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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第4章 Aランクへの道

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第42話 森林調査完了

 食事を終えたあと、俺は焚き火のそばに残った。


「今日は俺が見張ります。フェリシアさんは寝てください」


 天幕へ向かいかけたフェリシアが振り返る。


「一人で朝までですか?」


「昨日、《全回復》で睡眠不足の疲れまで取れることが分かりましたから」


「でも、百P使いますよね」


「使います。ただ、明日は調査最終日です。

二人とも寝不足になるより、フェリシアさんにはしっかり休んでもらった方がいいと思います」


 フェリシアは少し考えてから頷いた。


「分かりました。何かあったらすぐ起こしてください」


「もちろんです」


「無理だけはしないでくださいね」


「はい」


 フェリシアが天幕へ入る。


 しばらくすると、中から物音が聞こえなくなった。


 俺は焚き火へ薪を足した。


 夜の森は昼間とはまるで違う。


 木々の向こうは暗く、何がいるのか分からない。


 時折、遠くから獣の鳴き声が聞こえ、森の中で枝が折れる音もした。


 そのたびに炎牙剣へ手を伸ばし、森の方を見る。


 幸い、こちらへ近づいてくる魔物はいなかった。


 火を絶やさないよう薪を足しながら、朝まで見張りを続けた。


 ◇


 空が白み始めた頃には、さすがに目が重くなっていた。


 身体にも疲れが溜まっている。


 フェリシアはまだ眠っているようだ。


 《会員》を開く。


【保有:205P】


 回復の項目を選んだ。


【半回復 50P】


【全回復 100P】


 《全回復》を選ぶ。


【100Pを消費しました】


【全回復しました】


【保有:105P】


 眠気が消えた。


 重かった瞼も、固くなっていた肩も一気に楽になる。


「やっぱり便利だな」


 ほとんど眠っていないとは思えない。


 これなら、見張りが必要な遠征ではかなり役に立つ。


 ただ、毎回百Pを使うのはやっぱり高い。


 必要な時には使うが、普段はちゃんと寝る。それくらいがちょうどよさそうだ。


 しばらくすると、天幕の入口が開いた。


「おはようございます」


「おはようございます」


 フェリシアが外へ出てくる。


「何かありました?」


「遠くで何度か音はしましたけど、こっちには来ませんでした」


「そうですか、よかったです」


 顔を見る限り、フェリシアはしっかり眠れたようだ。


 これなら百P使った意味はある。


 二人で朝食を済ませた。


 片付けは昨日までとは比べものにならないほど早い。


 天幕、毛布、鍋、食料、水。


 順番に《収納》へ入れていく。


「本当に楽ですね」


 フェリシアが何も背負っていない自分の肩を見る。


「昨日までは、片付けた後に全部持たないといけませんでしたからね」


 必要な物はすべて《収納》の中だ。


 移動するだけでもかなり楽になる。


「今日は昨日まで調べていない方へ行きましょう」


「川の西側ですね」


「はい。そこまで見れば、一通り確認できると思います」


 三日目の調査を始めた。


 ◇


 昨日見つけた川まで進む。


 川沿いを歩き、流れが浅くなっている場所を探して向こう岸へ渡った。


 そこから西側へ進んでいく。


 この辺りも地形は比較的平らだった。


 太い木と低木は多い。


 ただ、急な斜面や深い谷は見当たらない。


 しばらく歩くと、前方の草むらが揺れた。


 ソーンプラントが四体起き上がる。


「右の二体をお願いします」


「分かりました」


 俺が左へ、フェリシアが右へ回る。


 もう森での戦いに戸惑うことはほとんどない。


 木の位置を確認して動く。


 蔓をかわし、炎牙剣を短く振った。


 一体目。


【20P獲得】


 剣を返し、二体目の茎を断つ。


【20P獲得】


 ほぼ同時に、フェリシアの《魔弾》が残りの二体を倒した。


 倒したソーンプラントを《収納》へ入れる。


 昨日、《収納》を手に入れてから倒した魔物は、使えそうな部分だけではなく、できるだけそのまま収納している。


 ギルドへ持ち帰れば、俺たちが価値に気づいていない部位まで買い取ってもらえるかもしれない。


 さらに進む。


 今度はヴァインウォーカーが二体現れた。


「一体ずつですね」


「はい」


 ヴァインウォーカーの蔓が伸びてくる。


 一本目をかわし、二本目を炎牙剣で切った。


 もう攻撃の前兆もかなり分かる。


 踏み込み、中央の太い茎へ刃を入れた。


【120P獲得】


 横を見ると、フェリシアも圧縮した《魔弾》で相手を仕留めたところだった。


 それぞれ《収納》へ入れる。


「今日も結構いますね」


 フェリシアが周囲を見る。


「昨日までより多い気がします」


「私も思いました」


 まだそれほど奥へ入ったわけではない。


 それなのに、遭遇する間隔が短い。


 少し進むと、またソーンプラント。


 さらにその先にはヴァインウォーカー。


 離れた場所を歩いている別の魔物も見えた。


「この辺りに集まってるんでしょうか」


「可能性はありますね」


 俺たちは戦うためではなく、調べるために来ている。


 魔物を見つけるたびに倒していたら、いつまで経っても調査が終わらない。


「少し高い場所を探しましょう。上から見れば何か分かるかもしれません」


「そうですね」


 周囲を探すと、木々の間に緩やかな斜面があった。


 二人で登る。


 頂上近くまで来たところで、俺たちは足を止めた。


「……あれ」


 フェリシアの声が小さくなる。


 少し先に、大きな古木が何本も集まった一帯があった。


 その周囲には、ソーンプラントやヴァインウォーカーが何体も集まっている。


 少し離れた場所には、フォレストボアらしい姿まで見えた。


「多いですね」


「はい」


 さらに目を凝らす。


 柔らかそうな地面には、大きな足跡がいくつも残っていた。


 昨日見たものと似ている。


 タイラントベアの足跡だ。


 しかも、一組だけではない。


「昨日の一体だけじゃなかったんですね」


「その可能性が高そうです」


 近くの木には、高い位置に長い爪痕も残っている。


 この周辺には、大型の魔物も複数いると考えた方がいい。


「どうします?」


 フェリシアが杖を握り直した。


「ここは手を出さないでおきましょう」


「私もその方がいいと思います」


 俺たち二人で何体倒せるかを試す必要はない。


 今回の依頼は森林調査だ。


 この一帯に多くの魔物が集まっていると分かっただけでも、十分な成果になる。


「地図に残しておきます」


 現在地と、魔物が多く確認できた範囲を書き込んでいく。


「開拓するなら、この辺りを先にどうにかしないと駄目ですね」


「大勢で討伐する必要がありそうです」


「はい。タイラントベア級も一体だけとは限りません」


 だからといって、ここから魔物が発生していると決めつけることもできない。


 ただ集まっているだけかもしれない。


 俺たちが報告するべきなのは、実際に確認できたことだ。


 この場所には魔物が多く、大型魔物の痕跡も複数ある。それだけでも開拓を考えるうえでは重要な情報になる。


「これで調べるべきところは大体見ましたね」


「戻りながら周辺も確認しましょう」


 俺たちは来た道を戻った。


 ◇


 帰り道でも何度か魔物と遭遇した。


 ソーンプラントは俺が五体を倒し、ヴァインウォーカーや残りの魔物はフェリシアが仕留めた。


【100P獲得】


【保有:365P】


【累計獲得P:42,475P】


 倒した魔物は順番に《収納》へ入れていく。


 フォレストボア。


 ヴァインウォーカー。


 ソーンプラント。


 昨日からかなりの数になっている。


「これ、ギルドで全部出したら驚かれそうですね」


 フェリシアが言った。


「受付の前では出せないですね」


「絶対無理です」


「奥に広い場所があるか聞きましょう」


 森の入口が見えてきた。


 俺たちは一度立ち止まり、三日間の調査結果を整理する。


「開拓自体はできそうですね」


「私もそう思います」


 ベルガントに近い。


 まとまった平地があり、川も流れている。


 市街地を広げる場所としての条件は悪くない。


 一方で、魔物の多さや大型魔物の存在、大量の木の伐採とその後の整地という問題もある。


「簡単な開拓じゃないですね」


「かなりの人数が必要でしょうね。魔物を減らしてからじゃないと、木を切る人たちも入れません」


「その後も伐採や整地がありますしね」


「はい。でも、できない土地ではないと思います」


 それが三日間調べた俺の結論だった。


「戻りましょう」


「はい」


 俺たちはベルガントへ向かった。


 ◇


 南門へ着いた頃には、夕方になっていた。


 城壁の中へ入る。


 三日しか離れていないのに、人の声や荷車の音が妙に懐かしく感じる。


「戻ってきましたね」


「森の中にずっといたから、余計に賑やかに感じます」


 そのまま冒険者ギルドへ向かった。


 扉を開けると、夕方のギルドには多くの冒険者がいる。


 依頼から戻ってきた者。


 受付へ討伐証明を出している者。


 酒場へ向かう者。


 いつもの受付嬢が俺たちに気づいた。


「お帰りなさい」


「ただいま戻りました」


「森林調査ですね。三日間、お疲れ様でした」


「かなり調べられました」


「では、報告をお願いできますか?」


「もちろんです。その前に、素材のことで相談があるんですが」


「素材ですか?」


「結構な量があります」


 受付嬢が俺たちを見る。


 俺もフェリシアも、大きな荷物は持っていない。


「……どこに?」


「《収納》の中です」


「収納?」


「ここだと出せないと思うので、広い場所はありますか?」


 受付嬢は一瞬、不思議そうな顔をしたあと、ギルドの奥を見る。


「解体場なら大丈夫だと思います。こちらへどうぞ」


 受付を別の職員へ任せ、俺たちをギルドの奥へ案内してくれた。


 廊下の先にある大きな扉を開ける。


 中には広い作業場があった。


 頑丈な作業台。


 解体用の刃物。


 水場。


 何人もの職員が魔物の解体をしている。


「ここなら大型の魔物でも大丈夫です」


「助かります」


 一人の男が作業の手を止めた。


「何を持ってきたんだ?」


「森で倒した魔物です」


「討伐証明だけじゃなくて?」


「ほとんどそのままです」


 男が首を傾げる。


 俺は作業の邪魔にならない場所へ移動した。


「ここに出しても大丈夫ですか?」


「ああ」


「じゃあ、まずこれから」


 《収納》を使う。


 ドンッ!


 大きなフォレストボアの死体が床へ現れた。


「……は?」


 男の動きが止まる。


 近くにいた職員たちも、一斉にこちらを見た。


「次も出します」


「ちょっと待て」


「まだあります」


 ヴァインウォーカー。


 ソーンプラント。


 昨日倒した魔物。


 今日倒した魔物。


 《収納》を手に入れてから持ち帰ったものを順番に出していく。


 作業場の一角が、魔物の死体でどんどん埋まっていった。


「まだあるんですか?」


 受付嬢まで目を丸くしている。


「あと少しです」


「これで少し……?」


 最後の魔物を出す。


 解体担当らしい男が、並べられた魔物と俺を交互に見た。


「今の、何のスキルだ?」


「《収納》です」


「《収納》?」


 男の表情が変わった。


 受付嬢も驚いた顔でこちらを見る。


「アレンさん、《収納》を使えるんですか?」


「はい」


 解体担当の男が並んだ魔物を見回した。


「収納系なんて、レア中のレアだぞ」


「そんなに珍しいんですか?」


「珍しいどころじゃない。存在するって話は知ってるが、俺は実際に使う奴を見たのは初めてだ」


 受付嬢も頷く。


「私も初めて見ました。冒険者の方が収納系のスキルを使えたら、遠征のやり方そのものが変わりますよ」


「やっぱり便利なんですね」


「大型魔物を丸ごと持ち帰れる時点で、とんでもなく便利です」


 解体担当の男がフォレストボアを見る。


「生きた魔物も入るのか?」


「生き物は無理みたいです。でも、倒した後なら入りました」


「それで十分すぎる」


 男は並んだ魔物を見渡した。


「普通なら、この大きさだと価値の高い部位だけ切って持ち帰る。

丸ごと運べるなら、今まで捨ててた部分まで全部金になる」


「そのつもりでした」


「冒険者向きなんてもんじゃないな……」


 別の職員も魔物を確認しながら近づいてくる。


「これ全部、査定するんですか?」


「お願いします」


 数人の職員が顔を見合わせた。


 解体担当の男が苦笑する。


「今日中は無理だな」


「急いでないので大丈夫です」


「明日以降になる。解体して、使える部位を分けて、それから査定だ」


「お願いします」


 男が作業場いっぱいに並んだ魔物を見る。


「しかし、これだけ丸ごと持って帰ってくる奴が今後も来るのか……。置き場所も考えないといけないな」


 どうやら《収納》は、思っていた以上に珍しいらしい。


 自分たちにとって便利なのは分かっていたが、ギルドの反応を見る限り、それだけではない。


 冒険者としてできることそのものが変わるスキルらしい。


 素材を職員たちへ任せ、受付へ戻った。


 ◇


 三日間で確認したことを受付嬢へ説明する。


 森の地形。


 川。


 魔物の種類と数。


 タイラントベア。


 魔物が多く集まっていた場所。


 大型魔物の痕跡が複数あったこと。


 木を伐採した後の土地は比較的平坦だということ。


 受付嬢は内容を一つずつ書類へ記録していく。


「かなり詳しく調べていただけたんですね」


「開拓はできると思います。ただ、先にかなりの数の魔物を討伐する必要があります」


「分かりました。伯爵家へ報告します」


 受付嬢が書類をまとめたところで、思い出したように顔を上げた。


「それと、お二人に伝言があります」


「伝言?」


「ベルガント伯爵様からです」


 フェリシアと顔を見合わせる。


「調査が終わったら、アレンさんとフェリシアさんから直接話を聞きたいとのことです」


「直接ですか?」


「はい。明日、伯爵邸へ来てほしいそうです」


 森を開拓するかどうかを決めるのは伯爵だ。


 実際に三日間歩いた俺たちから詳しく聞きたいのだろう。


「分かりました」


「明日の午前中でよろしいですか?」


「大丈夫です」


「私も大丈夫です」


「では、伯爵家へ伝えておきます」


 依頼自体はこれでほぼ終わりだ。


 残るのは明日の報告。


 ギルドを出ると、もう日が落ちかけていた。


 ◇


 銀麦亭へ戻った。


 三日ぶりの部屋。


 扉を開けると、見慣れたベッドが目に入る。


「……やっと寝られる」


 荷物らしい荷物は《収納》の中なので、片付ける必要もない。


 炎牙剣だけをいつもの場所へ置く。


 服を楽なものに替え、そのままベッドへ横になった。


 身体が柔らかい布団へ沈む。


「……これだな」


 思わず声が出た。


 《全回復》を使えば、睡眠不足の疲れまで消せる。


 一晩起きていても、朝には普通に動ける。


 便利なのは間違いない。


 それでも、疲労が消えることと、ゆっくり休むことは同じじゃないらしい。


「やっぱり、ベッドで寝るのが一番休まるな」


 百Pも使わない。


 今日は見張りも必要ない。


 そのまま目を閉じる。


 明日はベルガント伯爵への報告だ。


 それを考えていたのは、ほんの少しの間だけだった。


 すぐに眠気が勝った。


 累計獲得P=42,475P



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― 新着の感想 ―
睡眠は大事。 だけど完全回復を使い続けるならひとりで国を滅ぼせるかもなぁ。 そうでなくてもダンジョンの中で暮らせる。 人間性を捨てれば、だけど。
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