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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第55話 消えた商隊

 翌朝。


 王都の北門前で、エリオットたちと合流した。


「おはよう」


「おはようございます」


 エリオットの後ろには、昨日一緒にギルドマスターの部屋へ来た二人もいる。


「ちゃんと紹介してなかったな」


 エリオットが、大きな盾を背負った男を見る。


「こっちはダリオ。前衛で盾役だ」


「ダリオだ。よろしくな」


「アレンです。よろしくお願いします」


「フェリシアです。よろしくお願いします」


 続いて、弓を背負った女性が軽く手を上げる。


「ノエル。弓と索敵を担当してる。よろしく」


「よろしくお願いします」


 これで五人。


 エリオットが俺たちを見る。


「現場に着いたら、まずノエルに痕跡を見てもらう。俺とアレンは前衛。フェリシアは後ろから援護。ダリオは状況を見ながら前後を守ってくれ」


「分かった」


「はい」


 指示が早い。


 俺たちと組むのは初めてなのに、それぞれの役割をすぐに決めている。


「何かやりにくいところがあったら言ってくれ。

今回は合同の依頼だからな。よろしく頼む」


「こちらこそお願いします」


 昨日は俺に興味を持っている様子だったけど、張り合うことを優先するような人ではないらしい。


 五人で北門を出た。


 ◇


 旧北街道の入口までは馬車を使った。


 新しい北街道をしばらく進み、途中で御者に停めてもらう。


「ここだな」


 エリオットが地図を見る。


 街道の脇から、細い道が森へ続いていた。


 新しい街道とはまるで違う。


 道の端には草が伸び、人が頻繁に通っている様子もない。


「ここからは歩きですね」


「そうだな」


 馬車を降りる。


 荷物の大半は《収納》に入れてあるので、俺とフェリシアは身軽だ。


 それを見たダリオが苦笑する。


「やっぱり《収納》って便利だな」


「便利ですよ」


「俺も欲しいな」


「俺もどうやったら覚えられるのか分からないですけど」


「そうなのか?」


「はい」


 説明できるはずもない。


 五人で旧街道へ入った。


 ◇


 一時間ほど歩いた頃だった。


 先頭を歩いていたノエルが右手を上げる。


「止まって」


 全員が足を止めた。


 ノエルが道の先を指さす。


「あれ」


 少し離れた場所に馬車があった。


 街道の端へ寄せるように止まっている。


 横転していない。


 車輪も壊れていなかった。


「依頼書にあった商隊か?」


 エリオットが地図と書類を確認する。


「場所はこの辺りで合ってる」


 警戒しながら近づく。


 人の姿はない。


 馬もいなかった。


「荷物は?」


 荷台を確認する。


 木箱。


 布。


 酒樽。


 乾燥させた食料の袋。


 かなりの量がそのまま残っている。


 ノエルが荷台の端にあった小さな袋を持ち上げた。


「金も残ってる」


「盗賊じゃなさそうだな」


 エリオットが言った。


「盗賊なら商品も金も持っていくよな」


 ダリオも周囲を見る。


 馬車にも、戦ったような傷は見当たらない。


「血もないですね」


 フェリシアが地面を見る。


 血痕も、大きく地面が荒れた跡もなかった。


「ノエル、分かるか?」


「見てみる」


 ノエルがしゃがみ込んだ。


 地面を確認しながら馬車の周囲をゆっくり歩き、森側で止まる。


「こっち」


 全員で集まった。


「足跡があります」


「何人?」


「七人」


 エリオットが依頼書を見る。


「最初の商隊は七人だったはずだ」


「じゃあ、全員?」


「たぶんね」


 ノエルが地面を指さす。


 七人分の足跡が、街道から森へ向かって続いている。


「走った跡じゃない。歩幅も普通」


「誰かに追われたようには見えない?」


 俺が聞く。


「見えない。引きずられた跡もないし、争った感じもない」


 七人全員が、自分の足で森へ入った。


「どうして……」


 フェリシアが森を見る。


 誰も答えられない。


「追おう」


 エリオットが言った。


「生きている可能性がある以上、ここで止まるわけにはいかない。ノエル、頼む」


「分かった」


 足跡を追って森へ入った。


 ◇


 森の中は妙に静かだった。


 ノエルを先頭に進む。


 その少し後ろをエリオット。


 俺とフェリシアが続き、最後尾をダリオが歩く。


 しばらくして、違和感を覚えた。


「……何か変じゃないですか?」


 エリオットが振り返る。


「何が?」


「魔物が少ない気がします」


 ここまで、魔物らしい反応をほとんど感じていない。


 動物の気配も少ない。


「確かに静かだな」


 ダリオが周囲を見回す。


「森なら、もう少し何かいてもよさそうだけどな」


 《魔力感知》へ意識を向ける。


 周囲にはいつものように魔力が漂っている。


 ただ、大きな魔物の反応は感じない。


「先へ進もう」


 エリオットの声で歩き出す。


 それから少し進んだ時だった。


「アレンさん」


 右後ろから声がした。


「はい?」


 振り返る。


 誰もいない。


「……?」


 フェリシアは少し前を歩いている。


 聞き間違いか。


 前を向き、また歩き始める。


「アレンさん、こっちです」


 今度ははっきり聞こえた。


 右側の森の奥。


 フェリシアの声だ。


「フェリシアさん?」


「はい?」


 前を歩いていたフェリシアが振り返った。


 俺も足を止める。


「今、俺を呼びました?」


「呼んでませんけど」


「……やっぱり」


「どうしました?」


 全員が止まった。


「森の方からフェリシアさんの声が聞こえたんです。二回」


「私の声が?」


「はい」


 フェリシアが森を見る。


「でも、私は何も言ってません」


 かなりはっきり聞こえた。


「聞き間違いじゃないんだな?」


 エリオットが聞く。


「はい。二回とも、フェリシアさんの声でした」


 その時だった。


「……母さん?」


 後ろから声がした。


 ダリオだ。


「どうした?」


 エリオットが振り返る。


 ダリオは左側の森を見ていた。


「今、母親の声がした」


「ここにいるのか?」


「いるわけない。王都からずっと西の村に住んでる」


 全員が黙る。


 俺だけじゃない。


「二人とも、知っている人間の声を聞いたんだな」


「ああ」


「はい」


 エリオットの表情が変わった。


「何かがおかしい。ここからは、何が聞こえても勝手に声の方へ行くな。必ず他の誰かに確認する」


 全員が頷いた。


 こういう時の判断が早い。


 俺はもう一度《魔力感知》へ意識を集中した。


 周囲の魔力を探る。


 いつも通り、自然に漂っている魔力がある。


 でも――。


「……ん?」


 何か違う。


 さらに集中する。


 自然に存在する魔力とは別に、ごく薄い魔力が混ざっている。


 一か所じゃない。


 右にも。


 左にも。


 前にも。


 同じ性質を持った何者かの魔力が、森の広い範囲に薄く広がっている。


「どうした?」


 エリオットが聞く。


「何者かの魔力があります」


「魔物がいる?」


「それとは少し違います。魔力そのものが周囲に薄く広がってる感じです」


「魔法ですか?」


 フェリシアが聞く。


「分かりません。でも、自然に漂っている魔力とは違います」


 声と関係しているのかもしれない。


 その直後。


「ちょっと待って」


 ノエルが近くの低木を見た。


「これ、何?」


 葉の表面に、薄い銀白色の粉が付着している。


 光が当たると、わずかに輝いた。


 ノエルが指を伸ばす。


「触らないでください」


 思わず声を上げた。


 ノエルが手を止める。


 《魔力感知》を集中させる。


 銀白色の粉から感じる魔力。


 森に薄く広がっているものと同じだ。


「この粉です」


「さっき言ってた魔力と同じ?」


 フェリシアが聞く。


「はい」


 エリオットの顔が険しくなる。


「この粉が森の広い範囲に散ってるってことか」


「そうだと思います」


「声もこれが原因か?」


「まだ分かりません。でも、何か関係はありそうです」


 ダリオが自分の口元を押さえた。


「これ、吸い込んで大丈夫なのか?」


「それも分かりません」


「分からないなら対策しよう」


 エリオットが荷物から布を取り出す。


「口と鼻を覆う。どこまで意味があるかは分からないが、何もしないよりはいい」


 俺たちも布を用意した。


 水で軽く濡らし、口と鼻を覆う。


「どうする?」


 ノエルが聞く。


 エリオットが少し考えた。


「今のところ、全員意識ははっきりしている。行方不明者が生きている可能性もある。

 もう少し先まで行こう。ただし、誰かに異常が出たらすぐ引き返す」


「分かりました」


 再び足跡を追った。


 ◇


 それから十分ほど進んだ。


 ノエルが突然足を止める。


「何か落ちてる」


 木の根元に小さな板のようなものがあった。


 拾い上げる。


 冒険者カードだ。


「Bランク……」


 名前も書かれている。


 エリオットが依頼書を確認した。


「調査隊の一人だ」


 全員の表情が変わる。


 近くを探す。


「こっちにもある」


 ダリオが声を上げた。


 地面に剣が落ちている。


 鞘から抜かれた様子はない。


 血もついていなかった。


「戦ってない?」


 フェリシアが言う。


「少なくとも、ここではな」


 ノエルが地面へしゃがみ込む。


「足跡はまだ続いてる」


 森のさらに奥。


 調査に来たBランク冒険者たちも、自分の足で進んだらしい。


 商人だけじゃない。


 異変を調べに来た冒険者まで、この先へ向かっている。


「……行こう」


 エリオットが言った。


 一歩踏み出す。


 その時だった。


「アレン」


 足が止まった。


 さっきとは違う。


 聞き間違えるはずがない。


「……父上?」


「アレンさん?」


 フェリシアが俺を見る。


 森の奥。


 木々の向こうから、もう一度声が聞こえた。


「アレン。こっちへ来い」


 父上の声だ。


 でも、父上は今、アルスレイン王国にいる。


 ここにいるはずがない。


 俺は声のした森の奥を見る。


「やっぱり、この声は偽物です」


 その時、木々の間を銀白色の粉がゆっくりと舞った。


 累計獲得P=93,145P



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― 新着の感想 ―
一ヶ月前?の馬車や荷物がそのままってありえないでしょう。ギルドで商隊がいなくなったけど、荷物などはそのままあるという情報があるのに、回収せずそれを更にそのままにしておくってどういうこと?余りにもひどく…
なるほど。 食虫植物的な魔物でもいるのかな? あるいはマッドな魔女が実験台を招き寄せているか。
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