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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第75話 新しい剣

 差し出された剣の柄を握る。


「……重い」


 炎牙剣より重い。


 でも、嫌な重さじゃない。


 むしろ手の中にしっかり収まり、腕を振ればそのままついてきそうな感覚がある。


「どうだ?」


「思っていたより重いです。でも、振りやすそうです」


「そうなるように作った」


 ドレイクが腕を組む。


「ミスリルは軽くできる。普通の剣士なら、もっと軽く仕上げるところだ」


「俺には違うと?」


「ああ」


 昨日斬った大木の方へ視線を向ける。


「お前の場合、軽くしすぎると剣の方がお前についていけねえ。

振った時の力を受け止められるように、あえて厚みと重さを残した」


 刀身を見る。


 銀白色。


 光の加減によって、薄く青みが浮かぶ。


 派手な装飾はない。


 柄も必要以上に凝った作りではなかった。


 でも、握っているだけで今までの剣とは違うことが分かる。


「名前はあるんですか?」


「名前?」


「はい。この剣の」


 ドレイクが少し考えた。


「……《ミスリルブレード》でいいだろ」


「そのままですね」


「分かりやすい方がいい」


 確かに。


 変に格好をつけた名前より、何で作られた剣なのかすぐ分かる。


「《鑑定》」


【ミスリルブレード】


【ドレイクがミスリルを主体に複数の金属を組み合わせて鍛えた長剣】


【極めて高い耐久性と魔力伝導性を持つ】


「やっぱり他の金属も使ってるんですね」


「ああ。お前が昨日あんなもん見せるからな」


「大木ですか?」


「そうだ」


 ドレイクが呆れたように言う。


「ミスリルだけでも十分丈夫だ。だが、お前が全力で使い続けるなら話は別だ。

芯に別の金属を使って、衝撃を逃がすようにしてある」


「なるほど」


「それと、魔力もよく通る」


「魔力?」


「試してみろ」


 言われた通り、《魔力操作》を使う。


 少しずつ剣へ魔力を流した。


 刀身に淡い青白い光が走る。


「おお……」


 炎牙剣とは違う。


 あの剣は魔力を流すと炎が生まれた。


 でも、この剣にはそういう仕掛けはない。


 自分の魔力が、剣先まで滑らかに流れていく。


「余計な能力は付けてねえ」


 ドレイクが言った。


「お前はもう、剣に強くしてもらう必要がないだろ」


「え?」


「剣の仕事は、お前の力を邪魔せず伝えることだ」


 その言葉を聞いて、もう一度ミスリルブレードを見る。


 確かに、その方が俺には合っているのかもしれない。


「今度は剣そのものを試してみるか」


「いいんですか?」


「ああ。裏へ来い」


 ◇


 工房の裏へ出る。


 昨日倒した大木は、すでに横へ片付けられていた。


 ドレイクが少し離れた場所を指す。


「そこの岩でいい」


 腰ほどの高さがある灰色の岩がある。


「これを?」


「ああ」


「魔力は?」


「流すな。まずは剣だけで斬ってみろ」


「分かりました」


 ミスリルブレードを構える。


 昨日の剣より明らかに重い。


 それでも、不思議なくらい振りにくさがない。


「いきます」


 一歩踏み込む。


 剣を振った。


 ザンッ。


「……え?」


 ほとんど抵抗を感じなかった。


 振り抜いたあとも、岩はそのまま残っている。


 でも。


 ズズッ。


 上半分がゆっくりずれた。


 そのまま地面へ落ちる。


 ドンッ!


 岩が二つに分かれた。


「すごい……」


 フェリシアが切断面を見る。


 俺も剣を確認した。


 刃に欠けはない。


 歪みもない。


「どうだ?」


「全然止まりませんでした」


「だろうな」


 ドレイクが剣を見る。


「昨日みたいに剣の方が負けることは、そう簡単にはねえ」


「大事にします」


 そう言うと、ドレイクが眉を寄せた。


「大事にはしろ。だが、大事にしすぎるな」


「え?」


「武器を惜しんで死なれたら、作った俺が寝覚め悪い」


 腕を組む。


「必要なら遠慮なく使え。刃が欠けようが、折れようがな」


「でも、一千二百万ジェニーですよ?」


「命より安いだろ」


「それは……そうですね」


「壊れたら持ってこい。その時はまた考えてやる」


「分かりました」


 ミスリルブレードを鞘へ収める。


 今度はフェリシアの番だった。


 ◇


「これがお前のだ」


 ドレイクが二つ目の布包みを開いた。


 現れたのは、細身の杖だった。


 長さは今まで使っていた白銀樹の杖と大きく変わらない。


 外側には淡い色の木材が使われ、その中を銀白色の金属が通っている。


「綺麗……」


 フェリシアが杖を受け取る。


「ミスリルを全部外に出す必要はねえ。杖なら大事なのは芯だ」


「これも名前は?」


「《ミスリルロッド》」


「やっぱりそのままなんですね」


「文句あるか?」


「いえ。分かりやすいです」


 フェリシアが笑う。


「アレンさん、《鑑定》してもらえますか?」


「もちろん」


 杖を見る。


「《鑑定》」


【ミスリルロッド】


【ミスリルを芯材として使用した魔術杖】


【魔力の伝達損失を抑え、精密な魔力操作を補助する】


「精密な魔力操作……」


「昨日のお前を見て決めた」


 ドレイクが言う。


「魔力を増やすだけなら他にもやり方はある。だが、お前の場合は余計な邪魔をしない方がいい」


「使ってみても?」


「当然だ」


 さっき斬った岩の残った半分を見る。


 フェリシアがミスリルロッドを構えた。


「《魔弾》」


 青白い魔弾が生まれる。


 その瞬間、俺にも分かった。


「速い……」


 いつもより、魔弾が形になるまでが明らかに短い。


 バンッ!


 岩へ当たる。


 フェリシアはすぐに次を作った。


「《魔弾》!」


 二発目、三発目とほとんど間を置かず、同じ場所へ命中した。


 岩の表面が砕ける。


「……すごい」


 フェリシアが杖を見る。


「どうです?」


「魔法そのものが強くなったというより……」


 もう一度、杖へ魔力を流す。


「出したいと思った時に、そのまま出てくれる感じです」


「それでいい」


 ドレイクが頷く。


「杖が魔力を作ってるわけじゃねえ。お前が流した魔力を、できるだけ無駄なく先まで届けてるだけだ」


「ありがとうございます」


「礼は金を払ってから言え」


「あ」


 そうだった。


 ◇


 ベルガントを出る前に、装備代に備えてまとまった金は引き出して《収納》へ入れてある。


 そこから代金を取り出した。


 俺が一千二百万ジェニー。


 フェリシアが一千万ジェニー。


 二人合わせて二千二百万ジェニー。


 改めて考えると、とんでもない額だ。


 冒険者になったばかりの頃なら、想像もできなかった。


 でも、腰にあるミスリルブレードを見る。


 後悔はない。


「確かに受け取った」


 ドレイクが代金を確認する。


「また近くへ来たら寄れ」


「はい」


「次に会う時まで剣を壊すなよ」


「大事に使います」


「だから大事にしすぎるなって言ってんだろ」


「難しいですね」


「命を守るために使え。それだけだ」


「分かりました」


 フェリシアもミスリルロッドを持ち上げる。


「私も大切に使います」


「おう。」


 三人で笑った。


 四日間滞在したロゼッタ村。


 目的だった新しい装備も手に入った。


 そろそろベルガントへ戻ってもいい。


 ただ、その前にやることが一つ残っていた。


 裏山で倒した魔物の売却だ。


 ◇


 ロゼッタ村にも、小さいながら冒険者ギルドの支所があった。


 中へ入ると、受付にいた女性がこちらを見る。


「いらっしゃいませ」


「魔物の素材を売りたいんですけど」


「冒険者証をお願いします」


 俺とフェリシアが冒険者証を出す。


 受付嬢が確認する。


「……Aランク?」


 顔を上げた。


「お二人ともですか?」


「はい」


「珍しいですね。この村までAランクの方が来るなんて」


「装備を作ってもらいに来たんです」


「なるほど」


 《収納》から、裏山で倒した魔物を順番に出していく。


 ゴブリン。


 グレイウルフ。


 角ウサギ。


 オーク。


 受付嬢だけでは処理しきれず、奥から職員が何人か出てきた。


「これで全部です」


「……かなりありますね」


「三日分なので」


 査定を待っていると、受付嬢が何度かこちらを見ていることに気づいた。


「どうしました?」


「あの……」


 少し迷っている。


「お二人がAランクなら、一つお願いできるかもしれません」


「依頼ですか?」


「はい。ただ、討伐ではありません」


 受付嬢が声を少し落とした。


「この村の北にある山で、最近、ドラゴンらしきものを見たという報告が出ています」


「ドラゴン?」


 フェリシアの表情が変わる。


「本当に?」


「分かりません」


 受付嬢が首を振った。


「遠くから大きな影を見ただけという人もいます。

ただ、山で働く鉱夫からも似たような報告がありました」


「他に痕跡は?」


「巨大な足跡らしきものと、焼けた木が見つかっています。

それと、大型の獣が食い荒らされた跡も」


 ただの勘違いとは言い切れない。


「村では何か対応してるんですか?」


「目撃された場所に近い坑道は、念のため作業を止めています。

グレンツの領都にもすでに報告を送りました」


「応援が来るんですか?」


「はい。ただ、ここまで来るには何日かかかります」


 受付嬢が俺たちの冒険者証を見る。


「その前に、何がいるのかだけでも確認したいんです」


「それで、Aランクの俺たちに?」


「はい」


「調査だけですか?」


「調査だけです」


 受付嬢が頷く。


「報酬はお二人合わせて二百万ジェニー。ドラゴンだと判断できる明確な証拠を確認できた場合は、追加で百万ジェニーが支払われます」


「結構高いですね」


「危険ですから」


 そこで受付嬢の表情が厳しくなった。


「ただし、一つだけ絶対に守ってください」


「何です?」


「戦わないでください」


「……ドラゴンと?」


「はい」


 はっきりと言われた。


「種類にもよりますが、本物のドラゴンだった場合、Aランク冒険者でも命を落とします」


 受付嬢が俺とフェリシアを順番に見る。


「姿を確認するだけで構いません。足跡や鱗のような痕跡だけでも十分です。

少しでも危険だと思ったら、すぐに戻ってください」


「討伐は依頼に含まれていない?」


「絶対に含まれていません」


 かなり念を押された。


 腰には、完成したばかりのミスリルブレードがある。


 試してみたい気持ちがないわけじゃない。


 ドラゴンか。


 ブラックキマイラとは比べものにならない相手かもしれない。


 フェリシアを見る。


「どうします?」


「調べるだけなら」


 俺も頷いた。


「分かりました。引き受けます」


「ありがとうございます」


 受付嬢がほっとしたように息を吐く。


「本当に、戦わないでくださいね」


「分かっていますよ」


 こうしてベルガントへ戻る前に、もう一つ仕事を引き受けることになった。


 ロゼッタ村の北にある山。


 そこで目撃されたという――ドラゴンの調査を。


 累計獲得P=164,740P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
武器が完成前ならいざ知らず完成後ですからね〜 ワクワクする
昨日倒した大木は、すでに横へ片付けられていた。 昨日の剣より明らかに重い。 「昨日みたいに剣の方が負けることは、そう簡単にはねえ」 えっと 4日目の夕方ですよね? 昨日じゃないですよね。  都市の位…
ドラゴンは居ませんでした。 あ、でもデカいトカゲがいたので倒しておきました!! (すっとぼけ)
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