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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第78話 レッドドラゴン

「グオオオオオオオオオッ!!」


 レッドドラゴンの咆哮が山を揺らした。


 空気そのものが震える。


「アレンさん、来ます!」


「はい!」


 レッドドラゴンが地面を蹴った。


 巨体が一気に迫る。


 速い!


 右の前脚が振り下ろされた。


 さっきは受けた。


 でも、何度もあんなものを受ける気はない。


 横へ飛ぶ。


 ズドンッ!!


 爪が地面へ突き刺さった。


 土と石が弾ける。


「っ!」


 顔を腕で庇う。


 その瞬間。


「アレンさん、横!」


 フェリシアの声。


 赤いものが視界いっぱいに広がった。


 尾だ。


「うわっ!」


 身体を伏せる。


 ブォンッ!


 頭上を巨大な尾が通過した。


 風圧だけで身体が持っていかれそうになる。


 そのまま後ろの岩へ直撃。


 ドォンッ!!


 岩が砕け散った。


「……あれは受けたくないな」


 レッドドラゴンがこちらを向く。


 赤い瞳。


 岩を砕いた尾。


 人間なんて簡単に引き裂けそうな爪。


 さっきまで美しいと思っていた姿が、今は恐ろしくて仕方ない。


 でも、逃げられない。


 だったら戦うしかない。


「グルルル……」


 レッドドラゴンが翼を広げる。


「飛びます!」


 巨体が地面から浮いた。


 一度。


 二度。


 巨大な翼を動かしただけで、一気に高度を上げる。


「フェリシアさん!」


「はい!」


 ミスリルロッドが空へ向く。


 フェリシアの周囲に、五つの青白い光が浮かんだ。


 もう何度も見た。


 五つの《魔弾》。


 でも、以前より形が整うのが速い。


「《魔弾》!」


 五つが飛ぶ。


 レッドドラゴンが翼を傾けた。


 一発。


 二発。


 外れる。


 三発目が胴へ当たった。


 バンッ!


 四発目。


 翼へ。


 五発目も翼の付け根へ命中した。


「グルッ……!」


 赤い巨体がわずかに揺れる。


「効いた?」


「大きなダメージにはなってません!」


「でも嫌がってます!」


「はい!」


 レッドドラゴンが大きく旋回する。


 そのままこちらへ頭を向けた。


 口が開く。


 奥が赤く光った。


「火炎です!」


「走って!」


 二人で横へ駆ける。


 でも。


「間に合わない!」


 周囲は開けた岩場。


 隠れられる場所がない。


 ゴォォォォォッ!!


 炎が迫る。


「アレンさん、そのまま走って!」


「え!?」


 フェリシアが立ち止まった。


「フェリシアさん!」


「やってみます!」


 ミスリルロッドを両手で構える。


 その周囲に。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 四つ。


 五つ。


 青白い魔弾が同時に浮かんだ。


「そんなの正面から――!」


「やります!」


 フェリシアが杖を振った。


「《魔弾》!!」


 五つの光が飛ぶ。


 狙う場所は全部同じ。


 迫る火炎の中心。


 バンッ!


 一発目。


 バンッ!


 二発目。


 三発目。


 四発目。


 五発目。


 五つの魔弾がほとんど同じ場所へ連続して叩き込まれた。


 ドォンッ!!


 炎の中心で青白い光が弾けた。


「うおっ!」


 火炎そのものが消えたわけじゃない。


 でも、流れが乱れた。


 炎が左右へ割れる。


「今です!」


「はい!」


 二人でその間へ飛び込む。


 ゴォッ!


 すぐ横を炎が通過した。


「くっ……!」


 熱い!


 直撃していないのに、肌が焼けるような熱だ。


 左腕が炎の端をかすめた。


「っ!」


 ブラックスチールリザードの軽鎧がある。


 それでも熱までは消せない。


 地面へ転がり、そのまま立ち上がる。


「アレンさん、腕!」


「まだ動きます!」


 左腕の表面が赤くなっている。


 軽い火傷。


 でも剣は握れる。


 フェリシアも息を切らしていた。


「今の……」


 自分の杖を見る。


「五発が、ほとんどずれませんでした」


「ミスリルロッド?」


「たぶん。前よりずっと魔力を合わせやすいです」


 五発撃てるようになったわけじゃない。


 前からできていた。


 でも、あれだけ急いで撃った五発を、一点へ集めた。


 それがこの杖の力なのかもしれない。


「来ます!」


 レッドドラゴンが急降下する。


「っ!」


 今度は俺へ。


 爪。


 左へかわす。


 すぐに反撃。


 ミスリルブレードを振る。


 ザンッ!


 脇腹。


 鱗が数枚飛ぶ。


 でも浅い。


「くそっ!」


 踏み込んだまま、もう一撃。


 その時。


「アレンさん、後ろ!!」


「え――」


 遅かった。


 尾。


 避けきれない!


 咄嗟に剣を身体の横へ立てる。


 ドガァン!!


「ぐあっ!!」


 身体が宙へ浮いた。


 何が起きたのか分からない。


 次の瞬間。


 背中が岩へ叩きつけられた。


 ドンッ!


「がっ……!」


 息が止まる。


 視界が白くなった。


 地面へ落ちる。


「アレンさん!!」


 声が遠い。


 息を吸おうとして。


「ぐっ……!」


 脇腹に激痛が走った。


 折れた?


 分からない。


 ブラックスチールリザードの軽鎧が衝撃を減らしてくれたはずだ。


 それでもこれだ。


「アレンさん!」


「来ないで……!」


 無理やり身体を起こす。


 口の中に鉄の味がする。


 右肩。


 脇腹。


 左腕の火傷。


 全部痛い。


 《全回復》。


 一瞬、頭に浮かぶ。


 五百P。


 使えば治る。


 でも。


「グオオッ!!」


 レッドドラゴンがフェリシアへ向きを変えた。


 今、《会員》へ意識を向けている場合じゃない。


「フェリシアさん!」


「分かってます!」


 五つの魔弾が浮かぶ。


「《魔弾》!」


 青白い光が一斉に飛んだ。


 顔。


 首。


 翼。


 レッドドラゴンが頭を振る。


 その隙に立つ。


「……まだいける」


 足は動く。


 剣も握れる。


 でも、さっきまでとは違う。


 息をするたび脇腹が痛む。


 右肩も重い。


 一撃まともに受ければ、次は立てないかもしれない。


「アレンさん、本当に大丈夫ですか!?」


「大丈夫じゃないです!」


「え!?」


「でも、止まれません!」


 走る。


「だから援護してください!」


「……分かりました!」


 レッドドラゴンの爪が振り下ろされる。


 かわす。


 脇腹が痛む。


「くっ!」


 動きがわずかに遅れる。


 爪の先が肩をかすめた。


 ガリッ!


 軽鎧の肩当てが削られる。


「っ!」


 衝撃で身体が傾く。


 でも倒れない。


 そのまま懐へ入る。


 斬る。


 ザンッ!


 また浅い。


「駄目だ……!」


 正面から鱗を斬っても深く入らない。


 レッドドラゴンが首を振る。


 離れる。


 フェリシアの魔弾が飛ぶ。


 バンッ!


 目の近くへ当たり、ドラゴンが顔を背けた。


「アレンさん!」


「はい!」


「翼です!」


 フェリシアが叫ぶ。


「翼の内側! 身体みたいな鱗がありません!」


 見る。


 確かに。


 翼の骨を覆う部分には鱗がある。


 でも、その間に張られた膜は違う。


「狙えますか!?」


「やります!」


 レッドドラゴンが地面を蹴る。


 また空へ上がる。


「フェリシアさん」


「はい!」


「落としてください!」


「任せてください!」


 ミスリルロッドを構える。


 五つの光。


 でもすぐには撃たない。


 レッドドラゴンの飛ぶ方向を追う。


 一周。


 二周。


 こちらへ向きを変えた。


「今!」


「《魔弾》!」


 五発。


 一発目は外れる。


 二発目も。


 三発目。


 バンッ!


 翼の内側。


「グオッ!」


「まだ!」


 四発目。


 同じ翼。


 五発目。


 さらに同じ場所。


 バンッ! バンッ!


 翼が大きく揺れた。


 レッドドラゴンの身体が傾く。


「落ちる!」


 高度が下がる。


 ズドンッ!!


 巨体が地面へ着地した。


 体勢が崩れている。


「アレンさん!」


 走る。


 脇腹が痛む。


 右肩が重い。


 それでも走る。


 前脚。


 さっき傷をつけた場所。


 赤い鱗が並んでいる。


 その境目。


 鱗と鱗の間。


 《剣聖》。


 剣の振り方。


 踏み込み。


 刃を入れる角度。


 今まで身体へ染み込ませてきたものが、一つにつながる。


「ここだ!」


 踏み込む。


 ミスリルブレードを振り抜いた。


 ザンッ!!


「グオオオッ!!」


 手応えが違う。


 刃が深く入った。


 赤い血が飛ぶ。


「入った!」


 フェリシアの声。


 すぐに離れようとする。


 でも。


「っ……!」


 脇腹の痛みで、一歩遅れた。


 レッドドラゴンの翼が動く。


 ブォンッ!!


「ぐっ!」


 風圧と翼の端が身体を弾いた。


 地面を転がる。


 一度。


 二度。


 止まる。


「はぁ……はぁ……」


 立ち上がる。


 膝が少し震えた。


 左腕は熱い。


 脇腹は痛い。


 右肩も思うように上がらない。


 それでも。


 レッドドラゴンの前脚には、はっきりとした傷が残っている。


 血が流れている。


「効く……」


 倒せない相手じゃない。


 そう思った。


 その時。


 レッドドラゴンの動きが止まった。


「……?」


 頭を低くする。


 大きく息を吸った。


「アレンさん」


 フェリシアの声が変わる。


「何か……変です」


 俺にも分かった。


 レッドドラゴンの喉が赤く光っている。


 その光が首へ。


 胸へ。


 徐々に広がっていく。


 周囲の温度が上がった。


「……熱い」


 まだ離れている。


 それなのに肌が熱を感じる。


 さっきの火炎とは違う。


 フェリシアがミスリルロッドを強く握る。


「また五発で……」


「いや」


 思わず言った。


 あれは違う。


 身体がそう言っている。


「さっきのとは、たぶん威力が違います」


 レッドドラゴンが顔を上げる。


 口元から炎が漏れた。


 俺は痛む身体でミスリルブレードを構える。


「フェリシアさん」


「はい」


「来ます!」


 次の瞬間。


 レッドドラゴンが大きく口を開いた。


 累計獲得P=164,740P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
マジで全回復使うタイミングいくらでもあるやろ。ピンチを演出したいだけに思えてあんま入り込めなかったなー
このレッドドラゴンより強そうな黒竜の素材使った剣がミスリルより下って事はないと思えるのですが黒竜って実は竜の中では雑魚だったりするのでしょうか?ミスリルって魔力伝導率とかは高いけど素材としてはそれほど…
魔弾撃つまでに相手が2回も旋回してるのに、その間に全回復を使わない不思議。
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