第44話 二十階層へ
翌朝。
朝食を済ませた俺とフェリシアは冒険者ギルドへ向かった。
「ミスリルゴーレムは、まだ討伐されていませんか?」
「はい。今朝の時点では討伐報告はありません」
受付嬢が念を押す。
「二十階層の階層主です。危険だと思ったら必ず戻ってください」
「分かりました」
ギルドを出て、西部ダンジョンへ向かう。
俺は昨日買ったブラックスチールリザードの軽鎧。フェリシアも白銀樹の杖を持っている。
食料や水、毛布、簡易天幕などはすべて《収納》へ入れた。
ダンジョンへ入り、一階の転移石から十階へ移動する。
「ここからですね」
「はい」
今日の目的地は十五階じゃない。
二十階だ。
◇
十一階へ下りて間もなく、二体のスチールリザードと遭遇した。
一体が俺へ飛びかかってくる。
噛みつきをかわし、首と胴の間へ炎牙剣を通す。
【800P獲得】
フェリシアももう一体を魔弾で仕留めた。
「前より撃ちやすいです」
白銀樹の杖を見ながら言う。
「買った意味はありましたね」
死体を二体とも《収納》する。
そこから先も魔物との遭遇は続いた。
アイアンウルフ、アーマードエイプ、ブラッドボア、シャドウパンサー。
一体だけの時もあれば、三体まとめて現れる時もある。
倒すたび、俺が仕留めた魔物からPが入る。
【200P獲得】
【400P獲得】
【600P獲得】
以前なら素材を切り取るために足を止めていたが、今は倒した魔物を丸ごと《収納》へ入れるだけだ。
十一階を抜けるころには、すでに十体近くの魔物が《収納》に入っていた。
十二階でも状況は同じだった。
メタルスコーピオンだけではない。スチールリザードやアイアンウルフ、デスホーンまで現れる。
メタルスコーピオンの尾を完全には避けきれず、針が左腕に当たった。
ガキンッ!
「アレンさん!」
「大丈夫です!」
ブラックスチールリザードの軽鎧が受け止めている。
傷もない。
「……買っておいてよかった」
甲殻の継ぎ目へ炎牙剣を入れる。
【1,000P獲得】
魔物を倒す速度も、素材を回収する速度も以前とはまるで違った。
俺たちはほとんど立ち止まることなく十三階、十四階へ進んだ。
クリスタルホーン。
ケイブワイバーン。
ブレードマンティス。
メタルスコーピオン。
同じ階でも何種類もの魔物が現れ、場所によって数も違う。
フェリシアの魔弾も明らかに速くなっていた。
「《魔弾》!」
一体のケイブワイバーンへ二発。すぐ別の一体へ狙いを変え、さらに一発。
白銀樹の杖を使うことで、魔力を次の魔弾へ移す時間が短くなっている。
「かなり合ってますね」
「私もそう思います」
倒れた魔物をすべて収納し、十五階へ入る。
ここも前に来た時とは違って見えた。
ブレードマンティスの鎌が振り下ろされる。
以前なら慎重に距離を取っていた。
今は懐へ入れる。
鎌の内側へ踏み込み、首へ炎牙剣を走らせた。
【1,300P獲得】
その後も何度か魔物と遭遇したが、大きく足止めされることはなかった。
表示を確認する。
【保有:13,965P】
【累計獲得P:56,075P】
「もう一万超えてるんですか?」
「はい」
「何か買います?」
「まだいいです。必要になったら途中でも買えますから」
二十階には階層主がいる。
相手を見てから使っても遅くない。
少し休憩し、初めての十六階へ向かった。
◇
十六階へ下りると、浅い水が石床を流れていた。
「足元、滑りそうですね」
「気をつけましょう」
水面が揺れる。
飛び出してきたのは、青黒い鱗を持つアクアサーペントだった。
三体。
一体が水面を滑るように迫る。
横へかわし、首を斬る。
【1,400P獲得】
二体目も続けて倒す。
【1,400P獲得】
フェリシアも残った一体を仕留めた。
その後もロックタートル、ブレードマンティス、メタルスコーピオンなどと何度も遭遇する。
深い階へ来ても、一種類の魔物だけが生息しているわけではないらしい。
十七階は岩柱が多く、天井も低かった。
そこで初めてアイアンオーガと遭遇した。
黒い金属のような皮膚。
振り下ろされた棍棒が岩床を砕く。
「これは受けたくないな」
攻撃をかわし、脇腹へ炎牙剣を入れる。
硬い。
だが斬れないほどではない。
同じ場所へもう一撃。
【2,000P獲得】
「二千……」
深くなるほどPも大きくなっている。
十八階では、広い空洞をストームワイバーンが飛んでいた。
ケイブワイバーンより大きく、速い。
一体が急降下してくる。
爪をかわし、上昇する前に翼を斬る。
落ちたところへ首へ一撃。
【1,800P獲得】
フェリシアも上空の一体へ魔弾を連射する。
「落ちます!」
圧縮した魔弾が翼へ直撃し、巨大な身体が地面へ落ちた。
その後も階段を探している間に何度も魔物と戦った。
倒した死体は全部《収納》する。
「これ、何体入ってるんでしょう」
「もう数えるのやめました」
「帰ったら解体場、大変そうですね」
「先に謝りましょう」
十九階へ下りる。
黒い岩壁の中を進む間にも、アイアンオーガ、ストームワイバーン、ロックタートル、ブレードマンティスなどが次々に現れた。
フェリシアも俺と同じくらい倒している。
最後のクリスタルホーンを斬り倒したところで、ようやく奥に階段が見えた。
【1,100P獲得】
表示を開く。
【保有:35,265P】
【累計獲得P:77,375P】
「三万五千……」
「そんなに?」
「今日だけで三万四千八百P増えてます」
「一日で!?」
十一階からここまで、何十体倒したか分からない。
Pだけじゃない。
《収納》には大量の魔物が丸ごと入っている。
深い階層へ入れるようになったことで、稼ぎ方そのものが変わった。
「……二十階ですね」
フェリシアが奥の階段を見る。
「少し休んでから行きましょう」
「はい」
水を飲み、軽く食事を取る。
俺は《会員》を開いた。
【保有:35,265P】
一万Pのスキルでも三つ買える。
だが、今は使わない。
階層主を見て、必要になった時に使えばいい。
表示を閉じる。
「行けます?」
「はい」
二十階へ下りた。
◇
目の前に巨大な石の扉があった。
二人で押す。
ゴゴゴゴゴ……。
扉の向こうには広い円形の空間があり、その中央に巨大な人型が立っていた。
全身が銀白色。
十階のアイアンゴーレムより一回り大きい。
「ミスリルゴーレム……」
ゴーレムの頭部がこちらを向く。
ドンッ、と一歩踏み出しただけで床が揺れた。
「フェリシアさん、まず俺が行きます」
「気をつけてください」
炎牙剣を抜き、距離を詰める。
右腕の関節を狙って斬った。
ガキィィンッ!
「っ!」
刃が弾かれ、腕が痺れた。
「硬い……!」
アイアンゴーレムより硬い。
その瞬間、巨大な拳が飛んできた。
「!」
身体を横へ投げる。
ブオンッ!
拳がすぐ横を通り過ぎる。
速い。
「《魔弾》!」
フェリシアの魔弾が三発、胸へ命中する。
だが、わずかな傷しかつかない。
「圧縮します!」
白銀樹の杖の先に魔力が集まる。
「《魔弾》!」
圧縮された光が肩へ直撃した。
ドンッ!
表面がわずかに削れる。
「効いてます!」
「でも浅いです!」
ミスリルゴーレムがフェリシアへ向きを変えた。
巨体が一気に加速する。
「速っ……!」
俺はすぐに二人の間へ入る。
炎牙剣へ魔力を流す。
赤い炎が刀身を包んだ。
十階のアイアンゴーレムとは違う。
硬いだけじゃない。
こいつは速い。
「フェリシアさん!」
「はい!」
二十階層の階層主との戦いが始まった。
累計獲得P=77,375P
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