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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第57話 ファントムモス

「作戦を聞かせてくれ」


 エリオットが剣を構えたまま言った。


 頭上ではファントムモスが大きな羽を動かしている。


 銀白色の鱗粉が次々と舞い落ちてきた。


「まず、あいつを地面に落とします」


「落とす?」


「飛んでる間は俺たちの剣が届かないので、翼を狙います」


 ノエルを見る。


「弓で狙えますか?」


「もちろん」


 ノエルが背中から弓を取った。


「ただ、普通の矢じゃないよ」


「え?」


 一本の矢をつがえる。


 ノエルの手から魔力が流れ込み、矢じりが淡く光った。


「私のスキルは《魔弓》。矢に魔力をまとわせて、威力と速度を上げられる」


「それなら翼も?」


「当てられればね」


 十分だ。


「フェリシアさんは、さっきみたいに魔弾を広く撃ってください」


「鱗粉を散らすんですね?」


「はい。全部消す必要はありません。俺たちの周りと、ノエルさんからファントムモスまでの間だけでいいです」


「分かりました」


 エリオットがファントムモスを見上げる。


「翼を傷つけても、あの高さじゃ俺たちは何もできないぞ」


「向こうから降りてきてもらいます」


「どうやって?」


「あいつは人間を捕まえて、繭に入れてたんですよね」


 さっき見つけた繭を見る。


「なら、獲物を捕まえる時は降りてくるはずです」


 エリオットが少し考えた。


「誰かを囮にするのか」


「俺がやります」


「だったら俺も行く」


「え?」


「一人でやる必要はないだろ。アレンが注意を引け。俺は横から翼を狙う」


「分かりました」


「ダリオは後ろを頼む」


「任せろ。こいつらには近づけさせない」


 ダリオが大盾を構えた。


 これで役割は決まった。


「行きます!」


 フェリシアが白銀樹の杖を掲げる。


 五つの魔弾が周囲に浮かんだ。


「《魔弾》!」


 青白い光が一斉に飛ぶ。


 一発。


 二発。


 三発。


 魔弾が銀白色の鱗粉の中を高速で通過するたびに周囲の空気が乱れ、粉が左右へ散っていく。


「やっぱりいけます!」


 俺たちの前に、一時的に鱗粉の薄い空間ができた。


「ノエル!」


「見えてる!」


 弓が引き絞られる。


 矢じりに魔力が集まった。


「《魔弓》!」


 ヒュンッ!


 普通の矢とは比べものにならない速度で飛んでいく。


 ファントムモスが身体を傾けた。


 矢は翼の端を貫く。


「ギィィィィ!」


 耳障りな鳴き声が響いた。


「惜しい!」


「次は外さない!」


 ファントムモスが大きく旋回する。


 銀白色の粉が再び降ってきた。


「フェリシアさん!」


「はい!」


 また五つの魔弾が飛ぶ。


 鱗粉が左右へ散っていく。


 でも、すぐに上から新しい粉が降ってくる。


「長くは持ちません!」


「分かってます!」


 早く落とさないといけない。


 ノエルが二本目の矢をつがえた。


 その瞬間。


 ファントムモスが突然方向を変えた。


「来るぞ!」


 エリオットが叫ぶ。


 巨大な身体が一気に高度を下げる。


 狙っているのは――。


「ノエル!」


 ファントムモスが前脚を伸ばした。


 ノエルが後ろへ下がる。


 その前へダリオが飛び出した。


「俺がいる!」


 大盾を構える。


「《鉄壁》!」


 ダリオの身体と盾が鈍い光に包まれた。


 直後。


 ドォンッ!


 巨大な前脚が盾へ激突する。


「ぐっ!」


 ダリオの身体が地面を滑った。


 それでも倒れない。


「ダリオ!」


「大丈夫だ! これくらいなら止められる!」


 ファントムモスが再び上昇する。


 俺はその動きを見ていた。


「やっぱり」


「何か分かった?」


 フェリシアが聞く。


「あいつ、攻撃する時はかなり下まで降りてきます」


 エリオットも頷いた。


「そこを狙うか」


「はい」


 炎牙剣を抜く。


「俺が前に出ます」


「なら俺は右から行く」


 エリオットも剣を抜いた。


「ノエルさんは、さっき傷つけた翼を狙ってください」


「了解」


「フェリシアさんは鱗粉をお願いします」


「任せてください」


 走り出す。


「こっちだ!」


 ファントムモスを見上げながら声を上げた。


 赤黒い複眼がこちらへ向く。


 羽が大きく動いた。


 来る。


「ギィィィィ!」


 急降下。


 巨大な身体がこちらへ向かってくる。


 まだ。


 前脚が伸びる。


 まだ。


「アレン!」


 エリオットの声。


 目の前まで来た。


 今だ!


 横へ飛ぶ。


 ファントムモスの前脚が、さっきまで俺がいた場所を薙いだ。


「エリオットさん!」


「ああ!」


 横からエリオットが駆け込んでくる。


 その姿が一瞬消えた。


「《瞬動》!」


 次に見えた時には、ファントムモスの横にいた。


 一瞬だけ爆発的に速度を上げるスキルか。


「はあっ!」


 長剣が翼の付け根へ食い込んだ。


 ザシュッ!


「ギィィッ!」


 翼が大きく裂ける。


「ノエル!」


「そこ!」


 《魔弓》で強化された矢が、エリオットの斬った場所へ突き刺さった。


 さらに。


「《魔弾》!」


 フェリシアの魔弾が同じ翼へ次々と命中する。


 裂け目が一気に広がった。


 翼が大きく折れ曲がる。


「落ちるぞ!」


 ファントムモスが高度を保てなくなった。


 巨大な身体が木々へぶつかる。


 バキバキバキッ!


 枝を折りながら落ちてきた。


 ドォンッ!


 地面が揺れる。


「やった!」


 でも、まだ終わっていない。


「離れて!」


 フェリシアが叫ぶ。


 ファントムモスが地上で激しく羽を動かした。


 大量の銀白色の粉が巻き上がる。


「《魔弾》!」


 フェリシアが次々と魔弾を撃つ。


 粉が散っていく。


 それでも量が多い。


「全部は散らせません!」


「十分です!」


 地上なら剣が届く。


「行きます!」


 俺とエリオットが同時に走った。


 ファントムモスが前脚を振る。


 エリオットが横へかわす。


 俺も反対側へ回る。


「ギィィィ!」


 今度は俺へ前脚が伸びてきた。


 かわそうとした瞬間。


「兄さん」


「……っ!」


 目の前にカイルがいた。


 剣を持って立っている。


 いるはずがない。


 分かっている。


 それでも、本物にしか見えなかった。


「アレン!」


 エリオットの声。


 前脚が迫っている。


 横へ飛んだ。


 ギリギリだった。


「大丈夫か!」


「はい!」


 カイルを見る。


 まだそこにいる。


 でも。


 《魔力感知》。


 カイルからは何も感じない。


 魔力反応がない。


 一方、その向こうには強い魔力がある。


 ファントムモス。


「そっちは偽物だ」


 幻のカイルを無視する。


「アレン!」


 今度は父上の声がした。


 それも無視する。


 炎牙剣へ魔力を流した。


 赤い炎が大きく広がる。


 《魔力操作》。


 炎を刀身へ集める。


 細く。


 鋭く。


 炎の中心が白く変わった。


「ダリオ!」


 エリオットが叫ぶ。


「分かってる!」


 ダリオが走り込んできた。


 ファントムモスの前脚へ大盾を差し出す。


「《鉄壁》!」


 ドンッ!


 盾が受け止めた。


「今だ!」


「ノエル!」


「任せて!」


 魔力をまとった矢が飛ぶ。


 残った翼の付け根へ突き刺さった。


「ギィィィ!」


 ファントムモスが身体を仰け反らせる。


 エリオットが《瞬動》で一気に懐へ入った。


「こっちは俺が止める!」


 長剣で前脚へ斬りつける。


 ファントムモスの注意がエリオットへ向く。


 今しかない。


 地面を蹴った。


 胴体が目の前にある。


「アレンさん!」


 フェリシアの声。


 今度は本物だ。


「はい!」


 炎牙剣を振り上げる。


「はああっ!」


 白い炎をまとった刃を、ファントムモスの胴へ叩き込んだ。


 ザンッ!


 刃が深く入る。


 そのまま一気に斬り抜いた。


「ギィィィィィィッ!」


 ファントムモスが激しく羽ばたく。


 銀白色の粉が舞った。


 それでも、もう飛べない。


 巨体が大きく傾く。


 ドサッ!


 そのまま動かなくなった。


 森が静かになる。


 視界に表示が現れた。


【6,000P獲得】


【保有:46,935P】


【累計獲得P:99,145P】


「六千……」


 キングオーガより上。


 Aランクパーティーでなければ厳しいと言われるだけはある。


「倒した……?」


 ノエルが弓を下ろした。


「ああ」


 エリオットも剣を下ろす。


「本当に倒したな」


 ダリオが大盾を地面へ置いた。


「全員Bランクなのにな」


「五人いましたから」


 俺が言うと、エリオットが笑った。


「それでも大金星だぞ?」


「そうですよね?」


 フェリシアも笑う。


 でも、すぐにエリオットの表情が戻った。


「喜ぶのはあとだ。俺たちの依頼は、こいつを倒すことじゃない」


「はい」


 行方不明者を助けること。


 それが本来の目的だ。


「全員助けましょう」


「ああ」


 繭へ向かう。


 フェリシアが最初に助け出した男を確認した。


「大丈夫です。まだ呼吸してます」


「他の人も急ごう」


 ノエルとダリオが繭を確認する。


 俺とエリオットが、中の人を傷つけないよう糸を切っていった。


 一人。


 二人。


 三人。


 商人。


 旅人。


 Bランク冒険者。


 次々と繭から助け出していく。


 しばらくすると、一人の冒険者がゆっくりと目を開いた。


「……ここは……」


 フェリシアがすぐに顔を覗き込む。


「大丈夫です。冒険者ギルドから助けに来ました」


「ギルド……?」


「はい」


 男が周囲を見る。


 倒れているファントムモス。


 助け出された仲間たち。


 そして俺たち。


「助かった……のか?」


「はい」


 フェリシアが笑った。


「もう大丈夫です」


 まだ意識の戻らない人も多い。


 十人以上。


 俺の《収納》には、生きている人間を入れることはできない。


「全員を五人で運ぶのは無理だな」


 エリオットが言った。


「どうします?」


「ここはもう安全そうだ。何人か残って救助者を守る。動ける者が増えたら手伝ってもらおう」


 エリオットがノエルを見る。


「ノエル。旧街道まで戻って応援を呼べるか?」


「任せて」


「一人は危なくないですか?」


 俺が聞く。


「じゃあダリオも行ってくれ。ここは俺とアレンとフェリシアで守る」


「ああ」


 ダリオが盾を背負い直した。


「すぐ戻る」


 ノエルとダリオが来た道を戻っていく。


 俺は助け出された人たちを見る。


 全員、生きている。


 今回の依頼は、魔物を倒すことじゃなかった。


 助けて、生きて帰ること。


 まだ終わってはいない。


 でも、ここまで来ればもう大丈夫だと思えた。


 累計獲得P=99,145P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
繭は脱水で死なないように冬眠状態に近い形で保護するのかな。最初の排泄が地獄になりそうな気がするな…。蛾系統だと鱗粉と毛で衝撃には強そうだけど切断や刺突でぷにぷにお腹を攻撃されてあっという間に死にそうな…
伝令役も必要だね。途中経過伝えたら…
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