第23話 領主からの依頼
十二階へ通うようになってから、さらに二日が経った。
依頼を受けてはダンジョンへ潜り、魔物を倒して戻る。
二日間で獲得したのは二千二百P。
【累計獲得P:24,200P】
【保有ポイント:4,490P】
《魔力操作》まで、あと五百十P。
そして三日目。
俺とフェリシアは、再び十二階にいた。
今日の依頼対象であるメタルスコーピオンが、岩陰から姿を現す。
「来ます」
フェリシアが杖を構えた。
「俺がやります」
炎牙剣を抜く。
メタルスコーピオンの尾が飛んできた。
後ろへかわす。
そのまま懐へ入った。
柄の魔石を起動する。
ボッ!
炎をまとった刃を、甲殻の継ぎ目へ振り下ろす。
ザンッ!
「シャアアッ!」
体勢が崩れた。
もう一撃。
メタルスコーピオンが地面へ倒れる。
【1,000P獲得】
【累計獲得P:25,200P】
【保有ポイント:5,490P】
「……貯まった」
「五千Pですか?」
「はい」
炎牙剣を鞘へ戻し、その場で《会員》を開いた。
「ここで買うんですか?」
「せっかく貯まったので」
「宿まで待たないんですね」
「待つ理由もないでしょう?」
固有スキル一覧を開く。
【《魔力操作》 5,000P】
【魔力を素早く、正確に扱う固有スキル】
選択する。
【《魔力操作》を購入しますか?】
【必要ポイント:5,000P】
決定した。
【5,000Pを消費しました】
【固有スキル《魔力操作》を習得しました】
【保有ポイント:490P】
「また一気になくなりましたね」
「使うために貯めてますから」
《会員》を閉じる。
すぐに違いが分かった。
「……これか」
「何か変わりました?」
「魔力が分かります」
身体の中にある魔力へ意識を向ける。
右手へ。
意識した分だけ、魔力が集まった。
「おお……」
今度は左手へ。
同じように動く。
「どうです?」
「思った場所へ、狙った量だけ動かせます」
「魔法も使えるんですか?」
「試してみます」
右手へ魔力を集め、前へ向けた。
「…………」
何も起こらない。
「駄目ですね」
「魔力を動かせるのと、魔法を使えるのは別なんですね」
「みたいです」
それでも、今までよりずっと細かく魔力を扱える。
そして、これを買った目的はもう一つある。
「フェリシアさん」
「はい?」
「《付与》も試してみましょう」
《付与》を開く。
【スキル付与対象】
【共有メンバー】
【フェリシア・ロート】
「共有メンバー?」
さらに表示が続いた。
【スキル付与は《共有》に登録されたメンバーのみ可能です】
【共有メンバーから解除された場合、付与されたスキルも解除されます】
「なるほど」
「誰にでも渡せるわけじゃないんですね」
「その方が分かりやすいですね」
フェリシアは今も《共有》メンバーだ。
対象を選ぶ。
【付与可能スキル】
【《魔力操作》】
「出ました」
「お願いします」
《魔力操作》を選択する。
【フェリシア・ロートへ《魔力操作》を付与します】
決定した。
「……あ」
フェリシアが自分の手を見る。
「分かります?」
「はい。今までと全然違います」
杖を前へ向けた。
「普通の魔弾から試します」
「お願いします」
「《魔弾》!」
杖先から光弾が飛び、岩壁へ当たった。
バシッ!
「普通に撃つ分には、あまり変わらないですね」
「高出力は?」
「やってみます」
フェリシアが杖を構え直した。
杖先へ光が集まり始める。
「……早い」
以前より明らかに速い。
「もういけます」
「もう?」
「はい」
杖を向ける。
「《魔弾》!」
ドンッ!
高出力の光弾が岩壁へ直撃した。
小さな岩片が飛び散る。
フェリシアが杖先を見る。
「すごく集めやすいです」
「威力は?」
「大きくは変わってないと思います。でも、必要な量だけ集めるのがずっと楽です」
「高出力を使いやすくなったってことですね」
「はい」
フェリシアが嬉しそうに杖を握る。
「これなら実戦でもかなり違います」
五千P。
貯めた甲斐はあったな。
◇
その日の探索を終え、ベルガントへ戻った。
冒険者ギルドでメタルスコーピオンの討伐証明を提出する。
「確認しました。依頼達成です」
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【累計獲得P:25,300P】
【保有ポイント:590P】
手続きを終えて受付を離れる。
「……何だ?」
改めて周囲を見て気づいた。
いつもより明らかに人が多い。
受付前だけではない。
食堂にも、壁際にも、武装した冒険者が集まっている。
「今日は混んでますね」
「何かあったんでしょうか」
周囲を見回す。
その中に、見覚えのある四人組がいた。
「クロードさん」
《銀狼》だ。
クロードもこちらに気づく。
「アレンか。フェリシアも一緒だな」
「何かあったんですか?」
「なんだ、まだ知らないのか?」
「何をですか? 今、ダンジョンから戻ったところなんです」
「なら知らなくても仕方ないか」
クロードが受付の方を見る。
「領主から依頼が出た」
「領主?」
「ベルガント伯爵だ」
フェリシアが目を瞬いた。
「伯爵様から、冒険者にですか?」
「ああ。しかも一組や二組じゃない」
改めてギルド内を見る。
「これだけの人数を?」
「そうだ」
「何の依頼なんです?」
「詳しい話は領主館でするらしい」
そのとき、受付から声が飛んだ。
「Cランク以上で、伯爵家からの共同依頼へ参加される方はこちらへお願いします!」
冒険者たちが動き始める。
「Cランク以上……」
俺たちも対象だ。
受付へ向かう。
いつもの受付嬢が忙しそうに書類を確認していた。
「あ、アレンさん、フェリシアさん。ちょうどよかったです」
「伯爵家の依頼って何ですか?」
「私たちも詳細までは聞いていないんです」
受付嬢が一枚の依頼書を見せる。
【ベルガント伯爵家 共同依頼】
【対象:Cランク以上の冒険者】
【集合場所:ベルガント伯爵邸】
【詳細:領主館にて説明】
「報酬もまだ書いてないですね」
「説明を聞いたあとで、参加するかどうか決めて構わないそうです」
「なるほど」
フェリシアを見る。
「行ってみます?」
「はい。これだけの人数を集める理由も気になります」
「俺も気になるので行きましょう」
参加希望者として名前を記入した。
◇
夕方。
俺たちは大勢の冒険者とともに、ベルガントの中心部を歩いていた。
先頭には伯爵家の兵士がいる。
《銀狼》の姿もあった。
周りを見れば、見たことのない冒険者ばかりだ。
大剣を背負った男。
全身鎧の女。
何本もの短剣を腰へ差した小柄な男。
これまでダンジョンですれ違った冒険者とは、雰囲気が違う。
ベルガントの中心へ近づくにつれ、建物も大きくなっていった。
やがて前方に高い石壁が見えてくる。
「あれですか?」
「領主館ですね」
広い門。
その奥には、三階建ての大きな館が建っている。
ヴァルディス家の屋敷とは造りが違うが、領主の館としては見慣れた規模だった。
「アレンさん、全然緊張してませんね」
「家を出るまでは、こういう場所で暮らしてましたから」
「あ……そうでした」
「フェリシアさんも意外と平気そうですね」
「え?」
フェリシアが一瞬だけ止まった。
「そ、そう見えます?」
「はい」
「緊張してますよ」
「そうですか?」
「してます!」
なぜか強く言われた。
門を通る。
伯爵家の兵士たちが、参加者の名前と冒険者証を一人ずつ確認していた。
俺たちも確認を終え、館の中へ入る。
大きな広間へ案内された。
すでに何十人もの冒険者が集まっている。
その前方には、伯爵家の騎士たちが並んでいた。
やがて奥の扉が開く。
話し声が止まった。
一人の男が入ってくる。
「若い……」
思わず呟いた。
二十代半ばくらいだろうか。
落ち着いた色の上着を身につけ、護衛の騎士を従えている。
男は集まった冒険者たちの前へ立った。
「急な招集に応じてくれたこと、感謝する」
広間に声が響く。
「私がベルガント伯爵、――だ」
そして、集まった冒険者たちをゆっくり見渡した。
「これだけの人数を集めたのには、理由がある」
累計獲得P=25,300P
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも何かを感じて頂けたら評価とブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!




