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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第5章 Aランク冒険者

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第66話 新発見ダンジョン

 職員に案内され、俺とフェリシアはギルドの奥へ向かった。


 何度か入ったことのある部屋だ。


 扉を叩く。


「入れ」


「失礼します」


 中ではギルドマスターが待っていた。


「戻ったか」


「はい」


「王都でAランクになったそうだな」


「もう伝わってるんですか?」


「当然だ。お前たちはベルガント所属の冒険者だからな」


 ギルドマスターが苦笑する。


「それにしても早かったな。王都へ送り出した時は、もう少しかかると思っていた」


「俺もです」


 ギルドマスターが笑った。


「まあ、座れ」


「はい」


 俺たちは机の前に並んで座った。


「Aランク昇格については、あとで正式な記録も確認しておく。今日は別件だ」


「依頼ですか?」


「ああ」


 ギルドマスターが机の上から一枚の書類を取った。


「ちょうどAランクへ依頼したい案件が来ている」


 さっき職員が言っていた話だ。


「これだ」


 書類がこちらへ向けられる。


【大規模商隊護衛】


【目的地:ルーフェン帝国】


 そこまで読んだところで手が止まった。


「ルーフェン……」


 隣のフェリシアを見る。


「…………」


 表情はほとんど変わっていない。


 でも、昨日事情を聞いたばかりだ。


 今は戻りたくないだろう。


「商人十数組が参加する大きな商隊だ」


 ギルドマスターが説明を続ける。


「荷馬車の数も多い。国境を越える長距離護衛だから、依頼主としても実績のある冒険者を付けたいらしい」


「期間は?」


「片道だけでも十日前後を見ている。往復まで受ければ、その倍以上だな」


「報酬は?」


「片道で一人二百万ジェニー。道中で大きな戦闘があれば危険手当も出る」


「二百万……」


 かなり高い。


 Aランク向けと言われるだけはある。


「どうしますか?」


 もう一度フェリシアを見る。


 目が合った。


 フェリシアは何も言わない。


 俺が決めるのを待っているようだった。


「すみません」


「ん?」


「その依頼は受けません」


 フェリシアが俺を見る。


 ギルドマスターも少し意外そうな顔をした。


「報酬が気に入らないか?」


「そうじゃありません」


「では?」


「少し事情があって、今はルーフェン帝国には行きたくないんです」


「お前が?」


「俺たちが、です」


 一瞬だけ間があった。


 ギルドマスターはフェリシアを見る。


 それ以上は聞かなかった。


「そうか。なら別の案件にしよう」


「ありがとうございます」


「指名依頼というわけでもない。ちょうど、もう一件ある」


「もう一件?」


「ああ。むしろ、こっちはお前たちの方が向いているかもしれん」


 今度は別の書類を取り出した。


 机の上に広げる。


【ベルガント伯爵家 調査依頼】


「伯爵様から?」


「そうだ」


 その下へ目を移す。


【調査対象:ベルガント南方森林・新発見ダンジョン】


「……ダンジョン?」


 フェリシアも依頼書をのぞき込む。


「南方森林って、前に私たちが調査したところですよね?」


「そうだ」


 ギルドマスターが地図を広げた。


 ベルガントの南。


 以前、俺たちが三日かけて調べた広大な森だ。


「お前たちが持ち帰った報告は覚えているか?」


「もちろんです」


 魔物が多かった。


 ソーンプラント。


 ヴァインウォーカー。


 それに、タイラントベアまでいた。


「開拓するなら、先に魔物を減らす必要があると報告しました」


「ああ。それを受けて、伯爵家が冒険者と領兵を集めた」


 ギルドマスターが森の北側を指す。


「この二週間ほど、開拓予定地を中心に魔物の駆除を進めている」


「もう始めてたんですね」


「お前たちが王都へ行っている間にな」


 知らないところで話が進んでいたらしい。


「最初は森の北側だけを安全にする予定だった。だが魔物を追って奥へ入った討伐隊が、妙な場所を見つけた」


 指が森の中ほどへ移る。


「岩壁に大きな洞窟があった」


「洞窟?」


「ああ。最初はただの洞窟だと思われていた」


 ギルドマスターが別の報告書を取り出す。


「中には魔物がいた。討伐隊が入口付近にいた魔物を全て倒したんだが、数日後に別の隊が確認すると、同じ種類の魔物がまた現れていた」


「それだけなら、外から入った可能性もありますよね?」


「ああ。だから最初はダンジョンとは断定しなかった」


 ギルドマスターが頷く。


「だが、その後に調べると、洞窟内から魔石が見つかった。内部の魔力も外とは明らかに違う。

ギルドの調査員が確認して、ダンジョンである可能性が極めて高いと判断した」


「なるほど」


「奥は?」


「まだほとんど調べていない」


「どうしてですか?」


「発見した連中の仕事は、森の魔物を減らすことだからだ」


 それなら勝手に奥へ入るわけにもいかない。


「それに、入口付近でもそれなりに魔物が出たらしい。

どれだけ深いのかも、何がいるのかも分からん場所へ、討伐隊をそのまま入れるわけにはいかない」


「それでAランクを?」


「そういうことだ」


 ギルドマスターが依頼書を指で叩く。


「伯爵が知りたいのは、このダンジョンを今後どう扱うべきかだ」


「どう扱う?」


「ああ。確認してほしいことはいくつかある」


 地図の横へ紙を置く。


「まず、無理のない範囲で内部を探索して、階層構造を確認する」


「はい」


「次に、各階層にどんな魔物がいるのか。どの程度のランクの冒険者なら探索できそうか」


 続けて紙を指す。


「危険な場所があるなら、どこから先を立入禁止にするべきか」


「なるほど」


「そして、もう一つ」


 ギルドマスターが机の隅に置いてあった小さな布袋を取った。


「どんな資源が取れるのか」


「資源?」


 袋から黒っぽい石を一つ出す。


「これは?」


「ダンジョンの入口近くで見つかったものだ」


 受け取って見る。


 掌に乗るくらいの石。


 黒い表面のところどころに、銀色のものが混じっている。


「鉱石ですか?」


「そうらしい」


 フェリシアも横からのぞき込む。


「何の鉱石なんでしょう?」


「鍛冶師の話では、鉄を含んでいるのは間違いないそうだ」


「鉄ですか」


「ああ。ただ、それ以外の成分も混じっている。詳しく調べるには、これだけでは量が足りないらしい」


 もう一度、石を見る。


「だから、鉱石も持ち帰ってほしいと?」


「できる範囲でな」


 ギルドマスターが頷く。


「もし有用な鉱脈があるなら、話はダンジョンだけでは済まなくなる」


 確かに。


 魔物を倒して素材を取れる。


 魔石も手に入る。


 さらに鉱石まで採れるなら、相当な価値がある。


「ベルガント西部ダンジョンみたいになる可能性もあるんですね」


「それ以上になる可能性だってある」


「それ以上?」


「まだ誰も奥を知らんからな」


 そう言われると、急に気になってきた。


 何階層まで続いているのか。


 どんな魔物がいるのか。


 何が採れるのか。


 全部分からない。


「ただし」


 ギルドマスターの声が少し低くなった。


「最深部まで行けという依頼じゃない」


「はい」


「確認できる範囲で十分だ。危険だと思ったら戻れ」


「分かりました」


「伯爵が欲しいのは、今後の判断に使える情報だ。お前たちの死体じゃない」


「はい」


 未知のダンジョン。


 無茶をしてまで奥へ進むつもりはない。


「フェリシアさん」


「はい?」


「どうします?」


 フェリシアが依頼書を見る。


 少し考えてから、こちらを向いた。


「私は行きたいです」


「俺もです」


 ギルドマスターが笑う。


「そう言うと思った」


「分かってたんですか?」


「お前たち、ダンジョンが好きだろ」


「好きというか……」


 否定しようとしてやめる。


 ベルガント西部ダンジョン。


 王都西部ダンジョン。


 どちらもかなり潜った。


「否定できませんね」


「私もです」


 フェリシアも小さく笑った。


「じゃあ受けます」


「ああ」


 ギルドマスターが依頼書へ印を押す。


「出発は好きな時で構わん。だが、討伐隊の拠点までは案内を付ける」


「森の中に拠点があるんですか?」


「入口から少し離れた場所に簡易拠点を作っている。伯爵家の兵もいるから、詳しい話はそこで聞け」


「分かりました」


 依頼書を受け取る。


【ベルガント南方森林・新発見ダンジョン調査】


 以前は、開拓できる土地なのかを調べるために入った森だった。


 その奥で、今度はダンジョンが見つかった。


 しかも、まだ誰も全容を知らない。


「明日の朝、出ましょうか」


「はい」


 フェリシアも頷く。


 未知のダンジョン。


 何がいるのかは分からない。


 でも、強い魔物がいるなら、それだけPも増える。


 明日の出発が、少し楽しみになってきた。


 累計獲得P=124,680P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
キングオーガの死体を収納した件は無かったことにするのか。
護衛の方の報酬は、提示されたけど、ダンジョン探索の報酬はされないのが普通なの?
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