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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第69話 ブラックキマイラ

「グオオオオオオオオオッ!」


 キマイラの咆哮が十階層に響き渡る。


 獅子の頭。


 背中から伸びた山羊の頭。


 そして、蛇になっている長い尾。


 初めて見る魔物だ。


「《鑑定》」


 さっそく手に入れたばかりのスキルを使う。


【ブラックキマイラ】


【獅子、山羊、蛇の特徴を併せ持つ大型魔獣】


【獅子の爪と牙による攻撃に加え、山羊の頭から火炎を放つ】


【蛇の尾には毒がある】


「火も使うみたいです。あと、尻尾には毒があります」


「分かりました」


 フェリシアが杖を構える。


 《鑑定》は便利だ。


 知らない相手でも、何をしてくるのか分かる。


 ただ――。


「来ます!」


 ブラックキマイラが地面を蹴った。


 速い!


 知っているからといって、攻撃が遅くなるわけじゃない。


 巨大な前脚が振られる。


 炎牙剣を合わせた。


 ガキィンッ!


「くっ!」


 腕に強い衝撃が返ってくる。


 そのまま押し込まれそうになり、横へ抜けた。


「《魔弾》!」


 青白い光が二発飛ぶ。


 一発はブラックキマイラの肩へ。


 もう一発は胴体へ当たった。


 ドンッ!


「グルルッ!」


 巨体がわずかに揺れる。


 でも、倒れるほどではない。


「硬いですね」


「もう一度いきます!」


 フェリシアが杖を向けた。


 青白い光が浮かぶ。


 そこで少し違和感があった。


 魔弾ができるまでが遅い。


「《魔弾》!」


 飛んでいく速度も、普段よりわずかに遅かった。


 ブラックキマイラが身体を捻る。


 魔弾が脇腹をかすめた。


「……避けられた」


 フェリシアが小さく息を吐く。


 考えてみれば当然か。


 一階層からここまで、何体の魔物と戦ったか分からない。


 フェリシアはそのたびに魔弾を使ってきた。


「フェリシアさん、魔力は?」


「まだ大丈夫です」


 返事はすぐに返ってきた。


 でも、いつもと同じではない。


 ブラックキマイラがこちらを見る。


 次の瞬間、山羊の頭が口を開いた。


「火が来ます!」


「はい!」


 赤い炎が一気に噴き出す。


 俺とフェリシアが左右へ分かれた。


 熱が頬を撫でる。


 炎が途切れたところで一気に距離を詰める。


 獅子の頭が牙をむいた。


 炎牙剣を横へ振る。


 ザンッ!


 頬を斬った。


「グオオッ!」


 ブラックキマイラが大きく首を振る。


 その勢いで蛇の尾が飛んできた。


 《鑑定》で毒があることは分かっている。


 絶対に食らえない。


 身体を沈める。


 頭上を蛇の牙が通過した。


 そのまま尾へ炎牙剣を振る。


 ガキンッ!


「硬っ……!」


 鱗に刃が食い込み、途中で止まった。


 無理やり引き抜く。


 刀身を見る余裕はない。


 ブラックキマイラがすぐに向きを変えた。


「《魔弾》!」


 横からフェリシアの攻撃。


 今度は三発。


 だが、一発ずつの間隔がいつもより長い。


 一発目が前脚へ当たる。


 二発目は外れた。


 三発目が獅子の首元へ直撃する。


 ブラックキマイラの視線がフェリシアへ向いた。


「フェリシアさん!」


 巨体が走り出す。


「《魔弾》!」


 フェリシアが迎え撃つ。


 光が飛ぶ。


 しかし、さっきまでよりさらに遅い。


 ブラックキマイラが前脚を振った。


「危ない!」


 間に入る。


 炎牙剣で爪を受けた。


 ガギィンッ!


「――っ!」


 受けきれない。


 身体ごと吹き飛ばされた。


 背中が岩壁へ叩きつけられる。


「がっ……!」


 息が止まった。


 そのまま地面へ落ちる。


「アレンさん!」


 左脇腹が熱い。


 見ると、防具が大きく裂けていた。


 その下から血が流れている。


「アレンさん、大丈夫ですか!?」


「……大丈夫です」


「でも!」


 フェリシアが俺の前へ来る。


 顔が青ざめていた。


「申し訳ありません。私を庇ったせいで……」


「謝らなくていいです」


 身体を起こそうとして、痛みが走った。


 これはさすがに、このまま戦うのはまずい。


 《会員》を開く。


【保有:1,290P】


【半回復 250P】


【全回復 500P】


 迷う必要はない。


「《全回復》」


【500Pを使用しました】


【保有:790P】


 身体が熱くなる。


 裂けていた傷が塞がり、脇腹の痛みも消えていく。


「……治った」


「え?」


 フェリシアが目を見開く。


「《会員》の回復です」


「そんな傷まで……」


「はい。でも、フェリシアさんの魔力までは戻せません」


「私はまだ戦えます」


 フェリシアが杖を握り直す。


 少し息は上がっている。


 それでも目はブラックキマイラから離れていない。


「無理はしないでください」


「アレンさんもです」


「分かりました」


 ブラックキマイラが再び唸る。


 今度は俺から行く。


 真正面へ走った。


 前脚が振り下ろされるのをかわして懐へ入る。


 腹へ炎牙剣を振った。


 ザンッ!


「グオオッ!」


 浅い!


 すぐにもう一撃。


 今度は獅子の前脚へ。


 刃が深く入る。


 ブラックキマイラの身体が傾いた。


「フェリシアさん!」


「はい!」


 魔弾が一発だけ浮かぶ。


 連射しない。


 残った魔力を一つへ集中させている。


「《魔弾》!」


 青白い光が一直線に飛び、山羊の頭へ直撃した。


 ドンッ!


「ギャアアッ!」


 山羊の頭が大きく仰け反る。


 火炎が止まった。


「今です!」


 俺はブラックキマイラの横へ回る。


 蛇の尾が追ってくる。


 炎牙剣を両手で握った。


 振り下ろす。


 ザンッ!


 今度は鱗ごと尾を斬り落とした。


「グオオオオオッ!」


 巨体が暴れる。


 爪が岩床を削る。


 でも、もう毒の尾も火炎もない。


 残っているのは獅子の頭。


 ブラックキマイラがこちらへ突っ込んできた。


 俺も前へ出る。


 大きく開いた口。


 牙が迫る。


 その直前で身体を横へずらし、首元へ炎牙剣を叩き込んだ。


 刃が深く入る。


「はあっ!」


 そのまま振り抜く。


 ブラックキマイラの巨体が数歩進み――。


 ドンッ!


 地面へ倒れた。


 動かない。


「……倒した?」


 フェリシアが杖を下ろす。


 その瞬間、表示が現れた。


【10,000P獲得】


「……一万?」


 思わず二度見した。


【保有:10,790P】


【累計獲得P:163,500P】


「どうしました?」


「ブラックキマイラ、一万Pです」


「一万!?」


「はい」


 キングオーガよりずっと高い。


 これだけ苦戦したことを考えれば納得できなくもない。


「それより」


 炎牙剣を見る。


「……これはまずいな」


 刃が何か所も欠けている。


 刀身にも細かな傷が増え、途中には大きな亀裂まで入っていた。


「かなり傷んでますね」


「これ以上使うのは危ないかもしれません」


 今日だけでも相当な数の魔物を斬った。


 最後にブラックキマイラの硬い鱗まで無理やり斬っている。


 さすがに限界らしい。


「帰ったら武器屋ですね」


「そうします」


 ブラックキマイラへ触れる。


「《収納》」


 巨大な死体が消えた。


 その直後だった。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


「何ですか?」


 奥から低い音が響いてくる。


 ブラックキマイラがいた場所のさらに先。


 岩壁の一部がゆっくりと動き始めた。


「開いてる……?」


 ただの壁だと思っていた場所に隙間ができる。


 やがて、人が何人も通れるほどの入口が現れた。


「行ってみますか?」


「少しだけ」


 中へ入る。


 それほど広い部屋ではない。


 でも、すぐに目につくものがあった。


「これ……」


 壁の一部が銀白色に輝いている。


 六階層で見つけた魔鉄鉱石とも違う。


 持ってきた採掘道具で少しだけ削り取る。


 手の上に乗せた。


「《鑑定》」


 文字が浮かぶ。


【ミスリル鉱石】


「……ミスリル」


「本当ですか!?」


「はい」


 フェリシアが壁を見る。


「これ、全部ですか?」


「どこまで続いてるかは分かりません。でも、かなりありそうです」


 鉄。


 魔鉄。


 そして十階層にはミスリル。


 伯爵が知ったら驚くだろう。


 鉱石を《収納》へ入れる。


 さらに部屋の奥を見ると、青白く光る石があった。


「あれ……」


「見たことありますね」


「はい」


 ベルガント西部ダンジョンにもあった。


 転移石だ。


 近づいて触れる。


 表面から淡い光が広がった。


「どうしてここにもあるんでしょう」


「同じものに見えますね」


 西部ダンジョンとは場所も違う。


 見つかったばかりのダンジョンだ。


 それなのに、十階層に階層主がいて、その奥に転移石がある。


「誰かが作ったんでしょうか」


「ダンジョンが?」


「分かりません」


 そもそも、転移石はどうやって離れた場所へ人間を移動させているんだろう。


 考えても答えは出ない。


 今はそれより。


「今日は戻りましょう」


「そうですね」


 フェリシアも疲れている。


 魔弾をかなり使った。


 俺も《全回復》したとはいえ、一度はかなりの傷を負った。


 何より炎牙剣がこの状態だ。


 このまま十一階層へ進むのは危険すぎる。


「続きは装備を直してからですね」


「はい」


 俺たちは転移石へ手を触れた。


 青白い光が強くなる。


 次の瞬間、視界が真っ白になった。


 累計獲得P=163,500P



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― 新着の感想 ―
100万の防具が! 100万の剣が!w
固くて切れないなら 付与で切れ味追加したら良いのに… 付与の存在、忘れてません?
転移石で1階層と10階層を往復できるなら、ミスリルも魔鉄鋼も9、10階層から持ち帰るのが楽か。
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