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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第70話 一千万の剣

 視界を覆っていた白い光が消える。


 次に見えたのは、新ダンジョンの一階だった。


「戻ってきましたね」


「はい」


 十階層にいたのが嘘みたいだ。


 転移石から手を離し、入口へ向かう。


 外へ出ると、森の中に作られた拠点にはまだ何人もの冒険者や兵士がいた。


 俺たちに気づいた騎士が近づいてくる。


「お戻りになりましたか。調査はどこまで?」


「十階層までです」


「……十階層?」


 騎士の足が止まった。


「もうそこまで行ったんですか?」


「はい。ただ、十階層にはかなり強い魔物がいました」


 腰の炎牙剣を見る。


 鞘に入れているから見えないけど、刃はかなり傷んでいる。


 フェリシアも朝より明らかに疲れていた。


「詳しい内容はギルドへ報告します」


「分かりました。お気をつけて」


 俺たちは拠点を後にした。


 ◇


 ベルガントへ戻る頃には、日がだいぶ傾いていた。


 そのまま冒険者ギルドへ向かう。


 受付で新ダンジョンの調査から戻ったことを伝えると、すぐにギルドマスターの部屋へ案内された。


「早かったな」


 部屋へ入るなり、ギルドマスターが言った。


「どこまで行った?」


「十階層です」


「十?」


 やっぱり驚く。


「一日でか?」


「はい」


「……分かった。順番に聞かせてくれ」


 俺とフェリシアで、確認した内容を報告していく。


 一階層から五階層。


 魔物の数は多いが、一体一体はそれほど強くなかったこと。


 鉄鉱石らしい鉱石が、ほぼすべての階層で見つかったこと。


 そして六階層から魔物が急に強くなった。


「六階層ではメタルスコーピオンとタイラントベアが出ました」


「六階でタイラントベアか」


「はい。その先ではアイアンオーガやブレードマンティスも出ています」


 ギルドマスターの表情が変わる。


 ベルガント西部ダンジョンなら、もっと深い階層で出てくる魔物だ。


「少なくとも六階層から先は、Bランク以上にした方がいいと思います」


「俺もそう判断する」


 ギルドマスターが記録へ書き込む。


「十階は?」


「階層主がいました」


「何だ?」


「ブラックキマイラです」


 今度は完全に手が止まった。


「ブラックキマイラ?」


「《鑑定》で確認しました」


「《鑑定》?」


「あ……それは俺のスキルです」


「また増えたのか?」


「まあ……はい」


 詳しく説明すると長くなるので、それ以上は触れない。


「それで?」


「かなり強かったです」


 フェリシアが答えた。


「二人で倒しましたが、アレンさんも怪我をしました」


「お前が?」


「はい」


 ギルドマスターが俺を見る。


「もう治っています」


「そうか」


 少しだけ間が空いた。


「なら、十階層はAランクを含むパーティ向けと見た方がいいかもしれんな」


「それがいいと思います」


 続いて鉱石を出す。


 最初は黒っぽい石。


「《鑑定》では鉄鉱石と出ました」


「やっぱり鉄か」


「はい。それと六階層では、これも見つけました」


 青灰色の鉱石を机へ置く。


「魔鉄鉱石です」


「魔鉄まで?」


 ギルドマスターが身を乗り出した。


「まだあります」


「……何だ?」


 《収納》から銀白色の鉱石を取り出す。


 机へ置いた瞬間、ギルドマスターの目がそこへ向いた。


「十階層の階層主を倒した先にありました」


「まさか」


「《鑑定》では――」


 一度、鉱石を見る。


「ミスリル鉱石と出ました」


「…………」


 ギルドマスターが黙った。


「本当にミスリルなのか?」


「《鑑定》が間違っていなければ」


 鉱石を手に取る。


 さっきまでとは明らかに反応が違う。


「これは……俺だけで判断する話じゃないな」


 鉱石を机へ戻した。


「すぐ伯爵様へ報告する」


「お願いします」


「それまではダンジョンの一般開放も待った方がよさそうだ。鉄だけならまだしも、ミスリルまであるとなると話が変わる」


 俺もそう思う。


 価値が高すぎるものが見つかったら、冒険者が殺到する可能性もある。


「それと、十階層には転移石もありました」


「西部ダンジョンと同じか?」


「同じように見えました。俺たち二人はそれで一階まで戻ってきています」


「なるほど……」


 ギルドマスターが書類へ目を落とす。


「十分だ。今回の調査はこれで完了とする」


 その瞬間、表示が浮かんだ。


【依頼達成を確認しました】


【100P獲得】


【保有:10,890P】


【累計獲得P:163,600P】


 表示を閉じる。


「依頼報酬は二百万ジェニーだ」


「ありがとうございます」


 二人で半分。


 一人百万ジェニー。


「それとは別に、持ち帰った魔物もあるんだろ?」


「かなりあります」


「……かなり?」


「はい」


 ギルドマスターが少し嫌そうな顔をした。


「解体場へ行け」


「わかりました」


 ◇


 解体場。


 俺は《収納》を開いた。


 今回も、調査した魔物は種類と数を記録したあと、持ち帰れるものは回収している。


 アイアンウルフ。


 ブラッドボア。


 アーマードエイプ。


 スチールリザード。


 クリスタルホーン。


 メタルスコーピオン。


 タイラントベア。


 アイアンオーガ。


 ブレードマンティス。


 次々と出していくと、職員たちの表情がどんどん変わっていった。


「まだありますか?」


「最後です」


 広い場所を空けてもらう。


「《収納》」


 ブラックキマイラの巨体が現れた。


「…………」


 誰も喋らない。


「これが十階層の階層主です」


「これを二人で……?」


「はい」


 職員がブラックキマイラを見上げる。


「これは少し時間をください。大型の魔石もありますし、毛皮、牙、爪、角……蛇の部分は毒腺も確認しないといけません」


「分かりました」


 通常の魔物から先に査定してもらう。


 しばらく待つと、職員が紙を持って戻ってきた。


「まず、ブラックキマイラ以外の魔物です」


「はい」


「すべて合わせて四百八十万ジェニーになります」


「四百八十万……」


 フェリシアが金額を見る。


「かなりいきましたね」


「数がありますからね。それに、深い階層の魔物ほど素材の価値も高くなります」


 さらに別の紙。


「ブラックキマイラですが、こちらは五百二十万ジェニーです」


「一体で?」


 フェリシアが聞き返した。


「はい。大型の魔石だけでもかなりの値段になります。毛皮や爪、牙も状態がいいですし、毒腺も買い取り対象です」


 五百二十万。


 さすがに高い。


「今回の依頼報酬を合わせると……」


 頭の中で計算する。


 依頼報酬、二百万。


 通常魔物、四百八十万。


 ブラックキマイラ、五百二十万。


 合計。


「一千二百万ジェニーですね」


「はい」


 二人で半分。


 一人六百万ジェニー。


「一日で六百万……」


 フェリシアが小さく呟いた。


「かなり稼ぎましたね」


「かなり、で済ませる額でしょうか」


「でも、前にももっと稼いだことありましたよね?」


「そうですけど……」


 フェリシアが苦笑した。


 代金はフェリシアの分を含めて《収納》に入れた。


 手続きを終えてギルドを出た。


 ◇


「フェリシアさん」


「はい」


「少し寄ってもいいですか?」


 俺が腰を見ると、フェリシアもすぐに気づいた。


「炎牙剣ですね」


「はい」


「いつもの武器屋ですか?」


「いえ」


 首を振る。


「中央通りの方へ行こうと思います」


「……あのお店ですか?」


「はい」


 高級武具店。


 以前、初めて入った時は値札を見るだけで場違いに感じた店だ。


 中央通りを進み、店の前に立つ。


 大きなガラス窓。


 中には剣や鎧が一つずつ飾られている。


 扉を開けた。


「いらっしゃいませ」


 制服を着た店員が頭を下げる。


 店内を見る。


 以前と同じ場所に剣が並んでいた。


【白銀剣 2,450,000ジェニー】


【雷晶剣 5,800,000ジェニー】


 そして、その奥。


 一振りだけ別の台に置かれている黒い剣。


【黒竜剣 12,800,000ジェニー】


「……まだありますね」


「ありますね」


 フェリシアも黒竜剣を見る。


 千二百八十万ジェニー。


 初めて見た時は、家が買える金額だと思った。


 今でも高い。


 でも、もう値札を見た瞬間に諦めるような金額ではない。


 今日だけでも、俺の取り分は六百万ジェニーだ。


 これまで貯めた金もある。


 だからといって、簡単に一千二百八十万を使う気にはならないけど。


「何かお探しですか?」


 店員に声をかけられる。


「この剣を見てほしいんですが」


「拝見します」


 炎牙剣を渡す。


 店員が鞘から抜く。


 その瞬間、表情が変わった。


「……これは」


 刃をゆっくり確認する。


 欠けた場所。


 細かな傷。


 そして刀身に入った大きな亀裂。


「何と戦われました?」


「ブラックキマイラです」


「ブラックキマイラ……?」


「新しく見つかったダンジョンの十階層にいました」


 店員が俺を見る。


「階層主ですか?」


「はい」


 もう一度、炎牙剣を見る。


「炎牙剣をここまで使い込む方は多くありませんよ」


 そう言って、刀身を光へかざす。


「この状態で使い続けるのはなかなか厳しいかと」


 やっぱりか。


「修理はできますか?」


「可能ではあります。ただ、この亀裂まで入っていると、完全に元通りとはいきません」


「そうですか」


「それに――」


 店員が炎牙剣を鞘へ戻した。


「この剣が悪いわけではありません」


「はい」


「ですが、今戦われている相手は、この剣で想定されている範囲を超え始めています」


 炎牙剣を見る。


 戦争。


 西部ダンジョン。


 王都。


 そしてブラックキマイラ。


 ずっと使ってきた。


「次の剣を考えた方がいいですか?」


「そうですね」


 店員が店内を見る。


「既製品なら、こちらにも候補はあります」


 視線の先。


 黒竜剣。


「黒竜剣なら?」


「炎牙剣より遥かに丈夫です。高位の魔物を相手にすることも想定されています」


「なるほど」


「ただし」


 店員が続ける。


「あなたに最も合う剣かどうかは、また別の話です」


「別?」


「ここまで武器を使い込む方なら、既製品ではなく、最初から自分に合わせて作る方法もあります」


「作る……」


「素材次第では、その方がいいものになるでしょう」


 素材。


 その言葉を聞いて、すぐに一つ思い浮かんだ。


 銀白色の鉱石。


 ミスリル。


「ミスリルなら?」


 店員の目が少し変わった。


「ミスリルをお持ちなんですか?」


「持っているというか……見つけました」


「どこで?」


 答えようとした、その時だった。


「失礼します」


 店の入口から声がする。


 振り返る。


 ベルガント伯爵家の紋章をつけた男が立っていた。


「アレン・ヴァルディス様、フェリシア・ロート様でいらっしゃいますね?」


「はい」


「伯爵様がお呼びです」


 フェリシアと顔を見合わせる。


「何かありました?」


「先ほど冒険者ギルドから報告があったそうです」


 男が一礼する。


「新たに発見されたダンジョンと、ミスリル鉱石についてお話があるとのことです」


 炎牙剣を見る。


 次に、店の奥に並ぶ剣を見る。


 そして思い浮かべる。


 十階層で見つけた、銀白色の鉱石。


 ミスリルか。


 累計獲得P=163,600P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
予備武器も買っといたほうがいい気がする
未公開のダンジョンについての情報漏洩では?笑
題名で話のネタバレが多い様な気がする
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