第22話 付与
【《付与》 10,000P】
「買います」
「はい」
《付与》を選択した。
【《付与》を購入しますか?】
【必要ポイント:10,000P】
迷わず決定する。
【10,000Pを消費しました】
【固有スキル《付与》を習得しました】
【保有ポイント:190P】
「……一気になくなりましたね」
フェリシアが表示を見る。
「百九十Pですからね」
それでも、これを買うために貯めてきた。
新しく増えた項目を開く。
【《付与》】
【対象:人物/装備品】
【付与種別:スキル/強化効果】
「人物だけじゃなくて、装備にも使えるんですね」
「みたいです」
まず《スキル》を選ぶ。
【付与可能な習得済みスキルがありません】
「……あれ?」
「何もないんですか?」
続けて表示が出た。
【スキル付与には、会員本人による対象スキルの習得が必要です】
「なるほど」
俺が持っていないスキルを、そのまま誰かへ与えられるわけではないらしい。
ゴールド会員の固有スキル一覧を開く。
【《身体強化》 5,000P】
【《気配察知》 5,000P】
【《暗視》 5,000P】
【《高速思考》 5,000P】
【《魔力操作》 5,000P】
【《剣士》 5,000P】
【《再生》 5,000P】
【《収納》 5,000P】
【《隠密》 5,000P】
【《魔力感知》 5,000P】
「また貯めないと駄目ですね」
「でも、こっちは?」
フェリシアが《強化効果》を見る。
選択する。
【対象を選択してください】
【人物】
【装備品】
「装備品で試してみます?」
「何にします?」
フェリシアが腰のナイフを見た。
「昨日買ったこれとか」
《魔銀のナイフ》。
「試すにはちょうどよさそうですね」
ただ、付与する前と後で比べないと、どれくらい変わったのか分からない。
「ちょっと待っててください」
「どこ行くんです?」
「すぐ戻ります」
部屋を出た。
◇
銀麦亭の裏手を少し歩く。
地面に落ちている枝の中から、手首ほどの太さのものを一本拾った。
これなら試せそうだ。
部屋へ戻る。
「それ、何です?」
「比較用です」
フェリシアが枝を見る。
「ここで切るんですか?」
俺も部屋を見回した。
「……外でやりましょう」
「そうですね」
二人で銀麦亭の裏手へ出た。
枝を安定した場所へ置く。
「まず、今のナイフで切ってみてください」
「分かりました」
フェリシアが《魔銀のナイフ》を抜いた。
枝へ刃を振る。
ザクッ。
かなり深く入った。
だが、一度では切れない。
「半分くらいですね」
「次は付与してみます」
《付与》を開く。
【対象:魔銀のナイフ】
【付与可能効果】
【切れ味強化】
【強度強化】
【魔力伝導強化】
「いくつかありますね」
「まずは一つだけにしましょう」
《切れ味強化》を選ぶ。
【《切れ味強化》を付与します】
決定する。
俺の身体から、少し魔力が抜ける感覚がした。
フェリシアが持つナイフの刃が淡く光る。
「これで変わったんでしょうか」
「同じ枝で試しましょう」
さっき切った場所から少し離れたところを指す。
フェリシアが構えた。
「いきます」
ナイフを振る。
スパンッ。
枝の先が地面へ落ちた。
「……切れた」
フェリシアが断面を見る。
俺も近づいて確認した。
違いは明らかだった。
「かなり変わりますね」
「これなら、近づかれた時にも使えそうです」
《付与》を解除する。
ナイフの淡い光が消えた。
魔力が抜ける感覚も止まる。
「付与している間は、魔力を使い続けるみたいですね」
「必要な時だけ使う方がよさそうです」
「そうですね」
フェリシアがナイフを鞘へ戻した。
「明日、実戦でも試してみます?」
「そのつもりです」
◇
翌朝。
冒険者ギルドでCランク用の依頼を探す。
選んだのは十二階の依頼だった。
【メタルスコーピオン 二体討伐】
【対象:ベルガント西部ダンジョン第十二階層】
【報酬:280,000ジェニー】
受付へ持っていく。
「今日は十二階なんですね」
「はい」
受付嬢も、もう以前ほど驚かなくなった。
「メタルスコーピオンは甲殻が硬い上に、尾の攻撃が速いです。気をつけてください」
「分かりました」
依頼を受け、ダンジョンへ向かった。
◇
一階の転移石から十階へ。
そこから十一階を抜け、十二階へ下りる。
十二階は、十一階よりも通路が狭かった。
岩壁には黒っぽい鉱石が多く混じっている。
しばらく進むと、前方で金属が擦れるような音がした。
「来ます」
フェリシアが杖を前へ向ける。
岩陰から巨大な蠍が姿を現した。
体長は二メートルを超えている。
胴体も脚も黒い甲殻に覆われ、長い尾の先には鋭い針がついていた。
「メタルスコーピオンです」
「俺が前に出ます」
炎牙剣を抜く。
メタルスコーピオンが尾を振った。
速い。
横へかわす。
針が岩床へ突き刺さった。
その隙に懐へ入る。
炎牙剣を振った。
ガキンッ!
硬い。
だが、アイアンゴーレムほどではない。
柄の魔石を起動させる。
ボッ!
炎が刀身を包む。
「シャアアッ!」
尾がもう一度来る。
かわす。
甲殻の継ぎ目へ斬り込んだ。
ザンッ!
刃が深く入る。
もう一撃。
メタルスコーピオンが地面へ崩れた。
【1,000P獲得】
【累計獲得P:20,900P】
【保有:1,190P】
「千P」
「十二階だけあって多いですね」
魔石と甲殻を回収する。
依頼対象はあと一体だ。
◇
二体目のメタルスコーピオンは、通路を曲がった先にいた。
「今度はナイフも試したいです」
「無理はしないでください」
「はい」
まず俺が前へ出る。
メタルスコーピオンが尾を振る。
かわしながら引きつける。
「《魔弾》!」
フェリシアの一撃が脚へ当たった。
メタルスコーピオンが向きを変える。
フェリシアへ近づいた。
前脚が振られる。
フェリシアが後ろへかわす。
だが、距離が近い。
「フェリシアさん!」
「試します!」
フェリシアが《魔銀のナイフ》を抜いた。
俺はすぐに《付与》を使う。
【対象:魔銀のナイフ】
【《切れ味強化》を付与します】
身体から魔力が抜ける。
ナイフの刃が淡く光った。
メタルスコーピオンの脚がフェリシアへ伸びる。
フェリシアが横へかわし、その脚へナイフを振った。
ザンッ!
「切れた!」
甲殻の薄い継ぎ目に刃が入った。
脚一本が大きく傷つく。
メタルスコーピオンの動きが崩れた。
フェリシアはすぐに距離を取る。
「《魔弾》!」
光弾が傷ついた脚へ当たる。
さらに動きが鈍る。
「今です!」
「はい!」
踏み込む。
炎牙剣を起動する。
甲殻の継ぎ目へ斬り込んだ。
もう一撃。
メタルスコーピオンが倒れる。
【1,000P獲得】
【累計獲得P:21,900P】
【保有:2,190P】
《切れ味強化》を解除する。
フェリシアがナイフを見る。
「ちゃんと十二階でも使えましたね」
「昨日買った意味がありましたね」
「付与のおかげもありますけど」
「それも含めてですね」
依頼対象は二体とも倒した。
少しだけ十二階を探索してから、今日は戻ることにした。
◇
ギルドへ戻り、討伐証明を提出する。
「確認しました。依頼達成です」
【依頼達成を確認しました】
【100P獲得】
【本日の獲得P:2,100P】
【累計獲得P:22,000P】
【保有:2,290P】
依頼報酬は二十八万ジェニー。
メタルスコーピオン二体の素材などを買い取ってもらい、査定額は六十二万ジェニーになった。
「合わせて九十万ジェニーです」
二人で分ければ、一人四十五万ジェニー。
◇
夜。
《銀麦亭》の部屋で《会員》を開く。
【保有ポイント:2,290P】
固有スキル一覧を見る。
【《魔力操作》 5,000P】
【魔力を素早く、正確に扱う固有スキル】
あと2,710P。
次に買うものは決まった。
累計獲得P=22,000P
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