」


「ちょっとやそっと殴られたくらいじゃ問題ねえ」


「へえ……」


「それと」


 鱗を指で叩く。


「火にも強い」


「あ」


 レッドドラゴン。


「元が火を吐く竜だからな」


「なるほど」


「普通の火なら気にする必要もねえ。火魔法でも、並の威力ならかなり軽減できる」


「すごいですね」


「だが過信はするな」


「はい」


「レッドドラゴンの火炎を正面から受けたらさすがに人間が焼けちまう」


「受けませんよ」


「せいぜい気をつけるんだな」


 次。


 フェリシアの装備。


「嬢ちゃんのは少し違う」


「私ですか?」


「ああ」


 フェリシアが近づく。


 一見すると今まで着ていた魔術師用の装備と大きく変わらない。


 軽い革。


 布。


 動きやすそうな作り。


 でも、胸元、肩、腰と、ところどころに薄い赤色が見える。


「これも鱗ですか?」


「そうだ」


「こんなに薄くできるんですね」


「苦労した」


「……ありがとうございます」


「魔術師が重い鎧着てどうすんだ」


 確かに。


「動きを邪魔しない程度に仕込んである」


「防御力は?」


「元より相当上だ」


「火にも?」


「当然だ」


 ドレイクさんが腕を組む。


「お前ら二人とも、ちょっとやそっとの火魔法なら気にしなくていい」


「そんなに?」


「ああ」


「衝撃にも強くしてある。ドラゴンに吹っ飛ばされても無傷、とは言わねえがな」


「十分です」


 フェリシアが自分の防具を見る。


「すごい……」


 嬉しそうだ。


 俺も同じだった。


「ところでドレイクさん、今回はおいくらですか?」


「金か?いらん!」


「え?」


「だから、いらん」


「でも」


「前はちゃんと払いましたよね?」


「ああ」


「今回は剣まで打ち直してもらって、防具まで」


「ああ」


「だったら――」


「いらねえって言ってるだろ」


 ドレイクさんが俺を見る。


「今回は俺からだ」


「どうしてです?」


「レッドドラゴン」


「はい?」


「あいつが暴れてたら俺たちは大変なことになってただろう」


 確かにそうかもしれない。


「だが、お前らが倒した」


「はい」


「この村がこうして無事なのはお前らのおかげだ」


「でも、それは依頼で――」


「それと」


 遮られた。


「面白い素材を好きに触らせてもらった」


 ドレイクさんが笑う。


「レッドドラゴンなんて、鍛冶師やっててもそう何度も触れるもんじゃねえ」


「そうなんですか?」


「当たり前だ」


「十分楽しませてもらった」


「楽しんだんですか?」


「苦労はした」


 どっちなんだ。


「だから金はいらん」


「……分かりました」


 これ以上言っても受け取らなさそうだ。


「ありがとうございます」


 頭を下げる。


 フェリシアも。


「本当にありがとうございます」


「おう」


「大事に使います」


「大事にはしろ」


 ドレイクさんが俺を見る。


「だが」


 前にも聞いた言葉。


「大事にしすぎるな」


「はい」


「武器も防具も、使ってなんぼだ」


「分かってます」


「壊れたら?」


「持ってきます」


「よし」


 竜爪剣を腰へ。


 新しい軽鎧も身につける。


 フェリシアも新しい装備へ着替えた。


「似合ってますよ」


「本当です?」


「はい」


「アレンさんも」


「ありがとうございます」


「じゃあな」


 ドレイクさんが手を上げる。


「また面白い素材を拾ったら持ってこい」


「またドラゴンでも?」


「勘弁しろ」


 三人で笑った。


◇


 工房を出る。


「すごいものをもらっちゃいましたね」


「ですね」


「いくらくらいするんでしょう」


「考えたくないです」


 前の剣だけで一千二百万ジェニー。


 今度は。


 レッドドラゴンの爪まで使っている。


「絶対高いですよね」


「絶対高いです」


「ドレイクさんには感謝ですね」


「ですね」


 ありがたい。


「次はギルドへ行きましょう」


「はい」


 四日前。


 レッドドラゴンの素材を預けてある。


 領都から専門の職員を呼ぶと言っていた。


 そろそろ査定も終わっているはずだ。


◇


 冒険者ギルド支所へ入る。


「あ!」


 受付嬢が俺たちに気づいた。


「お待ちしていました」


「査定、終わりました?」


「はい」


 机の上に書類を置く。


「領都から職員が来まして、昨日までにすべて確認が終わりました」


「結構時間かかったんですね」


「レッドドラゴンですから」


「ですよね」


 受付嬢が書類を見る。


「ドレイクさんへ渡した分を除いて」


「はい」


「鱗、牙、爪、皮、骨、翼膜、魔石など」


「はい」


「すべて合わせた買取額ですが」


 少し間が空いた。


「四千万ジェニーになります」


「…………」


「…………」


 フェリシアと顔を見合わせる。


「いくらですか?」


「四千万ジェニーです」


「四千万……」


 思わずもう一度書類を見る。


【レッドドラゴン素材買取額 40,000,000ジェニー】


 本当に書いてある。


「こんなに?」


「むしろ、これでも一部をドレイクさんへ渡した後ですよ」


「…………」


「レッドドラゴンの素材は、どれも非常に希少です」


 受付嬢が続ける。


「特に状態のいい鱗や牙、それと魔石ですね」


「魔石……」


 そういえば。


 ドラゴンの魔石なんて値段を考えたこともなかった。


「四千万……」


 これまで、一度にこれだけの金額を受け取ったことはない。


 戦争の報奨金。


 一千五百万ジェニー。


 それよりも多い。


 冒険者になってから、一度に受け取る金額としては間違いなく過去最高だ。


「お二人で半分ずつなら」


 受付嬢が計算する。


「一人二千万ジェニーです」


「二千万……」


 フェリシアが呟く。


「アレンさん」


「はい?」


「私、ちょっと怖くなってきました」


「俺もです」


「こちらの代金はどうされますか?」


 受付嬢が質問してくる。


「俺は現金で受け取ります」


「承知しました」


 受付嬢が俺を見る。


「かなりの量になりますが」


「《収納》があるので大丈夫です」


「分かりました」


 準備してもらう。


 金貨。


 袋。


 箱。


 かなりの量だ。


「二千万ジェニー分になります」


「ありがとうございます」


 触れる。


「《収納》」


 消える。


「やっぱり便利ですね……」


 フェリシアが呟いた。


「今回も私の分を、アレンさんの《収納》で預かってもらっていいですか?」


「もちろんです」


 フェリシアが少し笑った。


「じゃあ、お願いします」


「はい」


 フェリシアの分、二千万ジェニーも。


「《収納》」


 中へ入れる。


「これで全部ですね」


「はい」


「必要になったら言ってください」


「分かりました」


◇


 ギルドを出る。


「これで全部終わりましたね」


「ですね」


 ロゼッタへ来た目的。


 新しい武器。


 新しい装備。


 全部手に入った。


 レッドドラゴンの素材も売った。


「ベルガントへ戻りますか」


「はい」


 村の中央へ向かう。


 ちょうどベルガント方面へ向かう乗合馬車があった。


「二人です」


「乗りな」


 運賃を払って乗り込む。


 荷物はほとんど《収納》の中だ。


 馬車が動き出す。


 ガタッ。


 ガタッ。


 窓からロゼッタを見る。


 鍛冶場。


 煙突。


 鉱山へ向かう荷車。


 もう山へ入る人の姿も増えていた。


「短かったですけど」


 フェリシアが言った。


「色々ありましたね」


「本当に」


 剣を作ってもらう。


 それだけのつもりだった。


 それなのに水路を直して、新しい剣と杖を作ってもらった。


さらにドラゴンを調査して、追いかけられ、戦い、倒した。


「ドラゴンスレイヤーですしね」


「それ、まだ言います?」


「村の人が言ってましたから」


「フェリシアさんもですよ」


「……私なんて全然役に立たなかったのに」


 少し笑う。


 腰には。


 世界に一本しかない、新しい剣。


 俺の身体を守る新しい防具。


 フェリシアにも新しい防具。


 そして《収納》には四千万ジェニー。


「……かなり増えましたね」


「何がです?」


「色々です」


 馬車が村を離れていく。


 ロゼッタが少しずつ小さくなった。


「また来たいですね」


「はい」


「今度はドラゴンなしで」


 二人で笑った。


 馬車はそのままベルガントへ向かって走っていった。


 累計獲得P=194,840P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
経済に銀行があるなら銀行を活用する方が経済回るかなぁ、と少し気になりますね。貨幣価値や経済、ギルドの報酬と素材の扱い、冒険者の報酬の高騰についてが気になる。
他の世界ですと、龍は、血や心臓等の臓物も、いいお値段で取り引きされてますので、もっとふっかけてよいのにな〜と思いました。
帝国の剣聖を倒して、帝国を退けたドラゴンスレイヤー。 王宮がほっとかない実績。 しかも、パートナーは同盟国の宰相の娘。 王宮から召喚されそう。
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