↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/198

第79話 逆転

 次の瞬間。


 ゴオオオオオオオオオッ!!


「っ!!」


 炎が来た。


 さっきまでとは違う。


 赤というより、白に近い。


 視界いっぱいに炎が広がる。


「フェリシアさん!」


「はい!」


 フェリシアの周囲に青白い光が浮かんだ。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 四つ。


 五つ。


「《魔弾》!!」


 五発が一斉に飛ぶ。


 狙うのは炎の中心。


 炎の中で青白い光が弾けた。


 炎が大きく揺れる。


 でも。


「駄目……!」


 消えない。


 さっきは流れを変えられた。


 今回は違う。


 五発の魔弾を受けても、炎はそのまま押し寄せてくる。


「走って!」


「はい!」


 二人で横へ走る。


 でも。


「間に合わない!」


 炎が広すぎる。


 フェリシアの腕を掴んだ。


「アレンさん!?」


「こっちです!」


 少し先に大きな岩がある。


 痛む右脇腹を無視して地面を蹴った。


 岩陰へ飛び込む。


 直後。


 ゴオオオオオッ!!


「ぐっ……!」


 炎が岩へぶつかった。


 直接受けていない。


 それなのに熱い。


 空気そのものが焼けているみたいだ。


「アレンさん……!」


「まだです!」


 岩が赤くなっている。


 次の瞬間。


 ミシッ。


「え?」


 嫌な音がした。


 岩に亀裂が走る。


「離れて!」


 フェリシアを抱えるようにして横へ飛んだ。


 直後。


 ドォンッ!!


 岩が砕けた。


「うわっ!」


 爆風。


 無数の石が飛んでくる。


「ぐっ!」


 背中。


 肩。


 脚。


 何度も何かが当たった。


 地面へ転がる。


 一度。


 二度。


「アレンさん!」


「大丈夫……です」


 手をつく。


「っ……!」


 右脚に激痛が走った。


 見る。


 太腿から血が流れている。


 砕けた岩が当たったらしい。


「フェリシアさんは!?」


「私は……」


 左腕を押さえている。


 袖が破れ、その下から血が滲んでいた。


「怪我してるじゃないですか!」


「アレンさんの方が重傷です!」


「それは……」


 何も言えない。


 俺の方が明らかにひどい。


 その時。


 バサッ!!


「来ます!」


 巨大な翼。


 レッドドラゴンが一気に高度を下げた。


 ズドンッ!!


 地面が揺れる。


「グルルルル……」


 赤い瞳が俺たちを見る。


 前脚から血が流れていた。


 さっき斬った傷。


 翼にもフェリシアの魔弾を受けた跡が残っている。


 傷ついている。


 間違いなく。


 でも。


「まだ……元気ですね」


「ですね」


 こっちはもっとひどい。


 フェリシアも魔弾を撃ち続けている。


 俺は立っているだけで身体中が痛い。


 普通に考えればどちらが先に倒れるかなんて明らかだった。


「グルルッ!」


 レッドドラゴンが地面を蹴った。


「来ます!」


 前脚。


 右へ。


「くっ!」


 右脚が痛む。


 動きが遅い。


 爪の先が肩をかすめた。


 ガリッ!


「っ!」


 軽鎧が削られる。


 そのまま身体が傾いた。


「アレンさん、後ろ!」


 尾。


 避けられない。


 ミスリルブレードを横へ構える。


 ドガァン!!


「ぐあっ!!」


 腕が痺れた。


 身体が宙へ浮く。


 地面へ叩きつけられた。


「がっ……!」


 息が止まる。


 脇腹が痛い。


 背中も。


 右脚も。


 左腕の火傷も。


 もう、どこが一番痛いのか分からない。


「《魔弾》!」


 バンッ!


 青白い光がレッドドラゴンの顔へ当たった。


「グオッ!」


 頭が横へ振れる。


「アレンさん!」


「……まだ」


 ミスリルブレードを地面へ突き立てる。


 それを支えに立ち上がった。


 膝が震える。


 《全回復》。


 頭に浮かぶ。


 五百P。


 使えば治る。


 今すぐ全部。


 でも。


「グルルッ!」


 レッドドラゴンがフェリシアを見た。


 駄目だ。


 今、《会員》を開けば。


「こっちだ!」


「アレンさん!?」


「こっちを見ろ!」


 前へ出る。


 レッドドラゴンの赤い瞳が俺へ向いた。


 巨大な身体が動く。


 前脚。


 振り下ろされる。


 避ける。


「ぐっ!」


 右脚から力が抜けそうになる。


 それでも横へ抜けた。


 目の前。


 前脚。


 そこには、さっき俺が斬った傷がある。


 血が流れている。


「ここだ!」


 痛みを無視して踏み込む。


 ミスリルブレードを両手で握った。


 《剣聖》。。


「はあああっ!!」


 同じ傷へ切り込む。


 ザンッ!!


「グオオオオオッ!!」


 深い!


 さっきよりさらに深く入った!


 血が噴き出す。


「アレンさん!」


「もう一撃!」


 剣を引き抜く。


 でも。


「っ……!」


 右脚に激痛。


 膝をついた。


 レッドドラゴンが前脚を上げる。


 まずい。


「《魔弾》!!」


 バンッ!!


 顔へ直撃。


「グオッ!」


 爪の軌道が逸れた。


 ズドンッ!!


 俺のすぐ横へ前脚が叩きつけられる。


「助かりました!」


「まだ来ます!」


「はい!」


 立つ。


 フェリシアも息が上がっている。


 魔弾もさっきまでより遅い。


 俺も限界。


 だったら。


 ここで。


「フェリシアさん!」


「はい!」


「もう一度、顔をお願いします!」


「分かりました!」


 フェリシアの周囲に光が浮かぶ。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 三発。


 五発じゃない。


 フェリシアもかなり魔力を使っている。


「《魔弾》!」


 三つの光が飛んだ。


 一発目。


 レッドドラゴンが首を動かす。


 外れた。


 二発目。


 頬。


 バンッ!


「グルッ!」


 三発目。


 目のすぐ横。


 バンッ!!


「グオオッ!!」


 レッドドラゴンが頭を振った。


「今!」


 走る。


 右脚が痛い。


 脇腹も痛む。


 構わない。


 前脚。


 さっき斬った場所。


 鱗は剥がれ、その下まで傷が達している。


「はあっ!」


 横薙ぎ。


 ザンッ!!


「グオオオオオオオッ!!」


 血が飛んだ。


 レッドドラゴンの身体が傾く。


 でも止めない。


「もう一度!」


 同じ傷へ。


 ザシュッ!!


「グオオオオッ!!」


 レッドドラゴンが大きく身体を振った。


「っ!」


 すぐに離れる。


 尾が地面を薙いだ。


 ドォンッ!


 岩が砕ける。


「……?」


 追ってこない。


「グル……」


 レッドドラゴンが前へ出ようとした。


 傷ついた前脚が地面につく。


「グオッ……!」


 ガクンッ!


 巨体が傾いた。


 ドンッ!


 片膝をつくように身体が沈む。


「効いてる……」


 立ち上がろうとする。


 でも。


 傷ついた前脚に力が入らない。


 レッドドラゴンが翼を広げた。


 飛ぼうとしている?


 でも、翼も大きく震えている。


 フェリシアの魔弾を何度も受けた場所。


 すぐには飛べない。


「アレンさん!」


「はい」


 今までなかった。


 レッドドラゴンの攻撃が。


 止まっている。


「……今なら」


 《会員》。


 視界に表示を開く。


【半回復 250P】


【全回復 500P】


 迷わない。


「《全回復》」


【《全回復》を使用しますか?】


【必要:500P】


「使う!」


【500Pを使用しました】


【全回復しました】


「――っ!」


 身体が熱くなる。


 左腕。


 火傷が消える。


 脇腹。


 痛みが消えた。


 右肩。


 軽い。


 右脚。


 傷が塞がっていく。


 身体中に溜まっていた疲労まで。


 一気に消えた。


「……ふう」


 立ち上がる。


 さっきまで震えていた脚に力が入る。


 ミスリルブレードを振る。


 問題ない。


「アレンさん……?」


 フェリシアが俺を見る。


「治しました」


「治したって……」


 レッドドラゴンを見る。


「グルル……」


 前脚から血が流れている。


 翼も傷ついている。


 息も荒い。


 さっきまでとは違う。


 俺が元に戻っただけじゃない。


 レッドドラゴンの動きも明らかに鈍っている。


 何度も斬った前脚。


 魔弾を受け続けた翼。


 流れ続けている血。


 条件が変わった。


「まだいけます」


 ミスリルブレードを構えた。


 レッドドラゴンが立ち上がる。


「グオオオッ!」


 地面を蹴った。


 前脚。


 振り下ろされる。


 見える。


 半歩横へ。


 爪が目の前を通った。


 さっきまでなら避けるだけで精一杯だった。


 今は違う!


 そのまま懐へ。


 傷ついた前脚へ剣を振る。


 ザンッ!


「グオッ!」


 もう一撃。


 ザンッ!


「グオオッ!」


 レッドドラゴンが後ろへ下がった。


「……下がった」


 フェリシアの声。


 俺も気づいた。


 戦い始めてから初めてレッドドラゴンの方から距離を取った。


「グオオオオッ!!」


 翼を広げる。


「飛びます!」


「させない!」


 フェリシアがミスリルロッドを向けた。


 二つの魔弾。


「《魔弾》!」


 バンッ!


 一発目。


 傷ついた翼。


 二発目。


 同じ場所。


 バンッ!!


「グオッ!」


 翼が大きく揺れた。


 巨体が浮きかける。


 でも。


 ドンッ!


 すぐに地面へ落ちた。


「飛べない!」


「はい!アレンさん、チャンスです!」


 走る。


 レッドドラゴンが俺を見る。


 大きな口を開いた。


 奥が赤く光る。


 火炎。


「アレンさん!」


「大丈夫です!」


 止まらない。


 今まで何度も見た。


 火炎を吐く直前に一瞬だけ頭が止まる。


 口の奥の光が強くなる。


 熱が来る。


 まだだ!


 もう少し!


 レッドドラゴンが大きく息を吸った。


 今!


 横へ踏み込む。


 ゴォォォォッ!!


 炎がすぐ横を通り抜けた。


「くっ!」


 熱い。


 でも、当たっていない。


 首。


 すぐ目の前。


 赤い鱗が並んでいる。


 その境目。


 《剣聖》。


 全身を使い切り込む。


「はあああああっ!!」


 ミスリルブレードを振った。


 ザンッ!!


「グオオオオオオオオオッ!!」


 刃が首へ入った。


 深い!


 今までで一番深い!


「くっ……!」


 止まった。


 さすがに硬い。


 レッドドラゴンが暴れる。


「アレンさん!」


 離れるべきだ!


 分かっている!


 それでも!


「ここで……」


 柄を強く握る。


「終わらせる!」


 踏み込んだ右脚へ力を込める。


 腰を捻る。


 身体ごと剣へ体重を乗せた。


「うおおおおおっ!!」


 ズバンッ!!


 止まっていた刃が、一気に首筋を走った。


「グオオ……!」


 レッドドラゴンの身体が止まった。


「…………」


 一歩。


 前へ出る。


 もう一歩。


 そして。


 ガクンッ。


 脚が崩れた。


 ズゥンッ!!


 巨大な身体が地面へ倒れる。


 岩場全体が揺れた。


「はぁ……はぁ……」


 ミスリルブレードを構えたまま待つ。


 まだ分からない。


 また動くかもしれない。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 レッドドラゴンは動かない。


「……倒した?」


 フェリシアが小さく呟いた。


「まだ……」


 その時。


 視界に文字が浮かんだ。


【レッドドラゴンを討伐しました】


「……っ」


【30,000P獲得】


「…………」


 思わず表示を見る。


「三万……?」


「え?」


 フェリシアが俺を見る。


「どうしました?」


「レッドドラゴン」


 倒れた巨体を見る。


「三万Pです」


「三万!?」


「はい」


 今まで一体の魔物から得たPで、一番多い。


 ブラックキマイラでも一万Pだった。


 その三倍。


「……それだけ強かったってことですね」


 フェリシアがレッドドラゴンを見る。


「ですね」


 そう答えた直後。


「はぁぁぁ……」


 フェリシアがその場へ座り込んだ。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫ですけど……」


 ミスリルロッドを地面へ置く。


「もう魔弾、一発も撃ちたくないです」


「あ……」


「アレンさんは元気そうでいいですよね」


「全回復したので」


「ずるいですけど、アレンさんのおかげで助かりました」


 フェリシアが少しだけ笑った。


 俺も剣を下ろす。


 目の前には巨大なレッドドラゴン。


 最初に空を飛んでいる姿を見た時。


 戦おうなんて考えなかった。


 むしろ逃げた。


 俺たちが受けた依頼だって、ただの調査だった。


 絶対に戦わないでください。


 受付嬢にも何度も言われた。


 それなのに。


「……本当に倒したんだ」


 まだ実感がない。


 《会員》を開く。


【累計獲得P:194,740P】


「十九万……」


 もうすぐ二十万。


 でも。


 今はその数字よりも。


 目の前に倒れている巨大なドラゴンの方が気になった。


「アレンさん」


「はい?」


「これ……」


 フェリシアがレッドドラゴンを指す。


「持って帰るんですよね?」


「…………」


 巨大な身体を見る。


「入りますかね」


「今まで大体入りましたよね」


「そうですけど」


 ブラックキマイラも。


 ミスリルゴーレムも。


 かなり大きかった。


 でも。


「これは、さすがに大きいですよ」


「試してみたらどうです?」


「……やってみます」


 レッドドラゴンへ近づく。


 倒れていても大きい。


 赤い鱗。


 太い脚。


 巨大な翼。


 こんなものを村まで運ぶなんて普通なら絶対に無理だ。


 身体へ手を触れた。


「《収納》」


 次の瞬間。


 巨大なレッドドラゴンの身体が消えた。


「……入った」


「入りましたね」


 二人で顔を見合わせる。


 そして。


 フェリシアが笑った。


「ギルドの人、驚くでしょうね」


「……でしょうね」


「帰りましょうか……フェリシアさん、歩けますか?」


「はい」


 ようやく。


 ロゼッタへ帰れる。


 累計獲得P=194,740P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
短文連続で読みにくい&全回復もったいぶるで冷めてしまったのでここでリタイア…
少年漫画誌の苦戦をどうしてもやりたかったんだ。 全回復を悩まないって悩んでる場合かよ。 こまめに全回復してたら苦戦せず勝てただろ。
驚くと共にお説教タイムなんだろうが、回復で無傷だと誤解されるね…フェリシア怪我してるし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。