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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第64話 カイルとの決着

「僕が確かめる」


 カイルは真っ直ぐ俺を見ていた。


「……また戦うのか?」


「またじゃないよ」


「何が?」


「前は途中で終わっただろ」


 そう言われて思い出した。


 俺が冒険者になって間もない頃、ここでカイルと剣を交えた。


 あの時は途中で父上が来て、カイルたちはセリカ王女の護衛へ向かった。


「次は最後までやろうって言ったよね」


「言ってたな」


「だから、今度こそ最後まで」


 カイルは引く気がないらしい。


 俺は父上を見る。


 父上はしばらくカイルを見たあと、俺へ視線を向けた。


「……やるのか?」


「カイルがそこまで言うなら」


「分かった。ただし、真剣は使うな」


「はい」


 詰所の裏には、領兵が使う訓練場があった。


 俺とカイルはそこで木剣を一本ずつ借りた。


「アレンさん」


「はい?」


「頑張ってください」


「ありがとうございます」


 フェリシアはそれだけ言って、少し離れた場所へ下がった。


 俺とカイルが向かい合う。


「兄さん」


「何?」


「今度は途中でやめないから」


「分かったよ」


 俺も木剣を構えた。


 父上が俺たちを見る。


「始め」


 同時に、カイルが地面を蹴った。


 速い。


 昔なら、そう思ったはずだ。


 《剣聖》を授かった直後のカイルと初めて戦った時、俺には何も見えなかった。


 気づいた時には脇腹を打たれ、その後も一方的に叩きのめされた。


 でも今は。


「……遅い」


「え?」


 声に出ていたらしい。


 カイルの木剣が肩へ向かってくる。


 身体を横へ動かすだけで避けられた。


「っ!」


 すぐに二撃目が来る。


 それも当たらない。


 三撃、四撃と続けて振られるが、どれも見える。


 剣筋は鋭い。


 無駄も少ない。


 《剣聖》というスキルが優れていることは分かる。


 でも、今の俺にはカイルの身体そのものが遅かった。


「はあっ!」


 カイルが大きく踏み込む。


 木剣を合わせた。


 バシッ!


「うっ!」


 カイルの身体が横へ崩れる。


 力を入れたつもりはない。


 それでも受けきれなかったらしい。


「……なんで」


「カイル?」


「なんで、こんなに違うんだよ」


 また来る。


 今度は俺から動いた。


 カイルが剣を振る前に懐へ入り、肩を軽く打つ。


「ぐっ!」


 体勢が崩れたところへ、反対側へ回ってもう一撃。


「うあっ!」


 カイルが地面へ手をついた。


 それでも、すぐに立ち上がる。


「まだ!」


「まだやるのか?」


「まだまだ!」


 また向かってきた。


 俺は息を吐く。


 強くなった。


 自分でも分かっていたつもりだった。


 魔物を倒してPを稼ぎ、能力を上げてきた。


 ダンジョンにも潜った。


 戦争にも参加した。


 こうしてカイルと向かい合って初めて気づく。


 前に俺を圧倒していたカイルは、もうずっと後ろにいる。


 カイルの剣をかわし、腕を軽く打つ。


「っ!」


 次の攻撃も外し、今度は脚へ。


「ぐっ!」


 カイルが片膝をついた。


 昔の俺なら、カイルに勝てれば満足したんだろうか。


 家を追い出された直後は、いつか絶対に見返してやると思っていた。


 カイルより強くなる。


 父上に自分を認めさせる。


 こころのどこかでそれらを目標にしていたかもしれない。


 でも、今は違う。


 カイルを倒しても、思っていたほど何も感じない。


 父上に強さを見せても、家へ戻りたいとは思わない。


 じゃあ、俺は何になりたいんだ?


「兄さん!」


 カイルが突っ込んでくる。


 木剣を受け、そのまま押し返す。


「くっ……!」


 よろめくカイルを見ながら、頭に浮かんだのは別の男だった。


 クロードさん。


 強い。


 でも、俺が憧れているのは強さだけじゃない。


 仲間をよく見ている。


 誰かが困っていれば助ける。


 年下の俺にも偉そうにせず、一人の冒険者として接してくれた。


 戦場では、あの人がいるだけで安心できた。


 そうか。


 俺は、冒険者として上へ行きたいんだ。


 今はAランク。


 でも、その上にはSランクがある。


 ほとんど存在しないと言われている、冒険者の頂点。


 そこまで行けたら。


 家名でもない。


 父上の評価でもない。


 カイルより強いかどうかでもない。


 自分の選んだ道を、胸を張って歩いてきたと言える気がした。


 もう、カイルは俺が追いかける相手じゃない。


「カイル」


「何だよ!」


「もうやめないか?」


「ふざけるな!」


「結構打ったぞ」


「まだまだ!」


 カイルは息を切らしながら、それでも木剣を構えた。


「僕は《剣聖》なんだ!」


「ああ」


「兄さんなんかに……!」


 また向かってくる。


 剣をかわし、脇腹へ木剣を当てる。


「ぐっ!」


 カイルが地面を転がった。


 それでも起き上がる。


「まだ……!」


「カイル」


「まだだ!」


 その声には、もう最初の勢いがなかった。


「アレンさん」


 フェリシアから声がかかる。


「はい?」


「もうそろそろ終わりにした方が……」


「そうですね」


「勝手に終わらせるな!」


 カイルが走ってくる。


「まだ僕は――!」


「分かったよ」


 これで終わりにしよう。


 カイルが木剣を振り上げる。


 俺は先に踏み込み、腹へ木剣を叩き込んだ。


 ドッ!


「……がっ」


 カイルの身体が折れる。


 木剣が手から落ちた。


 そのまま俺にもたれかかるように力が抜ける。


「カイル?」


 返事はない。


 気を失ったらしい。


 倒れないよう支え、ゆっくり地面へ寝かせた。


「……やりすぎましたかね」


「最後の一撃以外、かなり手加減してましたよね?」


「分かりました?」


「はい」


 父上を見る。


「…………」


 何も言わない。


 地面に倒れているカイルを見て、それから俺を見る。


 口がわずかに開いた。


 でも、声は出なかった。


「父上」


「……」


「父上?」


「……ああ」


 ようやく返事が返ってきた。


 俺は木剣を置く。


 もう言いたいことはなかった。


 恨み言も家へ戻りたいという気持ちも。


 ただ、一つだけ。


「今まで育てていただき、ありがとうございました」


「アレン……」


 頭を下げる。


 十五年間。


 剣を教えてもらった。


 学問も、礼儀も、領地のことも教わった。


 家を追い出されたことまで感謝するつもりはない。


 それでも、育ててもらったことまで否定する必要はないと思った。


「行きましょう、フェリシアさん」


「はい」


 俺たちは訓練場を出る。


 後ろから父上の声は聞こえなかった。


 何歩か進んだところで、小さな呻き声が聞こえた。


「……うっ」


「カイル様!」


 近くにいた騎士が駆け寄る。


「に……」


 背後から、かすかな声がした。


「兄さん……」


 足は止めなかった。


 振り返らない。


 フェリシアと並んで、そのまま歩いていく。


 俺がこれから向かう場所は、もう後ろにはない。


 次はSランクだ。


 累計獲得P=124,680P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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思えば遠ぉくに来たもんだ。ふるさと離れて半年め♪
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