第6話 シルバー会員
Eランクになった翌朝。
宿を出る前に、俺は《会員》を開いた。
【会員ランク:ブロンズ】
【保有:135P】
【累計獲得P:575P】
昨夜はEランクになったことが嬉しくて、そのまま寝てしまった。
「百三十五か」
《回復》一回分の五十Pは残しておきたい。
でも、それ以上を持っている必要はない。魔物を倒しても依頼を達成してもPは増えるのだから、使えるPは強さに変えておいた方がいい。
「筋力と敏捷かな」
【筋力強化を購入しますか?】
【必要:30P】
「買う」
【筋力:60 → 70】
【保有:105P】
身体の奥から力が湧いてくる。
続けて敏捷も強化する。
【敏捷強化を購入しますか?】
【必要:30P】
「買う」
【敏捷:70 → 80】
「よし」
今日も依頼を受けよう。
◇
「おはようございます」
冒険者ギルドへ入ると、フェリシアが先に来ていた。
「おはようございます、アレンさん」
俺のところまで歩いてきたフェリシアが、じっと顔を見る。
「なんです?」
「…………」
「フェリシアさん?」
「また何かしました?」
「何かって?」
「昨日より強くなってません?」
まだ戦ってもいないのに。
「どうして分かるんですか?」
「なんとなくです。最近のアレンさん、毎日何かおかしいので」
「少し鍛えました」
「その『少し』がもう信用できません」
「ひどいな」
「誰のせいですか」
そんな話をしながら受付へ向かう。
「おはようございます」
いつもの受付嬢が笑顔を向けてきた。
「今日からEランクですね。さっそく依頼を受けますか?」
「お願いします」
「でしたら……」
受付嬢が何枚かの依頼書を確認し、一枚を差し出した。
【オーク討伐】
「オーク?」
「はい。町から南へ二時間ほど歩いた先にある森で、一体確認されています」
オークについては知っている。
身長二メートルを超えることもある大型の魔物で、知能はゴブリンより高く、力も比べものにならない。
「Eランク二人で大丈夫ですか?」
「お二人なら問題ないと判断しています。ただし、最近はその森で魔物の目撃が増えています。道中も十分注意してください」
「分かりました」
「報酬は一万二千ジェニーです」
角ウサギやグレイウルフより高い。それだけ危険ということだろう。
フェリシアを見る。
「行きます?」
「もちろんです」
依頼を受け、俺たちは南へ向かった。
◇
最初に魔物と遭遇したのは、森までの道のりを半分ほど進んだところだった。
「ギギッ!」
「四体……」
街道脇から現れたのはゴブリンだった。
全部で四体。棍棒や錆びた剣を持っている。
数日前、俺は初めて一体のゴブリンを見たとき、剣を握って緊張していた。
でも今は、四体を前にしても怖さをほとんど感じない。
「俺が行きます」
「はい」
剣を抜く。
一体目が駆けてきた。
棍棒を振り上げる。
遅い。
攻撃が始まる前から、どこを狙っているのかが分かる。
一気に間合いへ入った。
「はっ!」
「ギャッ!」
一体目。
剣を返す。
二体目が俺の横から飛びかかろうとしていた。
その前に踏み込む。
「ギッ!?」
相手が反応したときには、もう俺の剣が届いていた。
二体目。
三体目。
最後の一体が逃げようと背中を向ける。
「逃がさない!」
地面を蹴った。
ゴブリンとの距離が一瞬で縮まる。
一振り。
「ギャッ!」
四体目も倒れた。
【ゴブリン四体を討伐しました】
【40P獲得】
【累計獲得P:615P】
剣についた血を払う。
「…………」
「どうしました?」
フェリシアを見る。
「四体ですよ?」
「はい」
「私、何もしてません」
「その方が速かったので」
「前は私と一緒に三体の角ウサギを倒してたんですよね?」
「そうですね」
「まだ何日も経ってないですよ?」
「そうですね」
「……やっぱりおかしいです」
また言われた。
◇
森へ入ってしばらくすると、今度は三体のグレイウルフが現れた。
こちらも苦戦するほどではなかった。
一体目の飛びかかりをかわし、首元へ剣を振るって倒す。
二体目が背後から来る。
「アレンさん、後ろ!」
振り向く。
牙が迫る。
でも身体は十分に間に合う。
半歩ずれてかわし、そのまま胴へ剣を叩き込んだ。
最後の一体へフェリシアの《魔弾》が当たる。
「《魔弾》!」
バシッ!
グレイウルフが体勢を崩す。
俺は一気に距離を詰めた。
「はっ!」
三体目も倒れる。
【グレイウルフ三体を討伐しました】
【45P獲得】
【累計獲得P:660P】
「グレイウルフ三体でも、こんなに速く終わるんですね……」
「フェリシアさんの援護もありましたから」
「それにしてもですよ」
フェリシアが俺を見る。
「アレンさん、最初に会った日ともう別人みたいです」
自分でもそう思う。
初めて冒険者ギルドへ来た日の俺なら、グレイウルフ三体を相手にこんな戦い方はできなかった。
Pを使うたびに、身体は確実に強くなっている。
「もっと強くなれそうです」
「まだ強くなるつもりなんですか?」
「もちろん」
フェリシアが何とも言えない顔をした。
◇
本命のオークを見つけたのは、森へ入って一時間ほど経ったころだった。
「ブオオオッ!」
「でかい……」
フェリシアが息を呑む。
二メートルを軽く超えている。
太い腕。
分厚い身体。
手には俺の胴ほどもある棍棒を持っていた。
オークがこちらを見る。
「来ます!」
地面を蹴った。
身体が大きいのに速い。
棍棒を両手で持ち上げ、そのまま振り下ろした。
「アレンさん!」
避けることはできる。
でも今の自分が、どこまで通用するのか知りたい。
剣を両手で握った。
「ふっ!」
ガンッ!
「ぐっ!」
腕に強烈な衝撃が走る。
足元の土が沈んだ。
重い。
牙イノシシとは違い、上から直接押し潰してくるような力だ。
「アレンさん!」
「大丈夫です!」
剣を握る腕に力を込める。
押される。
でも、まだいける。
膝は折れない。
腕も耐えている。
数日前の俺だったら、剣ごと吹き飛ばされていただろう。今は受け止められる。
「はあっ!」
棍棒を横へ弾く。
「ブオッ!?」
オークの身体が開いた。
「フェリシアさん!」
「はい!」
杖が向けられる。
「《魔弾》!」
光弾がオークの顔へ飛ぶ。
「ブオッ!」
目元を押さえた。
その隙に懐へ入る。
一歩踏み込むだけで、一気に間合いが縮まった。
「はっ!」
脇腹へ剣を叩き込む。
「ブオオオッ!」
まだ倒れない。
オークが腕を振り回す。
速い!
でも見える!
しゃがんでかわすと、頭上を太い腕が通り過ぎた。
すぐに立ち上がり、もう一撃。
フェリシアの《魔弾》も飛んでくる。
一発。
二発。
三発。
俺がつけた傷口へ正確に入った。
「ブオオッ……!」
オークがよろめく。
「今です!」
地面を蹴り、全身の力を剣へ乗せる。
「はあっ!」
斬り抜いた。
「ブオッ……!」
巨体が地面へ倒れ、ドンッ、と重い音が森に響いた。
【オークを討伐しました】
【100P獲得】
【累計獲得P:760P】
「百P……」
やっぱり強い魔物ほど、獲得できるPも多いらしい。
「やりましたね!」
「はい」
フェリシアが嬉しそうに笑う。
俺も剣を見る。
オークの一撃を受け止め、正面から倒した。
また一つ、自分が強くなったことを実感できた。
◇
夕方、冒険者ギルドへ戻った。
オークの討伐証明を受付へ提出する。
「確かにオークですね。お二人とも怪我は?」
「ありません」
「大丈夫です」
「よかったです。これで依頼達成になります」
その瞬間。
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【累計獲得P:860P】
さらに表示が続く。
【5日連続での依頼達成を確認しました】
「え?」
【連続依頼達成ボーナス】
【50P獲得】
【累計獲得P:910P】
「連続でも貰えるのか……」
「何がです?」
「あ、いえ」
さらに新しい表示が現れた。
【次回会員ランクまで:90P】
「九十……」
それだけ獲得すれば、次の会員ランクへ上がるらしい。
「アレンさん、さっきから何を見てるんですか?」
「ちょっと気になるものがありまして」
「また秘密ですか?」
「……そうですね」
「怪しい」
フェリシアが頬を膨らませる。
俺は苦笑した。
でも、いつまで秘密にしておくべきなんだろう。
そんなことを少しだけ考えた。
◇
その夜、宿の部屋で《会員》を開く。
【保有:410P】
【累計獲得P:910P】
「四百十……」
今までで一番多い。
それを見ても、もう貯めておこうとは思わなかった。
明日も魔物と戦うのだから、今日強くなれるのに弱いままで戦う理由はない。
「五十だけ残そう」
筋力、耐久、敏捷をそれぞれ四回ずつ強化する。
【筋力:70 → 110】
【耐久:60 → 100】
【敏捷:80 → 120】
【使用:360P】
【保有:50P】
「…………」
一気に十二回強化した。
ゆっくり立ち上がる。
それだけで、身体がまた変わったことが分かる。
床を踏む足に少し力を入れるだけで、身体が前へ出ようとする。拳も力を込めすぎないように気をつけているのに、指同士が強く押し合った。
「百を超えると、こんな感じなのか……」
部屋ではまともに試せない。
宿の裏へ出て、人がいないことを確認する。
少しだけ走ってみよう。
そう思って地面を蹴った。
「――っ!」
景色が飛んだ。
数歩先まで走るつもりだったのに、一気に十歩以上進んでいる。
慌てて足を踏ん張る。
靴が地面を削った。
「速すぎる……」
今度は力を抑えて地面を蹴る。
それでも以前より遥かに速い。
宿の横に置かれていた大きな水桶を両手で持ち上げてみる。
「……軽い」
水がたっぷり入っている。
以前なら身体全体を使って持ち上げるような重さだったはずなのに、今は腕だけで持ち上がった。
ゆっくり元の場所へ戻す。
【筋力:110】
【耐久:100】
【敏捷:120】
【魔力:18】
「明日はどうなるんだ……」
自分でも少し怖くなるほどだった。
◇
翌朝。
ギルドでフェリシアと合流し、今日の依頼を確認する。
【アーマーベア討伐】
大きな熊型の魔物で、特徴は刃を通しにくい硬い毛皮だという。
「剣が通りにくいので注意してください」
受付嬢から説明を受け、俺たちは町を出た。
しばらく歩いたところで、フェリシアが俺を横目で見る。
「アレンさん」
「はい?」
「歩くの速くないですか?」
「あ」
無意識にいつもの感覚で歩いていたらしい。
少し速度を落とす。
「やっぱりまた強くなりましたよね?」
「たぶん」
「もう『たぶん』は禁止です」
「そんな」
「それと『少し鍛えた』も禁止です」
「厳しいな……」
「誰のせいですか」
昨日とほとんど同じことを言われた。
◇
目的地へ向かう途中、二体のグレイウルフに遭遇した。
一体目が俺へ飛びかかる。
地面を蹴る。
「えっ!?」
フェリシアの声が聞こえたときには、もうグレイウルフの横へ回り込んでいた。
剣を振る。
一体目。
二体目が逃げるように身体の向きを変える。
追う。
二歩で追いついた。
「はっ!」
二体目も倒れる。
【グレイウルフ二体を討伐しました】
【30P獲得】
【累計獲得P:940P】
【次回会員ランクまで:60P】
「あと六十」
「今度は六十?」
フェリシアが聞いてくる。
「何でもありません」
「絶対何かありますよね……」
あと少しだ。
◇
アーマーベアは森の奥にいた。
立ち上がれば二メートルを軽く超える巨体を、黒に近い灰色の毛が覆っている。
「グルルルル……」
「大きいですね」
「はい」
剣を抜く。
アーマーベアが地面を蹴った。
「来ます!」
前脚が振り下ろされる。
俺は横へかわし、そのまま左肩へ剣を叩き込んだ。
ガッ!
「……硬い!」
剣が浅くしか入らない。
それでも、わずかに血が滲んでいる。
「グオオオッ!」
アーマーベアが振り向き、再び前脚を振るう。
避ける。
速さでは負けていない。
力でも負けていない。
でも、この毛皮は厄介だ。
「フェリシアさん!」
「はい!」
俺は左肩の傷を指した。
「あそこを狙えますか?」
「やってみます!」
フェリシアが杖を向ける。
「《魔弾》!」
バシッ!
一発目が傷へ入る。
「グオッ!」
「《魔弾》!」
二発目も同じ場所。
そして三発目。
「《魔弾》!」
「グオオオッ!」
アーマーベアが大きく身体を揺らす。
「すごい……」
三発ともほとんど同じ場所だ。
フェリシアの《魔弾》は、一発だけなら強くない。
でも、一点へ何度も重ねれば違う。
最初は浅かった傷が、確実に広がっている。
怒ったアーマーベアがフェリシアへ身体を向けた。
「まずい!」
巨体がフェリシアへ走り出す。
「フェリシアさん!」
地面を蹴る。
身体が一気に前へ飛び出した。
アーマーベアより後ろにいたはずなのに、一瞬で追いつく。
さらに踏み込み、前へ回り込んだ。
「えっ!?」
フェリシアが驚く。
アーマーベアの前脚が振り下ろされる。
剣で受ける。
ガンッ!
「ぐっ!」
重い。
でも耐えられる。
そのまま腕へ力を込め、前脚を押し返す。
「フェリシアさん、もう一度!」
「はい!」
「《魔弾》!」
一発。
「《魔弾》!」
二発。
「《魔弾》!」
三発。
すべて左肩の傷へ入った。
「グオオオオッ!」
アーマーベアの巨体がよろめく。
今だ。
地面を蹴る。
一瞬で左側へ回り込み、広がった傷へ剣を振り下ろした。
「はあっ!」
今度は深く入った。
「グオッ!」
さらにもう一撃。
最後に剣を大きく振り抜く。
「グオオ……!」
アーマーベアが地面へ崩れ落ちた。
【アーマーベアを討伐しました】
【80P獲得】
【累計獲得P:1,020P】
「……超えた」
次の瞬間。
【累計獲得Pが1,000Pを超えました】
【会員ランクアップ条件を達成しました】
「来た……!」
【会員ランクが上昇します】
【ブロンズ → シルバー】
「シルバー……」
ブロンズの次か。
そこへ到達した。
さらに表示が現れる。
【シルバー会員特典が解放されました】
【新規特典《共有》】
「共有?」
意識を向ける。
【共有メンバー:1名】
【共有率:10%】
【会員本人の能力値の10%を共有メンバーへ移譲します】
【共有中、会員本人の該当能力値は同量低下します】
【端数は切り捨てられます】
「俺の能力を……渡す?」
「アレンさん?」
顔を上げる。
フェリシアが不思議そうに俺を見ていた。
「さっきからどうしたんですか?」
俺はもう一度《共有》の表示を見る。
共有できるのは一人。
フェリシアに使えば、彼女も強くなる。
でも、何も説明せずに使うわけにはいかない。
「フェリシアさん」
「はい?」
「話しておきたいことがあります」
「……なんですか?」
倒したアーマーベアの討伐証明の爪をとり、埋めた後、俺たちは近くの木陰へ移動した。
「俺のスキルについてです」
「《会員》ですか?」
「はい」
フェリシアの表情が変わる。
「今まで秘密にしてましたけど、フェリシアさんとはこれからも一緒に依頼を受けるつもりです。だったら、話しておいた方がいいと思って」
「……はい」
俺は《会員》について説明した。
魔物を倒せばPが手に入ること。
依頼を達成してもPが増えること。
そのPを使って筋力や耐久、敏捷を強化できること。
《回復》を使えば怪我まで治せること。
そして、強化した能力は元に戻らないこと。
「…………」
説明が終わっても、フェリシアは何も言わなかった。
「フェリシアさん?」
「ちょっと待ってください」
「はい」
「じゃあ、最初に一緒に角ウサギを倒した次の日、ものすごく速くなってたのも?」
「敏捷を上げました」
「牙イノシシの突進を止められるようになったのも?」
「筋力と耐久を上げました」
「昨日より今日の方がさらに速いのも?」
「昨日の夜にまた上げました」
「…………」
フェリシアが頭を抱えた。
「『少し鍛えた』って言いましたよね?」
「鍛えてはいますよ」
「それ、だいぶ嘘に近いです!」
「すみません」
「やっぱり普通じゃなかったんじゃないですか!」
少し怒っている。
でも、本気で怒っているわけではなさそうだ。
しばらくして、フェリシアの表情が真面目になる。
「そんな大事なこと、私に話していいんですか?」
「誰にでも話すつもりはありません。でも、フェリシアさんとはもう何度も一緒に戦ってますから」
「…………」
「背中を任せる相手に、ずっと秘密にしておくのも違うかなって」
フェリシアが俺を見る。
「信用してくれてるんですか?」
「もちろん」
フェリシアの頬が少しだけ緩んだ。
「ありがとうございます」
「それで、もう一つあるんです」
「まだあるんですか?」
「今、会員ランクがシルバーになりました」
「会員ランク?」
その仕組みも簡単に説明する。
獲得したPの累計によってランクが上がること。
ブロンズの次がシルバーで、その先にゴールド、プラチナ、オリハルコンがあること。
「さっき千Pを超えて、シルバーになったんです」
「それで何か変わったんですか?」
「新しい特典が増えました」
「特典?」
「《共有》です」
フェリシアへ内容を説明する。
「つまり……」
フェリシアが自分を指差す。
「アレンさんの力を、私に?」
「一割だけですけど」
「でも、アレンさんはその分弱くなるんですよね?」
「そうみたいです」
「だったら、やめた方がよくないですか?」
「大丈夫です」
「どうしてです?」
「下がった分は、またPで上げればいいので」
「…………」
フェリシアが呆れたような顔をする。
「アレンさんって、そういう考え方なんですね」
「俺一人だけが強くなるより、二人とも強くなった方が生き残れるでしょう?」
「それはそうですけど……」
「嫌ならやめます」
「嫌じゃないです!」
思ったより強く否定された。
「あ……」
フェリシアが少し恥ずかしそうにする。
「その……試してみたいです」
「分かりました」
《共有》を開き、フェリシアを意識する。
【共有候補】
【フェリシア・ロート】
【共有メンバーに登録しますか?】
「登録する」
新しい表示が現れた。
【対象者の同意が必要です】
「フェリシアさん」
「はい?」
「同意が必要みたいです」
「どうすれば?」
その瞬間。
「えっ?」
フェリシアが目を見開いた。
「何か見えました?」
「はい!」
どうやらフェリシアにも表示が見えているらしい。
「アレン・ヴァルディスから共有メンバーへの登録申請……?」
「それです」
「承認すればいいんですか?」
「たぶん」
「じゃあ……承認します」
直後。
【フェリシア・ロートが共有メンバーに登録されました】
【共有率:10%】
身体に違和感が走る。
「……あ」
今までより少しだけ身体が重い。
能力情報を確認する。
【筋力:99】
【耐久:90】
【敏捷:108】
【魔力:17】
本当に減っている。
そして。
「きゃっ!」
「フェリシアさん!」
フェリシアが一歩動いた瞬間、身体が予想以上に前へ出た。
慌てて腕を掴む。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……」
フェリシアが自分の足を見る。
「今、普通に一歩動いただけなのに……」
「俺の敏捷が十二移ってるみたいです」
「十二?」
「俺にしか見えない数字なんですけど」
フェリシアが自分の手を握ったり開いたりする。
「身体が軽いです。それに……なんだろう、力も出る」
「筋力も十一移ってます」
「十一……」
フェリシアがゆっくり俺を見る。
「これが一割なんですか?」
「はい」
「…………」
「どうしました?」
「アレンさん」
「はい?」
「今まで一人で、どれだけ強くなってたんですか?」
「それは……」
答えに困る。
フェリシアの身体には今、俺の力の一部が移っている。
その分、俺は少し弱くなった。
それでも悪い感じはしない。
一人だけが強くなるより、二人とも強くなった方がいい。
「明日から、もっと強い依頼も受けられそうですね」
「……アレンさん」
「はい?」
「もう次の依頼のこと考えてるんですか?」
「もちろんです」
フェリシアが呆れたあと、笑った。
「本当に変わった人ですね」
累計獲得P=1,020P
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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