第67話 新ダンジョン探索
翌朝。
俺とフェリシアは冒険者ギルドから付けてもらった案内役と一緒に、ベルガントの南門を出た。
向かうのは、以前調査した南方森林だ。
あの時は歩いて森へ向かったが、今回は途中まで馬車を用意してもらっている。
森が近づいてくる。
「懐かしいですね」
フェリシアが窓の外を見る。
「まだそんなに経ってませんけどね」
「でも、その間に色々ありましたから」
「確かに」
森を調査した時は、まだBランクになったばかりだった。
今はAランク。
《会員》もプラチナになり、《剣聖》まで手に入れた。
馬車を降り、そのまま森へ入る。
以前と大きく変わっているわけではない。
相変わらず太い木が密集し、足元には根が張り出している。
ただ、北側の一部には人が何度も通った跡ができていた。
しばらく進むと、開けた場所に出る。
「ここです」
案内役が言った。
簡易天幕がいくつも並んでいる。
積まれた食料や水。
武器を手入れしている冒険者。
領兵の姿もあった。
森を開拓しているというより、魔物を駆除するために作られた拠点らしい。
「アレン・ヴァルディス殿とフェリシア・ロート殿ですね」
責任者らしい騎士がやってきた。
「はい」
「話は聞いています。ダンジョンまで案内しましょう」
簡単な説明を受け、そのまま森の奥へ進む。
以前より魔物との遭遇は少ない。
この二週間で、かなり駆除したらしい。
それでも完全にいなくなったわけではなく、途中でソーンプラントが二体現れた。
フェリシアが一体を倒し、俺ももう一体を斬る。
【20P獲得】
今となっては、ほとんど気にならない数字だ。
さらに奥へ進むことしばらく。
「着きました」
騎士が足を止めた。
目の前には、切り立った岩壁があった。
その根元。
大きな穴が口を開けている。
「ここが……」
「新しく見つかったダンジョンです」
入口の高さは三メートル以上ある。
少なくとも、人が身体を屈めて入るような洞窟ではない。
「我々が確認したのは入口付近だけです。この先はお願いします」
「分かりました」
騎士たちと別れ、俺とフェリシアは洞窟へ入った。
◇
一階層。
「思ったより広いですね」
「ですね」
ベルガント西部ダンジョンと同じように、何人か並んで歩ける程度の通路が続いている。
今のところ分岐も少ない。
少し進んだところで《魔力感知》に反応があった。
「前から来ます」
「何体ですか?」
「八体」
現れたのはアイアンウルフだった。
「グルルル……」
八体が通路に広がる。
「右をお願いします」
「はい!」
俺が五体、フェリシアが三体を受け持つ。
今の俺たちには、それほど時間はかからなかった。
飛びかかってきた一体目を斬る。
二体目。
三体目。
左右から来た二体も、そのまま続けて仕留めた。
【1,000P獲得】
横を見ると、フェリシアも最後の一体へ魔弾を撃ち込んだところだった。
「終わりました」
「こっちもです」
先へ進む。
すると、今度はフェリシアが壁を見て立ち止まった。
「アレンさん」
「はい?」
「これ、昨日ギルドで見せてもらった鉱石と同じですよね?」
壁の一部が黒っぽくなっている。
よく見ると、かなり広い範囲に同じものが露出していた。
「似てますね」
「かなりありますよ」
「ですね」
持ってきた採掘用の道具で、露出している部分を少しだけ崩す。
いくつか塊を取った。
「《収納》」
鉱石が消える。
「便利ですね」
「これを背負って歩かなくていいのは大きいです」
調査が目的なので、全部掘り出す必要はない。
採取場所を地図へ記録し、先へ進んだ。
◇
二階層。
三階層。
さらに四階層。
思っていた以上に、魔物との遭遇が多かった。
二階層ではブラッドボアとアーマードエイプ。
三階層ではスチールリザード。
四階層ではアイアンウルフとアーマードエイプの群れ。
どれも一体一体は今の俺たちなら問題にならない。
ただ、とにかく数が多い。
「また来ます!」
「今度は左ですね!」
俺が前で斬り、フェリシアが横から魔弾を撃つ。
倒す。
進む。
また現れる。
そしてまた倒す。
戦闘の合間には通路を地図へ書き込み、出現した魔物の種類や数、鉱石が見つかった場所も記録していく。
通路は今のところそれほど複雑ではなく、調査をしながらでも順調に進めた。
五階層でも状況は変わらない。
スチールリザード。
クリスタルホーン。
西部ダンジョンでも戦ったことのある魔物ばかりだ。
ただし、遭遇する頻度はこちらの方が高い。
五階層を一通り確認したところで《会員》を開く。
【保有:32,290P】
【累計獲得P:134,500P】
「……増えたな」
「どれくらいですか?」
「五階層までで、一万P近く増えてます」
「もうそんなに?」
「はい」
まだ五階層だ。
「魔物の数、多いですもんね」
「Pを稼ぐなら、かなりいいかもしれません」
しかも、鉄鉱石らしいものは一階層だけではなかった。
二階層にも。
三階層にも。
四階層にも鉱脈らしい場所があった。
五階層では、通路の片側の壁がかなり長い範囲で黒くなっていた。
「これ、本当に全部鉄鉱石だったらすごいですね」
「伯爵様が調べたがる理由も分かります」
いくつか場所を記録し、見本になる鉱石も《収納》へ入れてある。
荷物はまったく増えていない。
普通なら鉱石なんて大量に持って歩けない。
やっぱり《収納》は便利だ。
「次、六階層ですね」
「行きましょう」
◇
六階層へ下りて、すぐに違いが分かった。
「反応があります」
「また多いですか?」
「数は五体です。ただ……」
近づいてくる魔力が、今までより大きい。
やがて通路の奥から姿を見せた。
「メタルスコーピオン……」
フェリシアが杖を構える。
二体。
さらに、その後ろ。
大きな身体。
黒褐色の毛。
「タイラントベアまでいます」
以前、この森で戦った魔物だ。
その横にはスチールリザードが二体。
「六階層でこれですか」
「西部ダンジョンの六階層より、明らかに強いですね」
「はい」
ただ。
強いとは思う。
でも、怖さはなかった。
「俺がタイラントベアとメタルスコーピオン一体をやります」
「では、残りは私が引き受けます」
「お願いします」
魔物が一斉に動いた。
メタルスコーピオンが尾を振る。
その先から毒針が飛んできた。
身体をかわしながら距離を詰める。
甲殻の隙間へ炎牙剣を入れた。
【1,000P獲得】
「グオオオオッ!」
すぐ横からタイラントベアが突っ込んでくる。
以前戦った時は、あの巨体と力にかなり警戒した。
今は違う。
振り下ろされた前脚を避け、そのまま横へ抜ける。
首元へ炎牙剣を振った。
一撃。
巨体が崩れる。
【1,500P獲得】
「《魔弾》!」
フェリシアの声。
振り返る。
圧縮された魔弾がメタルスコーピオンの甲殻を撃ち抜いた。
残っていたスチールリザードにも続けて魔弾を飛ばす。
一体。
もう一体。
以前より明らかに威力が上がっている。
「終わりました!」
「こっちもです!」
表示を確認する。
【保有:34,790P】
【累計獲得P:137,000P】
「六階層でも、今の俺たちなら問題なさそうですね」
「そうですね。ただ……」
フェリシアが倒れた魔物を見る。
「これを普通の冒険者が相手にするなら、話は違いますよね」
「俺もそう思います」
メタルスコーピオン。
タイラントベア。
それが六階層から普通に出てくる。
「一般に開放するなら、六階層からはBランク以上にした方がいいかもしれません」
「私もそう思います」
地図へ記録する。
そのまま先へ進んだ。
しばらくすると、壁の一部が目に入った。
「……あれ?」
「どうしました?」
立ち止まる。
それまで見てきた鉱石とは色が違う。
今までのものは黒っぽかった。
こっちは青みがかった灰色をしている。
「別の鉱石みたいです」
フェリシアも近づく。
「鉄とは違いそうですね」
「持って帰りましょう」
「はい」
露出している部分から、いくつか塊を採る。
何の鉱石かは分からない。
でも、ベルガントへ戻れば調べてもらえる。
「《収納》」
手にしていた鉱石が消えた。
鉄鉱石らしい鉱石。
正体の分からない鉱石。
そして大量の魔物。
まだ六階層なのに、調査するものがかなり増えてきた。
「この先、どうします?」
フェリシアが聞く。
六階層まで来た。
時間はまだある。
「もう少し先まで行ってみましょう」
「はい」
六階層からは、Bランク以上が必要になるかもしれない。
その先で、さらに魔物が強くなるのか。
俺たちは七階層へ続く階段を下りていった。
累計獲得P=137,000P
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!




