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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第60話 剣聖

 暗い通路の奥から、大きな影が近づいてくる。


 やがて姿を現したのは、見覚えのある魔物だった。


「アーマードエイプですね」


「はい」


 ベルガントのダンジョンでも何度か戦った。


 太い腕に、大きな身体。


 以前なら警戒した相手だ。


「ウオオオッ!」


 アーマードエイプが両腕を上げて走ってくる。


「少し試してもいいですか?」


 フェリシアが杖を向けた。


「共有ですか?」


「はい。どれくらい変わったのか知っておきたいので」


 青白い魔弾が一つ浮かぶ。


「《魔弾》!」


 光が飛んだ。


 ドンッ!


「ウオッ!?」


 胸に当たったアーマードエイプが大きく後ろへよろめいた。


 倒れはしなかったものの、明らかに以前より威力が上がっている。


 フェリシアも驚いたように杖を見る。


「……思ったより強くなってます」


「共有が二割になった影響でしょうね」


「今までと同じくらいのつもりで撃ったんですけど」


「慣れるまで少しかかりそうですね」


「そうですね。あとはお願いします」


「はい」


 アーマードエイプがこちらを向く。


 地面を蹴った。


 振り下ろされた腕をかわし、そのまま懐へ入る。


 炎牙剣を腹へ叩き込み、振り抜いた。


「ウオオ……!」


 巨体が崩れる。


【400P獲得】


【保有:48,200P】


 あと千八百。


 死体に触れ、《収納》へ入れた。


「下へ行きましょう」


「はい」


 ◇


 六階層へ下りてからも、魔物との遭遇は途切れなかった。


 しばらく歩いたところでブラッドボアが一体。


 さらに先へ進むと、横道からアイアンウルフが飛び出してきた。


 フェリシアの魔弾が前脚へ当たり、体勢が崩れる。


「今です!」


「はい!」


 そこへ剣を入れた。


【200P獲得】


 アイアンウルフを《収納》へ入れて進む。


 少しして今度はアーマードエイプ。


 種類も数もばらばらだ。


 ただ、ベルガントより遭遇する間隔は明らかに短い。


 六階層を抜けるまでに三体を倒した。


 ブラッドボアが百八十。


 アイアンウルフが二百。


 アーマードエイプが四百。


【保有:48,980P】


 七階層。


 天井近くの岩陰から黒い影が飛びかかってきた。


 シャドウパンサー。


 でも、《魔力感知》で存在には気づいていた。


 横へかわし、着地したところへ炎牙剣を振る。


「ギャッ!」


【600P獲得】


【保有:49,580P】


「あと四百二十ですね」


「もうすぐですね」


 シャドウパンサーも回収する。


 八階層へ向かった。


 階段を下りてから、しばらくは何も出なかった。


 静かな通路を進んでいると、奥からブラッドボアが走ってくる。


 一体だけだ。


 突進を横へかわして首を斬る。


【180P獲得】


【保有:49,760P】


 さらに進むと、グレイウルフが二体現れた。


 フェリシアが一体の動きを魔弾で止め、その間にもう一体を斬る。


 振り返り、残った一体も仕留めた。


【30P獲得】


【保有:49,790P】


「あと二百十ですね」


 それから数分もしないうちに、アイアンウルフが現れた。


「ちょうど二百です」


「十足りませんね」


 フェリシアが言う。


「このダンジョンなら、すぐ何か出てきそうです」


 アイアンウルフが飛びかかってくる。


 炎牙剣を振った。


【200P獲得】


【保有:49,990P】


「……あと十」


 死体を《収納》へ入れて歩き出す。


 本当に、すぐだった。


「ギャッ!」


 前からゴブリンが一体走ってくる。


 思わず足を止めた。


「十ポイントですよね?」


「はい」


 ちょうどいい。


 ゴブリンが棍棒を振り上げる。


 炎牙剣を一度振った。


「ギッ――!」


 地面へ倒れる。


【10P獲得】


【保有:50,000P】


「貯まった」


「五万ですか?」


「はい」


 その場で《会員》を開いた。


 《固有スキル購入》へ意識を向ける。


【50,000P】


《鑑定》


《剣聖》


《魔聖》


《弓聖》


《斧聖》


《槍聖》


《拳聖》


 見るのは一つだけだった。


【《剣聖》 50,000P】


「買うんですか?」


「買います」


 迷う理由はなかった。


 カイルが授与の儀で手に入れた力。


 数年に一人しか現れない固有スキル。


 それを今、俺も手に入れられる。


【《剣聖》を購入しますか?】


「購入」


【50,000Pを使用しました】


【固有スキル《剣聖》を獲得しました】


【保有:0P】


「……」


「どうです?」


「少し待ってください」


 腰の炎牙剣へ手を伸ばす。


 柄を握った。


「……あ」


「何か変わりました?」


「剣が……違って感じます」


 身体が強くなったわけじゃない。


 速くなったわけでもない。


 なのに、剣をどこに置けばいいのか分かる。


 足をどこへ運べばいいのか。


 どの距離なら届くのか。


 どう振れば無駄なく斬れるのか。


 考えるより先に、身体が理解している。


 炎牙剣を抜いた。


 毎日使っている剣なのに、今までよりずっと手に馴染む。


「これが《剣聖》……」


 カイルは、あの日これを手に入れたのか。


 授与の儀のあと。


 それまで一度も俺に勝てなかったカイルに、初めて負けた。


 別人のような剣だった。


 今なら、その理由が分かる気がする。


「試してみたいですね」


 フェリシアが言う。


「俺もです」


 ゴブリンを《収納》へ入れ、先へ進んだ。


 ◇


 九階層。


 《魔力感知》に反応があった。


 左後方。


 一体。


「来ます」


 フェリシアが振り返るより早く、黒い影が岩陰から飛び出した。


 シャドウパンサー。


 爪が俺の首を狙っている。


 今までなら、大きく横へかわしていた。


 でも今は、それが必要ないことが分かった。


 半歩だけ動く。


 鋭い爪が胸の前を通り過ぎた。


 同時に炎牙剣を返す。


「ギャッ――!」


 刃が首を通った。


 シャドウパンサーが着地し、そのまま崩れる。


【600P獲得】


「……」


 自分でも少し驚いた。


「アレンさん?」


「はい」


「今、ほとんど動いてませんよね?」


 言われてみればそうだ。


「半歩くらいです」


「それだけで避けて、そのまま首を……?」


 炎牙剣を見る。


 速く振ったわけじゃない。


 力任せに斬ったわけでもない。


 必要な分だけ避けて、一番短い軌道で剣を通した。


 それだけだった。


「無駄な動きがなくなった感じがします」


 シャドウパンサーを《収納》へ入れた。


 さらに進む。


 今度はアイアンウルフだった。


 正面から走ってくる。


 金属のような硬い毛皮。


 以前は刃が滑り、フェリシアと何度も同じ場所を攻撃してようやく倒した相手だ。


 アイアンウルフが飛ぶ。


 炎牙剣を構えた。


 正面から硬い毛皮を斬る必要はない。


 前脚の付け根。


 毛の流れがわずかに変わる場所。


 そこへ刃を入れる。


 ザクッ!


「ギャウッ!」


 深く入った。


 剣を引く動きのまま身体をずらし、次の一撃を首元へ通す。


 アイアンウルフが倒れた。


【200P獲得】


「そこに剣が通るんですね」


「俺も今まで気づきませんでした」


 弱点が見えているわけじゃない。


 でも、剣で戦うならどう動けばいいのか、どう斬ればいいのかが分かる。


 以前、敵の《剣聖》と戦った時。


 剣の技術だけなら、相手の方が上だった。


 今は、そこまで埋まった。


 いや。


 身体能力まで含めれば、あの時よりずっと強い。


 十階層へ進んだ。


 そこからも魔物は次々と現れた。


 階段を下りた途端に待ち構えているわけじゃない。


 しばらく何も出ないこともある。


 でも歩いていると、横道からブラッドボアが飛び出し、その先ではアーマードエイプと遭遇する。


 曲がり角の向こうにアイアンウルフがいることもあれば、背後からシャドウパンサーが忍び寄ってくることもあった。


 《剣聖》を手に入れてから、一体を倒すのにかかる時間がさらに短くなった。


 フェリシアが敵の動きを崩す。


 俺が仕留める。


 死体を《収納》へ入れる。


 また進む。


 十一階層へ着く頃には、《剣聖》を買ってゼロになったポイントがかなり戻っていた。


【保有:3,380P】


「もう三千以上ですか?」


「はい」


「さっき全部使ったばかりですよね」


「そうなんです」


 一体あたりのポイントなら、ベルガントの深層の方が圧倒的に高い。


 ミスリルゴーレムなら一体で八千。


 ここの魔物とは比べものにならない。


 でも、ここでは魔物を探して長時間歩き回る必要がない。


 戦闘もすぐ終わる。


 倒したあとの解体も不要だ。


 全部《収納》へ入れればいい。


「一体ずつだと少ないですけど、時間で考えると結構貯まりますね」


「次から次へ出てきますからね」


「素材も全部持って帰れますし」


 ポイントだけじゃない。


 金にもなる。


 そのまま十二階層へ進んだ。


 分かれ道に出る。


 右と左。


 《魔力感知》を使った。


 右には一つ。


 左には、少し離れた場所にいくつもの反応がある。


「左へ行きます」


「はい」


 左の通路を進む。


 少し歩いたところでアイアンウルフ。


 さらに先でブラックオーガ。


 その次はグレイウルフが二体。


 しばらく何もいないと思ったら、岩陰からシャドウパンサーが出てきた。


 魔物はまとまって待っているわけじゃない。


 歩けば、また次に出会う。


 倒して、回収して、進んだ。


 十三階層。


 十四階層。


 下へ行くにつれて、一体あたりのポイントも少しずつ増えていく。


【保有:7,170P】


「思ったより貯まるな」


 五万ポイントを貯めるのは大変だった。


 それなのに《剣聖》を買った直後から、もう七千以上戻っている。


 このダンジョン。


 最初に思ったほど、ポイント稼ぎには悪くない。


 十五階層へ続く階段を下りる。


 《魔力感知》を使った。


「……多いな」


「近くにですか?」


「一か所じゃないです。あちこちにいます」


 正面。


 右の通路。


 さらにその奥。


 複数の魔力反応が点々と散らばっている。


 今までより、さらに魔物の密度が高い。


 炎牙剣を握り直した。


 この先には、まだ五階層ある。


「行きましょう」


「はい」


 次の魔物の反応へ向かって歩き出した。


 累計獲得P=109,380P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
剣聖って武器に付与出来るんかな
バチバチにコンプレックスやったんやw 恥ずかしいぞ兄貴w
もう5万ポイント積んで、一気に剣神を取得すればいいよね? 下位職をわざわざ取得しても死にポイントになるだけだ タンジョンで1日に倒すモンスターも控えめで、すぐ撤退してたり その辺の馬鹿さ加減がストレ…
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