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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第58話 Aランク

 ノエルとダリオが戻ってきたのは、それからしばらく経った頃だった。


「来たぞ!」


 ダリオの声が聞こえる。


 森の向こうから、十人以上の人間がやってきた。


 冒険者。


 治療師。


 それに、担架を持ったギルド職員もいる。


「よかった」


 フェリシアがほっと息を吐いた。


 俺たち三人だけでは、十人以上いる救助者を運び出すのは難しかった。


「状況は?」


 先頭の職員がエリオットに聞く。


「確認されていた行方不明者は全員発見した。死者はいない。

ただ、かなり衰弱している人もいる」


「原因は?」


 エリオットが倒れている巨大な蛾を指した。


「あれだ」


 職員の顔が固まる。


「……ファントムモス?」


「ああ」


「しかも、ずいぶん大きいな」


 すぐに救助が始まった。


 助け出した人たちを、治療師が順番に確認していく。


 意識が戻っていない人もいたが、全員呼吸はしている。


 ひとまず大丈夫そうだ。


「こいつはどうする?」


 エリオットがファントムモスを見る。


「持って帰った方がいいですよね」


「できるのか?」


「たぶん」


 ファントムモスに触れる。


 《収納》を使った。


 巨大な死体が一瞬で消える。


「……本当に入るんだな」


 エリオットが呟いた。


「生きているのは無理ですけど」


「ははは、目の前で見ても信じられないよ」


 あとはギルドに持ち帰ればいい。


 救助者たちは担架や荷車に乗せられ、俺たちも王都へ戻ることになった。


 ◇


 王都へ戻った頃には、すっかり夜になっていた。


 行方不明になっていた人たちは、そのまま治療施設へ運ばれていった。


 俺たち五人は翌朝、もう一度冒険者ギルドへ向かった。


 案内されたのは、昨日と同じギルドマスターの部屋だった。


「全員戻ったか」


「はい」


 ギルドマスターが俺たちを順番に見る。


「まず確認する。死者は?」


「いません」


 エリオットが答えた。


「行方不明者は?」


「確認されていた人は全員救出しました」


「そうか」


 ギルドマスターの表情が少し緩んだ。


「よくやった」


 机の上には、すでに昨日の報告書が置かれている。


「原因はファントムモスだったそうだな」


「はい」


「死体も持ち帰ったと聞いている」


「《収納》に入れてあります」


 俺が答える。


「なら先に現物を確認しよう。報告にある通りの個体なら、話は少し変わってくる」


「話?」


「見れば分かる」


 俺たちはギルドマスターと一緒に解体場へ向かった。


 広い場所まで行き、《収納》からファントムモスを出す。


 ドサッ!


 巨大な死体が床へ現れた。


 解体場にいた職員たちが集まってくる。


「……でかいな」


 ギルドマスターが呟いた。


 鑑定担当の職員も近づき、翼や胴体を確認していく。


「通常の成体より明らかに大型です」


「やはりか」


 ギルドマスターが俺たちを見る。


「お前たち、ファントムモスがどういう扱いをされている魔物か知っているか?」


「Aランクパーティーで討伐する魔物だと聞きました」


 俺が答える。


「その認識で合っている。通常個体でも、ギルドではAランクパーティーでの討伐を推奨している」


「やっぱり……」


「理由は単純な戦闘力じゃない。あの鱗粉だ」


「幻惑ですね」


「ああ。腕の立つ冒険者でも、何が現実か分からなくなればまともに戦えない」


 ギルドマスターが巨大なファントムモスを見る。


「実際、今回派遣したBランク四人の調査隊は、戦うことすらできずに捕らえられた」


 弱かったわけじゃない。


 戦闘になる前に幻惑されたんだ。


「それに、この個体は通常より明らかに大きい。危険度も通常個体以上と考えていいだろう」


 それを俺たちは五人で倒した。


 改めて考えると、かなり無茶なことをした気がする。


「素材の査定にも少し時間がかかる。鱗粉は危険だから、専用の容器で回収する必要もある」


「分かりました」


 俺たちはいったんギルドマスターの部屋へ戻った。


 ◇


「さて」


 ギルドマスターが椅子へ座る。


「ファントムモスの危険度は確認できた」


 俺たち五人を見る。


「だが、俺が評価しているのは、Aランク級の魔物を倒したことだけじゃない」


 エリオットを見る。


「エリオット。ファントムモスだと判明した時、お前は撤退を選んだそうだな」


「はい」


「正しい判断だ」


 エリオットが少し驚いた顔をする。


「討伐できたからといって、最初の撤退判断が間違いだったことにはならん。

相手はAランク推奨の魔物で、しかも救助者を十人以上抱えていた。

援軍を呼ぶのが普通だ」


「はい」


「勝てるかどうかも分からない敵へ突っ込む奴に、Aランクは任せられない」


 前にも同じことを言っていた。


 ギルドマスターが今度は俺を見る。


「アレン」


「はい」


「お前は鱗粉を魔弾で散らせることを確認してから、戦闘を提案したそうだな」


「はい」


「ただ強いから戦えると言ったわけじゃない。敵の能力を見て、勝てる条件を作った。

そこは評価できる」


「ありがとうございます」


「フェリシア」


「はい」


「作戦を聞いて、すぐに魔弾の使い方を変えた。魔法使いは威力だけじゃない。

状況に応じて使い方を変えられるかも重要だ」


「ありがとうございます」


「ノエル。《魔弓》で翼を狙い、飛行能力を奪う役割を果たした」


「はい」


「ダリオ。《鉄壁》で仲間と救助者を守り、前線を維持した。盾役が崩れていたら、あの戦い方は成立していない」


「ありがとうございます」


 そして最後に、もう一度エリオットを見る。


「全体を見て役割を決め、撤退条件も設定した。戦闘中も自分だけで仕留めようとはしなかった」


「はい」


 ギルドマスターが五人を見渡した。


「強い魔物を倒しただけなら、俺はここまで評価しない」


 部屋が静かになる。


「行方不明者を探し、原因を見つけ、救助者を守りながら格上の魔物を倒した。

討伐後も無理に救助者を運ぼうとせず、応援を呼んだ」


 少し間を置く。


「今回の働きだけで決めたわけじゃない。これまでの各自の実績も含めての判断だ」


 ギルドマスターが俺たちを見る。


「アレン。フェリシア。エリオット。ノエル。ダリオ」


 一人ずつ名前を呼ぶ。


「五人全員、Aランクへの昇格を認める」


「……本当ですか?」


 思わず聞いてしまった。


「ここまで言わせて嘘をつく意味があるか?」


「ないと思います」


 隣でフェリシアが笑った。


「やりましたね、アレンさん」


「はい」


 王都へ来た目的。


 Aランク。


 こんなに早く届くとは思っていなかった。


「正式なカードは一階で受け取れ。それと、依頼報酬についても手続きをしておけ」


「報酬?」


「ああ。依頼を達成したんだ。当然だろう」


 そうだった。


 Aランクのことで頭から抜けていた。


「今回の依頼は、旧北街道で発生していた行方不明者の捜索と原因の特定。

全員を救出し、原因まで排除した」


 ギルドマスターが書類を見る。


「通常報酬に成果分を加えて、二百五十万ジェニーだ」


「二百五十万……」


「五人で均等に分ければ、一人五十万だな」


 十分な額だ。


「ファントムモスの素材代は別だ。査定が終われば受付から呼ばれる」


「分かりました」


 ◇


 査定結果が出たのは、それからしばらくしてからだった。


「大型ファントムモス一体。素材一式で、七百五十万ジェニーです」


「七百五十万?」


 フェリシアが目を丸くする。


「特に鱗粉と魔石の価値が高いです。この大きさの個体は珍しく、研究用の需要もあります」


「素材代はどうする?」


 エリオットが俺たちを見る。


「五人で分けませんか?」


 俺が言う。


「賛成」


 ノエルが答える。


 ダリオとフェリシアも頷いた。


 五人で等分。


 一人百五十万ジェニー。


 依頼報酬と合わせれば、一人二百万になる。


 俺の分はそのままギルド銀行へ入れてもらった。


 報酬の手続きを終え、受付へ戻る。


「お待たせしました」


 職員が五枚の冒険者カードを持ってきた。


 差し出された一枚を受け取る。


 名前。


 アレン・ヴァルディス。


 そして。


【ランク:A】


「……本当にAランクになった」


「なりましたね」


 フェリシアのカードにもAの文字。


 エリオットたちも、それぞれ自分のカードを見ている。


「先にAランクになるつもりだったんだけどな」


 エリオットが言った。


「同時でしたね」


「ああ。次は負けないぞ」


「何の勝負ですか?」


「それはこれから決める」


 ノエルが呆れた顔をする。


「これだから男はしょうがないんだよ」


「俺まで一緒にしないでくれよ」


 ダリオが笑った。


 俺もつられて笑う。


 Aランク。


 これで二十一階層より先のダンジョンにも入れる。


 受けられる依頼も増える。


 王都まで来た意味はあった。


 そして、ふと思い出す。


 《会員》。


 確認する。


【保有:46,935P】


【累計獲得P:99,145P】


 変化はない。


 Aランクになっても、《会員》には何も起きなかった。


 でも、あと八百五十五P。


 十万だ!


 ここまで来ると、やっぱり気になる。


 冒険者としてはAランクになった。


 次は――。


 十万Pだ!


 累計獲得P=99,145P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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