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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第52話 領都へ

「領都へ?」


 思わず聞き返した。


「はい。今回のスタンピードについて、詳しくお話を伺いたいのです」


 騎士が答える。


「俺たちじゃないと駄目なんですか?」


「キングオーガと直接戦ったのはアレン様です。

 それに、魔物の群れを最初から見ていたお二人からも話を聞いておきたい」


 確かに、《魔力感知》で魔物の数や動きを確認したのは俺だ。


 フェリシアを見る。


「どうします?」


「私は構いませんよ」


「王都へ行く途中なんですけど……」


 俺が言うと、騎士が頷いた。


「承知しています。この先、王都へ向かう便も領都の近くを通ります。

 今日の騒ぎでは乗合馬車もこの町で一泊することになるでしょう」


 それなら、大きく予定が変わるわけでもない。


「分かりました」


「ありがとうございます」


 騎士が頭を下げた。


「では、出発については明日の朝にしましょう。それまでにこちらでも被害状況を確認します」


 周囲では領兵や騎士たちが倒れた魔物を確認している。


 俺は少し離れた場所に横たわるキングオーガを見た。


「これ、持っていってもいいですか?」


「キングオーガをですか?」


「《収納》があるので」


 騎士が巨大な死体と俺を交互に見る。


「……入るのですか?」


「たぶん」


 ミスリルゴーレムが入ったのだから、問題ないはずだ。


「討伐されたのはアレン様ですし、こちらで確認も済んでいます。構いません」


「ありがとうございます」


 キングオーガへ手を触れる。


 次の瞬間、巨体が消えた。


「入りました」


「…………」


 騎士が黙っている。


「どうしました?」


「いえ。何でもありません」


 最近、似たような反応をされることが増えた気がする。


 ◇


 翌朝。


 乗合馬車は騎士たちと一緒に町を出発した。


 幸い、昨日のスタンピードで死者は出なかったらしい。


 怪我人は何人かいたが、全員命に別状はなく、建物にも大きな被害はなかった。


 魔物を町へ入れずに済んだのが大きかった。


 領都へ近づくにつれて、見覚えのある景色が増えていく。


 街道が広くなり、行き交う馬車も多くなった。


 やがて、遠くに石造りの城壁が見えてくる。


「大きいですね」


 フェリシアが窓から外を見る。


「この領地では一番大きな街ですから」


「アレンさんもここに住んでたんですよね?」


「はい。屋敷も領都にあります」


「見に行きます?」


「行きませんよ、王都へ行く途中ですから」


 フェリシアが少し笑った。


 城門を抜ける。


 久しぶりに見る領都は、記憶にある姿とほとんど変わっていなかった。


 大通りには商店が並び、大勢の人が行き交っている。


 馬車が進んでいくと、建物の向こうに侯爵家の屋敷が見えた。


 あそこで育った。


 母がまだいた頃も。


 カイルと剣の稽古をしていた頃も。


 そして最後に、家を出た時のことも覚えている。


「アレンさん?」


「何です?」


「あれが屋敷ですか?」


「はい」


「……本当に寄らなくていいんですか?」


 少しだけ考える。


「いいです」


 今は、あそこへ帰ってきたわけじゃない。


 馬車は屋敷へ向かわず、そのまま大通りを進んだ。


 ◇


 案内されたのは侯爵家の屋敷ではなく、領都の政務を扱う建物だった。


 それなら助かる。


 中へ入り、応接室で待っていると、一人の男が入ってきた。


 五十歳くらいの男性だ。


 顔には見覚えがあった。


「……アレン様」


 男が足を止めた。


「お久しぶりです」


「本当にアレン様なのですね」


 ヴァルディス侯爵家の家令だ。


 父上がアルスレイン王国へ出ている間、領内の政務を取りまとめる者の一人らしい。


 家令が深く頭を下げる。


「お久しゅうございます」


「はい」


「こうして再びお会いできるとは思っておりませんでした」


 少し返事に困る。


「俺もです。王都へ向かう途中で通っただけだったので」


「そうでしたか」


 家令が一瞬だけ複雑そうな表情を見せた。


 俺とフェリシアが椅子へ座る。


 騎士隊を率いていた男も同席した。


「では、まず今回の件について確認させてください」


 そこから、昨日のことを説明した。


 王都へ向かっていた途中で領兵に止められたこと。


 北東の森から大量の魔物が街道へ出ていたこと。


 町へ戻り、領兵たちと迎え撃ったこと。


 最後にキングオーガが現れたこと。


「つまり、お二人は依頼を受けていたわけではなかったのですね」


「はい。たまたま通りかかっただけです」


 家令が騎士へ視線を向ける。


「町の被害は?」


「死者はおりません。建物にも大きな被害はありませんでした」


「それほどのスタンピードで?」


「はい。アレン様とフェリシア殿が、町へ到達する前に魔物を食い止めてくださいました」


「俺たちだけじゃないですよ。領兵の人たちも戦ってましたから」


 俺が言うと、騎士は首を振った。


「それでも、キングオーガが町へ入っていれば結果はまるで違っていました」


 家令がしばらく俺を見る。


「本当に……お強くなられたのですね」


「色々ありましたから」


「ドラン帝国との戦いで《剣聖》を討ったという報告も届いております」


「やっぱりここまで来てるんですね」


「領内でもかなり噂になっています。《剣聖》を授かったカイル様の兄ではないか、と」


 本人の目の前で聞くと、やっぱり変な感じだ。


 家令が机の上の書類へ視線を落とす。


「今回の件についても、正式な記録を残します」


「記録ですか?」


「はい。スタンピード発生時の緊急対応、住民の防衛、そしてキングオーガの討伐。

 ヴァルディス侯爵領として、お二人から大きな助力を受けたことを記録します」


 家令が別の書類を取り出した。


「王都の冒険者ギルドへも報告を送っておきましょう」


「そこまでしてもらえるんですか?」


「当然です。冒険者のお二人が領民を救ってくださったのですから」


 フェリシアが俺を見る。


「アレンさん」


「はい」


「これも、王国への貢献になるんじゃないですか?」


「あ……」


 ベルガントのギルドマスターに言われたことを思い出した。


 Aランク冒険者になるには、強いだけでは足りない。


 サハル王国への貢献も必要になる。


「審査でどう扱われるかは王都のギルドが判断するでしょう。

 ただ、今回のお二人の働きが正式な実績として残るのは間違いありません」


 家令が言った。


 Aランクになるために王都へ向かっている途中で、思わぬ実績が増えたらしい。


「フェリシアさんもですよ」


「もちろん、フェリシア・ロート殿についても記録します。領兵との連携も報告を受けています」


「ありがとうございます」


 家令が書類へ名前を書き始めた。


 途中で手を止める。


「確認ですが、お名前はアレン・ヴァルディスでよろしいですか?」


「……はい」


 一瞬だけ間が空いた。


 いつまでもヴァルディスを名乗るのはやめようかな。


 昨日、そんなことを考えた。


 でも、今すぐ決めることでもない。


「アレン・ヴァルディスでお願いします」


「承知しました」


 家令が続きを書き始めた。


 ◇


 話が終わると、家令から屋敷へ泊まることを勧められた。


「本日はもう遅くなります。よろしければ侯爵家の客室をご用意いたしますが」


「ありがとうございます。でも、宿を取ります」


「そうですか」


「今は冒険者として旅をしてるので」


 家令が少し黙った後、頷く。


「承知しました」


「すみません」


「謝られる必要はございません」


 家令が小さく笑った。


「では、せめてこちらをお持ちください」


 一通の封書を渡される。


「これは?」


「王都の冒険者ギルド宛ての報告書です。こちらからも正式な報告を送りますが、ご本人にも一通お渡ししておきます」


 封書を見る。


 思わぬところで、王都へ持っていくものが増えた。


「ありがとうございます」


「こちらこそ、領民を救っていただき本当にありがとうございました」


 家令が深く頭を下げる。


 俺も頭を下げた。


 建物を出る。


「結局、屋敷には行きませんでしたね」


 隣を歩きながらフェリシアが言う。


「行く理由がないですから」


「でも、少しは気になります?」


「まぁ、少しは気になりますけど」


 正直に答えた。


 母と暮らした場所でもある。


 良い思い出が一つもないわけじゃない。


 でも、今戻る必要はない。


「明日、王都へ向かいましょう」


「はい」


 手に持った封書を見る。


 Aランクになるために王都へ向かう。


 その途中で、思いがけず一つ実績が増えた。


 ヴァルディス領へ戻るつもりなんてなかった。


 それでも、ここへ来たことには少し意味があったのかもしれない。


 累計獲得P=93,145P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そう言えばキングオーガはP的には《成長した剣聖》相当でしたね。 不意にそんな化け物が現れて町を襲撃するような世界観だと人類側の戦力が不安ですねー。 どれくらいの頻度で、どれくらいの脅威度の魔物が現れ…
名前は捨ててしまった方が後腐れないと思うが、敢えて捨てるのも負けたようで嫌、とかそんな気持ちがあるのかな。付き合いの長いフェリシアの容貌とか気になってきたな。
フェリシアは、追い出された事を知ってるよね? 鈍すぎてどうにも好きになれない これが相棒で、ずっと一緒にいるのかぁと思ってしまう
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