第32話 橋を落とせ
翌朝。
俺たちは再び、スコッティ公爵軍の本陣へ呼ばれていた。
大きな机には昨日と同じ戦況図が広げられている。
その横に、一通の書状が置かれていた。
赤い封蝋にはベルガント伯爵家の紋章が押されている。
「ベルガント伯から書状が届いた」
スコッティ公爵が言った。
「昨日送った手紙の返事ですか?」
俺が聞くと、公爵は首を横に振った。
「いや。君たち遊撃隊をこちらへ送り出した際、ベルガント伯が別便で出していたものらしい。今朝、本陣へ届いた」
それなら昨日の書状よりずっと前にベルガントを出ている。
公爵が書状へ目を落とす。
「ベルガントから派遣した冒険者遊撃隊について、スコッティ公爵領の防衛に必要な任務であれば、私から直接依頼して構わないそうだ。
ただし、冒険者は正規兵ではない。任務を受けるかどうかは本人たちの意思に委ねる、とある」
「伯爵らしいな」
クロードさんが小さく笑った。
「私もそれで構わん。君たちを私の兵と同じように扱うつもりはない。
任務の内容と危険性を伝える。その上で受けるかどうかを決めてもらう」
「分かりました」
クロードさんが俺たちを見る。
「俺は受けるつもりだ。みんなは?」
「問題ない」
ボルクさんが答えた。
リディアさん、セシルさん、ラウルさん、エナさんも頷く。
「俺もやります」
「私もです」
フェリシアも答えた。
「決まりだな」
クロードさんが公爵へ向き直る。
「必要な任務があれば言ってください」
「助かる」
公爵が頷いた、その時だった。
「急報!」
天幕の外から大きな声が聞こえた。
一人の騎士が飛び込んでくる。額には汗が浮かび、外では乗ってきた馬が荒い息を吐いていた。
「公爵閣下! セイル大橋西方で帝国軍に動きがあります!」
天幕の空気が一瞬で変わった。
「規模は?」
「現在確認できるだけでも千以上! さらに西から後続が続いています!」
「来たか」
公爵が戦況図へ向かう。
騎士や参謀も机を囲んだ。
「第二隊をセイル大橋へ。第四隊も続け」
「はっ!」
「橋の東岸に防衛線を構築しろ。騎兵隊は北の渡河地点を警戒。敵が大橋だけを狙うとは限らん」
「承知しました!」
机の上では数個の駒が動いただけだった。
しかし天幕の外では、伝令が走り、馬がいななき、兵士たちの声が飛び交い始めている。
小さな駒一つで、何百人もの兵が動く。
これが戦争なんだ。
「セイル大橋には主力を集中させます」
参謀が言った。
「ああ。ここは抜かせん」
公爵の指がセイル大橋の上で止まった。
そこへ、また別の騎士が駆け込んできた。
「公爵閣下! 南方の斥候から報告です!」
「何だ?」
「帝国兵の一団が南東へ進んでいます!」
「場所は?」
騎士が地図へ近づき、一点を指した。
昨日、クロードさんが警戒していた南側の道だった。
その先には、セイル川へ架かる別の橋がある。
「ラーン橋……」
参謀が呟く。
ラーン橋は木造で、セイル大橋ほど大きくない。
大量の荷馬車を一度に通すには向かないが、歩兵や騎兵なら十分に渡れる。
「数は?」
「正確には分かりません。少なくとも百以上。後続もいるようです」
「セイル大橋へこちらの主力を引きつけている間に、南から回り込むつもりか」
「ラーン橋を抜かれれば、セイル大橋の守備隊の側面へ出られます」
参謀の言葉に、公爵の表情が険しくなる。
「南へ兵を回しますか?」
「まとまった兵を今から動かせば、セイル大橋の守りが薄くなる」
公爵は数秒、地図を見つめた。
やがて顔を上げる。
「クロード」
「はい」
「早速だが、頼みたい任務がある」
「内容は?」
公爵の指がラーン橋を叩いた。
「橋を落としてほしい」
クロードさんの目が細くなる。
「帝国軍がラーン橋を渡り切る前に破壊する。正規軍を南へ割く余裕がない。
それに、今から最も早く現場へ行けるのは君たちだ」
「敵との接触は?」
「避けられんだろう。数百まで増える可能性もある」
クロードさんが俺たちを見る。
「どうする?」
「行きます」
俺はすぐに答えた。
他のみんなも同じだった。
「引き受けます」
「頼む」
公爵はラーン橋を指したまま言った。
「任務は一つ。帝国軍が東へ抜ける前に、ラーン橋を破壊してくれ」
◇
本陣を出ると、馬が用意されていた。
「……すみません」
フェリシアが申し訳なさそうに手を上げる。
「私、馬に乗れません」
「乗ったことないんですか?」
「ありません。普通はそんなに機会ありませんよ」
俺はヴァルディス家にいた頃、馬術も教え込まれていた。
でも、誰もが乗れるわけじゃない。
幸い、フェリシア以外は全員騎乗できるらしい。
「ならアレンの後ろに乗れ」
クロードさんが言った。
「俺ですか?」
「お前なら乗れるだろ」
「はい」
「だったら一番安全だ」
馬へ乗り、フェリシアへ手を伸ばす。
「手を」
「はい」
腕を取って引き上げると、フェリシアが俺の後ろへ座った。
「大丈夫ですか?」
「た、多分」
「落ちそうだったら俺を掴んでください」
「分かりました」
「行くぞ!」
クロードさんが馬を走らせた。
俺も続く。
「きゃっ」
腰に腕が回った。
「す、すみません!」
「大丈夫です!」
振り返る余裕はない。
七頭の馬が南へ向かって街道を駆ける。
蹄が土を叩き、風が顔へぶつかる。林も畑も、避難する人々の荷車も次々と後ろへ流れていった。
◇
「止まって」
しばらく走ったところで、エナさんが馬を止めた。
俺たちも速度を落とす。
「どうした?」
「橋が見える」
ラーン橋まではまだかなり距離がある。
俺には川が見える程度だった。
エナさんは少し高くなった場所へ上がり、目を細める。
「《遠目》」
そんなスキルも持っていたのか。
数秒後、エナさんの表情が変わった。
「……遅かった」
「どういう意味だ?」
クロードさんが聞く。
「もう渡ってる」
「何人?」
「四十から五十くらい」
「こっち岸に?」
「うん。騎兵七。残りは歩兵」
「橋の上は?」
「まだ渡ってる。向こう岸には二百以上。もっと後ろにもいるかも」
「弓兵は?」
「いる」
「魔術師?」
「杖を持ってるのが六……いや、七人」
クロードさんがすぐに馬へ戻る。
「急ぐぞ!」
◇
ラーン橋が見えた。
太い木材を何本も組み合わせて作られた、大きな木造橋だ。荷馬車二台がすれ違えるほどの幅がある。
その東岸には、すでに帝国兵が展開していた。
本当に五十人以上いる。
騎馬兵もいる。
橋の上にも兵士が並び、次々にこちら側へ渡ってきていた。
「このままだと増えるわ!」
リディアさんが叫ぶ。
「リディア! 橋の向こうを散らせ!」
「分かった!」
「フェリシア! 弓兵と魔術師を優先に攻撃するんだ!いけるか!?」
「はい!」
リディアさんが杖を向ける。
火玉が飛び、橋の西詰めで爆発した。
ドンッ!
「敵襲!」
帝国兵が散る。
「《魔弾》!」
フェリシアの魔弾が飛ぶ。
一人の弓兵が腕を押さえて弓を落とす。
続いて杖を構えていた魔術師。
「ぐっ!」
魔術師の一人に命中し、詠唱が止まった。
橋を渡る帝国兵の流れが一瞬だけ鈍る。
しかし、敵もすぐに反応した。
「弓兵! 撃て!」
「矢!」
エナさんが叫ぶ。
「下がれ!」
ボルクさんが大盾を構えた。
ガガガガッ!
何本もの矢が盾へ突き刺さる。
地面にも次々と矢が落ちた。
「魔法も来る!」
対岸で光が集まる。
火球が飛んできた。
ドンッ!
地面が爆ぜ、土煙が上がる。
さらにこちら岸の帝国兵まで動き出した。
「魔術師を潰せ!」
「行け!」
十人ほどの歩兵がリディアさんたちへ向かって走る。
俺は炎牙剣へ手をかけた。
「先にあいつらを――」
「違う!」
クロードさんが言った。
「橋が先だ」
「でも五十人以上います!」
「この五十人を倒してる間に百人渡られたら終わる」
クロードさんが橋を見る。
「俺たちの任務は敵を倒すことじゃない。橋を落とすことだ」
すぐに全員へ指示を飛ばす。
「リディア! 橋の東詰めを撃て!」
「え?」
「俺たちが通る道を作れ!」
「分かった!」
火球が飛ぶ。
帝国兵の前で爆発し、何人かが左右へ飛び退いた。
「ボルク!」
「おう!」
「あそこを広げろ!」
「任せろ!」
ボルクさんが大盾を前へ出して突進する。
「どけぇ!」
ドンッ!
帝国兵二人が弾き飛ばされた。
敵の列が割れる。
「ラウル! ボルクの右!」
「了解!」
「フェリシアは弓兵と魔術師を止めろ! エナは側面と対岸を見ろ! セシルは後ろで待機!」
「はい!」
最後にクロードさんが俺を見る。
「アレン!」
「はい!」
「今だ!」
クロードさんが走る。
俺もその後を追った。
◇
「止めろ!」
前へ出た騎兵がこちらへ突っ込んできた。
馬上の兵士が長槍を突き出す。
身体を横へずらし、槍をかわす。
炎牙剣を振った。
「ぐっ!」
兵士が馬から落ちた。
【人間討伐を確認しました】
【130P獲得】
表示に構わず走る。
歩兵が一人、クロードさんの横から斬りかかろうとする。
間へ入った。
剣を受け、押し返す。
炎牙剣を振る。
【人間討伐を確認しました】
【70P獲得】
「止まるな!」
「はい!」
クロードさんも前にいた帝国兵を一太刀で斬り伏せる。
もう一人が槍を突き出す。
クロードさんは身体を半歩ずらしただけだった。
槍を逸らし、そのまま相手の懐へ入る。
一閃。
兵士が倒れた。
速い。
俺みたいに力で押しているわけじゃない。
相手が動いた時には、もう次の位置へ剣がある。
「アレン! 橋だ!」
「はい!」
橋へ入る。
クロードさんが構造を見回す。
太い支柱と主桁がいくつも組み合わされている。
「全部壊す必要はない」
二本の主桁を指す。
「左右のここを落とす。中央が持たなくなる」
「分かりました」
主桁はかなり太い。
普通なら何人いても簡単にどうにかできるものじゃない。
クロードさんが俺を見る。
「アレン。できるか?」
「できます」
一瞬だけ、クロードさんが笑った。
「そうか。ならやるぞ」
「はい!」
炎牙剣を木材へ振り下ろす。
ガンッ!
木片が飛ぶ。
もう一撃。
「橋を壊す気だ!」
「止めろ!」
対岸から声が上がる。
弓兵がこちらを狙った。
「撃て!」
矢が飛ぶ。
「《魔弾》!」
フェリシアの魔弾が一人の腕を撃ち抜く。
それでも何本かはこちらまで届いた。
一本がクロードさんの肩をかすめる。
「クロードさん!」
「構うな!」
クロードさんが剣を置いた。
「時間がない」
主桁へ両手をかける。
「《剛体》」
腕と肩に力が入った。
ミシッ。
太い木材が軋む。
「アレン!」
「はい!」
俺も反対側の主桁へ手をかける。
「いくぞ!」
二人で力を込める。
ギシギシと橋全体が鳴った。
「もっとだ!」
「はい!」
さらに力を込める。
バキッ!
大きな亀裂。
「もう一度!」
バキバキバキッ!
「崩れるぞ!」
橋が大きく傾く。
「アレン! 離れろ!」
二人で東岸へ跳ぶ。
直後。
ゴゴッ――!
主桁が折れ、橋の中央部が川へ落ちた。
大きな水柱が上がる。
橋上にいた帝国兵たちは慌てて両岸へ退避し、何人かは転倒しながら西岸へ戻っていった。
これで後続は渡れない。
「橋が!」
「退路がない!」
東岸へ渡っていた帝国兵たちが動揺する。
クロードさんは剣を拾った。
「これで増えない」
そして俺たちを見る。
「第一班! ここからこっち側を片づける!」
◇
「東へ抜けろ!」
帝国側の指揮官が叫んだ。
「ここを突破すればまだ助かる! 騎兵、前へ!」
残った騎兵が動き出す。
歩兵も一斉に押し寄せた。
橋が落ちたからといって、敵が戦意を失ったわけじゃない。
むしろ必死だった。
「アレン! 騎兵を止めろ!」
「はい!」
一騎目。
正面から来る槍をかわし、馬の横へ入る。
兵士の鎧を掴んで引きずり下ろした。
着地する前に炎牙剣を振る。
【人間討伐を確認しました】
【55P獲得】
二騎目。
こっちは俺を無視して横へ抜けようとする。
狙っているのはリディアさんたちだ。
「行かせない!」
追いつく。
馬より先へ出て、進路へ入る。
「なっ!?」
兵士が槍を振るう。
受け流して斬った。
【人間討伐を確認しました】
【90P獲得】
「魔術師を狙え!」
敵指揮官の声。
歩兵六人がボルクさんの横へ回った。
「フェリシアさん!」
走る。
一人目。
剣を受けて腹へ斬り返す。
【人間討伐を確認しました】
【120P獲得】
二人目が横から来る。
槍を掴んで引く。
「うわっ!」
体勢が崩れたところへ剣を振った。
【人間討伐を確認しました】
【65P獲得】
三人目。
他とは動きが違う。
俺の剣を避けた。
「死ね!」
速い。
でもクロードさんほどじゃない。
踏み込みをずらして脇へ回る。
一撃。
【人間討伐を確認しました】
【150P獲得】
「アレンさん!」
フェリシアの声。
振り返る。
別の兵士がフェリシアへ剣を振り上げていた。
「っ!」
一気に距離を詰める。
炎牙剣を振った。
【人間討伐を確認しました】
【80P獲得】
「大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「後ろにいてください!」
前を見る。
敵がまだ来る。
クロードさんも中央で戦っていた。
三人に囲まれている。
一人目の斬撃を避ける。
返す剣で首元。
二人目の槍を払う。
一歩入って斬る。
三人目が背後へ回ろうとする。
振り返りもしない。
身体を沈めて剣をかわし、そのまま後ろへ剣を突き出した。
兵士が崩れ落ちる。
三人。
ほんの短い間だった。
「押せ!」
敵指揮官が怒鳴る。
「数ではこちらが上だ!」
その言葉通りだった。
敵はまだ多い。
十人以上が一気にボルクさんへ押し寄せる。
「ぐっ!」
大盾が後ろへ押される。
「ボルク!」
ラウルさんが横から一人を突く。
それでも止まらない。
「ボルク、下がれ!」
クロードさんの声。
「おう!」
ボルクさんが下がる。
帝国兵が一気に前へ出る。
密集した。
「リディア! 今だ!」
「分かってる!」
火球が飛ぶ。
ドンッ!
「ぐあっ!」
兵士たちが吹き飛ぶ。
その隙間へクロードさんが入る。
一人。
二人。
剣が止まらない。
俺の目の前にも兵士が来る。
胴を横から一閃。
【人間討伐を確認しました】
【95P獲得】
今は数字を確認している余裕がない。
剣。
槍。
怒号。
血の臭い。
人を斬るたびに表示だけが視界へ現れては消えていく。
【人間討伐を確認しました】
【110P獲得】
「左!」
エナさんの声。
振り向く。
二人。
一人の剣を受ける。
もう一人が横から槍。
身体を沈める。
槍が頭の上を通る。
最初の兵士を押し返して斬る。
【人間討伐を確認しました】
【60P獲得】
槍の兵士がもう一度来る。
踏み込んだ。
相手の懐へ入る。
炎牙剣を振る。
【人間討伐を確認しました】
【180P獲得】
「……!」
高い。
でも考えるのは後だ。
「アレン!」
クロードさんが呼ぶ。
「はい!」
「右を三十秒持たせろ!」
クロードさんの視線の先に、帝国側の指揮官がいた。
まだ命令を飛ばし続けている。
「分かりました!」
クロードさんが敵指揮官へ向かう。
その分、俺の方へ敵が集まった。
三人。
いや、四人。
「行かせるな!」
剣と槍が同時に来る。
炎牙剣で剣を受ける。
槍は身体をずらしてかわす。
三人目が背後へ回る。
蹴った。
「ぐっ!」
兵士の身体が吹き飛び、後ろの一人まで巻き込む。
倒す必要はない。
今はここを抜かせなければいい。
前を見る。
クロードさんが敵指揮官と剣を合わせていた。
ガンッ!
相手も強い。
一撃。
二撃。
指揮官がクロードさんへ踏み込む。
クロードさんは剣を受けなかった。
半歩ずれる。
敵の剣が空を切る。
その瞬間、クロードさんの剣が走った。
「ぐっ……!」
指揮官が膝をつく。
それでも剣を上げようとする。
もう一閃。
男が倒れた。
「隊長!」
帝国兵の動きが止まった。
クロードさんがすぐに叫ぶ。
「聞け!」
戦場に声が響いた。
「橋は落ちた! 指揮官も死んだ!」
帝国兵たちが崩れたラーン橋を見る。
対岸に味方はいるが来られない。
東へ抜けようとしていた騎兵も、ほとんど動けなくなっている。
こちら側では、すでに二十人以上が倒れていた。
「もう援軍は来ない!」
クロードさんが剣を構える。
「武器を捨てろ!」
誰も動かなかった。
「降伏するなら殺さない!」
川の音だけが聞こえた。
やがて。
カラン。
一人の兵士が剣を落とした。
それを見た別の兵士も槍を置く。
さらに一人、二人と続き、残っていた帝国兵たちは次々に武器を地面へ置いていった。
「……終わった?」
フェリシアが小さく言う。
「ああ」
クロードさんが剣を下ろした。
「ここはな」
「ここは?」
クロードさんは崩れたラーン橋を見る。
「俺たちが勝ったわけじゃない。任務を達成しただけだ」
公爵から受けた任務は、敵を全滅させることじゃない。
橋を落として、南からの侵攻を止めることだった。
俺なら目の前の敵を何人倒せるかばかり考えていたかもしれない。
クロードさんは違う。
敵の数だけじゃない。
橋。
地形。
味方の位置。
敵の指揮官。
その全部を見ながら戦っていた。
強いだけじゃ、戦場では足りない。
少しだけ、その意味が分かった気がする。
「クロード」
エナさんの声がした。
いつもより低い。
「どうした?」
エナさんは西を見ていた。
しばらく黙ったまま遠くを見つめる。
「……来た」
「何が?」
「帝国軍本隊」
俺も西を見る。
最初は何も分からなかった。
やがて遠くの街道に大きな土煙が見えてきた。
その中にいくつもの軍旗と、数え切れないほどの槍が並んでいる。
「どこへ向かってる?」
クロードさんが聞く。
「北東」
エナさんが答えた。
「セイル大橋」
ラーン橋は落とした。南からの進路は塞いだが、帝国軍本隊との戦いはこれからだ。
戦闘が終わってから、《会員》を開く。
【会員ランク:ゴールド】
【保有:2,690P】
【累計獲得P:27,500P】
「……千二百?」
今回だけで、千を超えている。
でも、その一つ一つは人間を斬った結果だ。
ダンジョンを攻略しているときの様な高揚感はない。
少しだけ画面を見てから、《会員》を閉じた。
【本日の獲得P:1,205P】
【保有:2,690P】
【累計獲得P:27,500P】
累計獲得P=27,500P
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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