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《剣聖》になった弟に追放された俺のスキルは《会員》でした ~ハズレスキルだと思っていたら、ポイントで好きな能力を買えるらしい~  作者: アカメノコバチ
第3章 はじめての戦場

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第28話 一人で食い止める

「ここから先には行かせない」


 炎牙剣を構える。


 目の前には帝国兵が十三人。


 対する俺は一人。


「…………」


 帝国兵たちは、すぐには動かなかった。


 俺の顔を見る。


 剣を見る。


 そして、互いに視線を交わす。


「……こいつ一人か?」


「ああ」


 その後ろから声が飛んだ。


「構うな! 三人でそいつを押さえろ! 残りは村へ行け!」


 ほかの兵士より上等な鎧を着た男だ。


 どうやら、こいつらの隊長らしい。


 村では避難が続いている。


 荷物を抱えて走る人。


 馬車へ子供を乗せる母親。


 老人の手を引く若者。


 まだ全員は逃げ切れていない。


「行け!」


 三人が前へ出た。


 剣を持った男。


 槍を構えた男。


 もう一人も剣。


 同時に走ってくる。


「……来るか!」


 剣を握る手には、まだ人を斬った感触が残っている。


 それでも、後ろには逃げ切れていない村人がいる。


 今は守ることだけ考える。


「死ね!」


 一人目の剣が振り下ろされた。


 身体をずらす。


 刃が肩の横を抜けた。


 同時に槍が迫る。


 炎牙剣を横から当てた。


 ガキンッ!


「なっ!?」


 槍が大きく逸れる。


 そのまま一歩。


 一人目の懐へ入った。


 炎牙剣を振るう。


「がっ……!」


 男が倒れた。


【人間討伐を確認しました】


【40P獲得】


 表示を見る暇はない。


「この!」


 槍兵がもう一度突いてくる。


 避ける。


 槍の穂先が通り過ぎた。


 柄を掴む。


「え?」


 引いた。


 帝国兵の身体が前へ崩れる。


 その内側へ入り込む。


 一閃。


「ぐっ……!」


【人間討伐を確認しました】


【55P獲得】


「…………!」


 三人目が足を止めた。


 俺と。


 倒れた二人を見る。


「なんだ……こいつ……」


 剣を構えている。


 だが、さっきまでの勢いはない。


「う、うおおおっ!」


 無理やり声を上げて斬りかかってきた。


 炎牙剣を振るう。


 相手の剣を横から強く打った。


「っ!」


 剣が手から飛ぶ。


 続けて腹を蹴った。


「ぐあっ!」


 男の身体が地面を転がる。


 起き上がろうとして、そのまま腹を押さえてうずくまった。


 追撃はしない。


 戦えないなら、それでいい。


「……嘘だろ」


 誰かが呟いた。


 帝国兵たちの顔から、最初の余裕が消えている。


「二人……一瞬で……」


「囲め!」


 隊長が怒鳴った。


「一人ずつ行くな!」


 帝国兵たちが広がる。


 右。


 左。


 正面。


「…………」


 俺を倒すつもりじゃない。


 一人が右側から村へ向かって走り出した。


 もう一人は左。


「行かせない!」


 右へ走る。


「なっ!?」


 帝国兵の前へ出る。


「どけ!」


 振られた剣をかわす。


 一撃。


【人間討伐を確認しました】


【35P獲得】


 すぐ振り返る。


 左側。


 もう一人が村人の方へ走っている。


 地面を蹴った。


「早く行け!」


 帝国兵が叫ぶ。


 だが。


「え――」


 男の前へ回り込む。


 帝国兵が目を見開いた。


「さっきまで向こうに……」


 剣が来る。


 避ける。


 炎牙剣を返した。


【人間討伐を確認しました】


【80P獲得】


 男が倒れる。


 すぐに村を見る。


 まだ誰も抜けていない。


「…………」


 敵を追うんじゃない。


 村人と帝国兵の間にいる。


 クロードさんに教えられた。


 相手がどこへ行きたいのか見ろ。


 それなら行きたい場所へ先に行けばいい。


「こんなの聞いてないぞ……!」


 帝国兵の一人が後ずさった。


「こいつ一人で何人やった!?」


「黙れ!」


 隊長が怒鳴る。


「三人同時に行け! 子供一人なら死角はある!」


「……分かりました!」


 三人が動く。


 中央に槍。


 左右に剣。


 今度は同時だ。


「行け!」


 三方向から来る。


 槍が真っすぐ伸びてきた。


 身体を横へ。


 穂先をかわす。


 右から剣。


 さっきみたいに炎牙剣で受ける。


 ガキンッ!


 左からも刃が来る。


「っ!」


 身体を捻った。


 腹のすぐ横を剣が通り抜ける。


 一人ずつ来てくれるわけじゃない。


 当然だ。


 もう一度、槍。


 今度は前へ出る。


「なに!?」


 穂先より内側へ入り込む。


 槍兵の目が見開いた。


 炎牙剣を振った。


【人間討伐を確認しました】


【60P獲得】


「くそっ!」


 右から剣士が来る。


 振り下ろされた剣を横へ弾く。


 そのまま踏み込んだ。


【人間討伐を確認しました】


【50P獲得】


 残った一人が横から剣を振る。


 炎牙剣を合わせた。


 ガンッ!


 相手の剣が宙を舞う。


「……っ!」


 胸元を掴む。


 そのまま地面へ投げた。


「ぐっ!」


 帝国兵が背中を打って動きを止める。


 六人。


 俺が斬った。


 ほかに二人が武器を失い、地面に倒れている。


 風が吹き抜けた。


 舞い上がった土埃の向こうから、鉄のような血の臭いが漂ってくる。


 さっきまで次々と聞こえていた怒声が、一瞬だけ途切れた。


「…………」


 帝国兵たちの顔から、完全に余裕が消えていた。


「……化け物かよ」


 小さな声が聞こえた。


 今、動けるのは五人。


 そのうち一人は隊長だ。


 俺は村を見る。


 避難は進んでいる。


 あと少し。


「隊長!」


 帝国兵の一人が叫んだ。


「こいつは無理です!」


「…………」


 隊長が俺を見る。


 次に、村を見る。


 そして。


「……相手をするな」


「え?」


「散れ!」


 残った四人の兵士が一斉に隊長を見る。


「全員、別方向から村へ入れ! こいつ一人じゃ全部は止められん!」


「!」


 まずい。


「行け!」


 四人が一斉に走った。


 右。


 左。


 正面。


 さらに大きく外側を回る一人。


 間隔が広い。


「っ!」


 右へ走る。


 一人の前へ回り込む。


「どけ!」


 剣が振られた。


 かわす。


 相手の剣を弾き、その足を払う。


「ぐっ!」


 帝国兵が地面を転がった。


 すぐに左を見る。


 別の兵士が走っている。


 地面を蹴る。


 追いつける。


 でも。


 そのさらに向こう。


「……!」


 もう一人が馬車へ向かっている。


 荷台には子供がいる。


 俺自身が負けるわけじゃない。


 一人なら追いつける。


 二人でも止められる。


 でも、全部同時には無理だ。


「くそっ!」


 走ろうとした。


 そのとき。


 馬車へ向かっていた帝国兵が剣を振り上げる。


「《魔弾》!」


 光が走った。


「ぐっ!」


 帝国兵の手首に命中する。


 剣が地面へ落ちた。


「……!」


 振り返る。


 杖を構えたフェリシアがいた。


「フェリシアさん!」


「そっちは任せてください!」


 もう一人。


 左から村へ抜けようとしている。


「《魔弾》!」


 光が飛んだ。


 今度は膝。


「がっ!」


 帝国兵が地面へ倒れる。


 膝を押さえ、その場から動けなくなった。


「……すごい精度ね」


 追いついてきたリディアが呟く。


 フェリシアは杖を次の敵へ向けたまま答えた。


「狙うのは、得意ですから」


 声は大きくない。


 でも、迷いもなかった。


「助かりました!」


 これで、散った四人のうち三人は止まった。


 残る一人。


 だが。


 その兵士もこちらへ向かってくる第一班を見て、足を止めていた。


「…………」


 逃げるか。


 戦うか。


 迷っている。


 そのとき。


「魔術師を狙え!」


 隊長の声が飛んだ。


「!」


 フェリシアを見る。


 隊長が走っている。


 俺じゃない。


 フェリシアへ。


 ほかの帝国兵より速い。


 フェリシアは倒した兵士へ注意を向けている。


「フェリシアさん!」


 隊長が剣を振り上げた。


「死ね!」


 間に合わ――。


 キンッ!


 金属音が響いた。


「なっ!?」


 隊長の剣が止まる。


 その前に、一人の剣士が立っていた。


「クロードさん!」


 隊長が慌てて後ろへ下がる。


「くそっ!」


 剣を振るう。


 クロードは半歩だけ動いた。


 刃が空を切る。


 そのまま一歩。


 一閃。


「がっ……!」


 隊長の身体が止まった。


 剣が手から落ちる。


 そのまま地面へ崩れた。


「隊長……」


 最後まで立っていた帝国兵の顔色が変わった。


「アレン!」


 ラウルが槍を構えながら走ってくる。


「遅くなった!」


 その横にはボルク。


「村人の前は俺が塞ぐ!」


 大盾を地面へ立てる。


 ドンッ!


「ここから先は通さんぞ!」


 リディアが杖を上げる。


「《火矢》!」


 炎が地面を走り、帝国兵の退路を塞いだ。


 エナも森側へ回っている。


「逃げても追うよ」


 短剣を構える。


 セシルは迷わず村人たちの方へ走った。


「怪我をしている方はこちらへ!」


「…………」


 残った帝国兵が周囲を見る。


 隊長は倒れた。


 ほかの仲間も全員、倒れているか動けなくなっている。


 前には俺とクロードさん。


 後ろには炎。


 横にはラウルとエナ。


 村人の前にはボルク。


 さらに魔術師が二人。


 男の手から剣が落ちた。


 カラン。


「……降参する」


 クロードが男を見る。


「抵抗するな」


「……分かった」


 戦いが終わった。


「…………」


 周囲を見る。


 折れた武器。


 土へ染み込んだ血。


 風が流れるたび、焦げた家の臭いと血の臭いが混じって鼻を刺した。


 その向こうでは、馬車が東へ動き始めている。


 母親に抱かれた子供。


 老人の手を引く若者。


 傷ついた人を支える村人。


 みんな、生きている。


「…………」


 守れた。


「アレン」


 クロードがこちらへ歩いてくる。


「はい」


「怪我は?」


「ありません」


「そうか」


「でも……」


「なんだ?」


「すみません。全部は止められませんでした」


「…………」


 クロードが俺を見る。


「何言ってる」


「え?」


 村の方へ顎を向けた。


「俺たちが来るまで、一人で持たせた。それで十分だ」


「でも、フェリシアさんが来なかったら――」


「だから班なんだ」


「…………」


「一人で全部やる必要はない」


 その言葉に、少しだけ力が抜けた。


「いやいや」


 ラウルがこちらへ来る。


「十分どころじゃないだろ」


「何がです?」


「俺たちが着いた時、お前一人で何人相手にしてたんだよ」


「えっと……」


 周囲を見る。


 戦っている最中は数える余裕なんてなかった。


「数えてないのかよ」


「戦っていたので」


「普通はそうなんだけどさ……」


 ラウルが倒れている帝国兵たちを見る。


 それから俺を見る。


「やっぱりお前、Cランクの十五歳じゃないだろ」


「Cランクの十五歳ですよ」


「そういう意味じゃねえよ」


 エナが小さく息を吐いた。


「諦めた方がいい」


「何を?」


「アレンを普通だと思うこと」


「……そうだな」


 ボルクまで頷いた。


「アレンさん」


 フェリシアが近づいてくる。


「怪我、本当にありませんか?」


「はい。大丈夫です」


 俺もフェリシアを見る。


「フェリシアさんこそ」


「私は大丈夫です」


「助かりました」


 あの一発がなかったら、村人へ辿り着いた帝国兵がいたかもしれない。


 フェリシアが小さく首を振る。


「一緒の班ですから」


「……はい」


 その通りだ。


 俺一人で戦っているわけじゃない。


 ◇


 避難が再開された。


 生き残った帝国兵たちは縄で縛られ、ボルクとラウルが見張っている。


 少し離れた場所で、俺は《会員》を開いた。


【会員ランク:ゴールド】


【保有:1,205P】


【累計獲得P:25,915P】


「千二百五……」


 かなり増えた。


 今日だけで何人もの帝国兵を倒した。


 数字だけを見れば、大きく増えている。


「…………」


 でも。


 その数字が何を倒して増えたものなのかは分かっている。


 表示を消した。


 今は、それ以上考えないことにした。


「クロード」


 エナの声がした。


 振り返る。


 倒した隊長の荷物を調べていたエナが、一枚の紙を広げている。


「どうした?」


「地図」


 クロードたちが集まる。


 俺とフェリシアも近づいた。


 地図には街道や村の位置が描かれている。


「ここが今いる村ね」


 リディアが指差した。


「ああ」


 その場所には小さな印がついていた。


 でも。


「ほかにもある」


 エナが言う。


 今いる村から南西。


 さらに西。


 北西にも。


 複数の集落に印がついている。


「これは……」


 フェリシアが地図を見る。


 クロードの表情が険しくなった。


「この村だけじゃないな」


「帝国兵が向かう場所ですか?」


 俺が聞く。


「おそらく」


 クロードが西側の印を指で追っていく。


「俺たちが捕まえた連中以外にも、何隊も入り込んでる可能性がある」


「…………」


 一つの村を守れば終わりじゃない。


 帝国軍は、もっと広い範囲へ入り込んでいる。


 クロードが地図を畳んだ。


「村の避難が終わったら、集結拠点へ戻る」


「はい」


「この地図も持ち帰る。すぐ報告が必要だ」


 西を見る。


 ここから先にも。


 まだ帝国兵がいる。


 累計獲得P=25,915P



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
元貴族で騎士系出身のわりに敵国のしかも侵略してきた兵士倒しただけなのになんでそんなにグダグダ言ってんの? 平民ならともかく貴族って敵から領民を守るのが義務でしょ? 敵っていうのは魔物だけじゃないよ?む…
帝国兵の行動がまるで意味不明ですね。小隊規模くらいの人数なら偵察任務程度が普通で、村を襲うには少なすぎると思いますが…… わざわざ村人数人を殺すために部隊壊滅させるくらいなら、情報を持って撤収する方が…
面白い!更新も早くて毎回確認して読んでます。進歩が速くてどんどん強くなっているのでワクワクしますね。更にどんな展開になっていくのか?楽しみです。
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